041-391

「諸君! 私は悲しい……!」
おもむろにマントをはためかせながらゼロは言う。
「人気ある職人に対しては多く感想が付き、それぞれが別の意見を有する。
 十人十色とはよく言ったものだ」
軽く俯かせた仮面に左手を当て、右腕を下げながらゼロはその苦悩を表す。
「だが、感想も行き過ぎると展開予測となる。 職人のやる気の軽減へと繋がる可能性があるのだ。
 そのようなこととなると職人の投下のペースが落ちるかもしれない」
ゼロは仮面をあげ、左手を胸の辺りに当てる。 同時に右腕をマントを巻き込みながら上げた。
「諸君らにとってそれは望ましい結果ではないだろう?
 無論、私もそのような事は望まない」
ゼロは右腕を引き、マントを前に持ってきた。
「確かに、感想を書くのは自由、だが書き込む前に落ち着いて自らが書き込もうとする内容を確認するといいだろう……」
少し仮面を俯かせるゼロ、マントに隠れていてよくは見えないが左手を少しずつ動かしているのが分かる。
「そう、感想は各自の自由! だが、自由であるからこそ各人が責任をもって感想を書くべきなのだ!」
ゼロは両手を広げる、それと同時に思いっきりマントをはねあげる。
足をキッチリと揃えたそれはまさしく『ゼロポーズ』であった。

「ふむ……まだ細部が甘いな、70点だ」
そんなゼロの様子を見ていた“ゼロ”はそう評した。
「ふぅ……厳しいな」
そう言い、仮面に手をかけながらゼロはゼロの方に歩み寄る。
そして、外した仮面からは銀色の髪が見えた。
「ライ、確かに君の提案した『二人のゼロ』が同時に離れた場所へと出現する策は興味深い。
 だが、ゼロを演じるならばもっとキビキビした動きが必要だ。 腕がマントの下で動くのを悟られるなどもってのほかだ!」
そうライを叱咤するゼロ、それを受けたライはより瞳を燃え上がらせる。
「だからこの特訓をしているんだろう?
 安心してくれ! 何を隠そう、僕は特訓(を受ける方)の達人だ!」
それを受けてゼロも応える。
「あぁ、何を隠そう私は(ポージングの)特訓(をする方)の達人だ!」
しばらくの間激しい特訓が行われたが、自己主張の激しい顎の反対により「二人のゼロ」作戦は実行に移されることは無かった。


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最終更新:2009年07月04日 13:29
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