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パシリレース

――走る。
止めにきた教師をかいくぐり、男子2人の壁を大きくサイドステップしてかわす。
女生徒の脇を駆け抜け、その時ヒラリとしたスカートにシャキーンと目覚める何かを押さえ
飛場・竜司はひたすらに廊下を疾走する。

突き当たり、非常口の扉を開ける。ツイていたのは鍵がかかっていなかった事。
ガンガンガンと階段を駆け下り、そのまま踊り場の手摺を越えて、3階半の高さからダイブ。
背後の悲鳴を他所に1、2と数え、3と同時に横の壁を蹴撃。
渾身の蹴りは落下のベクトルを変え、階段を降りながらあたりをつけていた枝の下を通過。
手を伸ばし、掴んだ枝のしなりを利用して、落ちていく勢いを殺す。

誤算は、勢いがありすぎて芝生ではなく、その先のアスファルトに着地してしまった事。

「クゥ、ハァーーーーーーーーーーーー!!」
ズゥンと響く衝撃が、頭の天辺を折り返し足先まで再び到達。奇声をあげるまで約5秒。
周囲の人間がそっと目を逸らすのを半泣きで見ながら、ロスを取り戻すべくダッシュ。
15m先の自販機に到達。手持ちの硬貨を連続投入。迷い無くボタンを連打。
ガコンと音がし、出てきた缶を取る。と――。
「当タリー。オマケデ売レ残リノ『素材を生かした100%ジュース・塩辛味』ヲモウ一本」
ピロリロリーン、という電子音と一緒にもう一本缶が排出される。
ああ、もうIAIの製品はロクなことしませんよ、と心中で毒づきながら缶を取る。
振り返る。奇声とオマケで思わぬロスがあったが、階段を下りながら気づいたショートカットは
かなりの短縮。脳内時計(多分に希望含む)は2分と5秒
「これなら」
行けます、と呟き、踏み出す足は――。

――1歩目から全力だった。

事の起こりは2分と少し前。
昼休みの屋上はいつも格好の弁当スポット。今日も二つのグループがそこに居る。
別に場所に困るほど狭くは無い。問題はその2つが全竜交渉部隊と階段部だったこと。
なぜかというと。

「ねね、竜司君。階段部に入りなさいよー。楽しいわよ」
「いやー、九重先輩。僕も全竜交渉部隊で忙しいですし」
「大丈夫、いつもと変わらないから。むしろ部活と思えてプライド確保?」
どういう意味ですかー、と抗議の声を上げる飛場を、風見が遮った。
「だめよ、九重。飛場はうちに必要な人間だから」
そうですよね、と喜ぶ飛場に一枚の硬貨が投げられる。とっさに受け取る飛場。
「さ、出番よ、飛場・竜司。あんたの力を見せなさい。つ訳で、飲み物お願い、5分でね」
「必要ってそれですか!? 最悪ですよ、この人」
「あ、欲しかったらアンタのも買っていいから。ただしモニタ兼ねてIAIの新商品限定ね」
抗議の声も聞かず、レディGO!の掛け声。思わず走り出す飛場・竜司。

「あ、こら、方向違うじゃない。逃げるつもりじゃないでしょうね」
「いえ、あれで正解でしょう」
一分後、向かいの校舎に現れた飛場をみて、風見が叫ぶ。
それに対して手元のPCに目をやりながら、階段部が誇る「天才ラインメーカー」三枝が答える。
「ここから自販機のある中庭へ直接続く階段は、先日の騒ぎで修理中。通れないはずです」
「ふぅん、そうなんだ。やっぱり飛場って、そっち向きなのかもね」
三枝の答えに感心する千里。同感、と頷きながら九重は、みんなに聞いてみる。
「ねえ、竜司君がさ、階段部に来てくれたらどんなあだ名つけてあげようか」
「パシリ」「ミニ出雲さん……かなぁ」「リュージ君はリュージ君じゃないの?」
「ひ、ヒオ、負け犬とか三下とかおもってないですの。ホントですの!」
間髪いれず答える全竜交渉部隊の女性陣。
ひでぇ、と思いながらも納得の男性陣(階段部含む)

「じゃ、今度はお前らだな」
そういって、階段部の1年生コンビ、神庭と井筒に5百円玉が投げられる。
「別にお前らをパシリ扱いする気は無いが、ここから5分。俺たちでもなかなか厳しい」
「ある意味、あたし達への挑戦ですね」
「あと十秒で1分差。縮めるか離されるか。無理だと思うなら行かなくてもいいぞ?」
そう口々に言うのは刈谷、天ヶ崎、三枝といった階段部の上級生。
顔を見合わせ、ニヤリと笑う一年生二人。
「よーし、覚悟はいいわね。階段部、特別レース、レディ~~、ゴッ!」

九重の合図ともに走り出した二人。
それぞれの一年生を応援する風見や九重たちを見ながら、美影は。
(パシリって…なに? あとでリュージ君にきいてみよう)
と、ある意味残酷なことを考えていた。


CAST

  • 終わりのクロニクル
飛場・竜司
風見・千里
新庄・運切
美影
ヒオ・サンダーソン

  • 学校の階段
九重ゆうこ
神庭幸宏
井筒研
三枝宗司
刈谷健吾
天ヶ崎泉
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  • 三スレ目>>337-339
最終更新:2006年09月11日 10:17
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