みっみっみらくる みっくるんるん みっみっみらくる みっくるんるん
さてのっけから間抜けなテーマソングで始まったこの物語だが、先に言っておく。
これはフィクションだ。
あくまで架空の世界、妄想の産物だから本気にしないように。もしも似たような人物が現実にいても恐らく気のせいだ。
『OVA:朝比奈ミクルの冒険エピソードα』
草原の中に佇む荘厳なる宮殿の中、一人の可憐な少女が目の前の杯に真摯な視線を向けている。
彼女の名は朝比奈ミクルといい、今現在特別な使命を授けられている所だ。
ちなみにそれを授けているのは杯型コンピューター“かいな”であり、その杯の上で偉そうにふんぞり返っているおっさんの様に見えるのが“かいな”を制御するメインプログラム“アラストオル”である。
アラストオルはホログラムで人型に似せて形を映し出し、コミュニケーションを取りやすくしているらしい。何故燃えさかっているかは禁則事項なので各自で想像してくれ。
「じゃあ、私が……」
「うむ、貴様にしかできん任務だ。我らの今を創るため、遥か時の彼方にて彼の者を守り抜いて欲しい」
「はい……私、がんばります!」
健気にも「やってやるぜ!」なポーズを取る朝比奈ミクル。うむ、可愛い。
「しかし貴様には如何せんエージェントとしての経験が足りん……そこで、本作戦に赴く前に一つ仕事を片付けてもらいたい」
「ふぇ? 仕事……ですか?」
「うむ」
彼女に告げられたのは目的の年代より少し先に進んだ未来での仕事で、自らの野望のために人類全ての女性を幼児体型な年齢で固定する薬を開発するチェリーブロッサム=草壁と言う人物を始末しろと言うものであった。
どう考えても一人の超能力者を見守るための前経験値としては血生臭すぎる任務であり、エージェントとはいえ17歳の女の子に課す仕事ではない。
「……私頑張ります! 絶対やり遂げて見せます!!」
………朝比奈さん、何かさっきよりも気合い入ってませんか?
さて場面は移り変わって朝比奈ミクルは未来人エージェントの秘密基地『天道丘』からの直通列車を下車し、駅の改札を通り抜けた。秘密基地の癖に直通列車はやばいんじゃないか? という質問は禁止だ。
何せとってつけたような設定だからな。
ちなみに旅行用の大きな鞄を抱えてヒナ鳥みたいにヨタヨタ歩く朝比奈ミクルは、時間遡航のため飛行場へと向かっている所である。
遠方の彼方に見えるあの奇天烈な形をした戦闘機、名前を「黒マンタ」と言うのだがそれに乗って過去の世界へ行くためだ……横文字にしないだけでこんなにも間抜けな響きになるのは何でかね?
「待ってた。乗って」
どこかの悪い魔法使いの宇宙人みたいに簡素な物言いで搭乗を促したのはこの黒マンタのパイロットであるイリヤかなだ。別に巫山戯てなどいない、本当にイリヤかなという名前なのだ。
本来一人分のスペースしかないような空間に朝比奈ミクルが自分と旅行鞄を無理矢理ねじ込む。設計ミスでない限りどう考えてもこれが二人乗り用のタイムマシーンだとは思えないが、これでも立派な合い乗り用なのだ。
「準備は良い?」
「あ、ちょっと待って下さい。まだ心の準備が」
「発進……!」
黒マンタの後部のブースターが火を噴く。一直線に滑走路を走り抜けたかと思うと今度は機体下部のバーナーが点火し、機体を無理矢理大空へと持ち上げた。
相変わらずむちゃくちゃな動きをする戦闘機……もといタイムマシーンだ。
右に曲がったり左にそれたり意味不明なところで回転したりとまるでB級映画の未確認飛行物体……そういえば一応そんな類だったよな、この機体。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
遠く響く悲鳴を残して空の彼方へ黒マンタが消えていく。
黒い塊が弾丸のように雲を突き抜け完全に姿が見えなくなるのを見計らって一旦ブラックアウト。
続いて紅蓮の炎を拭き上げながら爆破炎上している購買部の映像が映し出される。
怒声を張り上げながら生徒達が血みどろの争いを行っているのを背景に赤いバニーへと変身した朝比奈ミクルがマイクを持って頬を赤らめていた。
「きょ、今日ご紹介するのは私達の学園の中で最大の激戦区である購買部でしゅ! 皆さんに突撃レポートをしてみたいtひゃわぁ!!」
銃声と共に頬に十字傷のある軍曹が爆炎の中から姿を現した。その左手にはこれでもかと言わんばかりにコッペパンが詰まったビニール袋を抱えている。
次いで片手にハリセンを、もう片方の手に焼きそばパンと紙パックを抱えた書記が碧の髪を靡かせて飛び出す。さらにそれに続くように何というかパシリの最上級みたいなオーラを醸し出している男が両手一杯に食物を抱えて涙を流しながら脱出してきた。
そしてそれらの背後で大きな爆発が起こった直後にまたしてもブラックアウト。
最後の一こまにひび割れが映った事から推測するに、どうも爆発の余波でカメラが破壊されたようである。
全く意味のないCMが中断され、新たな場面が映し出される。
何故か黄金のように輝く月の下、朝比奈ミクルと身長2メートル級の大男が対峙しており、しかも朝比奈ミクルはいつのまにやらウェイトレス姿にドレス・アップ。
何が起こったんだオイ?
「そ、そんなことやってみなくちゃわかりませぇん!」
プンプン! と言う擬音が似合いそうな表情で朝比奈ミクルはそう言い、右手の人差し指で引き金を引いた。
「く、くたばりやがれこのロリコン野郎! ですぅぅぅ!!」
「うわ! ちょ、まっっっ!!」
制止の声もむなしくチェリーブロッサム=草壁の体の上半分が火薬の弾ける音と共に挽肉みたいにグチャグチャに潰れる。
しかし何故かモザイクも特殊効果も一切無しで、生で人がバラバラに切り裂かれる映像というスプラッター映画も真っ青の公開処刑的ワンシーンだというのに草壁博士の散り様は何だか物凄くギャグアニメチックだった。
具体的に言うと『うぎゃー キン○マン!』と言った感じである。
「や、やりました! ついに悪の科学者を倒しました!!」
「まだだ! つうか待ってって言おうとしたのに撃たないでよ!!」
「ふぇぇ!? な、何で生きてるんですかぁ!?」
その疑問は恐らくその光景を見ている人全ての台詞の代弁であろう。見るも無惨な挽肉と化した筈の草壁博士は何事もなかったかのようにさっきまで自分の下半身だったものに「どっこいしょ」等と言いながらよじ登っていた。
当然、未だぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~は登場していない。
自分の下半身だったものに足を使ってよじ登り、何処から取り寄せたのか、無茶苦茶縦長な白衣をもう一度身に纏った。
「ハハハハハ、僕は不死身なのだぁ」
そう言って草壁博士は両目から金色の光線を(間違いなく金色の光線である)発射した。
爆発と共に噴煙が巻き上がり、スーパーミクルガンが粉々に破壊される。おっと危ない、起爆した弾丸がこっちまで飛んできた。
向こうの方でも大変な事になっているらしく、草壁博士の下半身が上半身とは逆の方向を向いてあちこちを慌てて走り回っている。
「そ、そんな……どうしてあなたがビームを使えるの!? それは未来人だけが持つ必殺技の筈なのに!!」
それは初耳である。どうやらこの世界では未来人ならば誰でも目から光線を放てるらしい。どこで物理法則がねじ曲がったのかは知らないが危険な事極まりない。
「フフフフフフ……コレを見ろ!」
そう言って草壁博士はズボンのベルトを外し、チャックを全開にする。
ちなみに飛びだしてきたものは何だか語り手である俺の友人にそっくりな人間の頭であり、草壁の一物などでは決して無い。
「あ……朝比奈先輩………」
「あなたは……カミジョー当麻さん!?」
丁度股間の位置という間抜けなポジションにおいて今にも(主に酸素の問題で)死にそうな表情で、今し方名を呼ばれた人物はカミジョー当麻という未来人系超能力者であり、丁度朝比奈ミクルの後輩に当たる人物である。
明記しておくが俺の友人である上条当麻とは全くの別人であり、フィクションの存在だ。
「せ、先輩……」
「カミジョー君……どうして?」
「ははははははは、貴様等のスーパーパワーが欲しくなったから融合の材料にしてやったのよ!!」
随分と単純な思考回路である。
ちなみに肝心の合体(融合か?)形態の見た目がどう見ても肩車しているようにしか見えないのは気のせいだ。
さらに再度明記しておくが上条当麻とカミジョー当麻は全くの別人だ。もしもこれが上条当麻なら他人の股間代わりとなるなどという嫌すぎる幻想は即座にボコボコにしてぶち殺しているであろう。
「な、なんて非道い事を……あんまりです!」
「ははは、目から光線を出せる貴様等が悪いのだ!」
確かに非道い。理由が意味不明なのでさらに質が悪い。
台本とはいえここまで(小)悪党になりきれるのは何らかの才能か?
「さぁ、どうする。私を殺せばお前の仲間も一緒に死ぬぞ?」
と、長い戦隊ヒーローが誇る歴史の中でもたびたび見受けられる定番の台詞と共に草壁博士が構える。
そう言う台詞はマシンガンで細切れになる前に言うものではないだろうか?
「く…ど、どうすればいいんですかぁ?」
知りません。だからカメラに目線を合わせないで下さい。まぁスクリーンの向こうでは男共が「構わん、そのまま殺せ!!」などと唱和しているでしょうが。
「やれ……ミクル先輩」
「え…?」
突然カミジョーが息も絶え絶えな言葉でそう言った。
『黄昏よりも昏きもの』
「俺なんかに、構うな…アンタは世界を、未来の全てを救うんだろ? だったら、このまま俺ごとコイツを吹き飛ばすんだ」
「で、でも!」
『血の流れより紅きもの』
「やるんだ! ここでやらなきゃ名前も知らないたくさんの誰かが傷つく事になる! そうなる前にアンタの手で決着をつけるんだ!!」
「ダメです! 確かにここでミクルビームを使ったら未来は守られるかもしれません。けど……その未来にカミジョー君はいません。そんなの絶対にダメです!!」
『時の流れに埋もれし』
「大丈夫だよ」
「ふぇ?」
『偉大な汝の名において』
「俺の……俺が知ってる朝比奈ミクルは、俺の憧れた朝比奈ミクルはこんなちゃちな絶望に負けたりしねぇ。
他の誰でも、何者でも無い、朝比奈ミクル自身が起こす宇宙で一番の最強で無敵な奇跡の力で、最っ高に最っ高なハッピーエンドを用意してくれるって俺は誰よりも分かってる!!」
『我ここに 闇に誓わん』
だから……とカミジョーは俯き。
「俺はきっと今度も大丈夫だって、先輩なら何とかしてくれるって、信じてる!!」
『我等が前に立ち塞がりし』
相変わらず拙い癖に無駄にクサイ台詞が似合っているカミジョーとそれを真摯に受け止める朝比奈ミクルが交互に映し出される。
カミジョーの顔の位置や背景に移っている草壁の気怠そうな表情、遥か後方に映るオレンジ髪の魔術師等の諸々のマイナス要素がなければさぞヒーローマンガチックに仕上がっていた事だろう。
さて、そろそろ俺も非難するとしよう。
『すべての愚かなるものに』
「……わかりました」
『我と汝が力もて』
あぁ、ちなみにさっきから流れている呪文詠唱みたいなのについてはBGMの一種だと思っておいてくれ、じゃあな。
『等しく滅びを与えんことを!』
「み、ミクルビーーーーーーム!!」
『竜破斬-----!!』
朝比奈ミクルの片目が光ると同時、巨大なレーザー砲みたいな紅い閃光が突き抜ける。
その奔流の向こうに「やっぱ無理だろこれはぁぁぁぁ!!」というカミジョーの声と共に悪の科学者チェリーブロッサム=草壁が絶叫と共に消えていった。
全てを破壊し尽くす魔王の御力の顕現たる魔力の奔流が画面の全てを埋め尽くし、同時にブツリと音を立てて砂嵐が入った。
しかし次の瞬間、またしてもいきなり場面が移り変わる。
窓から日の光が差し込む白い病室の中、ベッドに寝たまま上体を起こすカミジョーの姿が映し出されていた。
どうやらカミジョー当麻の頑丈さはシャブラニグドゥも裸足で逃げ出すものだったらしい。
いや、これもある意味奇跡と言うべきか………?
そのカミジョーと言えばこれまた当然の如く朝比奈ミクルと談笑している。
ちなみにその脇には急遽エクストラ出演となったカミジョー当麻の奥さんA~Eが居るのだが詳しい描写と設定の説明は割愛しよう。
とりあえずお決まりのご都合主義な展開でカミジョー当麻は無事助けられたというわけだ。
と、いきなり窓の外から内側を映すアングルに視点変更、そのままゆっくりゆっくりとズームをワイドにしていき……やがて病室が豆粒程に小さくなった。
学園の全景がフレームの中に収まり、背景の空には自在法のような白い炎で大きく「お わ り」の文字が………。
みっみっみらくる みっくるんるん みっみっみらくる みっくるんるん
キャスト
朝比奈ミクル:朝比奈みくる(涼宮ハルヒシリーズ)
アラストオル:“天壌の劫火”アラストール(灼眼のシャナ)
イリヤかな:伊里野加奈(イリヤの空、UFOの夏)
チェリーブロッサム草壁:草壁桜(撲殺天使ドクロちゃん)
カミジョー当麻:上条当麻(とある魔術の禁書目録)
超監督:涼宮ハルヒ(涼宮ハルヒシリーズ)
演出協力:リナ=インバース(スレイヤーズ)
武器調達・爆破係:相良宗介(フルメタル・パニック!)
エキストラ:上条の彼女達(とある魔術の禁書目録)
その他雑用:キョン(涼宮ハルヒシリーズ)
最終更新:2006年09月26日 12:39