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エスケープ・クリスマス

  さてさて、ラノベ学園にてドギツイ毎日を送っている我が学友達よ。
  珍しくホワイトクリスマスとなった本日をどうお過ごしかな?
  普段はツンなあの娘のデレな部分を垣間見てるか? 普段からラブラブ故に今宵はさらに燃え上がってるか? 大切なあの人との心温まるその時を過ごしているか?

  俺か?
  俺は凄いぞ? こんな経験人生で初めてだ。味わった事なんて有るはずがない。
  正にビッグサプライズだ。驚天動地だ。明智光秀の反乱だ。
  何をしているか分からない……だって?











「何故か零戦に乗って必死の空中チェイスかましてんだよ文句あっかぁぁぁぁぁぁ!!?」
「おい、頭を引っ込めろ雪貞! 流れ弾に当たるぞ!!」

  そう平賀が叫んだ次の瞬間に、左頬の横数㎜の位置を機銃弾が突き抜ける。
  余りの速度に発生した空気の刃で頬が切れて血が流れた。
「ぬぉぉぉぉぉ! ちょ、今、掠めたって、ホント、たま、たまたまが掠めたって!!」
「良いから座れって……ヤバ!!」

  零戦の翼が円を描き、ロールしながら急降下する。
  つい今し方まで機体があった空間を幾つもの光線が通り過ぎていった。
  ………って、光線兵器!? てことは。
「っげ!?」
  回転する胃袋の中身を我慢しながら、あらかじめ備え付けてあったらしい双眼鏡に目を通すとそこには高速で飛び回るいくつもの機影が。
  よく見えるわけじゃないが……あれは間違いねぇ、自由惑星同盟が誇る宇宙戦闘艇『スパルタニアン』だ!!

「やべぇぞ平賀、スパルタニアンだ、スパルタニアン!!」
「分かってるよ! 他には何がある!? 倍率上げて双眼鏡でよく見てくれ!」
  他に何かあるかだとぉ?
  これ以上何を持ち出すって言うんだ全く。しかも零戦が右へ左へ下へ上へと目まぐるしく動くから見辛いんだよ。
  ほら、丁度今は地球と宇宙(おそら)が真っ逆さ………ま………。
「……………」
  落ち着け、気のせいだ。もう一度目ン玉ひん剥いて真下にあるものを確認してみろよ。
  そうだよ、いくら何でも俺達二人に戦艦持ってくるほどバカじゃねぇって。

「…………平賀」
「何?」
「敵はどうやらすごいバカらしい」
「……何が見えたの?」
「ヤン・ウェンリー先生お墨付きの船だ」
「って事は………」
「おうよ………」
  自由惑星同盟第13艦隊旗艦『ヒューベリオン』だぞオラァ!!
  どこまでアイツ等は俺のことが嫌いなんだよ!!
  明らかにやりすぎだろ!!
  あと、ついでに言うとわざわざクリスマスに追いかけ回すんじゃねぇ!!
  もちろん叫んでみても状況は変わらない。
  どうする、どうするよ俺?
  心の中の天使、エンジェル松澤よ。ライフカードを用意してくれ!
  『爆死』『墜落死』『炎上死』『銃殺刑』←どれ?

「って全部バッドエンドかよ!!」
「何叫んでんの? それにしても小さめの船とは言ってもレキシントン号の4倍はあるアレを何処に隠してたんだ?」
「雲の上にずっと隠れてたんじゃねぇか? 今さっき丁度真下にあったし---------ィィィィ」
  声がドップラー効果的な何かで夕闇の空に木霊する。
  先程と同じようにロールを描いた翼のすぐ隣をレーザーだかビームだかが突き抜けていく。
  平賀の超絶的なテクニックで光線を避け続けられたのは良いが、確実に追いつめられているらしく、徐々に弾道が近づいているような気がした。

「なぁ、何とかアイツ等倒せないのかよ?」
「無茶言うなよな……性能差が有りすぎるって。まともに撃ち合ったら勝負になんねぇよ」
「……だよなぁ」
  何せとっくに現役引退した第二次世界大戦の遺産VS遥か未来の宇宙戦争時代の高速戦闘艇の変則マッチだ。
  正直コアブースターとかXウィングみたいなSF的な何かが必要だ、どう考えても機銃ぐらいでなんとかなる相手じゃない。
  しかもヒューベリオンが有る限り敵の兵力は早々尽きやしないだろう。
  むしろ今こうして飛んでることが奇跡に近い状況なんだな。そこら辺は流石というかやっぱりというかガンダールブであると言えよう。

「何でこんな事になったんだかなぁ……」
 そう言いながらポケットから一枚の紙切れを取り出して、渋々と眺めてみる。

 [[生徒会]]より報告

 1・3記のものを通常クラスより隔離し生徒の安全を守る為捕獲されたし
 2・捕獲者には生徒会より賞金も用意する。なお金額は記の名前の横参照
 3・要捕獲者名簿

   上条当麻  (フラグ乱立者・210000000)
   堂島コウ  (フラグ悪用者・130000000)
   衣川健一  (攻略者   ・ 90000000)
   紅真九朗  (リアル光源氏・100000000)
   相良宗助  (爆弾魔   ・ 3600000)
   アブデル  (変体天使  ・150000000)
   サモエド仮面(ボン刀破壊魔・ 2500000)
   坂井悠二  (二股    ・ 85000000)

 4・賞金の請求は生徒会まで
  つい一月ほど前に張り出された、内容を要約すると賞金首のリストみたいなものである。
  どいつもこいつも一癖二癖ある連中で、遠目に眺めていた頃は「大変だなぁ~」などとのんきに構えていた次第である………が。
  驚くべき事に先日このリストに新たな名前が加わった。それにより俺は佳境に立っているというわけである。

  要捕獲者追加の報せ
 ・厳然たる協議の結果、以下の者を新たに捕獲対象者として加える事をここに記す。

   田村雪貞  (二股    ・ 65000000)
   平賀才人  (フラグ乱立 ・100000000)
  ちなみにこれがそのコピーだ。
  まぁ、何というか反論したくても反論できないというか、ある意味妥当というか、そろそろ来るんじゃないかと実は思っていたというか………。
  そんなこんなでこうなっているわけであるが、それにしたってタイミングが悪い。
  今日はクリスマスである。恋人達の聖夜である。ちょっと冒険するには区切りの言い日である。
  よりによって今日この日に襲撃を掛けなくても良いのではないか?
  おかげで平賀と二人、こうして零戦で逃げ回るハメになってしまった。

「これ、どうしよう?」
「明日にでも渡せば良いんじゃなねぇの? 喜ぶとは思うよ」
「……クリスマスだから意味があるんだよ」
「……だよなぁ」
  手の中のプレゼントを見つめつつ、二人して溜息をつく。
  冷たい夜風がそんな俺達を嘲笑うかのように操縦座の窓を叩いた。
  ちなみにこの「……だよなぁ」の応酬は二人合わせて最低二桁は繰り返している。

  チュイン!

「……何? 今の嫌な音」
  恐る恐る左の方を向いてみると………零戦の左翼から黒々と煙が上がっていた。
「ヤッベ、撃たれちまった!!」
  見れば分かる!
  ていうか見るの寧ろそっちじゃない!
  前、前見ろ! ついでに高さが段々とやばいこと
「あ~こりゃ落ちるな」
「にぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

  ブスブスと機体が音を立てながら地面へと迫る。
  周りの景色が流れる様はまるで下り坂を自転車で走る時の様。
  最大の違いは圧倒的に速度が上だと言うことなのだが、そんな事気にしている場合じゃない。
  これ俗に言う撃墜シーンですよね平賀サン!?
  こう言う場合は脱出装置でババーンと抜け出すのがセオリーじゃ?

「特攻仕様にそんなもん付いてるわけねぇだろ!」
「大日本帝国のバカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」










「で、どうして俺は生きてるんですかねぇ平賀さん」
「さぁ、どうしてか俺にも分かりませんねぇ雪貞さん」
「ガンダールブって空まで飛べるんですねぇ平賀さん」
「飛べたらどんなに楽だったかと思いますねぇ雪貞さん」

「良いから、君達二人とも静かにしてなさい。せっかくのクリスマスなんだから早く帰りたいでしょ?」

  こんの熟れ熟れ果実め………それが怪我人に対して掛ける台詞か?
  しかし、今日の所は大人しく言うことに従っておいてやる。
  何せ脚が痛いからな。明後日の方向に折れ曲がったマイフットに免じて今回だけ毒づくのも心の中だけにしておいてやる。
  だから、だからよぉ……頼むからポテチかじりながらテレビ見るな。せめてこっちを気にしろ!

「でも墜落したのにこの程度の怪我ってのはホントにラッキーだよなぁ」
「……同じラッキーにしたって何でお前は打撲ですんでんだよ。普通骨にヒビくらい入るだろ」
  あえて“普通”を強調する。
  それに対し平賀はまぁガンダールブだし? と答えやがった。
  偶にでいいからその左手のルーン貸してくれ。
「でも平賀君も君みたいに骨折してたら二人揃って寒空の下でおねんねよ? せっかく痛む体に鞭打って運んでくれたんだから感謝しなさい」

  そうそう。と胸を張る平賀に軽いパンチを入れる。
  確かに感謝はしているさ、ただ自分の不甲斐なさが許せないだけなんだよ。
  何せ完全な足手まといだったからな。
  そんなこと平賀は気にしないんだろうけど、俺の方はそう言うわけにもいかないんだ。

「………強くなりたい」
「今のままが一番良いと思うけど?」

  少年誌なら確実に名シーンに入るであろう人の決意を即否定か。
  今宵の毒々果実はテトロドトキシンを含んでいる様だ、恐れ入る。
  一応その意味を聞いておこうか。

「打撲程度で済んでたら、お見舞いになんか来ないんじゃない?」

  控えめなノックの音が室内に響いた。
  音の主が入室すると同時に、平賀と青い果実が退出する。

  成る程、確かに二人っきりというのはおいしいかもしれん。
  さしあたって、この何とか守り抜いたプレゼント……どういう風に渡そうか?


CAST

  • わたしたちの田村くん
田村雪貞
青い果実

  • ゼロの使い魔
平賀才人



  • 銀河英雄伝説
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最終更新:2007年12月09日 22:31
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