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 喫茶店にて。
 パラパラと降って来ていた水滴は、次第にザアザアと降るようになった。
「……雨ね」
 呟いて、ミズー・ビアンカは嘆息した。
 予報では晴れるはずだった。それが外れたということは、上空の気象精霊達に何かあったということだろう。
「またキャサリンかしらね」
 厨房から出てきたジュディア・ホーントが、窓を見て言った。多分そうだろうと、頷いておく。
 水道の蛇口を、全開にしたかのようにザアザアと降る雨は、やむ気配が全く無かった。この分ではそうそう客も来ないだろう。
 面倒だから今日はもう閉店にしよう、とジュディアに言おうと思ったとき、
「あーもうずぶ濡れー!」
 客が入ってきた。中等部の制服を着た、小柄な少女。この店の常連客の一人、結城美沙だ。
 ミズーは嘆息ひとつでタオルを手に取ると、応対に向かった。
「いらっしゃい。ほら、これで拭きなさい」
「ありがとっ。ま~ったく、やんなっちゃう。いきなり降ってくるんだもん」
 美沙は受け取ったタオルで濡れた身体を拭い、ふとキョロキョロと周囲を見回して、
「あれ? 鷲士くんは?」
 鷲士。この店の従業員の一人で、美沙の父親である草刈鷲士のことだ。
「今日は休みよ。デートだとか言ってたけれど」
 草刈鷲士のデート相手といえば、美沙の母親――麻当美貴と決まっている。
 美貴もまたこの店の常連客の一人だ。もっとも、彼女の目当ては従業員の草刈鷲士ではあるが。
 ちなみに……美貴と美沙、そしてその弟の樫緒らの親子関係については、鷲士本人だけが知らない。
「あ、そっか~。どおりで妙に浮かれてたワケだ、あの人。……でも」
 と、そこで美沙は言葉を切り、窓の外を見た。雨は容赦なく、ザアザアザアザアと降りまくっている。
「……この雨じゃねえ」
「…………」
 ミズーは無言で雨音を聞く。余計な音を覆い隠す……逃亡にちょうど良い天候。
 昔は雨の方が好きだった。今は晴れの方が好きだろうと思う。何しろ雨では売り上げが悪い。生活がかかっている。
「ミズー、君はなんだか最近やたらと所帯じみてきたと思うよ。いや、悪いとは言わないけど」
 唐突に言ってきた亡霊もどきを、ミズーは即座に殴り倒した。


CAST

・エンジェル・ハウリング
ミズー・ビアンカ
ジュディア・ホーント
アイネスト・マッジオ(亡霊もどき)

・DADDYFACE
結城美沙
結城樫緒
麻当美貴
草刈鷲士

・気象精霊記
キャサリン

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最終更新:2006年08月14日 13:01
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