「閣下は豆、撒かないの?」
「下らん。価値の見出だせないモノなぞする必要はない」
『魔王』と呼ばれる少年は一瞬本から目を離し、当然と言うかのごとくそう語る
「でもさ、周りがアレなのに俺たちだけのんびりってのも」
もう一人の平凡な少年は周囲の惨劇を眺め、何とか参加する方法はないか、と必死に語りかける
「…この状況をどうにかしてくれと言うのか?」
「…まぁそんなとこ」
実際は参加もしたいのだが、黒ずくめの少年から
ただならない威圧感みたいなものを感じ、つい頷いてしまったようだ
「…あやめ」
「え?あ、はい」
魔王の言葉で少女の輪郭が明らかになった。
それはまるで、いままで机の存在しなかった人形が、ふと気付くと机の上に存在しているかのように
「鬼を外に導きましょう」
―――凜
少女の詩で世界の空気が変わる
「夜の闇の牢獄より昼の光の監獄へ
訪れの無い自由を知りながら外へ出たがる愚かで全てを知る鬼を
闇の外へと導きましょう」
辺りから雑音が消え、あちこちから生徒や教師の悲鳴が聞こえた
…一人の教師と生徒の狭間の魔法使いが悪ノリで声高にニフ〇ム!と叫んでいる事を除いて
「…これで満足か?」
『魔王』と呼ばれる少年が不機嫌そうにそう話しかける
「…うん。十分だと思うよ」
もう一人の少年は顔を青くして応じる
「…そうか」
やがて黒ずくめの少年は、本に目を戻し何もなかったかのようにページを捲り始めた
ちなみに、武巳の密告により判明したこの神隠しから
生徒と教師を救いだすのに三日はかかったそうな
CAST
あやめ
空目恭一
近藤武巳
佐久間榮太郎
最終更新:2007年02月18日 13:12