040-230 ――Cの世界―― @???

 ――Cの世界――

 そこは不思議な世界だった。
 『ここは一体……彼奴はあいつは何処に行った……?』
 ルルーシュは仮面越しに呟きながら怨敵である皇帝の姿を探るべく辺りを見回した。
 すると、ふと遠くの方に黒い"何か"が見えた。それは陽炎の様に虚ろいで見える。
 『何だ?あれは……』
 当初、それをしげしげと見つめていたが、ゆっくりとではあるが確実に自分の方に近付いて来るのを認めたルルーシュ。その背筋が凍った。
 (拙い。あれに近付いては駄目だ!!)
 本能的に危険を察知したルルーシュは、咄嗟に距離を置こうと身体を動かすが、
 『なっ!?』
 その身体はまるで押さえつけられているようにピクリとも動かなかった。
 それでも、必死に動かそうとするルルーシュ。
 そうしている間にも黒い"何か"はゆっくりと、しかし確実に距離を縮めて来る。
 一つではない無数の"何か"。そしてそれが視認できる程まで迫った時、
 『っ!!』
 ルルーシュは言葉を失った。一体どれだけの数がいるのか分からない。大小様々な人の形をした"何か"。
 しかし、その全てに共通するものがあった。
 その全身はドス黒く、顔には苦痛・苦悶・憎悪・絶望。あらゆる負の表情を張り付かせていた。
 『来るな!来るなっ!!!』
 ルルーシュは必死になって逃げようとするが、やはり体は動かない。すると不意に彼の耳元に声が響いた。
 「何を怖がっているの?」

 ◇ 

 (何だこいつは?)
 それは突然現れた。子供の背丈に異様な仮面を被った"ソレ"は、幼さの残る声色で語る。
 「始めまして、ゼロ。いや、ルルーシュと言った方がいいかな?怖がる事はないよ。ここはギアスに縁のあった存在が最後に来る場所だからね。
 予定よりちょっと早いけど、皆君が来るのを待ってたんだよ?ほら、見覚えのある顔も居ると思うけど分からないかな?」
 黒い人の形をした多くの"何か"を指差し、酷く冷たい声色を響かせ笑みを浮かべながらも"ソレ"は語る。
 「"アレ"は、ギアスを受けて死んでいった者達の末路さ。まあ、中には使い手も混じってるけどね。皆言ってるよ。ギアスが憎いって。君も憎んでるんでしょ?」
 『っ!?』
 「面白いよね。自ら望んで手にした力を憎むなんてさ。君達のような存在を見るのは……本当に楽しいよ」

 目の前にいる"ソレ"は、その幼い顔を歪めてさも愉しそう笑った。まるで全てを見通しているかのように。
 『"オマエ"は一体……』
 ルルーシュが問い掛けるが、"ソレ"は無視して話続ける。
 「おっと、話が逸れちゃったね。本題に入ろうか。君には、彼らの"王"になってあげて欲しいんだ。"彼"には及ばないけど、君もギアスを使って大勢殺したからね。資格は十分にあるよ」
 そう一方的に告げると、"ソレ"は、ゆっくりと手を伸ばしゼロの仮面を外そうとする。その時――。
 「お止めなさいっ!!」
 ルルーシュの耳元に懐かしい声が響いた。ルルーシュがよく知る人物の声。
 その声を聞いた瞬間、それまで彼を押さえつけていた何かが消えた。咄嗟にルルーシュは"ソレ"から距離を取り、声がした方を振り向く。
 「あなたにルルーシュは渡しません!!去りなさい!!」
 「馬鹿な……」
 彼の目に飛び込んできたのは、銀色の仮面を付けた屈強な体格をした騎士を従えた彼女、ユーフェミア・リ・ブリタニアの姿だった。
 「ユフィ……?何故だ……?」
 そこまで言ってルルーシュは思い直した。
 先程聞いた事が事実なら、ここにユフィが居るのは納得がいく、と。
 暴走したせいとはいえ彼女にギアスを掛けた結果、殺してしまったのは自分自身なのだから。
 だが、そこで一つの疑問が残った。その身にギアスを受けて死んだのに、何故ユフィは"アレ"のように黒く染まっていないのか。何故、生前と変わらぬ眩しいまでの姿で自分の前に立っているのか、と。
 ルルーシュが仮面の下で思考を回転させていると、"ソレ"は心底ウンザリとした声色で頭を振った。
 「ああ、皇女様か。君がここに居るということは…やれやれ"彼"も……」
 心底ウンザリとした声色で呟く"ソレ"を見て、ユーフェミアは口元に手を当てるとさも誇らしげに言った。
 「ええ、直に参られますわ。私は逃げた方が良いのではないかと思うのですが?」
 そんなユーフェミアを尻目に、顎に手を当てた"ソレ"は何かを考えるように押し黙る。
 すると突然、控えていた騎士が剣先を"ソレ"に向けると言い放った。
 「ユーフェミア様!お下がり下さい!」
 「私なら大丈夫ですわ、"将軍"。それよりもルルーシュを」
 「ハッ。殿下、私の後ろに」
 将軍と呼ばれた騎士はルルーシュを庇うように"ソレ"の前に立ち身構える。
 「ルルーシュ、大丈夫ですか?」
 『本当にユフィ……なのか?』
 「あら、失礼ですね。ですが、詳しい話は後です。今は"アレ"から離れないと……」
 そう彼女が言いかけた時、突如として黒い"何か"がルルーシュ達を囲むように動き出した。
 「ハァ。どうやら、そう簡単には逃がしてくれないみたいですね」
 「いえ、姫様。これは……」
 不満そうに語るユーフェミアに対して、いち早く状況を理解した騎士が言葉を紡ぎかけた時、幾分か冷静さを取り戻したルルーシュが遮った。
 『陣形を取っている?…この形は…方円か?』
 「お気づきになりましたか、殿下。…流石は――」
 騎士が言葉を続けようとしたその時、突然空間に地鳴りのような音が鳴り響いた。
 「どうやら間に合ったようですな」
 騎士は心底安堵したかのような声色で呟くと視線を彼方に向ける。
 「あら?私は信じていましたよ?」
 ユーフェミアはあっけらかんとした口調で言い騎士と同じく視線を彼方に向けると、ルルーシュもつられるように二人の視線を追った。
 彼等の視線の先に居たのは、光り輝く騎兵の一団だった。
 凄まじい速度で真っ直ぐルルーシュ達の元に向かって来る。
 先頭を駆けるのはその身に銀色の鎧と具足を纏い蒼い外套を翻す騎士の姿だった。
 不意にその騎士が剣を掲げる。
 すると、それに呼応するかのように後に続く騎士達も各々が持つ武器を掲げると、掲げられた武器達が一層の光を放つ。
 『…っ!』
 その光景にルルーシュは思わず息を飲んだ。光を背に受けた蒼い騎士の姿が、余りにも幻想的で壮麗な姿だったからだ。

 やがて、数多の雄叫びと共に一団の形が変わっていく。彼らは行く手を阻む黒い"何か"に対抗するかのように陣形を組み立てていく。
 ルルーシュは心の内で呟いた。
 (あの陣形は…偃月?ということは、やはりあいつが指揮官か)

 【偃月】

 それは指揮官が自ら先陣を切り、敵部隊を精鋭でもって切り裂く。一点突破の陣形。
 故に先頭を駆ける者には多大な危険が伴う事となるが、見返りとして配下の士気はこれ以上無い程に高まる。
 ルルーシュは咄嗟に思った。
 (凡庸な者が組める陣形では無いな。何よりも、俺と同じ考えを遥かに危険な状態で実践するとは)

 ――王が動かねば、部下は付いて来ない――

 それはルルーシュの持論。それを実践するために、彼自身、自ら先陣を切った事など幾らでもある。
 ナリタで、埠頭で、キュウシュウで。総領事館では自らの姿を晒し敵を挑発もした。
 しかし、それが出来たのは自身を守る強固な鎧、NMFがあったからだ。
 挑発にしても、その時の状況や相手の性格、行動パターンなどをその天才的な頭脳を駆使し導き出した結果の上での行為。絶対的な自信があった上での事。
 対するあの蒼騎士はどうか。彼を護るのはナイトメアと比べると余りにもお粗末な…紙に等しき鎧一つ。
 それでも、蒼騎士が他者に先頭を譲る気など微塵も無い様子だった。
 ルルーシュが心よりの賞賛を騎士に送っていた時、不意に"ソレ"が呟いた。
 「やれやれ、随分と早かったね。まあ、いいか。ルルーシュ、近い未来に君とはまた会う事になる。どうせ手に入れるなら肉体ごと。完璧な状態が良いからね」
 『何?どういう意味だ!?』
 ルルーシュは問い詰めるようと身を乗り出すが、銀色の騎士が背を向けたまま行く手を阻むかのように立ち塞がった。 
 「殿下、この者の言葉に耳を傾けてはなりません!」
 「ルルーシュ、落ち着いて下さいね」
 厳しい口調で依然として警戒の念を解く事の無い将軍。しかし、一方でこの状況に対して落ち着き過ぎているユーフェミアを見てルルーシュは苦言を呈す。
 『ユフィ!お前は落ち着き過ぎだっ!』
 が、生来マイペースだった彼女にそれは無茶だと言うものだ。
 「あらあら、慌てん坊な所は変わってないですね」
 嬉しそうに微笑むユーフェミア見たルルーシュは、主導権を握られてしまっている事に気付くと思わず肩を落とした。

 ◇

 そんなルルーシュ達の後ろでは戦いが始まっていた。
 騎士達はまるで黒い壁のようになった"何か"を打ち破る為に武器を振るい、切り裂いていく。それは圧倒的な突破力だった。
 黒い"何か"は打ち崩される度に、この世のモノとは思えぬ声を上げながら倒れていく。
 ついに、一人の騎士が壁を打ち破った。蒼いマントを纏った、先頭を駆けていたあの騎士だ。
 騎士はルルーシュ達には目もくれず"ソレ"に対して斬撃を繰り出すと、避ける間もなく"ソレ"は首を撥ね飛ばされた。
 だが撥ね飛ばされたにも関わらず、"ソレ"は無邪気な子供のような声色で言った。
 「時間だね、ルルーシュ。今度は君の世界で会おうよ」
 そして、言い終えると唐突に消えた。すると、同じくして黒い"何か"も姿を消した。
 後に残ったのは、馬の嘶きと勝ち鬨を上げる騎士達の姿だった。
 「やれやれ、無事で何よりでしたな。」
 ルルーシュ達を護っていた屈強な騎士はそう言うと、顔を覆っていた仮面を外す。
 その素顔を認めたルルーシュは思わず叫んだ。
 『っ!ダールトン!?』
 アンドレアス・ダールトン。コーネリアの側近中の側近だった男。
 『何故、俺を助けた?』
 ルルーシュが震える声を抑えながら問うと、問われたダールトンは豪快に笑いながら言った。
 「ハッハハハハ!理由など知れた事です。あなた様が、姫様の異母弟であらせられるからに決まっております」
 その言葉にさしたる驚きもなくルルーシュは言った。
 『知った…のか……』
 「はい、全て。しかし驚きましたぞ。姫様と我々を幾度となく窮地に追いやったあのゼロが、まさかルルーシュ殿下でしたとは。いや、今となっては納得出来る事ではありますな。
 まあ、武力ではなく智力に秀でておいでのようですが。流石は閃光のマリアンヌと呼ばれたマリアンヌ皇妃の血を引く御方」
 言い終わるとダールトンは満足げな表情を浮かべた。だが、それも一瞬の事。すぐに真剣な顔つきに戻すとユーフェミアに向き直った。
 「しかし、ユーフェミア様。王が間に合ったから良かったようなものの、このような無茶はこれっきりにして頂きたいものですな」
 幼子を咎めるような口調。だが、ユーフェミアは特に気にした様子もなく逆に惚けたような表情で聞き返した。
 「あら、将軍はあの方が間に合わないと思っていたのかしら?」
 「そ、そのような事は決して!」
 思わぬユーフェミアの反撃に、歴戦の猛将は大層慌てた様子でいると、ユーフェミアは屈託の無い笑顔で微笑んだ。
 「ユーフェミア様!このダールトン、姫様の名に懸けて誓います。ですから、そのような事は王には……」
 二人のやり取りを見ながらルルーシュは思った。
 (変わっていない。あの頃のユフィのままだ。だが、だからこそ、どうしても聞かなければならない事がある)
 ルルーシュは、意を決すると恐る恐るその言葉を口にした。
 『ユフィ、君は何故変わっていない?ダールトン、お前もだ。俺は"アレ"からこの場所の事を少しだが聞いた。あの黒い人の形をした存在についても。何故お前達は昔のままなんだっ!?』

歴戦の猛将は大層慌てた様子でいると、ユーフェミアは屈託の無い笑顔で微笑んだ。
 「ユーフェミア様!このダールトン、姫様の名に懸けて誓います。ですから、そのような事は王には……」
 二人のやり取りを見ながらルルーシュは思った。
 (変わっていない。あの頃のユフィのままだ。だが、だからこそ、どうしても聞かなければならない事がある)
 ルルーシュは、意を決すると恐る恐るその言葉を口にした。
 『ユフィ、君は何故変わっていない?ダールトン、お前もだ。俺は"アレ"からこの場所の事を少しだが聞いた。あの黒い人の形をした存在についても。何故お前達は昔のままなんだっ!?』
 すると、ルルーシュの問いを聞いたユーフェミアは少し困った様な顔をした後、言った。
 「その仮面を取ったら答えてあげます。これから話す事は、ゼロではなく、ルルーシュ。貴方に向ける言葉なのですから」
 ユーフェミアの交換条件とも取れる言葉に、ルルーシュは悩んだ。
 (今の俺の顔は、ギアスに対する憎しみで歪んでいる。そんな顔を、ユフィに見せる事が許されるのか?)
 仮面の下で歪んだルルーシュの顔に苦悩の色が浮かぶが、それを知ってか知らずかユーフェミアは続ける。
 「けれど、もう貴方はその言葉を聞いているはずですよ?何でしたら、もう一度聞いてもらいましょうか。ええ、それがいいですね」
 何やら一人結論を出しているユーフェミア。ルルーシュが何か言おうとしたその時、
 「ルル……」
 声が聞こえた。二度と聞く事が出来ないと思った声が。

 その声を聞いた瞬間、ルルーシュの身体はこれ以上ない程に震えた。
 ゆっくりと声がした方を振り向くと、そこに居たのは彼が想像した通りの人物の姿だった。
 「シャーリー、なのか……?」
 「うん」
 その答えを聞くや否やルルーシュは駆け寄ると抱き締める。
 シャーリーもまた、ルルーシュの背中に手を回す。
 『済まない…済まない…シャーリー……』
 「もうっ……そんなに謝らなくてもいいのに…」
 シャーリーは少し困った表情を浮かべながらも、ルルーシュの仮面に手を添えてゆっくりと外していった。
 露わになるルルーシュの顔。
 それは憎しみに歪みながらも、彼女に再び会えた事への喜びか。あるいは申し訳なさから来るものか。大粒の涙を零していた。
 「酷い顔だね」
 そうは言いつつも、シャーリーの表情は慈愛に満ちていた。
 その後、二人が何を話したのか。それは他の者達には分からなかった。
 だが、話終わった後のルルーシュの表情はとても落ち着いたものだった。

 ◇

 「仲睦まじいですね」
 コロコロと笑いながら告げるユーフェミアに対して、それまで抱き合っていたルルーシュとシャーリーはパッと離れた。
 「ユ、ユーフェミア様!」
 顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げるシャーリー。ルルーシュも後に続こうとした時、ユーフェミアの後ろに居た騎士団から歓声が揚がった。
 同時に、彼等が左右に分かれると出来上がった道を軍馬に跨ったあの蒼騎士が悠々と歩みを進めると、騎士達は鐙を外して最大限の敬意を示す。

 やがて、蒼騎士はルルーシュ達の眼前まで来ると手綱を引いて歩みを止めた。
 ルルーシュは呟くように問う。
 「お前が指揮官か……」
 だが、蒼騎士は何も答えない。
 騎士はダールトンや他の騎士達と同じく銀色の仮面被っておりその素顔を伺い知る事は出来なかった。
 だが、仮面より覗く蒼い瞳は物言いたげにルルーシュを見つめていた。
 「助けてくれた事に感謝する。だが、お前は一体何者だ?」
 だが、相変わらず蒼騎士は何も答えない。
 「何とか言ったらどうだ?」
 「ちょ、ちょっとルル!」
 苛立ちを隠し切れない態度を見せるルルーシュに焦ったシャーリーが宥めようとすると、直ぐ傍に控えていたダールトンが些か慌てながら告げた。
 「殿下。陛下はお言葉をお持ちにはなりません」
 「言葉を持たない?」
 ルルーシュは大層驚いた様子で瞳を見開くと、再び蒼騎士に向き直る。
 すると、ルルーシュの瞳に映ったのは剣先を彼方へ向けた蒼騎士の姿だった。
 怪訝に思いながらもルルーシュが視線を向けると、その先には天上より差し込む一筋の光がある一点を照らしていた。
 シャーリーが背中を押す。
 「行って。ルルにはやる事があるんでしょ?」
 「しかしっ!」
 「私なら大丈夫だよ、ね?」
 微笑みながら告げる彼女を見たルルーシュは暫しの間押し黙る。
 が、遂に意を決した彼は再び蒼騎士に向き直った。
 「……シャーリーを、皆を……頼む」
 ルルーシュの願いにも王は相変わらず何かを語る事は無かったが、瞳を僅かに緩ませると小さく頷いた。
 その時、ルルーシュの胸中に湧いたのは、安堵。 
 何故かは分からなかった。だが、その仕種は何故かルルーシュを安堵させた。信頼出来ると。
 やがて、後ろ髪引かれる思いを懐きながらもルルーシュは光差す場所へ歩き出す。
 光の中まで進むと、ルルーシュは最後に一度だけ振り返った。

 すると、その視線の先にあったのは笑みを浮かべて見送るシャーリーとユーフェミアの姿。
 その姿は次第に朧気になり…遂には消えた。

 ◇

 ルルーシュを見送った後、ユーフェミアは意気揚々と告げた。
 「それでは私たちも参りましょう!」
 すると、回りに居た騎士達から一斉に笑い声が起こる。
 「これではどっちが王か分からんな」
 「ハハハッ!全くだ」
 「この場合は女王とお呼びするべきか?」
 各々、何とも勝手な事を言い合っているが、当の蒼騎士は気にした様子も無く、変わりに物言いたげに瞳を細めるがユーフェミアが笑みを崩す事は無かった。
 「あら、私は誰かさんとは違って貴方が来て下さると信じてましたから」
 「ユ、ユーフェミア様!」
 慌てふためくダールトンを尻目に、ユーフェミアは首を傾げた。
 「いけませんか?」
 悪びれた様子を見せないユーフェミアを見た蒼騎士は諦めたのか、瞳を閉じるとやれやれといった様子で頭を振った。
 再び問うユーフェミア。
 「貴方から見て、現世の王はどう映りました?」
 その問いに、蒼騎士は僅かに瞳を緩めるのみであったがユーフェミアにはそれだけで十分だった。
 やがて、蒼騎士は手綱を取り背後に控える騎士達に向けて剣を高々と掲げると、
 「「「Yes, Your Majesty!!!」」」
 騎士達は頼もしい声で応じた。
 それを聞いた蒼騎士は軍馬の腹を軽く蹴り駆け出す。
 銀色の髪を靡かせて、仮面の下で言葉を紡ぎながら。

 ――また会おう。ルルーシュ――


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最終更新:2009年07月04日 13:28
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