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涼宮ハルヒの野球

「野球大会に出るわよ!!」
  その台詞、六月にも聞いた事があったな。
  ん? しかし六月中は確か校内派閥争いで手一杯だった記憶があるのだが……はて? 俺はいつこの台詞を聞いたんだろうね。
  とりあえず部室内を見渡す。
  相変わらず読んでいる本から目を離さず文字の世界を潜行中な宇宙人と。
  巫女服姿でお茶を給仕しつつ「ほえ?」とでも言いたげな表情を作る未来人と。
  何時も通り変わり映えのないにやけ面でイエスマンな応対をしている超能力者。
  とまぁこういった具合で三者三様な反応を見せている我らがSOS団の面子なわけだがとりあえず一言。
「メンバーはどうするんだ?」
  どうせ何を言ってもハルヒは聞く耳を持たない事を理解しており、今更野球大会に出るぐらいで溜息をつくほど柔な経験をしていない俺なのであった。
  慣れって怖いよな、本当に。

  で、俺の質問に団長様は「そこら辺にいるのを適当に捕まえればいいじゃない」の一言で片付けたのだが問題が発生。この学園でそこら辺を歩いているのを適当に見繕えば下手をするとマウンドが血の海に成りかねない事だ。
  伊達に毎日ドッカンドッカンしているのを見ている訳じゃない、それくらいの予想は簡単にできる。
  しかも味方は多いが敵はもっと多い事で有名な俺達だ。仲間選びは慎重にせねば。
  ハルヒもそこら辺は了承してくれた。さすがに多方面に首を突っ込んでいるだけあって危険性をよく理解していらっしゃる。

「誰か当てはあるの?」
  間の悪い事に里帰りか何か知らんが谷口や国木田は帰省中だ。こんな時に限って役に立たん。
「……相良と坂井で良いか?」
  比較的仲が良くて信頼できる奴と言えばこの二人が筆頭だ。
「おや、相良君は生徒会所属だったはずですが?」
  そこは気にしなくて良い。争いが終わったらアイツは味方だ。
  もっとも、ハルヒはどうか知らんがね。
「じゃあそれで良いわ」
  あの二人をそれ扱いか……とりあえず刀とハリセンには気をつけろよ。

  さて、あと二人どうするかな------。

「あのう……生徒でなくてもよろしいのなら」
「じゃ、それ」
  控えめに手を挙げて発現した朝比奈さんに対して即答、早いなオイ。
  というよりも朝比奈さん、生徒ではないと言う事は鶴屋さんではないのですか?
「はい、鶴屋さんは今ご家族と一緒に旅行中なんです」
  成る程。
「では僕の方にも何人か当てがありますので、最後の一人はそれでよろしいでしょうか?」
「良いわよ。これでメンバーは決まりね、じゃあ早速特訓するわよ!!」
  こうして流れ作業でメンバーが決まった俺達はそのまま野球部から道具一式を借り受け、一時間余りの猛特訓を開始するのであった。

  今になって思う。
  無理してでも俺がもう一人、アクシデントでエラーを連発する事を見越してでも上条辺りを用意すれば良かったとな。

  さてさて日付は変わって本日は野球大会の当日。
  近所の野球グラウンドに集まった俺達なわけだが俺は頭を抱えたね、あぁ抱えたとも。
  そういえばそんなSSもあったよね。
「えすえすって何ですかぁ?」
「いえ、お気になさらずに」

  それよりも朝比奈さん、確かにハルヒは誰かも聞かずに了承しましたがさすがにこれは予想できませんでしたよ?
「どうした若僧? 我が姿を見るのは初めてではあるまい?」
  えぇ、初めてではありませんよ。
  あなたの姿は入学式で度肝を抜かされた時から記憶しています。
  そのどっかのファンタジー小説から飛びだしてきたような甲羅を背負った飛行型爬虫類をみるとは思わなかったですけどね。
  むしろ向こうさんの方が心配です。

「良いじゃない。心理作戦も立派な戦略よ!!」
  ハルヒはこう言うが、それは圧力を与えるのが人間の場合の話だ。相手が恐竜クラスとなれば恐らくは威圧を受ける前に遺伝子に刻まれた本能で硬直するんじゃないだろうか?
  しかもこのドラゴン様は存在を操る世界から来た竜王様だ。威圧感だけで普通の人は潰れるかもしれんね。
  普通人の俺が何ともないのはもはや仕様か。
「ねぇ、キョン。あんなのが来るなんて聞いてないよ」
「知らん。俺も今が初めてだったからな」
  向こう側で巨竜と談笑する朝比奈さんを見て溜息をつく俺と坂井。
  ちなみに相良に同調を求めるのは無理だ。野球の試合の前に重火器の手入れをしているアイツと俺達が同じ感性を持っているわけ無いからな。
  あぁ、これは補足説明なのだが古泉が連れてきたのは結標というなんだか妙にへその辺りが涼しげな女子生徒だった。
  全員が揃ったところでくじ引きによる打順及びポジション決めを行い、次のように相成った。
  一番ピッチャー・ハルヒ、二番レフト・朝比奈さん、三番ライト・長門、四番セカンド俺、五番ファースト相良、六番サード・竜のじいさん、七番キャッチャー・古泉、八番センター・結標、九番ショート・坂井。
  ちなみにハルヒのみ自分で場所と順を選んだんだが、どうにもポジションに作為的なものを感じるのは何故だろうね?

  さて、いよいよ試合の始まりだ。初戦の相手は上ヶ原パイレーツという草野球チームなのだが、開始前の挨拶では誰も俺達に目もくれず、列の端っこで四つん這いになっている爬虫類を眺めていた。
  そのパイレーツの皆さんが配置に付き終わり、プレイボールのコールが出される。
  渡米した某鈴木選手のような前フリをしつつハルヒが不敵に笑う。
  第一球目。
  様子見程度だったのかはたまた本気だったのか、ストライクゾーンに直線コースで飛び込んできた白球が金属音と共に打ち返される。
  ホームランにはならなかったものの、フェンスを直撃する程の長打をたたき出しハルヒは二塁へと。アイツ程の走力をもってランニングホームランにできなかったのは恐らく相手が強者であるからだろう。
「全然大した球じゃないわよ! あたしに続きなさい!」
  ベースの上でガッツポーズをしながらこう言うハルヒだが、お前に続く打者が誰かを忘れてはおるまいな?
  ということで案の定二番の朝比奈さんと三番の長門のコンビは両者共に握ったブツをスイングもせずに見事三振、四番の俺はバットを振ってはみたがあえなく三振を奪われ攻守交代となりハルヒの罵声をグラウンドに響き渡らせる事となった。

「しまって行こぉーー」
『おー』
  やる気のない掛け声が響く、俺と坂井と古泉と朝比奈さんじゃこれが限界だよ。
  相手の一番打者が審判への挨拶と共にバットを構え、ハルヒが一球目を投じる。
  ボスリッ! と音を立ててボールがキャッチャーグローブへと勢いよく吸い込まれた。
  現役高校球児も認める見事な速球である。しかもこれまた微妙な球道変化が付いているらしく、質の悪いこの悪球の前に第一打者が空振り三振。
「ナイスピッチ!」
  古泉の言葉通りである……が。

  コキィィン。

  良かったのはそこまでだった。さすがは優勝候補、アドバイスを受けた第二打者はハルヒの球を初撃早々いきなりファールに持っていく。
  こりゃあヤバイと思ったのもつかの間、投じられた二球目が今度は見事な音を立てて外野の方へと打ち返された。
  おい、でけぇz(パスンッ)「取ったわよ?」 ……は?
「ってぇ、何だそりゃ!?」
  取り乱してすまないが無理もない。空を裂くようにフェンスの向こう側へと向かっていたはずのホームランボールが突如として消失したかと思いきや結標の左手の中に収まっていやがったんだ。
  審判もどう判断して良いか困っているらしかったが、とりあえずこれでワンアウトとなった。
  続く第三打者はヒットを打ったものの三塁野手のあまりの巨体に圧倒されている間にタッチされてツーアウト、さらには四番打者もレフトの朝比奈さんへと向かうはずだったボールを巨体を持ち上げてこれまた岩みたいな顎でキャッチされて攻守交代。
  つくづく思うが人間と人外が正々堂々と勝負できる日がホントに来るのか? 未来から来た皆々様方よ。

  二回表、軽く頭を下げる事で挨拶する相良からの攻撃だ。
  相手ピッチャーがサインを確認してか頷く。サインを出すという事は恐らく変化球の類か? 相手も相良のただ者ではない雰囲気を感じ取ったらしい。
「-----っ!」
  子気味の良い金属音。相良の目は外角へのカーブを見事捉えていた。
  しかし飛ばした方向が悪い、ボールが向かったのは一塁、しかもゴロ球、これでは………。

  ドォォォォォォン!!

  ………は?

  地面が……爆ぜた、文字通りの大爆発だ。
  一塁ベースの内側をすり抜けようとしたボールをキャッチしようと一塁手が足を伸ばした瞬間小さな爆炎がその全身を包み隠し、熱波や爆音と共に空へと舞い上げたのだ。
  唖然とする一同。もちろん俺達も例外ではない。
  しかし、そんな事は知らんとばかりにホームベースを踏む相良。おい、何をした?
「内野手が踏み出す位置を予測し、攻守交代の際に小型の爆弾を仕掛けておいた」
  つまり内野ゴロもそれを相手がキャッチしようとする事も全て計算の内だったというのかお前は?
「………」
  親指を立てるな、つうかそれって要するに地雷じゃねぇか。お前のせいであの内野手は一生野球ができなくなるかも試練のだぞ!?
「威力は抑えてあるから問題ない。破壊力よりも見た目の派手さを演出する作りになってある」
「ちなみにそれの被験者は?」
「上条当麻だ」
  それ……当てになるんだろうな?

  攻撃は続く。イルヤンカのじいさんはバットが握れない上に体がでかすぎるが故にどう頑張ってもホームベース領域に顔が入ってしまうためデッドボールにもなれず凡退。
「すまんな。年寄りは役に立てん」
  いえ、充分すぎる程です。
  次は古泉なのだがこれは普通に三振だったので割愛。続く八番打者結標は「ライトを回せないからやりにくい」とか愚痴を垂れながらバントをしたのだがこれがまたミステリーな事に弾かれたボールが一秒後にはフェンスにぶつかり音を立てていた。
  さらにツーアウト三塁となりここに九番打者坂井悠二登場。特訓で鍛えた動体視力で軌道を見切り、とんでもない重量の剣を振るうだけあってバットを竹箒みたいに軽々とスイングしてジャストミート、見事ツーランホームランを叩き出しハルヒに打順を繋ぐ。
  目立ちたいのかはたまた悔しいのかハルヒは執念のホームランを打ち放ち、次の朝比奈さんが空振り三振でチェンジ……合計四得点である。
 そして二回裏の守備、この回からこちらのチームの凶悪さが遺憾なく発揮される事となった。

  先に述べておくと、ストレートしか来ないのだから向こうの打者は打ちたい放題なのである。
  しかしセンターを守る結標のインチキにより中央フライは即座にアウト、レフトにはボールが届く前にサードで顎やら翼やら尻尾やらにより打ち落とされ、外野唯一の穴であるライトを見つけるも相良が驚異的な脚力を見せて全てキャッチしてしまうので打ち上げる事はできず、
  坂井曰く「本気で怒ったシャナのパンチよりは遅い」らしいので低い弾道の球も中央コースは安泰。
  当然ながらセカンドの俺が狙われる訳なのだが結局サードを越える事はできず、極めつけは相良がランナーのコース上に先程の地雷をいつの間にか配置しており迂闊に盗塁もできないというとどめの一撃。
  悪魔超人も真っ青の反則プレーのオン・パレード……外道もここまで来るといっそ清々しいものである。

  極めつけとして長門がバットを『ホーミングモード』とかいうのにしたらしくホームランが出るわ出るわの大判振る舞い。
  何でも俺が活躍しておかないと面倒な事になるらしいが、これはちとやりすぎじゃないんですかい?
  結局五回までの間に点数差が開ききってしまい、試合は俺達のコールド勝ち。
  あまりにも申し訳ないので二回戦出場は辞退させていただいた。涙を流しながら俺の手を握った上ヶ原パイレーツの面々は俺達が試合場を離れるその時まで感謝の言葉を述べていた。
  これにて野球は終了。まぁ、ハルヒも満足したようで何よりだ。

  とりあえずこう言っておこう……皆、おつかれさん。


CAST

  • 涼宮ハルヒシリーズ
涼宮ハルヒ
キョン
朝比奈みくる
長門有希
古泉一樹

  • フルメタル・パニック!
相良宗介

  • 灼眼のシャナ
坂井悠二
“甲鉄竜”イルヤンカ

  • とある魔術の禁書目録
結標淡希

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最終更新:2006年09月04日 20:00
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