ガラガラガラ…
ドドォーン!!
「キャアァ!」
悪天候で他の作業ができないため、格納庫で月下の調整をしていたら、入口のあたりからすごい悲鳴が聞こえた。
今の声は─カレン?
「カレンか?」
コクピットから顔を出すと、慌てた感じのカレンが、月下の足元に駆け寄ってくるところだった。
「カレン、どうした!?大丈夫か!?」
「ライ。大丈夫よ、なんでもないの。心配しないで?」
「だけど…」
慌ててコクピットから飛び降りると、走ってくるカレンを受け止める。カレンはあきらかにほっとしたような顔になった。
心配するなと言われても、そんなようすだとかえって気になる。僕には言えないようなことだろうか…?
「カレン、僕に言いづらいなら──『ゴロゴロゴロ…ピシャーン!』「キャアアァ!!」──カレン?」
僕の言葉の途中で大きな雷が落ちる音がして、悲鳴をあげたカレンが、力いっぱいしがみついてきた。
んん?これは、もしかして…?
「カレン?もしかして…雷が苦手なのか?」
「そんなわけないじゃな『ピシャーン!ドドォーン!』いヤアァァ!!」
「…やっぱり苦手なんじゃないか」
不本意なのか、カレンはキッと僕を睨んできたが…、
「そんな潤んだ目で睨まれても、迫力はないよ、カレン。可愛いだけだから」
「か、かわっ…!?」
僕にしがみついたままのカレンの顔が一気に真っ赤になる。
「へへへ変なこと言わないでよ!」
「変なことって?」
本気でわからなくて聞き返したら、カレンは一瞬言葉につまったようだった。
「だ、だから、その……、か、可愛いとかそういうことよ!」
「?カレンが可愛いのは本当のことだろう?」
「だ…っ、だから『ズドーン!!』きゃああ!」
雷の音と同時に、ふたたび僕にしがみつくカレン。…ああ、困ったな…。
「……なんで笑ってるのよライ…」
胸もとのカレンの顔が不機嫌になって、低い声でそう言ってくる。
だけど…これは顔がゆるんでも僕は悪くないと思う。
「いや…。僕の恋人がすごく可愛いから、幸せだなあって思って」
「!?」
もともと真っ赤だったカレンが、さらに耳や首まで赤くなった。
「ら、ライの…、バカあァ!!」
ばっちーん!
…なぜか、僕はカレンにひっぱたかれた。
最終更新:2012年05月14日 23:13