クリスマス「ようそろ、取り舵いっぱい。北北西に進路を取れ」
ガーゴイル「……む、レコリスよ。アンテナの位置はこれで良いか?」
レコリス 「アイ・ロウ。その位置で、OKです。じゃ、始めます」
レコリス 「皆さん、こんにちわ。こちらは、J・O・L海賊放送です」
「しばらく放送できなくてごめんなさい。このところバタバタしてたの
アイ・ロウ。でも、もう大丈夫。これからも聴いてください。
まずはトピック情報。巷で人気のボンジュール・アイス、出現位置の予測です」
…………
レコリス 「……ということで、電撃の黒い太陽さんからのおはがきでした。
んー、でもたまにはカーテン開けたほうがいいですよ」
はがきを仕舞いながら、ちらりと横を見るとクリスマスがうずうずし始めている。
レコリス 「それじゃ、ほんとにカーテン開けたらどんな天気か聞いてみましょう。
クリスマスさんの天気予報です」
クリスマス「ゆーあーないすがい」
ビッと親指を立てるクリスマスと入れ替わり、レコリスはガーゴイルにもたれかかる。
屋上にアンテナを立てての海賊放送。
日に当たったガーゴイルの背中は熱いが、影になっている腹の部分はわりあい涼しい。
ガーゴイル「ご苦労であった。疲れてはいないか?」
レコリス 「ありがと。でもいつものことで……あー、ガーゴイルさんのこの光線気持ちいいー」
クリスマス「……だね、君。五感を研ぎ澄まし、この世の混沌から受け取った欠片たちを再構成……」
ガーゴイル「むう。しかし我としては不思議なのだが、クリスマスのあれは予報になっているのか?」
レコリス 「あは。あれはあれで謎解きみたいだって好評なんですよ。的中率も高いし……」
クリスマスさんは絶対譲りませんし、と胸の中で付け加える。
レコリス 「でも、ちょっと驚きました。ガーゴイルさんが手伝ってくれるなんて」
ガーゴイル「む、何故だ。困っている者を助けるのは当然であろう?」
レコリス 「いや、部室のっとられて、あたしのやってること実質非合法じゃないですか?
それにガーゴイルさんは、こんな学園のちょっとした身に情報なんかより、
防犯のために警報を鳴らすチャンネルを大事にすると思ってたんですけど?」
ガーゴイル「……警戒を心がけることと、常に警報を鳴らすことは全くの別物だ。
後者はただいたずらに不安を呼ぶだけだろう……」
レコリス 「……ガーゴイルさん?」
ガーゴイル「……すまぬ。この前のミサイル騒ぎを思い出していた」
レコリス 「ああ、この前の。すごい騒ぎでしたね」
ガーゴイル「うむ。我には思い出、いや、忘れてはならないことがあったのだ」
つらいことだったのだろう。続くガーゴイルの沈黙がそれを教えてくれた。
つられるように、レコリスも思い出す。
あの警報が鳴りミサイルが来ると聞かされても、レコリスはシェルターには向かわなかった。
理由は簡単。レコリスが二級生徒だからだ。
『二級生徒』
レコリスやネジロをはじめとする<ラッツ>のような親から見離された子供。
あるいは相棒のD・Jや、幽とクリスマスのように誰かに追われ身を隠す者。
そんな弱みをもつ人間が集められ、委員会や有力クラブの『いろいろな』仕事をさせられる。
学園のどこにでも居る、廊下で見かけるだけの、どこか別のクラスの
――ニセ学生。
それがレコリスたち、二級生徒だ。
あの時、シェルターの入り口では全員揃ったか点呼を取っていた。
海賊放送の『人々を見守る、不思議な怪人』を、逆に隠れ蓑にしてきたレコリスだが、
きちんと点呼を取られれば、本当に「どこにもいない生徒」である事がばれてしまう。
だからレコリスは誰もいない教室で、じっと警報が解除されるのを待っていた。
レコリス「ガーゴイルさん……」
ガーゴイル「我は……ちっぽけな存在だ」
知っている。もう対処に向かった人がいると説明されて、止められて、悔しそうだったガーゴイルを。
ガーゴイル「だが、それでも我は守ろうと思う。大切なもののために、この学園で震える人々のために、我は……戦う」
後で聞いた。シェルターで怯える子供たちにガーゴイルが癒し光線を出し続けていたことを。
そっと黒い石像に手を伸ばす。レコリスがそうされてきたように。
I Look on Laughing
レコリス「大丈夫、皆、笑ってるよ」
だからレコリスはラジオを続ける。誰かが隣に居ることを教えるために。ぼくはここにいるよ、と。
クリスマスが予報を通して、幽の言葉を伝えるように。
そう、だから、きっと、明日も――
クリスマス「はれるでしょ―――――――――――――――――――つ!!」
CAST
・ラジオガール・ウィズ・ジャミング
レコリス
・吉永さん家のガーゴイル
ガーゴイル
・猫の地球儀
クリスマス
最終更新:2006年08月21日 19:18