数本の大陸間弾道弾が轟音と共に夜空を突き抜ける。
圧倒的質量をもって風を裂き、雲の運河を越え目的の地へ向かうそれらは世界を破滅へと導く魔弾と言えよう。
一発でも落ちれば国々は己の安全と報復という大義名分を掲げ、各々が武器を取り、怨恨と欲望、正義と秩序の為に
鎬を削る事になる。
争いは争いをまた呼び寄せ、戦火は瞬く間に広まり星を覆い尽くし、人の歩んできた歴史はそこで終焉を迎える……
筈だった。
だが世界には未だそれを望まず、且つ食い止めることできる者達がいたのだ。
そして形はどうであれ、それは彼らにも当てはまっていた。
翼をはためかせ、高速で闇夜を駆け抜け追随する一匹の竜。その額では西洋の騎士の扮装をした虹色の翼の王が
サーベルを構えている。
「見えたぞイルヤンカ、あれがミサイルという奴だ」
「ふむ、思ったよりも数が多いな。先手大将殿達は間に合わなかったようだ」
「獅子とは翼を持たぬ者」「その爪が鷲を食い殺せぬ事を」「何をもって責めようか?」
竜ことイルヤンカの背中にどっしりと乗っかる巨大な卵“凶界卵”ジャリが仮面をならして叫いた。恐らく彼らは
良くやったと言いたいのだろう。
「モタモタしている時間はない。仕掛けるぞ」
その言葉にイルヤンカは加速することをもって応える。お互いの距離が僅かばかりだが縮まった。
そしてその僅かな差こそが、彼の求めたもの。
メリヒムはサーベルの鋒を虚空に向け、何か照準を合わせる。
「戦友---!!」
「応さ---!!」
相槌と共にイルヤンカの全身から火山の噴煙にも似た煙が吐き出される。前方一面が煙に包まれると同時、メリヒ
ムは剣より虹色の光線を先程狙い澄ました場所へと放った。
全く見当はずれの方向に放たれたと思われたその光線は、ミサイル後方にて突如軌道を変化させ、真横からその腹
を貫いた。
その後も次々と軌道は反射・修正され二発のミサイルを同時に貫通し、破壊する。
複数同時の破壊による圧倒的なまでの熱量と暴風、衝撃と爆音が空に奔る。都市一つを一撃で消し飛ばす人類科学
史上最凶の兵器の消滅に伴う二次災害は、その空間に存在する全てを消し去るかと思われた。
しかしそれらからメリヒム達を守り抜く最強の盾が、此所には存在した。かつて当代最硬の自在法と呼ばれたイルヤンカの
『幕瘴壁』である。
吹き出された煙は巨大な障壁となり、その衝撃の全てを受け止めることで彼らをその消滅から守った。
が、いくら強固な壁とはいえ核クラスの爆風ともなればその衝撃に押し戻されることは必定、メリヒム達は戦果を確認する
ことも無くその場から全速で離脱した。
振り返ったその先に、巨大なきのこ雲が見える。
「……終わったか」
「まだだ!」「まだ!」「終わらんよ!」
メリヒムの言葉にジャリが珍しく分かりやすい言葉で返す。これ以外言いようがなかっただけかも知れないが。
「撃ち洩らしがあったというのか?」
「ふん、人間共の道具も侮れんと言うことか………追うぞ」
言葉と共にイルヤンカが再び翼をはためかせ、夜の闇に消えていく。
戦いはまだ終わらないのだろう。
CAST
“虹の翼”メリヒム
“甲鉄竜”イルヤンカ
“凶界卵”ジャリ
最終更新:2006年08月05日 19:15