「キャアアア!」
夜のしじまに悲痛な悲鳴が響き渡る。
襲われているのはアヒル口で、どこか愛嬌のある一人の女性。
襲っているのは真っ赤なコートに真っ赤な帽子。見るからに怪しい一人の吸血鬼。
「だめよジローさん、いくらアタシが魅力的でもこんなところで吸血なんて」
「無駄ですミミコさん。吸血怪人B・B・Bとして生まれ変わった私はもう止められません」
「ダメ……うん、そうよダメ。やっぱり元<カンパニー>職員として……ちがう。
規則とか、そんなんじゃなくてああ、もう、とにかくこんなのダメ」
「え、いや、そのー……と、とにかくですね! ミミコさんには私の生贄になってもらいます」
「ダメェェェ!」
再び上がる悲鳴。だがそこに救いの主が現れる。
「そこまでだっ! 吸血怪人B・B・Bっ!!」
あわてて振り向く視線の先。見上げるビルの屋上に立つ一人の影。
「何者ですっ!」
「世界が闇に染まろうとも、人の心に光は灯る!
今こそ我は弱者の希望の光となり、悪を冥府へ導く灯火となろう。
変ぇ~~~~身っ! とうっ!!」
朗々とした声とともに、夜空を丸い頭の人影が舞う!
くるくると空中で回転して人影は華麗に着地。
遅れて小さな人影が、パンプキンの同僚で透明人間カトルに助けられてよっこらしょと登場。
そして決めポーズ。
「仮面のヒーロー! パンプキンライダー、参・上!!」
「ちびパンプキン、参・上!」
プロテクターに身を包み、カボチャ頭に黄色いマフラーなびかせた正体不明の正義のヒーロー。
『パンプキンライダー』とそのお供、ちびっ子ライダー『ちびパンプキン』の登場だ。
「さあ、吸血怪人B・B・Bよ。悪事は止めるのである」
「そうだよ兄者、じゃない、吸血怪人。人を襲うなんて悪いこと、僕に流れる正義の血が許さないぞ」
「くううぅ~!よく言いましたコタロー。我らが血統の誇りに満ちたその言葉、兄は感激です!!
ええ『必殺技がほしい』とあれだけの特訓をやった甲斐がありましたよ。今こそその成果をこの兄に。
では、BB団のみなさ~~ん。やっちゃってください」
ジロー、もとい吸血怪人B・B・Bの掛け声で、BB団の戦闘員が現れる。その数およそ30名。
「ちょ、ちょっと兄者。いくらなんでも多すぎだよ」
「心配するでない、ちびパンプキンよ。とぉうっ!」
言ってパンプキンライダーは夜空に高くジャンプする。
よくみるとジャンプする直前、透明人間カトルさんが呼吸を合わせて踏み切り台になってたり。
おかげで高さはいつもの倍(×2)、ひねりも倍(×2)、赤くなった頭部(へた付)の回転は通常の3倍(×3)!!
これによりパンプキンビームの威力は12倍。バッ○ァローマンもビックリの破壊力となる!
「ハ・ロ・ウィィィィィィン・カーニバル! エェェェンド、フェスティバル!!」
「Bィィィィィィ!!」
回転するパンプキンライダーはその目と口から怪光線を発射。次々とふっとぶBB団。
ちびパンプキンも巻き込まれてそうになっているが、やっぱりカトルさんが手を引っ張って必死によけさせる。
だが――。
「ぬうっ。頭部が煮えすぎて、力が入らないのである」
どこかの菓子パンヒーローみたいな台詞とともにパンプキンライダーが、がくりと膝をつく。
「ふっふっふ、力尽きたようですね。ではこの銀刀でそのカボチャ頭を薄くスライスして差し上げましょう」
危うし、ちびパンプキン。ピンチだ、パンプキンライ……。
「だああぁ!てめえら、いい加減にしろ!!」
「む?なぜであろう。ここからが良いところなのだが」
「みゅ?そうなのである。ここから我が大活躍するのに、Q三郎は何故止めるのであるか?」
「そうだよー。ここからの大逆転がかっこいいのにー」
怒鳴るQ三郎を前には、パンプキン、タナロット、コタローの3人が立っている。
3人ともカボチャ頭(一人は元々)を、高・中・低それぞれの高さでくらくら揺らすシュールな軍団だ。
「っるせぇ!ったく、正月の特撮映画に毒されてやがって。ありゃおめえ園児の付き添いで見たんだろうが。
大体何しにきやがったんだ、パンプキン。はやいとこ用件言いやがれ!」
「用件?おお、そういえば言い忘れていたな。
実は今度、子供たちに南瓜の素晴らしさを伝えるため、自主制作映画を作るのだが、
ヒーロー・敵首領・幹部はともかく戦闘員の数が足らぬ。そこでBB団のメンバーを借りに参った。
ちなみにタイトルは『パンプキンライダー』。南瓜の素晴らしさがよく出ているとは思わぬか?」
「みゅみゅみゅ!我はパンプキン・ハニー役なのである。このごろ流行のお尻のちっちゃな女の子さんである」
「はいはいはい!僕ね、僕ね、ちびパンプキン。すごいでしょー」
すごく嬉しそうに自分の役を紹介するタナロットとコタロー。
目つきは悪いし無愛想、悪の組織なのに、根っこの処で子供好きなQ三郎は何とも困った顔になる。
「いやおめえ、映画製作のメンバーをうちみてえな悪の組織に頼むって……その……なあ。
つーかよ、なんで『仮面ノ○ダー』なんだ。流石に古すぎねえか?」
「いやー、あのチープさが自主制作らしくていいんじゃないかと」
Q三郎の疑問に答えたのは、学園屈指の変人と言われる佐久間栄太郎だ。
付け髭に軍服、眼帯、何故かゴルフクラブを背負い、本人は大佐役らしい厳しい顔のつもりだろうが
どこかネジが一本緩んだような感じは相変わらずだ。
「それに古いからといってバカにはできぬ。変に凝ったストーリーより、わかりやすい面白さ。
でありながら原作への敬意を忘れぬ、実に見習うべき点の多い作品であるな」
「それに休みに特撮シリーズ連続50本上映会を敢行するとコレがかえって新鮮で」
ハッハッハと常軌を逸した目で、パンプキンと栄太郎は肩を組む。
それは無視して、Q三郎はこの場いるもう一人に目を向けた。
「大体、教頭。アンタも何してんだ」
Q三郎が指差す先には申し訳なさそうに縮こまるモレクの姿。
いつもの牛骨の体と礼服に、今日はやたらトゲトゲした飾りと巨大な髑髏のついた杖付き。
正に悪の大首領。ただ杖の後ろでカタカタ震えている様子は著しく威厳に欠けるが。
「大方ハマリ役だとか言われたんだろうけどよ、ホイホイ引き受けんなよ。お人好し過ぎるぞ」
「いえ、その、私もやりたいわけではないのですが……」
気まずそうにモゴモゴ反論するモレクの後ろから、そっと栄太郎が耳打ちする。
「教頭。コスプレと違って……」
「っ!」
~~ここから、回想シーン~~
「おいっ!聞いているのか痩せ牛」
「……え?ああ、はい。聞いておりますとも。ええ、はい」
「(大丈夫か?どうも年末にこっそり出てから様子が変だが……)ええぃ!シャンとしろ。シャンと!!」
「はいはい、ちょっとすみませんチェルノボーグ先生。教頭に用があるのでお借りしますねー」
チェルノボーグとモレクのいつもどおりのやり取りに、栄太郎が割ってはいる。
そのままモレクを引っ張りチェルノボーグから離れると、馴れ馴れしく肩に手をまわしながら言う。
「教頭。ビックサイト楽しかったですねえ」
「?!」
「いやー、教頭がコスプレ会場はここですって役員に連れられてきた時はビックリしたなあ」
「栄太郎殿もあそこに?! ではもしかして……」
「ハイ。実は、何をすればいいか判らず、マゴマゴしていた教頭をご案内しようかと思ったんですがね。
思わず足を止められるほど、気に入られた獣耳レイヤーがいるなら邪魔は野暮かと思いまして。
オオカミ少女のレイヤーでしたっけ?」
「いやっ、ですから、それは……つい似ていると思っただけで決して…………」
「いやいや、わかります、わかっていますとも。ところで教頭、ひとつご相談があるんですが……」
~~回想シーン、ここまで~~
「……よくお似合いで。あの人にもみせたいですなあ」
「Q三郎先生!ええっと、アレです、私も皆さんとふれあいたいと思いまして!!」
それからモレクによるQ三郎説得が始まった。
最初は参加していたパンプキンも途中で飽きたのか、コタr、もとい、ちびパンプキンと
タナロッ、もとい、パンプキン・ハニーと一緒に三人登場時の決めポーズを考えていた。
どの順番で並ぶかで揉め、それぞれが決め台詞のどこを担当するかで揉め、
戦隊じゃないから一人一人言うべきじゃネと揉め、すったもんだの議論が終わるころ、
モレクの粘り強い説得は、なんとかQ三郎を頷かせていた。
「いやー流石、教頭。助かります」
「さて次は悪の女幹部であるな?」
「みゅ。ならば鈴穂がいいのである。鈴穂は我とタクトの仲を裂く、まさに悪の権化なのである。ぴったりなのである」
「いやいやタナロットよ。やはり女幹部は毅然とした迫力をもつ女性がよいであろうな」
「あー、僕知ってる。鞭とか持っててビシバシ叩くんだよね?ナーガさんとかどう?」
「チッチッチ、甘いなコタロー。ハマりすぎもイカンぞ。何というかこう微妙にずれた所にこそ萌えポイントがある!
まあ獣耳で心当たりがいるのだが、そっちはよすとしよう」
「うむうむ、萌えとは実に奥が深いものだ。よりいっそうの精進が必要であるな、コタロー。
ちなみにエイタローの心当たり、確かに止すとするべきであろう。賢者殿にはまだ頑張ってもらわぬといけぬゆえな!」
こうして『南瓜』と『先輩』の暴走は続く……
「……ぅうぅ……まだ解放されないのですね(泣)」
ついでに『賢者』の嘆きもまだまだ続く。
CAST
パンプキン
カトル
佐久間榮太郎
タナロット
コタロー
ジロー
ミミコ
Q三郎
最終更新:2007年12月09日 22:33