045-330 王の悪夢 @ライ×C万歳

僕は自分の部屋のベッドで布団に潜り、睡魔に身を委ね、深い眠りに落ちていた。
最近とても忙しかった。
生徒会、黒の騎士団、経済特区日本…毎日仕事に追われ、殆ど休む時間もなく、大好きな人との時間もほんの少ししか取れない日々が昨日まで続いていた。
今日は久しぶりのすべてを忘れて羽を伸ばせる日…
僕を求めてくるC.C.には本当に申し訳ないが、とにかく僕は眠りたかった。
僕も人間だ、眠らなければ体がボロボロになって破滅してしまう。
現に最近は過労死するんじゃないかと嫌な破滅のイメージを浮かべたこともあった。
だから眠れるときは眠っておこう。
C.C.には悪いが、「埋め合わせはするから許してくれ」と心の中で深く謝り、僕は眠った。

とても幸せな気分だった。
じわじわとだが、疲労が薄まっていく感じがした。
あと数年続くくらいの感覚でこれが続けばいいのに…とだらしない事ながらそんなことを考えたりもした。
だが途中、布団が取り払われたような寒さとほっぺたを軽くつねられたような痛み、とてもくすぐったい感覚と恥ずかしさで心が疼くような感覚が襲ってきた。
煩わしくはあったが、疲れでとても起きる気にはなれず、気にせず眠った。
でも、もしかしたらそこで起きたほうが幸せだったのかもしれない…


急に僕は安眠の闇の中から引きずり出され、目を開けた。
そこで僕は眼を大きく開き、一瞬息を呑んだ。
僕は古い西洋式の甲冑を身につけ、腰には西洋刀を差し、逞しい馬に跨っていた。
だが、もっと驚いたのは眼前に広がった光景だ。
そこには兵士も民も関係なく、武器を手に取り、狂ったように殺しあう人々の姿であった。
それは、僕の過去の光景で、これは夢なのだとすぐに分かった。
だけど、僕の心がそれで安心するはずはなかった。
今僕は記憶を取り戻したときのように自分の過去の過ちを眼前で見せ付けられているのだ。
そして僕は二人の人の姿を殺しあう人々の中に見つけた。
母と妹…僕が最も守りたかった人達が狂気に駆られ、人を殺める姿を…

「止めろ民衆よ!」

耐えられなくなった僕は声を荒げ、叫ぶ。

「武器を捨てよ!元の暮らしに戻れ!!」

夢なのは分かっている、無駄なのも分かっている。
だが僕は両目の紅い瞳の翼を輝かせ、声が枯れそうなくらい大声で叫ぶ。

「頼む!止めろ!止めてくれ!!」

だが、殺しあいはより激しさを増していき…


すべてが終わった頃には空は闇に飲まれ、満月が惨状を暖かに照らしていた。
僕は馬から下り、母と妹を探す。
そして、血みどろで動かなくなった二人の姿を見つけ、両膝を地面に落とした。
妹の頬に手を沿え、その掌を眼前に持ってくる。
まだ乾いていない妹の血がべっとりと僕の掌を汚していた…
僕の涙腺は崩壊し、精神がズタズタになった僕は空を向いて泣き叫んだ。

「う…く…ぅ…うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

早く覚めてくれ…そう思えば思うほど夢は僕をがんじがらめに捕らえ、現実に返してくれなかった。
このままでは夢の中で精神が完全に崩壊してしまうと思った。
「助けてくれ」と心の中で何度も叫んだ。
そんな時、唇に暖かい感覚が灯った。
僕は泣き叫ぶことをやめ、やがてその暖かさは僕のすべてを温めて…


僕はベッドの上で目を覚ました。
目尻には涙が光り、少し汗もかいていた。
悪夢から開放されたことに僕は安心すると、僕は腹部に重さを感じ、横になったまま下を向く。
そこには、幸せそうな笑顔で眠るC.C.の姿があった。

「君のおかげか…ありがとう、C.C.。」

僕は自然と笑顔になり、左手を優しく彼女の頬に添えた。
その時、彼女はむにゃむにゃと寝言をつぶやく。

「今度…ピザを奢れよ…」

僕は彼女らしい寝言に苦笑すると、再び瞼を閉じ、眠りに落ちた。
出来ることなら、次は彼女と楽しい夢を共有することを願いながら…


最終更新:2011年03月02日 02:29
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