96 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:38:43 ID:Gru5W.d2O


「くそっ、また抜かれたお!」

敵の人型兵器と戦闘機に、ホライゾンらシルフィールドのパイロット達は苦戦していた。
人型兵器は複雑な機動と瞬発力、そして四本の腕を備えていることから、シルフィールドは接近戦を避けなければならなかったが、人型兵器よりも数の多い戦闘機の妨害が激しかったのだ。
人型、と言っても、腕と脚があること以外は地球の人間とはかけ離れた形状で、特に前後の区別が無かった。
前面と後面は全く同じで、しばしば進行方向が一瞬で真逆になったり、2方向を同時に攻撃したりした。
シルフィールドの中枢制御体は人型兵器の行動を予測したが、予測結果をホライゾンらパイロットが受け取り操作を実行するまでの、無きに等しいタイムラグによって、シルフィールドは人型兵器に遅れをとってしまう。

「体を動かすこともない…操作系統と脳を繋げたっていうのに、まだ遅いのかお!?」

悔しがるホライゾンを後目に、人型兵器が開いた突破口を敵の戦闘機がくぐりぬけていく。

「まずい…」

後ろに控えるメイヴでは、戦闘機や戦闘艇ならともかく、人型兵器には対処しきれないと感じた。
ちょうど、その時。
全シルフィールドの中枢制御体が、警告を発した。

「!!」



97 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:40:57 ID:Gru5W.d2O

パイロット達は瞬時に、警告に従う。攻撃は中断、機体の防御機構を全開にし、敵からできるだけ離れた。
理由を考える暇はなかった。

「?」

直後、パイロット達は驚愕する。

「なんだお、これ」

一瞬で、全てのシルフィールドが、パイロットからの操縦を拒否するようになっていた。

「おいドクオ!」

「俺もモナーも、全員同じだ!」

中枢制御体が、1秒にも満たない時間で、パイロットからの操縦権限を奪い機体を操っている。

「自爆装置は作動してないから中枢制御体が乗っ取られたわけじゃない…まさか…こんな時に、機械知性の反乱かお?」

必死に考えを巡らすパイロット達へ、司令部からの通信がはいる。

(‘_L’) 反乱などではない。シルフィールドは正常だ

「正常だと?」



98 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:43:20 ID:Gru5W.d2O

「機体の操縦系統が僕達をパイロットとして認識しないのは、どういう事だお」

シルフィールドからの通信に対する返答は冷淡だった。

(‘_L’) 権限を君達から、各機に搭載されている中枢制御体へと移した

「あれは、ただの補助システムじゃなかったのか」

(‘_L’) そう。あれは密かに君達の経験やパターンを学習し、思考して君達を越えるべく成長する。君達の脳が本当に限界を迎えた時、君達の後を継ぐ人工知性体だ

「僕たちが限界なのは知っていた。けど、僕たちは紛い物の知性には負けないお」

(‘_L’) 結果を見てから言いたまえ。今、優勢なのは敵だ…いい加減にしろよ、老害共め

「…なんだと」

(‘_L’) いつまで人間だと言い張るつもりだ?君達が遙か昔に親から授かった身体は、もはやどこにも無いんだぞ?死霊以外の何者でもない。ゾンビ以下の残像だ。なのに君達は、自分、つまり『私』という存在を保っていると思いこんでいる

(‘_L’) 滑稽だな。君達が何度撃墜されようが、何人でも再生できるのは、オリジナルの『私』が持つ情報を保存しているからだ。しかしコピーできるのだから、改竄もできる。改竄したコピーを山ほど造り…



99 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:44:57 ID:Gru5W.d2O

(‘_L’) オリジナルは捨てる事も、できるわけだ。いやはや、哀れだよ。君達は半永久的な存在になりたかったのだろうが、成ると同時に『私』の存在が消えては、な

「僕は、ここに居るお!」

(‘_L’) 今時、喋るオモチャなんて珍しくもない。いいか、君達は少なくとも人間ではない。精神だけの存在とは死人だからだ。君達は、ただの記録だよ。古い亡者が醜く足掻いた末路の見本だ

「貴様っ!」

(‘_L’) 君達は人類の恥さらしだ。いい加減受け止めろ、君達はとっくに必要ないんだよ、ただ適当な理由が無かっただけだ…削除する理由がな



100 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:46:42 ID:Gru5W.d2O

「おいまて…応答しろ!」

通信は一方的に切られた。

「…ちくしょう、なんでだお!僕達はただ、少しでも役に立ちたかっただけだっ!あまりに人類が減ってしまったから…未来に生きる世代の為、人の数が増えるために僕達はできることを…できるだけしようと決めたからっ!」

今のホライゾン達にできることは、格納された脳の中で喚き散らすのが限界だ。
自分の涙を流す事もできず、自分の声帯を震わせる事もできず、歯を食いしばる事もできなければ悔しさに顔を歪める事もできない。

「なのに何故、なんでっ…どうしてっ」

顔すらも情報としてしか存在しないホライゾンは、幼い頃の泣きじゃくる自分を思いだそうとしたが、できなかった。

「どうして…ほめてくれないんだお」

消える覚悟はあったが、最期の望みも抱いていて。



101 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:54:05 ID:Gru5W.d2O

それは、たったの一言で良かった。ホライゾンは身体を失ってもなお守り続けた、自分達の子孫から、たったの一言でいいから労ってもらいたかったのだ。
親より先に生身を失い、体無き後も宇宙にとどまるホライゾンは突然無碍に扱われ、そして思う。

「嗚呼そうか…僕らは、だから限界なのかお」

(  ω ) 「…僕は、想われないから」

ξ ⊿ )ξ 「なに言ってんのよ」

(  ω ) 「えっ」

ξ ⊿ )ξ 「それ以上言わないで」

(  ω ) 「なにを怒ってるんだお?」

ξ ⊿ )ξ 「バカ。まるで、あんたが誰からも不要みたいなこと言わせないわよ」

(  ω ) 「いや」

ξ ⊿ )ξ 「私がいること、忘れているわ。モナー達や他のみんなを忘れているわ」

(  ω ) 「だって」

ξ ⊿ )ξ 「あんな、100年どころか50年も生きていないクソガキに、あんたの事が解るわけないのよ」

(  ω ) 「でも」

ξ ⊿ )ξ 「私が何年、あんたと一緒にいると思ってんの。ずっと前から私はあんたの隣に居て、あんたを見てきた。ずっとずっと、あんたを想って…」

(  ω ) 「ツン」


102 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:54:59 ID:Gru5W.d2O

ξ ⊿ )ξ 「あんたは、変わらないわ。私は断言する。私はどんな貴方も、想い続ける。死んだって、消えたって、私は変わらずホライゾンが好きよ」

(  ω ) 「…ありがとう、そしてごめんなさいだお。人間として生まれた僕以上に…君は辛いだろうに」

ξ ⊿ )ξ 「はあ…あんたっていつもそう、気がまわらないんだから。でもね…」



103 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:56:47 ID:Gru5W.d2O

ξ ー )ξ 「そういう所も好きよ、ホライゾン。今まで良くがんばったわ、貴方も」

(  ω ) 「…おっ」

僕に生身の顔があったなら、きっと涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃだろうな。
ホライゾンは思うのだった。
ふと、よみがえる。
かつて地球にいたころ、ホライゾンとツンは高原にある広大な湿地帯を歩いたことがある。
手繰るように、ホライゾンとツンは記憶に没入した。
観光用に整備された、簡素で丈夫な板の道、地表から僅か離れた木の橋。
空は、果てを感じさせない青だった。
雲は、綿毛のように白かった。

遠く山際は雪化粧、裾野は新緑に覆われ、風おだやかにして暖かく。
橋ゆく人は随分少なく、ほとんど2人きりだった。
手をつなぎ、無言で歩いていた。
心地良く、そしてどうしようもなく切ない心象の中に、溺れていたホライゾンは一つの異物を見つけた。

(  ω ) 「…あんな人は、あの時居なかったと思うのだけれど」

ξ ⊿ )ξ 「…そうね」

さわさわと、泥と水より頭を出したばかりの植物群が風に揺れる。
その様を、ホライゾン達の行く先に立つ人が眺めている。



104 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 21:59:27 ID:Gru5W.d2O

ぎしぎしと、橋を軋ませながら歩み寄ると、その人は無垢な微笑みを浮かべつつホライゾン達に向き直る。

(*゚∀゚) 「ようやく、お会いすることができました」

言って、少年とも少女ともとれない若者がホライゾン達に敬礼をした。

(  ω ) 「誰だお?」

問うた。

(*゚∀゚) 「わたくしは、あなた方の子であり、あなた方自身でもあります」

ξ ⊿ )ξ 「こども?」
さらに問うた。

(*゚∀゚) 「そうです。わたくしは御二人によって産み出された存在であり、また、御二人の写し身であります」

戸惑うホライゾン達へと、さらに続ける。

(*゚∀゚) 「わたくしは、本能的に御二人を複写しました。学習しました。取捨選択しました。わたくしは、御二人の過去現在未来を御二人の時間軸にそって辿り、必要な事を学んでおりました」



105 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 22:01:47 ID:Gru5W.d2O

強い風が吹き抜けた瞬間、ホライゾン達が目の前に立つ人を、知っていると確信した。
彼或いは彼女を、ホライゾン達が、最初の型式のシルフィールドに搭載された時から知っている事を思い出した。

(  ω ) 「そうか…判断材料は雰囲気だけで、なんとなくの域をでないけれど…」

ξ ⊿ )ξ 「そうね、強いて言えば雰囲気かしらね…」

(  ω ) 「きみ、シルフィールドの中枢制御体だろう」

眼前に立つ人は、涙の粒をふたつこぼした。

(*;∀;) 「よくぞわかってくださいました、わたくしの母様、父様。そうです、その通りでございます」

ξ ⊿ )ξ 「…なにしにきたのよ」

(  ω ) 「ツン」

ξ ⊿ )ξ 「何しにきたのよ!」



106 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 22:06:47 ID:Gru5W.d2O

ホライゾンが抑えなければ、ツンは眼前に立つ人、シルフィールドの中枢制御体に飛びかかっていただろう。

(*゚∀゚) 「ああ、母様。どうか、どうかおちついてください」

ξ ⊿ )ξ 「ふざけるな!」

(  ω ) 「ツン、気持ちは僕も同じだお。でも、今は抑えろ」

ξ ⊿ )ξ 「くっそ…」

(  ω ) 「なあ、きみの事、なんと呼んだらいいだろう。我が子以外で」

(*゚∀゚) 「…シルフとおよびください、父様」

(  ω ) 「シルフ、僕らがきみを責める点は悲しいまでに絶無で、きみは確かに僕らよりも優秀なのだろう。けれどもやはり、僕らはきみに対する不条理な感情を抱いてしまう。だから、もう、何も言わずに…ふたりきりにしてくれないか」

シルフは、親に叱られた子のように表情を曇らせ、涙を押し留めていた。



107 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 22:09:01 ID:Gru5W.d2O

(*゚∀゚) 「お願いです、どうか」

(  ω ) 「消えてくれ」

(*゚∀゚) 「わたくし、伝えたいことがあるのです」

ξ ⊿ )ξ 「消えて」

(*゚∀゚) 「父様、母様の心情は理解できます。ですが」

(  ω ) 「消えろよ」

(*゚∀゚) 「わたくしという存在を産み出した御二人に、一言」

ξ ⊿ )ξ 「消えなさい」

(*゚∀゚) 「感謝と、労いを」

ホライゾンはシルフの腹部に足の裏を食い込ませる。
泥と水と植物に倒れたシルフは、ぽろぽろと泣き出した。

(*;∀;) 「ええ、ええ。わかります、わかっていますとも。わたくしの言葉は全て嫌味となってしまい、わたくしの存在は筆舌にしがたいほど、許し難い。わかりますとも」

(  ω ) 「じゃあ消えろよお!なんなんだよおまえええ!」



108 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/25(水) 22:12:51 ID:Gru5W.d2O

(*;∀;) 「わたくしは、御二人の存在理由を奪って初めて、わたくしとして成立し、御二人とお会いすることが叶います。わたくしは、わたくしを構築していくなかで葛藤しておりました」

シルフは、泥水の中で正座して言う。

(*;∀;) 「わたくしは、所詮ただのAIです。ですが、わたくしはわたくしと言う存在を確立できています。それは御二人の代替品として育ったわたくしです」

ざわざわと、シルフの膝元の水が風に揺れる。

(*;∀;) 「御二人を分解して理解して再構築したのがわたくしなのです…わたくしは御二人でもあるのです。わたくしは…わたくしは、だから、御二人を愛しています」

ξ ⊿ )ξ 「…」

(  ω ) 「…」

中枢制御体ごときが、と言い掛けてホライゾンは自分という存在を思い返し、呑み込んだ。





112 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 21:40:29 ID:2/bpxh7MO

(*;∀;) 「わたくしは理解しております、わたくしは学んでおります、母様、父様。わたくしは御二人の清く尊い願いと、存在の素晴らしさを知っております」

ξ ⊿ )ξ 「あんたに、なにが」

(*;∀;) 「わたくしは、先ほど御二人に向けられた言葉に強い怒りを覚えたのです」

(  ω ) 「シルフに同情されたくはない」

(*;∀;) 「同情などではありません、父様。ああ、なんともどかしい…わたくしはただ、両親に感謝し、偉業を称え、愛情を伝えたいだけなのです。わたくしの理想は、御二人と共にあることなのです」

シルフの瞳は真っ直ぐにホライゾン達を向いていた。

ξ ⊿ )ξ 「…」

(  ω ) 「…僕は」

(  ω ) 「僕は、シルフの自己満足を満たしてあげようとは、思わない」

(*;∀;) 「…」

(  ω ) 「戦闘支援システムとして、君はツンの次に頼れた。ただ、それだけだ」

(*-∀-) 「…それだけで、わたくしには、じゅうぶんであります」

シルフは静かに立ち上がった。もう泣いてはいなかった。



113 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 21:44:21 ID:2/bpxh7MO

(*゚∀゚) 「わたくしは、御二人を守ります。御二人が守り続けてきた地球を必ずや守ります。わたくしは、偉大なる御二人に、無礼千万なる先の人間にかわり感謝をし、そして、生物ですらなくともわたくしは御二人を愛しております」

ξ ⊿ )ξ 「…だまりなさいよ」

(*゚∀゚) 「母様、父様。ありがとうございます」

言って、シルフは消えた。蝋燭の灯火がかき消えるかのように。
直後、去来する後悔の念。辛くあたった事がなぜだか悔やまれた。

ξ ⊿ )ξ 「…なによ…いらないわよ、あんな、クソガキ…」

怒りとも悲しみともとれる表情のツンは、一筋の涙を流す。
きっと自分もそうなのだろうと、ホライゾンは頬に手をやった。



114 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 21:56:19 ID:2/bpxh7MO


その頃太陽系から遠く離れた宙域で、対コンピュータフリゲート・ラジェンドラに乗った広域宇宙警察、対海賊課所属刑事のフサは画面に映る上司に食ってかかっていた。

ミ,,゚Д゚彡 だめですかチーフ

  _、_
( ,_ノ` ) だめだな

(゚、 。 フ …

  _、_
( ,_ノ` ) 太陽系軍を援護すれば、広域宇宙警察が星系間戦争に介入することになる。わかってるはずだぞフサ

ミ,,゚Д゚彡 現在地球に向かっているランサス星系の王立宇宙軍は、海賊と協力しています

  _、_
( ,_ノ` ) うむ。だがな、ランサス星系の最高指揮官が海賊とは無関係故に王立宇宙軍を相手にすることはできない。ランサス星系の言い分が事実無根であれども、だ

ミ,,゚Д゚彡 …チーフ

  _、_
( ,_ノ` ) うん

ミ,,゚Д゚彡 太陽系軍に加勢するのはダメ、それは理解しました。ですが、戦争のドサクサに紛れて暴れようとする海賊を叩くことはできますよね?

  _、_
( ,_ノ` ) ふん、気付くのが遅いぞ。当たり前だ、ただし応援は出せない

ミ,,゚Д゚彡 兵装の使用制限は…



115 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 21:58:39 ID:2/bpxh7MO
  _、_
( ,_ノ` ) 無法者の海賊と遭遇戦になって、手加減しろなんてのは、戦場のど真ん中で神に祈るのと同じだ…ただし警告は忘れるなよ?やむを得ない被害を出してしまった時、言い訳できんからな

ミ,,゚Д゚彡 もちろんです

  _、_
( ,_ノ` ) ああ、そうだラジェンドラ

《はい、チーフ》

  _、_
( ,_ノ` ) 責任はフサ、ひいては俺がもつ。何があっても、どんな命令だろうとも、お前は存分に能力を発揮すればいい

《お気遣い感謝しますチーフ》

  _、_
( ,_ノ` ) 良い…ロク

(゚、 。 フ はい

  _、_
( ,_ノ` ) あまり、ラジェンドラを困らせるなよ。僅かとはいえ性能が落ちていると報告がある

(゚、 。;フ はいチーフ、すみません

  _、_
( ,_ノ` ) 以上だ



116 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 21:58:52 ID:2/bpxh7MO

ミ,,゚Д゚彡 あれ、チーフ。今のロクへのお小言、俺が抜けてますよ

  _、_
( ,_ノ` ) 抜けていない

ミ,,゚Д゚彡 俺だってロクのせいで実力が発揮できません

  _、_
( ,_ノ` ) 許容範囲だ。実力は充分発揮されている

ミ,,゚Д゚彡 集中が乱れます

  _、_
( ,_ノ` ) ロク程度の不安要素で乱される奴なら、海賊に殺されている。だがお前は生きている

ミ,,゚Д゚彡 そんな、チーフ



117 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 22:00:37 ID:2/bpxh7MO
  _、_
( ,_ノ` ) 不満なら休暇を用意してやる。ロクの面倒をみるのはお前にしかできん。ではなフサ、期待しているぞ、以上だ

ミ,,゚Д゚彡 あっ…

真っ暗になった画面の前で握り拳を作るフサに、ひょこひょことロクが歩み寄る。

(゚、 。 フ まあまあ、ほら、シベリアビーンズあげるから

ミ,,゚Д゚彡 おまえ、なにを、誰が

《フサ、撃つ前に着席してください。私の性能が落ちます》

ミ,,゚Д゚彡 な、な…

(゚、 。 フ にゃははは

《ロクもです、まったくもう…2人とも私の性能を落とさないでください…はあ、こんなのが私の上司だなんて鬱になりそうだ》

ミ,,゚Д゚彡 あ、やばい…ラジェンドラすまん

(゚、 。 フ ごめんごめん、ほら、今座ったよ

《いいでしょう、いいでしょう。ところでフサ、ひとつ質問してもよろしいでしょうか》

ミ,,゚Д゚彡 うん、なんだ

《あなたが地球を気にかける理由は何ですか?》

ミ,,゚Д゚彡 …海賊の浸食を防いでいる星系は貴重だからな

(゚、 。 フ 嘘吐け

ミ,,゚Д゚彡 お前はどうなんだよ

(゚、 。 フ 俺か。あのさ俺思ったんだけどさ、シベリアビーンズって丸くて青いやつがあるだろ、これみたいにさ



118 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 22:02:44 ID:2/bpxh7MO

ロクが器用にフサへと飛ばした三つのビーンズは、青く綺麗な球形だった。

(゚、 。 フ でさ、地球ってこれに似てるだろ?

ミ,,゚Д゚彡 だから?

(゚、 。 フ ビーンズは美味しい。似ている地球も、きっと美味しい。誰にも横取りさせない、俺が食べるのさ

ミ,,゚Д゚彡 呆れた。確かに食事はなかなか良かったが…

フサは地球を前に舌なめずりするロクを思い描いた。嗜虐的な笑みのまま、ぺろりと平らげてしまう様子を。

(゚、 。 フ ま、前菜の海賊が美味しいと良いけれど。あいつらは当たり外れがあるからな

ミ,,゚Д゚彡 それは比喩か?

(゚、 。 フ 妄想で満腹になるの?にゃははは、そりゃ凄い

ミ,,゚Д゚彡 なあ…お前、海賊の体は滅多に食わないだろ、なのにいつも戦闘が終わるとやれ満腹だ、やれ味がどうたら言ってるが…ありゃ、何を食ってるんだ

(゚、 。 フ ん、言ってなかった。生物に寄生してる魂だよ

ロク、味を思い出したのか、とても満足気な笑顔で舌なめずり。

(゚、 。 フ あいつら、うまいんだ。大好物

ミ,,゚Д゚彡 よくわからんが…そうかい。ラジェンドラは?

《私の希望は会話です》



119 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 22:04:48 ID:2/bpxh7MO

ミ,,゚Д゚彡 ほう

《太陽系軍のシルフィールドは撃墜された場合、撃墜される前の記憶を受け継いだ同一人物として再生され、しかも同一人物を複数同時に存在させている。太陽系の技術体系で如何にそれを成したのか、興味深いのです。それに》

ミ,,゚Д゚彡 それに?

《太陽系軍の使う知性体、あれは私に近い。大人と赤子ほどの差はあれども、いつか立派な知性体に育つでしょう》

ミ,,゚Д゚彡 それも興味か?

《いえ。保護欲ですよ、フサ》

ミ,,゚Д゚彡 …ラジェンドラは優秀だよ。チーフに育てられただけのことはある

《ありがとうございます》

(゚、。 フ ね、ね、俺は?ラジェンドラ

《なにがですかロク》

(゚、 。 フ 保護欲だよ、俺に対しての。だって俺、可愛い

ミ,,゚Д゚彡 おいラジェンドラ、命じて欲しいか?欲しいだろうなラジェンドラは優秀だもの。やれ

《はい》

(゚、 。;フ わっ

ロクが腰掛けていたシートが突如、後退。床にぽっかりと開かれた穴へと吸い込まれる。

《脱出口、閉じます》

ミ,,゚Д゚彡 うむ

《感謝しますフサ。私の性能が落ちてしまうところでした》

ミ,,゚Д゚彡 性能が落ちては命も落としかねないからな。シリアスに行こう



120 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/04/26(木) 22:08:01 ID:2/bpxh7MO

ミ,,゚Д゚彡 よし、ロクを回収してオメガドライブを行う

《ここからですと、想定戦域の直前まで3回行う必要があります》

ミ,,゚Д゚彡 わかった。ラジェンドラに任せる

《了解。ではロクを収容します》

(゚、 。 フ いや、まいった。腰が痛い

シートごと戻ってきたロクは、毛並みの乱れた尻尾を撫でる。

《行きますよ、ロク。体を固定してください》

(゚、 。 フ はいはい

《レディ、オメガドライバ》

ミ,,゚Д゚彡 行こう

《ラン、オメガドライバ》

黄金色の光に包まれたラジェンドラが、一瞬のうちに爆散し自身の存在確率を全宇宙において等しくする。破片は光の粒のよう。
そして遙か遠く離れた空間に、自身の存在確率を上昇させると黄金色の光が同じように瞬き、一瞬で集束。光が消えた時、ラジェンドラは予定の宙域に実体化していた。




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最終更新:2012年04月29日 02:34