プロローグ
「久しぶりだな」
中華連邦の大使館に逃げ込んだゼロやカレンを初めとする黒の騎士団残党を待っていたのは白銀の髪を持つ少年だった。
「ライ……」
カレンの口が小刻みに揺れて声が漏れる。
「生きていたのか……」
それら釣られるかのようにゼロの口からも言葉が漏れる。
「ああ、何とかね……」
以前の様な優しい色が消え去った瞳が、声の発生源を冷たく見つめる。
まるで別人のような凍りついた目……。彼は本当にライなの?
以前、ライに好意を寄せていたカレンさえもたじろぐほど、それは冷たく切れ味のいい刃のように突き刺さってくる。
ゼロは沈黙していた。
いや、何も言う事が出来ないのだろう。
あまりにも予想外の人物が目の前にいるのだから。
その沈黙にくすっと笑った後、皮肉めいた微笑を浮かべてライは言葉を続けた。
「ああ、心配しなくても、今の君たちは大切なお客様だからね」
そう言うと、返事も反応も待たずに現れた方向に身体を向けて歩き出す。
「ふむ。どうやら付いて来いということらしいな」
ぼそりとC.Cが詰まらなさそうな表情で呟くと後に続き、それに引っ張られるようにカレンとゼロが歩き出す。
薄暗い廊下をただ足音だけが響く。
まるで言葉を忘れたかのように誰もが無言だった。
そして、足音が止まる。
「ここだ。入りたまえ……」
他人事のような棒読みの声でライが目の前のドアを指差す。
暫くの躊躇の後、決心したのだろう。
ゼロが一歩踏み出してドアノブに手をかける。
だが、そこで止まる動き。
今必死で今の状況を頭の中で計算しているのだろう。
そのゼロの耳傍でライはニタリと笑って囁く。
「ふふっ。ギアスを使う必要はないよ、ゼロ。話は僕ががつけておいたからね」
その囁きにゼロの身体がびくりと反応し、仮面がライの方向を向く。
想像でしかわからないが、多分睨みつけているのだろう。
皮肉めいた苦笑を浮かべ、ライはそれを受け止める。
それはほんの数秒の間の出来事だったが、後ろで見ていたカレンには、とても長い時間に感じられた。
「くっ……」
僅かにそんな音が漏れた後、ゼロは握っていたドアノブを回した。
本編に続く
最終更新:2011年12月05日 12:39