046-283 あらしのよるに。 @羽崎

ガラガラガラ…

ドドォーン!!

「キャアァ!」

悪天候で他の作業ができないため、格納庫で月下の調整をしていたら、入口のあたりからすごい悲鳴が聞こえた。
今の声は─カレン?

「カレンか?」

コクピットから顔を出すと、慌てた感じのカレンが、月下の足元に駆け寄ってくるところだった。

「カレン、どうした!?大丈夫か!?」

「ライ。大丈夫よ、なんでもないの。心配しないで?」

「だけど…」

慌ててコクピットから飛び降りると、走ってくるカレンを受け止める。カレンはあきらかにほっとしたような顔になった。
心配するなと言われても、そんなようすだとかえって気になる。僕には言えないようなことだろうか…?

「カレン、僕に言いづらいなら──『ゴロゴロゴロ…ピシャーン!』「キャアアァ!!」──カレン?」

僕の言葉の途中で大きな雷が落ちる音がして、悲鳴をあげたカレンが、力いっぱいしがみついてきた。
んん?これは、もしかして…?

「カレン?もしかして…雷が苦手なのか?」

「そんなわけないじゃな『ピシャーン!ドドォーン!』いヤアァァ!!」

「…やっぱり苦手なんじゃないか」

不本意なのか、カレンはキッと僕を睨んできたが…、

「そんな潤んだ目で睨まれても、迫力はないよ、カレン。可愛いだけだから」

「か、かわっ…!?」

僕にしがみついたままのカレンの顔が一気に真っ赤になる。

「へへへ変なこと言わないでよ!」

「変なことって?」

本気でわからなくて聞き返したら、カレンは一瞬言葉につまったようだった。

「だ、だから、その……、か、可愛いとかそういうことよ!」


「?カレンが可愛いのは本当のことだろう?」

「だ…っ、だから『ズドーン!!』きゃああ!」

雷の音と同時に、ふたたび僕にしがみつくカレン。…ああ、困ったな…。

「……なんで笑ってるのよライ…」

胸もとのカレンの顔が不機嫌になって、低い声でそう言ってくる。
だけど…これは顔がゆるんでも僕は悪くないと思う。

「いや…。僕の恋人がすごく可愛いから、幸せだなあって思って」

「!?」

もともと真っ赤だったカレンが、さらに耳や首まで赤くなった。

「ら、ライの…、バカあァ!!」

ばっちーん!

…なぜか、僕はカレンにひっぱたかれた。



最終更新:2012年05月14日 23:13
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。