040-373 コードギアス LC ~反逆者達の願い~ プロローグ @羽付き羊

Prologue 
「追え…追えぇぇ!!!」
とある研究室に怒鳴り声が響いている。
「実験体が2人とも逃げ出した!すみやかに追え!!絶対に連れ戻せぇぇ!!!」
研究所内の全てのサイレンが鳴り響いていた…

「「ハァ…ハァ…」」
息を切らしながら男が2人走っている。1人は銀髪の髪を揺らしながら、もう1人は全身を包帯で巻きつけており、顔まで覆っている包帯が自らつくる風によってなびく。まるで透明人間のような格好で。
「おい。」
銀髪の男が話しかける。
「ここからは、2手に別れよう。」
「お前…大丈夫なのか?」
包帯の男はその提案を受け入れようとはしなかった。銀髪の男の脚は痙攣を起こし、顔色も青く、2手に別れて銀髪の男が生き残る可能性はほぼ0であった。それをわかっている状態で2手に別れる提案を受け入れる程、男はバカでも非道でもなかった。
「僕は大丈夫だ。アレがある。」
男の顔は青いままであった。
「お前…俺だけ逃がすつもりだろ…」
「…分かるか?やっぱり…」
「分かるさ、お前と俺は似ているからな。色々と…」
「ははは、バレたか……そうだよ…僕より君に生きて欲しいからね。」
その言葉に嘘はなかった、銀髪の青年の蒼い瞳がそれを物語っている。
2人が2人とも片方だけの心配をしていし、自分よりも相手の方に生きて欲しいと思っており、それがそのまま2人の信頼関係を表している。できるなら2人で一緒に逃げだしたい。しかし銀髪の少年は逃げる前に投薬された薬の副作用で動きがいつもより数段鈍い。
その状態で追手から2人とも逃げ出せる可能性は限りなく0に近かった。
「はぁ…本当に良かったよ、俺にはアレが効かないしな。」
軽く溜息を吐きながら話を続ける。
「お前は無理するから心配だしな。」
「それは君もだろ?ホントに似ているな、僕達は。」
両方とも笑いがこぼれる。しかしそれは一瞬にして消え去った。

「おい、居たぞ!あそこに2人とも居るぞ!!!」
「ちっ…もう来たか…おいライ。」
包帯の男が銀髪の男に向かって喋りかける。
「何だ?早く2手に別れて…」
ライの言葉を遮って包帯の男は話す。
「ここは俺が引き受ける。暴走するかもしれないアレは今は使うな。俺が追手とやりあう間にお前は逃げろ。この辺に学園があったはずだ。そこに逃げたら何とかなるかもしれない。」
「!!!何言ってるんだ!?お前も後1度しか…」
面を喰らって目に見えて目を丸くしている。
「いいから、俺に任せろ。さぁ早く!」
ライは返答せずに迷っていた。しかし、もう追手は目の前まで来ている。
「ちっ、仕方ねぇ。本当はお前には使いたくないんだがな…」
男は舌打ちをするとライと目を合わせた。
「お前は学園へ行く途中の人間、すみやかに1人で学園へ行け!」
包帯の男の両目から赤い鳥の模様が浮かびそれがライへと羽ばたいた。
「…学園へ行かなきゃ…」
ライは学園の方向へと走りだした。
「おい!もう1人の方がどこかへ行くぞ!?追えぇ逃がすな!!!」
10数人の追手の内4,5人がライを捕まえようと包帯の男の前を通った。
その刹那
ドカ、ボゴ、バキ、と鈍い音がしたあと彼らは男の前で眠りについた。
「ここから先は俺を捕まえてからだぜ…追手さん達よぉ…」
包帯の男は追手達に向かって走り出す。
目では視認しにくいほどの速さでみぞおちや首の後ろ等、人体の急所を正確についていく。
追手達も麻酔銃を所持していたが、彼があまりに速く、近い為に銃弾はかすることなく空になる。
さらに追手達は仲間を盾にされ撃ちようがなく彼らは眠りにつく。
「さぁ最後はお前だ。」
盾にしていた男を放りなげ最後の追手に向かって近づいていく。
「く…R2!!もう許さん!!!実験体はもう1人で充分だ!」
そう叫ぶと別のコイルガンを放った。

バーン
破裂音が消えると同時に最後の追手も眠りについた。
「ははは…実弾入りかよ…モロ腹にいったか…」
言葉に反応し、避けようとしたがその先には黒い猫がおり、避けずにそのまま銃弾を腹で受け止めた。黒猫は音に驚き一目散に逃げていった。
風穴の開いた腹を押さえながらその場を後にした。
顔を隠していた包帯を撃たれたところを縛るために使う。
が、あまり意味がなく真っ白な包帯は赤黒く染まっていき、赤い液体が滴り落ちる。
満月の夜に包帯で隠れていた彼の白色の髪が星のように光り輝いていた。
男の通った道の後には点々と赤い染みがつくられていく…
何分、何十分歩いたのだろうか?ひょっとしたらほんの数十秒だったのかもしれない。男はそれほど長い時間に感じていたが、気のせいかもしれない。視界が段々と赤く狭くなっていく。赤い点が男の後ろにどこまでも続いている。
どこからか00:00を告げる鐘の音が男の耳に入ってくる。
「はぁ…はぁ…」
男はその場で立ち止まった。
「…いま死ねたらどれだけ楽なんだろうなぁ……」
ふとこぼれた本音、立ち止まっている訳にはいかず体を引きずりながらまた歩きだす。
「…ライ、うまく逃げたかな?そうだといいな…」
眠りそうになると銃弾の傷を自ら抉りなんとか痛みで気を保っていた。
しばらくすると声が聞こえてきた。
「こちらA-23ポイントにて目標を発見した。…ちっ無線が壊れてやがる。なんだよさっきまで繋がってたのに…」
車の無線が壊れているらしく使えないらしい。
「携帯も置いてきたしな…まぁ良いだろう。こちらは2人だ。いくら実験体でも手負いだしな。」
どうやら彼らは血の跡を追ってきたようだ。
「ははは…獣は手負いの方が怖いんだぜ?どうする?」
強気に出るが、覇気がまるでない。
「ふん、お前の能力は知っている。俺達には効かない。」
「バイザーも装着済みだ。」
追手達は明らかに油断している。普段なら一瞬にして倒せる程度の相手だ。しかし、傷が邪魔し思うように動けない。どうするか判断に迷っていると
「もう1人には完全に逃げられたからな。お前は絶対連れ戻す。」
追手の1人がそう言った。その言葉を聞いた男は
「そうか…なら、もういい…」
白い髪を縦に揺らしてそう言った。
「やっと諦めたか…」
追手の1人が男に近づく。
この時、追手達は知らなかった。この男がどれだけの奥の手を持っているかを…
この男の言葉の本当の意味を…
だが追手達はそれを知る機会はもう得ることができなかった。
そこに居たはずの手負いの男は、赤い点をつけずにどこかへ消えてしまっていた…



「ここは一体?」
学園へたどりついた銀髪の青年は記憶を失っていた
しかしそれは彼の物語の始まりを告げるサインでしかなかった

「会長チョーップッ!」
「オスシは、オスシだけは…」

次回 コードギアス LC ~反逆者達の願い~ Action01  失った 者達

物語の扉がいま開かれる…


最終更新:2009年05月29日 18:30
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