???「それではこれより定例会議を開始する」
真夜中のとある教室。
蝋燭一本に灯された火のみが明かりという何とも不気味なその空間で、それは始まった。
???「では皆の意見を聞こうか。まずはバット」
???「フフフフフ。これを見て下さい」
小さな立体映像が多数映し出される。一つ一つが学園の生徒の簡略的データを顔写真付きで記した物だった。
部屋内が感嘆の声に包まれる。
???「よくこんなにピックアップしたものですね……バット」
???「つうかよぉ、これって要するに美人と縁がある奴見繕っただけじゃねぇの?」
???「そげんことなか。例えばこればみてみ……高須竜児、『ソックスドラゴン』候補たい」
???「え? なに。高須ってそんなにスゴイの? 目付きは怖いけど後は普通だぜ??」
???「それ故ばい。こいつなら一睨みすれば大抵の奴は逃げ出す……コイツが見張っていれば見回りなんて
恐れることなか」
???「えー? じゃあこの上条はぁ? 明らかに女の子狙いじゃん」
???「『ソックスイマジン』ですか。その方は対風紀委員用の特別精鋭戦士候補です。彼の右腕は大きな戦力になるでしょうし、身体能力も特に問題はありません」
???「んーじゃあこれ、浅羽直之。いくらなんでもこいつは違うんだろ」
???「まだまだあま~い! ですねロボ。『ソックススペース』はあの伊里野加奈とフォーリン・ラヴに成る程の強者、恐らくソックスハントに置いても電波新聞部仕込みの何やらで役立つことでしょう」
???「って予測じゃねぇかそれ!! どうせならもっとスゴイの選ぼうぜ岩田~。一方通行とかいーちゃんとかそういうメジャーなのでいいからさ」
???「ノゥン!! 今宵の私はイワタマンではなく正義と靴下の未来を守る愛の戦士・ソックスバットなのでーーす。ロボ、発言には気をつけることですね」
怪しい影がクネクネと意味不明な動きをしさらに妖しい存在感を醸し出す。明かりが無い分恐ろしく不気味だった。
???「確かにその者達の協力を得れば我々の戦力は格段に向上するだろう」
暗闇に蜥蜴が潰れて引き延ばされたみたいな顔が浮かび上がる。会議の開始を宣言した人物だが、どう見ても芝村準竜師理事だ。
準竜師「だが一方通行はその能力故に靴下に触れた瞬間匂いをかき乱してしまう恐れがある。例え芸術の如き素晴らしいバランスで匂いが配置された靴下を手に入れたとしても、それでは意味がない」
???「いーちゃんはどうなんですか?」
準竜師「あれは極度のメイド偏愛者だ。専属メイドを与えれば簡単になびくだろうが、近頃風紀委員が特別戦闘部隊に“MMM(もっともっとメイドさん)”を組み込んだという情報がある。もしも敵に捕獲されれば五分と保たず洗脳されるだろう。いや、下手をすれば既に風紀委員に取り込まれているやもしれん」
???「彼を組み込むならばこの『ソックスゲノム』を仲間に入れる必要があります。この方はMMMの長でもありますから」
???「ってこれ式森じゃん!! 無理無理無理、絶対無理!! あの鬼嫁にばれたら俺達ごと殺されちまうだろ!? 俺エスカリボルグは嫌だかんね!!」
???「ロボ、とりあえず落ち着きんしゃい。ぬしゃあ声が大きすぎる。そげん大声出したら風紀委員供に」
瞬間、全ての電灯が一瞬にして点灯した。校舎中の明かりという明かりに光が灯され、夜の学園を照らし出す。
同時に暗闇によって隠されていたメンバーの顔が明らかになる。
そしてさらに次の瞬間。大きな爆発音や稲光と共にドアが粉々に吹き飛ばされた。
滝川「な、なんだぁ!?」
中村「ま、まずか……風紀委員供たい!!」
遠坂「まさか……全て筒抜けだったというのか!?」
岩田「いーえ、恐らくロボの大声に巡回が気付いただけでしょう」
一瞬滝川に非難の視線が向けられるが、土煙を上げるその向こうからドタドタと突入してくる足音に皆直ぐさま視線を戻した。
次々と部屋内に飛び込んでくる風紀委員。その中には鷹栖絢子や御坂美琴、さらには天目一個の姿までがあった。恐ろしく絶望的な状況である。
絢子「やっと見つけた。今まで苦労してきた分、意外と簡単に見つかって実は拍子抜けしてたりするわ」
美琴「よっっくもあたしの靴下盗んでくれたわね。生かさず殺さず生死の境を延々と彷徨わせた果てに消し炭
にしてやるから覚悟しろよ……!!」
天目一個「………靴下(つわもの)」
滝川「じゅ、準竜師どうしたらいいんすか………っていねぇし!!」
岩田「さすがは『ソックスファルコン』と名付けられることはあります。まさに高飛びと言ったところでしょうか……? ふふふ、我ながら自らのギャグセンスが恐ろしいぃぃ!!」
中村「“鷹飛び”……と言いかいんか? 言っておくがファルコンは隼ばい」
遠坂「皆さん。そんなことより早く逃げませんと」
中村「む……そうね」
中村が懐から靴下を取り出す。それを見た他の面々も次々と懐から靴下を取り出していった。そしてあろう事か、その靴下をそのまま自分の鼻に押しつけた……!!
美琴「っっげ!?」
この行為には流石の美琴もひいた。理由は分からないがいきなり靴下の匂いをかぎ出したのだから無理もない。絢子は既に慣れているのか、相手の行動自体にではなくそれを行われたことに焦っているようだ。
絢子「しまった……!!」
美琴「え!? なに、あれって何か意味あったの!? 確かに見るからにヤバ気だけど」
絢子「あの変態供はアレの匂いをかぐと能力が格段に向上するのよ……!!」
説明が終わる前に岩田へと天目一個が斬りかかった。しかし相手はまるで踊るようにそれを回避し、さらに天目一個を蹴り飛ばしてしまった。窓硝子を突き破り落下する鎧武者。遙か下の方から何か金属の塊が衝突したような音がした。
そのあまりにと言えばあまりにな光景に美琴が絶句する。
岩田「皆さーん。今こそラーンナウェーイ!!」
中村「ほっと!!」
遠坂「お先に!!」
滝川「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ!!」
絢子「逃がさない。追うわよ!!」
美琴「っなんでみんな平気な顔して飛び降りれんのよ!! ここ六階よ!?」
その夜、逃亡者達による抵抗により結局校舎半壊という被害を出しつつも捕縛数は0。この結果に風紀委員会は頭を抱え、学園の変態最強説はさらにその信用性を増したという。
絢子「それではこれより対ソックスハンター緊急対策会議を始めます」
風紀委員長・鷹栖絢子の宣言の下、ラノベ学園
生徒会本部室にてそれは始まった。
絢子「まずは今日の議題について大まかな主旨を私から。先日の校舎半壊事件は皆記憶しているわね?」
一同が首を縦に振る。何故か皆そろって苦々しい表情をしていた。
絢子「じゃあそれに至った顛末も知っているわね? そう、あの憎き変態共を駆逐するために我々風紀委員会の総力を上げた決戦を仕掛けた結果がアレ。しかしその収穫は……全くの0。むしろこちらの被害の方が圧倒的に多いぐらいだわ」
一同「……………」
皆の視線が『生徒会直属特別風紀委員』と書き込まれた三角柱が置いてある席に集まる。
そこには頭に包帯を巻き、ガスマスクを使って呼吸する御坂美琴の姿があった。前回の抗争において敵の靴下を鼻に押しつけられたらしく、しばらくは空気を吸うと靴下の味がするようになってしまったそうだ。
さらにその隣、普段なら腕を組んで胸を張り、まるで戦国武将のような堂々とした佇まいをしているはずの天目一個が床に刀を突き刺し、兜の額部分を机に押しつけてぐったりとしていた。面は半分程欠けており、所々鎧がひしゃげているのでこれでは落ち武者だ。
が、この程度は未だ序の口であるというのだから恐ろしい。
実は本日の会議に出席していない者の大半は前回の戦闘により重傷を負った(主に心に)のが理由だったりするのだ。おかげで現在保健室は野戦病院みたいになっている。
絢子「しかしこのまま引き下がるわけにはいかない。何としてもあの靴下狂愛者達を懲らしめないと、このままではこの学園は変態の変態による変態のための学校になってしまうわ。護が居るところをそんなところにするわけにはいかない!!」
美琴「(シュゴー)でもそれならそれでどうすれば良いのよ? アイツ等マジで化け物よ。レールガンを発射した“後”に避ける程だし」
黒子「弓矢を空間移動させても動物的癇か何かで飛ばす直前にその座標から逃げますのよ?」
リーラ「当然銃器類は全くの効果無し。靴下の匂い一つであそこまで動けるのですから恐ろしい。あの白い靴下旅団の兵があそこまでとはさすがに予測しませんでした」
部屋中にため息が溢れかえる。たかだか靴下の匂いを嗅いだ変態如きに自分達の必殺技を避けられたのだから無理もない。
絢子「……いっその事ファ○リーズでも吹きかけて靴下の匂いを消してやれば何とかなるかも」
黒子「そんな方法で勝てたら苦労しませんの」
リーラ「いえ、思いの外効果があるかも知れません。率直に申し上げますと奴らには正攻法で立ち向かっても馬
鹿を見るだけです」
塩原「それならいっその事目には目を、歯には歯を方式でこっちも変態をぶつけちゃいません?」
絢子「妙案だけど……例えば誰を当てるの?」
塩原「……………佐山副会長?」
一同『それだ!!』
皆の脳裏に何故か輝かしい笑顔の佐山御言が浮かび上がった。
間違い無い、彼こそまごう事なき変態である。きっと靴下の匂いも平気で嗅ぐだろう。
美琴「(シュゴー)あの……水を差すようで悪いんだけど(シュゴー)それ多分無理よ(シュゴー)」
黒子「どうしてですのお姉様? あの方でしたら毒をもって毒を制すを実践できると考えられますが」
美琴「毒と毒は(シュゴー)混ざり合っても所詮毒よ。その証拠に(シュゴー)前に生徒会室で準竜師理事と握手をしている副会長を見たわ。もちろんその左手には靴下が……」
絢子「……既に買収済みってわけね。他には誰か居る?」
長谷「浅生一馬君はいかがかな?」
絢子「噂の『ド変態』ね。でもあれは変態のベクトルが少々違うし、彼の能力はどちらかというと支援向きよ」
壬琴「確かにアイツ喧嘩はからっきしだしなぁ。魔法科の2年B組とかは? あいつら性根は腐ってるけど実力
はあるよ?」
黒子「あの畜生共に頼んだら多額の仕事量を請求されますわ」
長谷「あの悪魔共を生徒会関係に入れるのかね? 群雲君、僕は反対だ」
絢子「同感ね…生徒会費をちょろまかすに決まってるわ。それ以前にお互いの邪魔ばっかりして役に立つとは思
えないし」
どこからかまたため息が洩れる。それにつられて皆もため息をついた。
何だか話しがおかしな方向に進んでいたが、結局は何も決まっていない。時間だけが無駄に過ぎていく。
と思った矢先、ドアがノックされた。
絢子「……入りなさい」
幸太「あの……失礼します」
申し訳なさそうに入室してきたのは生徒会庶務の富家幸太だった。その右手には手紙が握られている。
幸太「あの……生徒会長からです」
絢子「林水から? 何だろう……………!!」
渡された手紙を読んだ絢子が驚愕の表情で固まる。
黒子「どうなさいましたの?」
絢子「ソックスハンターが……壊滅したそうよ」
…………は? と部屋中から間抜けな声が上がり、同時に皆揃って凍り付く。
塩原「どどどど、どういう事ですか!? 何でいきなり壊滅しちゃってるんですか!? ていうか誰が殺ったんですか!?」
長谷「おおおおおお落ち着きたまえ塩原君。ま、まずは説明を聞いてからだだだだだ」
美琴「いや、あんたが落ち着きなって。で、どういう事なの?」
絢子「どうもこうも言葉通りよ。全員ボロ雑巾みたいになって体育館裏で発見されたみたい。懐から大量の他人の靴下が発見されたからソックスハンターと認定したそうよ」
一体誰が? という声が次々に上がった。あの化け物共を駆逐したのだから余程の強者では、と各自が思い思いの人物を想像する。
絢子「詳しいことは不明らしいけど、ただ……」
一同『……ただ?』
絢子「血まみれの木刀を担いだ逢坂大河が目撃されたと書いてあるわ」
戦慄が走った。あの“手乗りタイガー”が今度は、いやむしろついに靴下愛好者達に牙を剥いたのだ。
絢子「それともう一つ。保健室に担ぎ込まれた一人が意識を朦朧とさせながらもこう言ってたそうよ」
絢子「『おのれ……まさかソックスドラゴンが洗濯好きだったとは……一生の不覚ばい』……と」
翌日。
全校朝礼にて生徒会特別功労章と称された表彰状を受け取る一組の男女がいたという。
CAST
中村光弘
岩田裕
遠坂圭吾
滝川陽平
芝村準竜師
鷹栖絢子
御坂美琴
白井黒子
天目一個
塩原友子
長谷常彦
群雲壬琴
リーラ・シャルンホスト
富家幸太
逢坂大河
高須竜児(=ソックスドラゴン)
最終更新:2006年07月04日 17:38