長門「緊急事態」
いつものようにハードカバーの本を読んでいた長門が、突然俺の方を向いてそんなことを言った。
先程まで本に向けられていた視線が俺に焦点を合わせる。
あいかわらず表情は無表情でその瞳は無機質な印象を与えてくるが、今の長門からはなにかしら焦っているような印象を受ける。
お前がそんなに慌てるとは珍しい。何かあったのか?
長門「……世界各国が有する核兵器の発射装置が同時に起動した。
このままではこの世界が滅亡する可能性がある。ただちに対処すべき」
核兵器。
聞きなれているようで聞きなれない、現実味が皆無な単語に一瞬思考が停止する。
どうにか脳を再起動させて長門を見ると、もう一度同じ内容を復唱しようとしたので慌てて止めさせる。
こんな物騒な単語を無闇に連発するわけにもいくまい。
キョン「……またハルヒのやつか?」
あいつはこれまでも厄介な面倒ごとに巻き込んでくれたが、今度は核兵器とは。しかも世界規模。
日本には非核三原則という言葉があることや、日本の愛知県半田市が国内最初の非核平和宣言都市ということを知らんのかね、あいつは。
長門「彼女はトリガーになっただけ。この事態は涼宮ハルヒの望んだことではない」
ハルヒは元凶ではないということか。たしかに、あいつは世界を滅ぼすより世界を改変する方が得意だからな。
核兵器で地球上をまっさらに、なんていうような物騒なことを考えるやつでもないし。まあ、元凶じゃないから良い、というわけではないのだが。
にしても、『トリガー』ね。
ハルヒのことだ。言葉通り核発射のスイッチでも押したのだろう。
興味津々にドクロマークが描かれたボタンを押すハルヒの姿が目に浮かぶようだ。
キョン「それで、対処すべきって言われてもどうすりゃいいんだよ?」
たしか某米の国では、核発射スイッチは完全にネットワークから遮断されてるからハッキングできないとかいうのを映画で見たことがある。
いくらスパコン並みにハイスペックな長門とはいえ、今回はさすがに無理なんじゃないだろうか?
長門「すでにこの学校の関係者が複数名動いている。私たちは手助けをするだけでいい」
なるほど。いつぞやのエンブレムの時の騒ぎのように、俺たちが出向く必要はないということか。
この学校の関係者は揃いも揃って化け物ぞろいだからな。今回の騒ぎは放っといても大丈夫かもしれん。
生身で放射能を防ぐ『最強』がいたりする学校だ。世界中の核兵器を沈黙させてもおかしくはない。
長門「…………」
キョン「……わかってるよ、サボらないサボらない。ちゃんと手伝うって」
だからそんな風に捨てられた子犬みたいに見つめないでくれ。心底抱きしめたくなる。
それにしても、まずはどこを手伝うべきか。いや、どこというより誰といった方がいいかもな。
峰島のところにでも行ってみようか? あの天才様なら核シェルター以上の効果を持つ遺産技術を知ってるかもしれんし。
それとも相良のところだろうか? どこぞの秘密組織所属らしいし、詳しい事情を知ってるかもな。
生徒会やら教師陣に接触を試みるのもいいかもしれん。
考えだしたらキリがない。とりあえず、いつものように行き当たりばったりで行動してみるのが一番か。
いや、その前に朝比奈さんと古泉を探すべきだな。
古泉はともかく朝比奈さんは未来から核兵器の旨を伝えられ、今頃半泣きでいらっしゃられるかもしれない。
問題は山積みだが、どこから手をつければいいのかまったく分からないこの現状。どうすりゃいいのかね、まったく。
長門「……あなたは『やれやれ』という」
キョン「やれやれ……はっ!」
CAST
長門有希
キョン
涼宮ハルヒ
朝比奈みくる
古泉一樹
峰島由宇
相良宗介
最終更新:2006年07月10日 16:32