連載第2回目。



あらすじ:
('A`)ドクオは書類の手違いにより、シベリア村の資源・観光開発のプレゼンを行うために
イギリスはロンドンに行くことになった。
不安な彼は恩師(=゚Д゚)シベリアタイガー先生のもとに行くが、先生は何かきな臭い秘密を隠している
ようであった。ともかく、自分と恩師の不安を抱えながら、ロンドンへ向かった。


ロンドンで仕事が出来ずふさぎこんでいたところ(及び最悪のメシマズに悩まされていたところ)に、
ζ(゚ー゚*ζリタ・デレノフスカヤ=通称デレーニャの家で飯をごちそうになることになった。

ドクオのロンドン滞在はいかに。
恩師の運命やいかに。




686 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:44:06.55 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「はい、どうぞ」


(;゜∀゜)つ□「・・・・・・・・・・・・・」

(;゜□⊂グビッ

喉から胃へとヲッカが滴り、独特の匂いが鼻に抜ける。

(;゜∀゜)「うーーーーーっ!堪んねえ!」

ヲッカは五臓に染み渡り、ドクオの内部で凝り固まっていた疲れを一瞬で溶かした。
あまりの歓び方を見て、デレーニャは言った。

ζ(゚ー゚*ζ「ヲッカなんてどこでも売ってるんだから、買えばよかったのに」


('A`)「いや、ひとりで酒は飲みたくなくてよ・・・・・
   寂しくなるばっかりだもん。

   忙しくて、そんな気にもなれなかった・・・・・」

('∀`)「でも、君のおかげで生き返ったよ、ありがとう」


ドクオはシベリアタイガー先生と飲んだ日以来、ヲッカを口にしていなかった。
緊張で張り詰めていた筋肉は和らぎ、心臓から快く血が流れていく感覚。
ドクオは生きている歓びを久しぶりに味わった。



688 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:46:02.90 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「どういたしまして」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、これから作るからちょっと待ってて」


そういって冷蔵庫に向かい、材料を取り出して支度をし始めた。

野菜を切るデレーニャの後ろ姿を、ドクオはぼうっと見た。

灰色のフリース
細身の黒のジーンズ
後ろに束ねた白金色の髪、

('A`)「・・・・・・・・・」

制服姿とは違う素朴で柔らかな彼女の姿を。


ζ(゚ー゚*ζ「ねえ」


急に呼びかけられて、ドクオはびっくりした。

('A`;)「えっ」



691 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:48:04.93 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「なんか音楽が無いと寂しくない?」

そう言ってデレーニャはステレオのリモコンで音楽を再生した。
軽快なギターのイントロがなり、カラフルで怪しい音楽が鳴り始めた。


♪Lovely Rita Metermaid
♪Lovely Rita Metermaid


('A`)「誰の曲?」

ζ(゚ー゚*ζ「Beatlesよ。Lovely Rita って曲。

       あのね、歌詞が面白いの」

('A`)「へーえ」

ζ(゚ー゚*ζ「可愛いリタ

       駐禁取締の婦警さんって歌」

('A`)「へ?すると君をモデルにしたような曲じゃないか」



693 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:50:12.39 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「そ。面白いでしょ。
       もちろん私が生まれるよりずうっと前の歌だけど・・・・

       私の母親がね、小さい頃よくかけてたの。

       聞いて・・・・」


♪Rita!


ζ(゚ー゚*ζ 「ほら、Rita!って叫ぶでしょ、これ自分のこと言われてるみたいでね、
       わたし、子どもの時手を叩いて喜んだんだって。
       で、私もMetermaid=婦警になるって、そのころから言ってたみたい、


       ママが言ってた」

そう言ってデレーニャはテーブルの上の写真立てに目を向けた。

そこには、まだ小さいときのデレーニャと母親が立っていた。
母親は、娘そっくりの美人だった。



695 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:52:02.26 発信元:221.30.151.167

('A`)「母さんは?」


ζ(゚ー゚*ζ「郊外の墓地で眠ってるわ」


('A`)「そうか・・・・」


ζ(゚ー゚*ζ「ほんとはね、ヴィップグラードで眠りたかったらしいの・・・

       でもそういうわけにも行かなくてね」


ζ(゚ー゚*ζ「いつか、ヴィップグラードに行って、形見のブローチをね、埋めてあげるの。

       生家の庭にモミの木があるはず、そこの根元にね」


('A`)「お、お、俺・・・」






697 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:54:00.11 発信元:221.30.151.167

ドクオは何かお返しがしたかった。

ヴィップグラードなら帰途に寄る。住所を聞けば、代わりにやってあげられる。
しかし。
出会って半日も経ってない人間の生活にそこまで立ち入っていいものか。


ζ(゚ー゚*ζ「?」


('A`)「・・・いや、なんでもない」


デレーニャはガスレンジの火を止めた。


ζ(゚ー゚*ζ「さ、できたわ、食べよう」


鍋の蓋を開けると、いい匂いが部屋いっぱいに漂った。

 *********


698 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 00:58:57.58 発信元:221.30.151.167

ボルシチは優しい家庭の味がした。

本来長く煮こむ料理だが、時間がなかった。それが逆に若くて爽やかな味わいだった。
ドクオは何回もおかわりをし、ヲッカを飲んだ。

デレーニャはちびちびとグラスに口をつけていたが、ドクオは勢い良く飲んでいった。

酔いが回ると、ドクオはあること無いこと勢いでいろいろと話し始めた。


('A`*)「・・・でさ、近くの村にプーチンが来ることになったんだよ。

   でも最近偽物が来ることがあるから注意しろ、って噂が流れたんだ。
   別の村でもサギ被害があったらしいんだ


   んで、プーチンがやってきた。でも予定より2日も早くやってきたんだ。
   しかもお連れも何もなしにだよ。

   で、このハゲめって言ってぶちのめして追い返したんだ」


ζ(゚ー゚*ζ「それで、本物は来たの?」


('A`*)「その村がまるごとなくなってた」

('A`*)「それでわかったんだよ、あれが本物だったんだなって」



701 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 01:02:40.88 発信元:221.30.151.167

やがて時計が12時の鐘を鳴らした。


('A`*)「あ、もうこんな時間かあ

    おいとましなきゃ、楽しかったよ、ありがとう」


ζ(゚ー゚*ζ「ばかねえ、もう相当飲んじゃったじゃん

       車でしょ?それこそ捕まるわよ」

('A`)


ζ(゚ー゚*ζ「泊まっていけばいいわ」


ドクオはヲッカの瓶でも飲み込んだかのような顔になった。
息がつまり、全身から一気に汗が吹き出た。


('A`;)「おおお、おおおおおおおおおお、俺、・・・俺」

ケイレンした鶏のような声をだした。



702 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 01:06:26.98 発信元:221.30.151.167

ドクオは視線をぐるぐる移動させた。でも、どうしてもベッドに目が行ってしまう。
酔ったおかげでまるで回らない頭で必死に考え、


('A`;)「おおお、俺、俺、じゃあ風呂場で寝るわ」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、今度はNorwegian Wood みたいね」


('A`;)「へ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ま、別にどこで寝たっていいけど、その前にお風呂入らせて」

デレーニャは脱衣所に言った。パタンとドアが閉まる音がして、水の音がぴちゃぴちゃ聞こえた。

ドクオはテーブルに顔を寄せて、酔いにまかせてブツブツとなにか唸っていた。


彼女がバスローブ姿で部屋に戻ってきた。

ドクオは入れ替わるように、ゴキブリのように風呂場に這っていった。
大きな音がして、しばらくすると、風呂場からいびきが聞こえ始めた。

ζ(゚ー゚*ζ「風邪引くわ・・・・」

♪I told her I didn't and crawled off to sleep in the bath

そうくちずさみながら、ドクオのもとに毛布を携えて行ってあげた。

 *********


703 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 01:09:13.45 発信元:221.30.151.167

朝になった。

ドクオはかなり早くに目が覚めた。
そーっと風呂場のドアを開けて耳を澄ませた。
まだデレーニャは寝ているようだった。

化粧前の女の顔を見てはいけない、そういうデリカシー(もしくは恐怖)が働いたので、
ドクオはまんじりともせず毛布にくるまって彼女が起きるのをまった。

しばらくすると、あくびと、タンスを開ける音がした。
やがて、レンジに火をかける音がした。

もういいだろう。


('A`)「おはようございます」


ζ(゚ー゚*ζ「ああ、おはよう、あんなとこで眠れた?」

('A`)「ああ、ばっちりさ」


ボリボリと頭をかきながらテーブルについた。



705 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 01:12:55.13 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「昨日の残りで悪いんだけど」


そういってパンと昨日のボルシチの残りを目の前に置いた。

('A`)「いただきます」

そう言って食べ始めた。彼女も自分の分をよそってテーブルについたが、
まず彼女は目を閉じて祈りはじめたので、ドクオはなんだか気まずくなった。


食べながら彼女は言う、

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ

     今日あたし非番なの。あんたも休みでしょ」

('A`)「うん」


ζ(゚ー゚*ζ「ロンドン観光しようか。ガイドしたげる」

('A`)「え・・・・そんな、どこか見たい場所なんて特に・・・・

    それに悪いし」



706 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/29(火) 01:14:42.75 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「いいの。どうせ暇なんだから
       じゃ決定。


       昼間観光して、でその後・・・・」


デレーニャは携帯で何か検索し始めた。今日市内で行われる催しを見ているらしかった。

その情報の一つに眼を止めた。

ζ(゚o ゜*ζ「あ」

そしてニヤッと笑って、言った。


ζ(゚ー^*ζ「面白い人に会えそうよ」

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最終更新:2012年01月31日 14:33