「うううーーん。なんかいいネタないかしら」
ミレイさんがそんな恐ろしい一言を言い始める。
生徒会室にいる人間全員に緊張が走る。
こ、これは不味い…。
とても不味いぞ。
僕らは慌ててアイコンタクトで互いに連絡し、牽制しあう。
(何か言わないと……)
これは僕。
そのアイコンタクトを受け、真っ先に返してきたのはシャーリー。
(でも、私、ネタなんてないよぉ~)
(困ったねぇ)
同意するかのような返事を返すスザク。
困っただけじゃなく、何か考えてくれよ。
僕がそう思っていたら、ルルーシュがイライラしながら反応する。
(スザク、困ったねぇ…じゃないだろう。考えろ、考えるんだっ)
そういうルルーシュだって、考えろよ。
思わず、そう突っ込みたくなってしまう僕。
うーーん。
駄目だ。
これじゃ、駄目なんだよぉ…。
そんな時だった。
「会長~っ。7月生まれの合同誕生会ってどうですか?」
リヴァルが声を上げて提案する。
いいぞ、リヴァル。
珍しく建設的意見だ。
少しは見直したぞ。
そんなことを思っていると、ミレイさんがふむふむとか頷いていた。
「そうね。それいいアイデアよ。そっかー、確かに7月の生まれが多いわよね」
そこで少し考える素振りを見せて、一呼吸をおいた後、指を一本立てて指名していく。
「まずは8日生まれのシャーリー、10日生まれのスザク……」
なんか、そわそわするリヴァル。
ああ、そういうことか……。
よく考えたら、リヴァルも7月生まれだったな。
そんなことを考えている間にも、ミレイさんの言葉が続いていた。
「で24日生まれのあたし~♪っと……」
そこでずっこけるリヴァル。
わかる。わかるぞ。
お前の気持ちは……。
「うーーーん、誰か一人忘れているわね」
ミレイさんが考え込む。
ずっこけていたリヴァルが体勢を立て直し、ぐぐぐっと身を乗り出している。
そりゃ、そうだろう。
好意を持っている相手から、自分の誕生日の話が出るなんてうれしいじゃないか。
「あーー、そうそう。そうだっわ」
ぽんと自らの手をたたく。
「ライ、貴方もついでに7月生まれになりなさい」
「「「はい~っ????」」」
生徒会室にいたリヴァル以外の人の口から言葉が漏れる。
あ、もちろん、リヴァルはその場で落ち込んで、死亡寸前だ。
ああ、いとあはれ……。
とと、今はそんなことじゃない。
僕自身にかかわることのほうが重要だ。
すまん、リヴァル。
今度、きっちり慰めてやるから……。
そうだな。
公園のたこ焼き屋台でたこ焼きでもおごってあげるから、ガンバレ……。
そう心で声をかけて、頭を切り替えた。
「な、なんで僕なんですかっ」
そう聞き返す僕にミレイさんはにたりと笑う。
「いやぁ、ついでよ、つ・い・で……」
その笑顔に苦笑するしかない僕たち。
でも、ついでの僕はいいとしても、リヴァルの事を考えれば喜んでいいものやら……。
そんな気分になってしまう。
いや、ここはきちんと言っておくべきだよな。
そう思って、口にしようとした時だった。
「じゃあ、合同誕生会の進行責任者は、ルルーシュにやってもらうからね。キビキビ決めてやる様にっ……」
ミレイさんが、そう言い切る。
「な、なんで俺なんですかっ」
慌てて抗議を言おうとするルルーシュだったが、その言葉はミレイさんの言葉にさえぎられる。
「だって、ライも7月生まれにしちゃうから、それ以外だとルルーシュだけじゃないの……」
「ぐっ……」
言葉に詰まるルルーシュ。
「それともニーナやナナリーに責任を押し付けるのかしら……」
「うううっ……」
勝負アリ!!
これはミレイさんの完全に勝ちである。
そして、ルルーシュの横では、うれしそうに復活しているリヴァルの姿があった。
口には出さないものの、ミレイさんは俺り誕生日も把握してくれている。
そう判断したんだろう。
だが……。
実は、そうではなかった。
僕は、聞いてしまったのだ。
ミレイさんの独り言を。
それはとても小さい呟きだった。
「そういえば、ルルーシュ、なんでリヴァルに振らなかったのかしら?」
そうはっきりと聞こえたのだ。
リヴァル……。
僕は、今日の帰りに彼にたこ焼きをおごることを心に決めたのだった。
ちゃんちゃん~♪
最終更新:2010年02月23日 00:37