861 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/01(日) 21:56:45.61 発信元:111.89.140.2
シベリア花見祭り出展用
( ・∀・)幸せになるようです
862 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/01(日) 21:58:21.14 発信元:111.89.140.2
今の僕は所謂、ストーカーというやつだ。何せ夜の闇と塀に隠れて女性の後をつけているのだから。
ξ゚⊿゚)ξ …
透き通るような金髪の巻き髪、瑞々しくも白い肌、ドールを彷彿とさせる整った顔立ち。とても美人である。スラリとしたボディラインも魅力的だ。
__|∀・)コソーリ
彼女はツンと言う。シベリアには、勤め先であるブーン系小説シベリア図書館が出来た頃に移住したらしい。
__|∀・) (おや、誰かに電話するのか?)
残念ながら、会話内容はほとんど聞き取れない。すぐに切ったので、些末事であろうか。
__|∀・) (うーん、もどかしいねえ)
盗聴器が欲しいところだが、なにせ忙しそうに働くツンを発見したのは今日の昼であり、彼女の職場であるブーン系小説シベリア図書館はセキュリティが万全で、慎重に行動しなければならなかった。
特に、職員の根暗そうな男性、あいつは危険だ。注意深く観察していて、作業中腕を大きく伸ばした一瞬間、左の脇が微かに膨らんでいた。
__|∀・) (あの図書館、職員全員が武装して…ないか、流石に)
税務署の制式拳銃がある、どこぞの国じゃあるまいし。
__|∀・) (でもなー、シベリアだしなー)
863 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:00:51.64 発信元:111.89.140.2
一見すると平和だが、逃亡者や追放者がやって来やすいのも事実で、火種はそれなりに抱えているだろう。平和の為に備えていてもおかしくない。
__|∀・) (ここの警察は真面目らしいし、あまり目立つ事は慎むべきだな…お、家に着いたか)
アパートの一室で足を止めたツンは、鍵を取り出さずにインターホンを押した。
__|∀・) (…誰か来ているのか、誰かと一緒に暮らしているのか)
すぐに扉は、開けられた。出てきたのは。
( ^ω^) はいはーい
男、だった。
ξ゚⊿゚)ξ 寒いんだからもっと早く開けなさいよね
( ^ω^) ごめんお、さっき連絡貰ってから慌てて掃除してたお
ξ゚⊿゚)ξ …また散らかしてたの?
(;^ω^) いやあの散らかしてないけど大切な女性を迎え入れるにあたり部屋の清潔さにより磨きをかけようと…ごめんなさい
ξ゚⊿゚)ξ まったく、だらしがないんだから
__|∀・) …
間違いない、二人は恋仲だ。同棲しているのだろうか?たまたま遊びに来たとしても、ここまで脇目もふらず歩いていたのだから、何度も通っているのだろう。
864 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:03:34.89 発信元:111.89.140.2
__|∀・) (通い妻、てか?)
けしからん。マジ羨ましい。実にけしからん。
__|∀・) (まあ、収穫ではあるな)
シベリアに来て1日目にしては、得られた情報は大きい。職場、恋人の有無、警戒すべき人物。
__|∀・) (とりあえずは、こんなもんか)
さてとそれじゃあ、遅蒔きながら、記念カードを貰いにいくとしますかね。
(´・ω・`) やあ。ようこそ、シベリアへ。このウォッカはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。うん、『カード発行所』なんだ。よろしく。一期一会って言うけど、馴れ合うほどに仲良くなろうとは思っていない。
でも、この場所に来たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ぬくもり」みたいなものを感じてくれたと思う。殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って記念カードを贈るんだ。じゃあ、名前を聞こうか
( ・∀・) …おいショボン、僕の名前忘れたのか?
(´・ω・`) やだなあ、冗談だってば。君が来たときのために考えたのさ…久しぶりだね、モラ
( ・∀・) おひさ。お前さんがシベリアに移住して以来か
865 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:06:00.35 発信元:111.89.140.2
(´・ω・`) そうだね、まあ座りなよ。ウォッカのサービスは本当にあるから
音楽の流れる応接間のようなせせこましい事務所で、旧友との再会を果たした。対面のソファに腰をおろしたショボンから、グラスになみなみと注がれたウォッカを受け取る。
(´・ω・`) 来た人にウォッカを振る舞うのは知っているだろう、遠慮せずに飲むといい
( ・∀・) 飲めないなら?
(´・ω・`) 飲まなければ良い、要は歓迎のしるしだからね。所詮は安い銘柄だし
足を組みふんぞり返っている割には嫌味を感じさせないショボン、彼とは引っ越した先で知り合った。
僕は昔、シベリアに住んでいたのだが高校の半ばに移り、なじみの無い土地で鬱ぎがちだった僕に声をかけ、よく一緒に遊んでくれていたのがショボンである。しかし、数年前に今度はショボンがシベリアに移住して、それから会う事は無かった。
( ・∀・) それにしても、カード発行人になったと聞いた時は似合わないと思ったが、いざ目にすると随分馴染んでいるな
(´・ω・`) そうかい?嬉しいこと言ってくれるじゃないの
( ・∀・) シベリアも少し変わっていたから、何だか安心したよ
866 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:08:06.73 発信元:111.89.140.2
来るのは住んでいた時以来となるので、良くも悪くも新鮮である。
(´・ω・`) 本質的な部分は変わらないさ。変わりゆく事を是としない人も少なくないんだ、そうだろう?
( ・∀・) そうだね
会話の間を埋めるようにグラスのウォッカに口をつけると、ショボンが目を丸くした。
(´・ω・`) なんだ、飲めるのか
( ・∀・) まあね。前は医者に止められていたのだけれど、最近は我慢しなくても良くなったんだ
(´・ω・`) …そうか
( ・∀・) お前さんは飲めるんだろう?
(´・ω・`) シベリアに来たら、自然と飲めるようになったよ。ここの先輩が、時々奢ってくれたからね
( ・∀・) ほう、良い先輩だね。その人、今は?
(´・ω・`) 所長になって、今日は商工会議所に出向いてる
( ・∀・) ふうん…
しばし無言になり、繰り返し再生されている音楽に心を委ねていると、やがてショボンが立ち上がり、奥のデスクから何やら持ってきた。
(´・ω・`) ねえ、モラ
ショボンは手帳とペンを差し出す。
867 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:10:00.09 発信元:111.89.140.2
(´・ω・`) 君の名前を書いてくれるかい?偽名でも良いから、これに。カードにはなるべく直筆のサインを使っているんだ。嫌ならかまわない
( ・∀・) わかった
来訪した年月日と名前がびっしり書き込まれたページの、唯一残っていた空欄に記入して返すと、ショボンは礼を述べて満足げに頷いた。
( ・∀・) なあ、どうしてカード発行人になった
(´・ω・`) 趣味さ
( ・∀・) 趣味?
(´・ω・`) 言ったろ、カード発行所は一期一会だって
( ・∀・) ああ
(´・ω・`) カードは、シベリアに来た証だ。過去や目的に関係なく発効される、最低限の身分証明書であり足跡としての記録なんだ
( ・∀・) うん
(´・ω・`) 此処に来た人が、僕が贈るカードを受け取り出発し、以後どんな時間を過ごすのかと考えると…わくわくしないかい?
( ・∀・) うーん…言われてみれば
868 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:11:44.08 発信元:111.89.140.2
(´・ω・`) そうだろう…ま、ちょっとしたコネもあったしね
( ・∀・) お前さんらしいや
(´・ω・`) そうだろう、そうだろう。さて、少しだけ待っていてくれ。カードを作ってくる
( ・∀・) うん
奥へ引っ込んだショボンは、三分と待たせずに戻ってきた。
(´・ω・`) あらためて、ようこそシベリアへ。歓迎するよ、同志モララー
( ・∀・) ありがとう
手渡されたカードは、上品に繊細で控えめに美麗で、二つ折りになっている。
(´・ω・`) おっと、開けるなよ、此処を出てから開けてくれ。君宛ということで、特別仕様になっているんだ。恥ずかしい
( ・∀・) 恥ずかしいなら、なんだってそんな事を?
(´・ω・`) 薄情な君の性格からするに、もう二度と会えそうにないからね
( ・∀・) …良く分かっていらっしゃる
869 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:18:24.97 発信元:111.89.140.2
(´・ω・`) まったく、君って奴はいつもそうだ。大事なことをなかなか教えてくれない。今回だってそうさ、もっと早く教えてくれたなら僕は、チッポケなカードだけじゃなくもっと協力したし…もっと遊べたのに
( ・∀・) …ごめん
(´・ω・`) …君がシベリアに来て、何をするのか知らないけど。もっと僕を頼って欲しかったな
( ・∀・) …うん
腰をあげた。カードをしまい、ショボンに手を差し伸べる。
( ・∀・) 握手して別れようぜ
(´・ω・`) …君って奴は、相変わらずだ
外に出る直前、ショボンに訊ねる。
( ・∀・) そういえばショボン、お前さんに訊きたかった
(´・ω・`) うん?
870 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:18:52.11 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) ショボンは、幸せかい?
(´・ω・`) 僕は、幸せだよ。君はどうだい?
( ・∀・) これから幸せになる予定さ
(´・ω・`) そうか…モラ、僕からもひとつ訊くよ
( ・∀・) ああ
(´・ω・`) 幸せになることで、君は救われるのかな
( ・∀・) …わからない。だってそれは人それぞれで、自ら体験しないことには断言できない。そして僕は体験するためにシベリアへ来たんだ
(´・ω・`) …がんばってと言うべきか、悩むよ
871 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:20:32.76 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) 歓迎してくれたじゃないか、それで十分…ショボン、僕がここに来た目的のひとつはお前さんに歓迎してもらう事だったのさ
(´・ω・`) 本当かい?僕は、君の役に立てたのかい?
( ・∀・) 本当さ。じゃあ、元気でね
言って、ドアを開ける。
(´・ω・`) 忘れないよ、君のこと
閉まる直前、ショボンは言った。
早歩きでシベリア鉄道の駅に着き、まばらにしか乗客のいない列車にゆられながら、僕はカードを開いた。
そこには僕のフルネームと来た日付、そしてショボンの達筆な字で詩が記されている。僕も読んだことのある詩集から引用されたものだ。
872 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/01(日) 22:21:39.54 発信元:111.89.140.2
『不意に列車の連結部が音を出す
ゆっくりと景色は移ろい
やがて流線型に変わっていく
君がいたところはやがて地平の一個の点になるだろう
しかしいついかなるときでも
シベリアは君を応援する』
( ・∀・) …なんて
なんて、皮肉な選択なんだろう。そう思った。
884 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:16:16.75 発信元:111.89.140.2
ショボンは、僕の腹積もりを見抜いた上で、よりにもよってこの詩をえらびやがったのか?
まったく彼はチッポケなカードと言ったが、僕にとっては最高の贈り物である。
彼が、僕を理解してくれていた証なのだ。
宿泊先のシベリアホテルがある地区の駅に停まるまで、この詩を何度も読み返した。
( ・∀・) (会って良かった)
友人の厚意を実感し胸に熱いものがこみ上げてくる。
( ・∀・) (よし、僕は頑張るぞショボン)
決意を新たにした僕は、早速、明日はどうやってツンを観察しようかと思案し始める。
885 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:19:27.35 発信元:111.89.140.2
―――僕には、母親と、父親と、妹がいた。
父親は、母親が妹を身ごもった頃から少しずつ、少しずつおかしくなっていった。
今にして思えば、妹を運んできたコウノトリが僕とは別な事に嫉妬していたのだろう。
男だって、時として女並に嫉妬狂いするのだ。
おかしくなった父親が、妹と、ついでに母親を攻撃するようになった頃、僕は思春期に突入した中学生一年生で、母親と、ついでに小学生の妹を庇わなくてはならないという使命感に燃えていた。
すると父親は、どういう理屈か僕に裏切られたと考えるようになり、母親への矛先が僕に向かい出す。妹へは相変わらず。
そんなこんなで、ついでに庇っていた妹は家族の中で誰よりも僕になついた。本人に面と向かって言われたので自意識過剰ではない。
どこでもなるべく僕と一緒にいたがり、風呂だって布団だって一緒に入っていた。
母親は、兄妹とはいえ何だか怪しいな、と勘ぐっていて、実際そうだった。
これは経験則なのだが、たとえ児戯であっても、相性のよい相手がいた方が良い。
お互いの疵をさらけ出す暖かい風呂場、一緒に傷を癒す布団、膿みを絞りあうトイレなどの場所で、僕と妹は自然に相手を欲した。
886 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:22:16.97 発信元:111.89.140.2
母親はこの頃、僕らに無関心であることを強要されていた。
父親は、シベリアであっても容認されない行動に夢中だった。
妹は自分がいるから母親と父親の仲が悪いのだと思い込み、僕はそんな妹を利用して自尊心を満たしていた。
酷い家族だった―――
887 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:26:06.37 発信元:111.89.140.2
ホテルシベリアで朝を迎えるのは初めての事である。
窓を見れば雲は遙か彼方の地平線にどいており、清々しい碧空をレースで飾っているようだった。ローカルテレビを見ながら身支度を済ませ、気象観測所提供の天気予報とブリザード自警団発表の嵐情報をチェックした僕はテレビを消し、部屋の鍵も閉め朝食へ。
シベリアの雄大な自然と情緒的雰囲気に溢れる町並みをいっぺんに堪能できる大広間に用意された朝食はできたての、体の芯から暖まる物が中心で、勿論新鮮なフルーツや甘いデザートもあり、とても満足のいく献立だった。
実に良い朝を迎えることができた僕は部屋に戻って少し休んだあと、外出する。
向かう先は、まず花屋。
( ・∀・) すみません
川*` ゥ´) はーい…あれ、モララー?
888 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:30:29.64 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) ん?…ああ、なんだヒールか
川*` ゥ´) おいなんだよそのどうでもよさそうな反応
( ・∀・) 察しが良いな、その通りだ
川;` ゥ´) 相変わらずだなおい…
ホテルのそばにあった花屋で再会したのは、シベリアを出る前の友人である。
( ・∀・) まだシベリアにいるとは思わなかったよ
川*` ゥ´) ま、なんだかんだね…モララー、今日夜から時間ある?
( ・∀・) あるけど
川*` ゥ´) じゃあ話そうぜ色々と諸々とぐだぐだと
( ・∀・) いいけど
川*` ゥ´) じゃさ、午後3時にお店来てくんない?そんくらいなら弟と交代できるから
889 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:33:36.03 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) わかった。それでさ
川*` ゥ´) うん?
( ・∀・) 花ください
川*` ゥ´) あ、うん…何を?
( ・∀・) 白い百合。墓参り用のやつ
ここに立ち、困ることがひとつ。
小高い丘に設けられ、水と緑豊かな自然美重視の霊園で、新雪の如く白い墓石を前にして、僕は何を祈ればいいのだろうか。とりあえず花屋で購入した花束を置いてみる。
( ・∀・) …
恨み言か、感謝か。意味が無いのは分かっていても、何かを祈らなくてはと思う、思うのだが。
( ・∀・) …まあ、うん
わからん。仕方ないので、報告というか独り言をば。
( ・∀・) もしも死後の世界があるのなら、僕が逝くときくらい仲良くしててね
医者が正直に教えてくれました。僕、もう寿命です。
890 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:36:32.60 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) なんでまあ、別に今日なにか祈ってもしょうがないでしょ
そもそも命日ちがうしね。あっはっはっ。
( ・∀・) さてと
来た道を引き返しながら、無味無感動な墓参りだったことそのものに対して悲しくなった。
( ・∀・) (そうだ、図書館に行ったら感動できそうな本を読むフリしよっと)
バスに乗り、『レーニン通り』にあるツンの職場へと向かう。
奥の座席に腰掛け、窓から景色を眺めていると、行きはうたた寝していて気付かなかったのだが、霊園の最寄りからしばらくは飛び地のように建物があって、それがまるで島に見える。
平原はまだまだ雪が溶けておらず、白く煌めく雪は海原のようで、道路と建物を繋ぐ足跡や私道は橋のようだ。空の青と雪の白さが見事な対比を生み、落ち着いた色合いの建物と、ぽつりぽつり見かける歩行者。
車窓からの眺めをそのまま美術館に飾れそうだと思う。行きに見逃していたのを悔やんだ。
( ・∀・) (おや…)
道路の幅が広くなり、建物も増えるにつれ、廃墟が目立つようになってきた。今見えている数はおそらく幾らも無いのだろうが、それでも白いシャツについた染みのようで。
しかも、周囲の気を引こうとしたのかごちゃごちゃとした造りだったり、奇抜な色だったりと、明らかに浮いているのだ。
( ・∀・) (建てるだけ建てて、ほったらかしかよ)
そういえば、シベリアが抱えている社会問題のひとつに、ローカルルールを無視して行われる違法建築と捨て置かれる廃墟があったっけ。
891 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 20:46:02.10 発信元:111.89.140.2
≪えぇ、次はレーニン通り中央、レーニン通り中央ですっ。お降りの方は手近なブザーを押してくだぁ、さいっ≫
( ・∀・) (おっと、次のバス停だな)
降車を知らせるボタンに手を伸ばすも、指先が触れる直前にブザーが鳴った。視界の斜め上に、鳴らした男性をみとめ、息が詰まった。
('A`) …
吊革に掴まったなんとも覇気の無い地味な男で、細身なのだが、服からのぞく手や首、姿勢などからうかがえる彼の体つきは頑丈そうで背筋も伸びており、鍛え抜かれたアスリートを連想させた。
(;・∀・) (そりゃあ…彼も職員だから向かう先は一緒だしな)
そう、この男こそ、服の下に物騒な得物を忍ばせていたブーン系小説シベリア図書館の職員である。
確かに、シベリアで銃器を手に入れるのは難しくない。小火器とその実包程度なら専門店に売っている、しかし技術は得難い。
小型軽量の拳銃とはいえ普段着の下に違和感なく隠し持とうとすると、思いの外厄介だ。
ただ街中を歩いたりするならともかく、本を抱え忙しなく作業しながら、持っていることを隠すというのは素人がそう簡単にできることではないのだ。
892 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:01:53.53 発信元:111.89.140.2
(;・∀・) (体つきからして元警官か…或いは軍人…目を付けられたらツンの観察に支障をきたすな)
冷や汗をかくうちにバスが停車した。
彼は真っ先に(とは言っても降りるのは僕と彼だけだが)重そうな荷物を抱えながら降り。
('A`;) ッ!!
(;・∀・) あっ!!
893 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:03:40.81 発信元:111.89.140.2
ステーン!
\('A`)ノ ヒャー
へノ_ヘノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
派手にずっこけた。
(;・∀・) だ、だいじょうぶですか!?
('A`;) いてて…大丈夫です
彼は恥ずかしそうに頭を掻き掻き、慎重に立ち上がる。
(;・∀・) ああ、無理しないでください
なんやかんやと、重い荷物を一緒に持って図書館へ向かうことになった。
('A`) すんません、手伝ってもらっちゃって
( ・∀・) いえ、ついでなんで
話すうち、彼に対する印象は激変した。この男、妙に腰が低いのだ。
896 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:06:43.59 発信元:111.89.140.2
('A`) シベリアには観光で来たんすか?
( ・∀・) ええ、そうですよ
('A`) どうですか、実際に歩いて見て
( ・∀・) …来て良かったと、思えました
そう言うと彼は、穏やかに微笑んだ。
('A`) それは良かった。中には、つまらないなどと罵る人もいるんすよ
( ・∀・) へえ…
平原と違い雪が全く残っていない煉瓦敷きの道を歩いていると、広い敷地の中に建つ荘厳な図書館が見えた。
('A`) ようこそ、ブーン系小説シベリア図書館へ
職員用の出入り口から入る。普通は通ることのできないためか通路に足を踏み入れると探検でもしているかのように思えて、胸が高鳴る。遠くに聞こえる雑音が、放課後の学校の雰囲気を思い返させた。
('A`) おーい、だれかー
897 :>>895 ありがとう:2012/04/02(月) 21:07:46.12 発信元:111.89.140.2
(-@∀@) はーい…何があったんですか?
('A`) バス停で転んじまってさ、偶然居合わせたこの人が心配して荷物運び手伝ってくださったんだ
(-@∀@) なんと…わざわざすみません、ありがとうございます。さ、荷物を
( ・∀・) はいどうぞ。図書館に来るついでにお役に立ててよかったですよ
('A`) 本当にありがとうございました
ひと段落したので、早速ツンを捜しながら本を読むふりをすることに。
900 :>>898 ありがとう:2012/04/02(月) 21:12:25.73 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) (それなりに良い印象をあたえたろうから、少しはやりやすくなるかな)
先ほどの眼鏡をかけた司書さんから、どのジャンルがどこの本棚にあるのかを訊ね、どれを読もうかじっくりと選ぶ。と言うか、じっくり選ばざるをえない。
( ・∀・) (まさかこんなにあるなんて…もっと細かく絞り込んで訊ねるべきだったな)
目録を使えば便利なのだろうが、僕は直接手にとって選びたかった。
( ・∀・) お?
ふと、一冊の背表紙に目が停まった。即時手に取り読書用のスペースへ。
( ・∀・) (よっこいせ…どれどれ)
タイトルや表紙に惹かれたわけではない、ただ何となく手に取った本を開いた。
開いて、ページだけ適当にめくっていれば怪しまれないかと考えていたが、1ページ目でそんな無礼な考えは吹き飛んだ。
僕はどんどんのめり込んでいき、一字一句も見逃さないよう集中し、物語の奥深くへと沈み込んでいった。激しい戦闘シーンがあるわけでない、ただの夫婦の物語、なのに。
( ・∀・) …
901 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/02(月) 21:12:31.36 発信元:206.223.150.45
何かモララーいいやつな気がする
902 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:14:51.76 発信元:111.89.140.2
脇目もふらず一気に、読んでしまった。少し余韻を味わってから、席を離れ本を棚に戻してまた選ぶ。次に手に取ったのは若干コメディ調な家族の話。はじめの数ページは正直読みにくく、つまらなかった。しかし段々と読みやすくなり、ギャグもツボにハマり始める。
中盤では笑いを堪えるのに必死で、終盤に入り丁寧に描写された姉と弟の姉弟愛に至っては、不覚にも涙がこぼれた。滲む視界のまま読み終え、本を閉じると、すぐ隣に立っていた男に話しかけられた。
( ^ω^) ティッシュをどうぞ
( ;∀;) え、あ、すみません…
涙をふき鼻をかんで、落ち着きを取り戻してからティッシュをくれた笑顔の男性が胸に付けている身分証に気付く。
( ・∀・) …館長さんですか?
( ^ω^) はい。当館の館長で、ブーンといいますお
…まさか、ツンの恋人が館長とは予想外だ。
( ・∀・) どうも…
( ^ω^) 本日は、ありがとうございました。当館を代表し、心から御礼申し上げます
嫌味のひとつでも言ってやろうかと考えていたら深々と御辞儀をされた。
(;・∀・) や、そんな、顔を上げてください…大したことしてませんし
903 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:16:53.49 発信元:111.89.140.2
( ^ω^) そんなことはありません。ろくに御礼もできませんが本日は当館の蔵書を、こころゆくまでお楽しみください…とはいえ、私自身が書いた物はないんですけども
柔和な笑みと優しい声質に、なんだか毒気を抜かれてしまった。
( ・∀・) そうなんですか?僕はてっきり、職員のみなさんも書いているものだと…
( ^ω^) 書いたのは今のところ、司書であるアサピーという者だけですお
( ・∀・) ああ、あの方が…アサピーさんって、何冊も書いているんですか?
( ^ω^) いえ、ひとつだけです
ふと、館長の目が遠くを見、ついで懐かしむような声になる。
( ^ω^) 彼は、ある日に突然書きはじめ、一冊を完成させてからはそれきりです。しかし彼は、あの作品を書いてからというもの少し明るくなったんですお
( ・∀・) へえ…なにかあったのでしょうか
( ^ω^) 私も不思議に思い、訊ねてみましたが教えてくれませんでした
( ・∀・) なんだか、ドラマがありそうですね
( ^ω^) …此処に来たあなたが最初に手にとって、食い入るようにお読みになっていた作品ですが
905 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:25:58.45 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) (そっから見てたのかよ…なんだかキモいな…)
( ^ω^) とても幸せな夫婦の話でしたお?
( ・∀・) はい
( ^ω^) でもあれを書いたアサピー自身の両親は、色々とあったらしいんですお
( ・∀・) え…
( ^ω^) 幸せな物語を紡ぎ出す人が、幸せとは限りません、その逆も。物語は時として、作者自身を写す鏡なんですお
( ・∀・) あの話は、アサピーさんの理想だということですか?
( ^ω^) ええ。もっとも、全てがそうとは言いません、作品によってはそうなるって話ですお
( ・∀・) なるほど
ここで、いったん話題が尽きたが館長も暇なのか、まだ話したそうにしている。
906 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:26:57.76 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) …そういえば
( ^ω^) はいはい
( ・∀・) さきほど、今のところ書いたのはアサピーさんだけだとおっしゃいましたね
( ^ω^) はい
( ・∀・) と言うことは、いずれ書く予定の方がいらっしゃるのですか?
( ^ω^) ええ、僕が今、書いてる最中ですお
( ・∀・) どんな話ですか、ひょっとしてギャグ系?
(;^ω^) いやあ…ギャグ系は書けないので、恋愛系ですお
( ・∀・) それも…貴方を写す鏡なんですか?
907 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 21:28:54.84 発信元:111.89.140.2
( ^ω^) そうですお
館長は、力強く肯いた。
( ^ω^) 僕、こう見えて恋人がいるんですが
( ・∀・) それは…うらやましいです、とても
( ^ω^) でも、僕は彼女の過去をあまり知らないんですお。それが時折口惜しくなるし、それ以上に彼女は、ある年齢から昔の記憶が思い出せ無いんですお。医者によると何か強い精神的ショックのせいだろうって
( ・∀・) そう…なんですか
( ^ω^)僕がなにより悔しいのは、そんな出来事から彼女を守れなかった事なんだお。だから僕は、好きな子といつもいつまでも一緒にいて、好きな子を全力で守る…そういう話を書く予定だお
( ・∀・) …御気持ちは、良く解ります
( ^ω^) ありがとうございますお
912 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:12:24.88 発信元:111.89.140.2
( ・∀・) でも、だからこそ、訊ねます。訊ねたくて、しかたがない
( ^ω^) はい
( ・∀・) たとえば、貴方の恋人が過去に体を売っていたり、子を殺めていたりしても変わらず接することができますか?
館長は正直に顔をしかめ、僕を睨む。その表情に、修羅を見た。だがそれは一瞬間のことであり、口を開いた時には既に先程の笑顔であった。
( ^ω^) 何度も、考えた事です。僕は割と嫉妬深くて、彼女が昔どこぞの誰かに抱かれていたりしたらと考えると、夜も眠れないお…ですがそれでも、そんな過去の彼女も僕の好きな彼女です
( ^ω^) 僕は彼女の過去を知らない分、これからの彼女が枯れるように老いて骨になるのを、見届けたい
( ・∀・) …
913 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:13:14.78 発信元:111.89.140.2
( ^ω^) 彼女にハッピーエンドを迎えて貰うために、僕のくだらない嫉妬心は墓まで持って行くつもりですお
( ・∀・) …立派、ですよ
( ^ω^) そんな事はありませんお
( ・∀・) そうですかね
( ^ω^) ですお。いやーなんだか恥ずかし…
ξ#゚⊿゚)ξ ちょっと館長!
(;・∀・) !?
(;^ω^) な、なんだお?
ξ#゚⊿゚)ξ また仕事さぼってるんですか、祭りも近いんですからしっかり働いてください
(;^ω^) おーん、ごめんだお
914 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:17:28.92 発信元:111.89.140.2
ξ#゚⊿゚)ξ 暇なら倉庫の掃除くらい手伝ってください
(;^ω^) マジすみません。あとツン、あまり騒ぐと…
ξ゚⊿゚)ξ なに?
(;・∀・) …
ξ゚⊿゚)ξ あら…
ツンと、目があった。あってしまった。
ξ;゚⊿゚)ξ すみません、大変失礼いたしました
(;・∀・) いえ…
ξ゚⊿゚)ξ 当館は初めてですか?
(;・∀・) はい
ξ^⊿^)ξ ゆっくりしていってくださいね
ツンは、まぶしい笑顔を僕に向けてくれた。けれどもそれは、明らかに他人向けの事務的なもので。
( ^ω^) そうだお、ツン、アサピーが作ったあれ、まだ有ったっけ
915 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:19:59.26 発信元:111.89.140.2
ξ゚⊿゚)ξ あれって、栞の事?
( ^ω^) それ
( ・∀・) 栞?
( ^ω^) シベリアでは品種改良された桜が咲くんですけど、当館の司書がその桜のうち早咲きしたものを押し花にして、栞にしたんですお。よかったらお持ち下さい
( ・∀・) ありがとうございます
ξ゚⊿゚)ξ あれ、素敵よね
( ^ω^) ツンの方が素敵だお
ξ;゚⊿゚)ξ なっ…
( *^ω^) ニヤニヤ
ξ*゚ー゚)ξ もう、バカ
( ・∀・) …
カウンターへと歩き出したツンが、館長に向けた笑顔を僕は良く知っている。
917 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:24:41.30 発信元:111.89.140.2
なにせ、その笑顔はかつて僕に向けられていた物だから。
(;^ω^) おっ!どうしました?
何かが弾けて、駆け出した。
館長が僕を呼び止める声も、周囲の視線も振り切って、とにかく走った。
918 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:26:44.12 発信元:111.89.140.2
―――おにぃ、にいに、あにぃ。
現実で妹からこんな風に呼ばれる兄は、非常に少ない、方言は別として。
にいちゃん、おにいちゃんと呼ばれる兄が一番多いのではないだろうか。
にいさん、は上品な家庭の兄ならば呼ばれることもあるだろう。あにき、と呼ばれる兄も少なくないはずだ。
下の名前で呼び捨てにされる兄は幸いで世の中、呼び捨てにすらされない兄もいる。
名前で呼ばれもせず用がある時は、「おい」とか「ねえ」とか「ちょっと」とかが用いられるのだ。
さらに言うと、何をするにも無言で、互いのメールアドレスすらも交換しない兄すらいる。
そんな中で、僕はとても恵まれていたと思う。
動機が何であれ、妹から、こっそり「パパ」と呼ばれていたのだから。
そう呼ばれる事を合図に、僕は妹を慰めるふりして弄んだ。
異常だとは思っていた。
でも現実はより切実で人の心は脆い。
下手に粘りをみせると歪むし、何も感じなくなれば最早まともでない。
妹は粘った方で、父親に責められた夜はいつも僕に抱かれながら泣いていた、声を懸命に押し殺して。
僕はそんな妹をたまらなく想った―――
921 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:37:27.66 発信元:111.89.140.2
走って、逃げ出したかった。振り切りたかった。僕自身の奥底から溢れ出す、後ろ向きな三つの奔流。
( #・∀・) うがあああっ!
ひとつ、嫉妬心。
いくら望んでも二度と手に入らない、ツンという一人の女性。昔僕が感じていた幸せも温もりも、今では別の男が独占しているという現実。ツンの、僕しか知らなかった部分を館長も知ったはずだ。
ひとつ、罪悪感。
あんなにも幸せそうなツンの過去が僕の手垢だらけである事を申し訳無く思う。深い愛情を堂々と語った館長に謝りたかったけれど、それはできない。
僕はツンを欲望のまま汚しました、体中撫で回し舐めまくりました。ツンの顔に、口に、手に、腹に、腰に、股に、足に、僕のアレをアレしました。
幼く無垢なツンを弄びました。そんな暴露を謝罪と共にされたところでマイナスしかない。ツンだって、折角忘れる事ができたのにまた思い出してしまうだろう。
ひとつ、絶望。
僕は今までどうしても、都合の良い希望のひとかけらを捨てきれなかった。
ツンが辛い事だけを忘れたまま、僕の事を思い出してはくれやしないかと、頭の片隅で浅ましく奇跡を願っていた。
922 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:40:03.54 発信元:111.89.140.2
僕自身がツンの記憶を呼び覚ます引き金になることを恐れ、妄想するだけで会う事はしなかったけれど、ひょっとしたらと思い続けていて。
実際ツンが僕と会い何も思い出さなかったことで、繰り返し妄想したような都合の良い思い出し方なんて絶対にしないのだと、鉛のような重い絶望にのし掛かられたのだ。
僕は自分で思っていたよりも遙かに、ツンに覚えていて貰いたかったようだ。妙だな、ツンが過去を思い出さないことは、僕には喜ばしいはずなのに。
(; ∀ ) くそったれえええ!!
人気の無い市街地を当て所なく走る。時々擦れ違う通行人に迷惑がられようがとにかく走りながら、想像した。
僕とツンが今でも一緒にいられたのなら、もしも幸せな家庭を築けたら。
923 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:43:09.79 発信元:111.89.140.2
僕とツンの両親は鴛鴦夫婦として健在で、ツンも僕も怯えることなく生活できたらそれは凄く素敵だけれどでもそれだと、ツンが僕に依存する理由がないから、兄妹でありながら男女の仲に成ることもなかっただろう。
でも、それはそれで理想的じゃないか。
でもでも、けれどもなんという事か。僕にはタイムマシンが無いのだ、残念なことに超能力も何も無いんだ。
(; ∀ ) ちくしょう…ドラえもーん
高いフェンスに、全身でタックルして無理矢理停止、そのまま冷え切ったアスファルトにへたり込んで背中をフェンスに預け泣きじゃくる。延々、泣き続けた。
( ;∀;) ひぐっ…えぐっ…
どれだけの時間が経ったのだろう。
息苦しさに顎を上げれば空はやっぱりどこまでも蒼色で、ぐるり後ろをみやればフェンス越しに淡いピンク色の花を咲かせる桜があった。もしやと思い左右を捜すと、看板にイベント会場の名前有り。
( ・∀・) …お花見祭りが近いのか
看板の予定表によると、4月始めから大々的にやるようだ。
( ・∀・) もう幾日で満開か
925 :( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/02(月) 22:47:17.08 発信元:111.89.140.2
会場内は祭事期間外の雪掻きをしなかった為か平原と同じく雪が残っていて、新緑と小さな花々が雪の隙間から顔を出し、桜の木は少し花が開いていた。
( ・∀・) はあ…そっか、今年も咲いたか
残念だが僕は素直に喜べない。落ち着いた以上、此処は僕にとってまぶしすぎる。
( ・∀・) そういや何時だ?
腕時計は2時を指していた。不意に強い風が吹き始め、寒さに身を強ばらせる。泣き疲れて落ち着いたら、空腹と寒さが一気に襲ってきた。
( ・∀・) (本読んでたせいで昼飯忘れてたな)ホテル戻るか…ん?
立ち上がろうとして、気付く。
(;・∀・) これ、図書館の本じゃねーか
どうやら僕は本を持ってここまで来たらしい。…ねーよ、どんだけマヌケなんだよ僕。
( ・∀・) (まいったな、図書館寄ってからじゃ、約束に間に合わない)
( ・∀・) …図書館はけっこう遅くまでやってたし、ヒールと会ってからでも良いか
本に汚れや損傷が無いかを何度も確かめながら、僕は歩き出す。
最終更新:2012年04月05日 22:54