《次は二人三脚でーす! くじ引きでペアになった人は所定の位置についてください》
「ねぇ子荻ちゃん、これが思考に思考を重ねた“策”の結果だとしたらぼくは君の策士という称号を疑うよ?」
ぼくは目の前に立つ子荻ちゃんに言った。
「“策”に結果などありません。“策”は所詮次の“策”への布石でしかありませんから」
子荻ちゃんはニコリともせずに言う。
「でもさ、何でぼくのペアが――」
ぼくは自分の右隣、ぼくの右足と左足をつなげている人物を見た。
「この競技で精一杯がんばるのがわたしなの!」
「りすかちゃんなわけ?」
「くじ引きの結果です」
「でも子荻ちゃん、くじに細工したでしょ?」
「当然です。他チームのくじも細工しておきました」
少し胸を張っていう彼女。
いや、胸を張っていえることじゃないでしょ……
「何を言っているのです。どこのチームだって多かれ少なかれやっていることです」
「…………」
ぼくはもう何も言わなかった。
そんなぼくを見て、子荻ちゃんは少し笑みを浮かべつつ言った。
「大丈夫です。わたしの策に、ぬかりはありません」
「はぁ……」
まったく、なんて戯言めいた体育祭なのだろう。
ぼくは左右のレーンに並ぶ選手達を見た。
Aブロック AくんとCくん。
Bブロック 桜くんとドクロちゃん。(そばには羊になったBくんがいた)
Cブロック ぼくとりすかちゃん。
Dブロック キョンくんと相良くん。
Eブロック 静雄さんと臨也さん。
……なんだかまともに二人三脚ができそうなメンバーではなかった。
なんだかんだ言っているうちに、“教授”が指令台に上っていた。
「そぉーーれじゃぁいぃーーーちについてぇ、よぉぉーーい――ドンんんッ!!」
同時に、物凄い爆発音がして、校旗が掲げられていた掲揚塔が、ロケットになって飛んでいった。
スタートダッシュを掛けたのはACコンビだった。
「うははははは!! この非常識人ばかりの中で、俺たちは唯一まともに走れるっ! やった! 俺たちの時代だ!(Cくん)」
「まて、落ち着け、ここは手堅くいくんだ!(Aくん)」
ほかのチームといえば、桜くんはドクロちゃんの肩に回した手が偶然胸に当たり撲殺されていたし、
ぼく達は身長のせいでこけていたし、
キョン君は匍匐前進を始めた相良君に引き倒されていたし、
静雄さんとイザヤさんにいたっては殺し合いを始めていた。
「ぐはははははは!! 俺達、絶好調!(Cくん)」
一気に駆けぬけるA&C、しかし。
《どっかぁぁぁぁぁぁぁぁん》
ゴール手前で爆発した。
「地雷を仕掛けておいた。今日は千鳥の許可を得ていたからな」
「なぁ、なんで俺はこんなハルヒ級危険人物と二人三脚をせにゃならんのだ?」
Dブロックの団長(かなめちゃん)は本気のようだった。
まぁとりあえず、AくんCくんのコンビは再起不能か。
どうやら匍匐前進をしていたのは爆風から逃げるためだったらしく、Dブロックチームは立ち上がり、歩くような速さなものの動き出した。
桜くん達も復活して動き始めている。
ぼく達と静雄さんたちと言えば……
「うぅ、キズタカとじゃないと《省略》できないのが私なの……」
「が、がんばろう、りすかちゃん」
「くそっ死ね! 死ね死ね死ね死ね!」
「シズちゃぁん。今は競技中だよ? 非常識じゃない?」
「イザヤぁ! てめぇもナイフ構えてんじゃねぇかぁ!」
そう言って、静雄さんがイザヤさんのナイフを弾いた。と――
弾かれたナイフは、真っ直ぐとりすかちゃんの方に――
「危ないっ!」
ぼくはりすかちゃんを庇うように前へ出かけて。
「助けるな!」
創貴君のこえ。なんでだ?このままではりすかちゃんが――
ぼくは一瞬躊躇。しかしその一瞬の間に、ナイフは――
《グサッ》
ナイフが、肉に刺さる音。
「りすかちゃん!」
ぼくは倒れたりすかちゃんを抱き起こすも、もう遅い。
彼女の傷口から、大量の血液が、どくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくと、流れてくる。
「それで、いい」
創貴君の声、それで、ぼくはこの策に、気付いた。
「さぁ、ここからはお前の独壇場だ、頼んだぞ、りすか」
「こ こ ろ え た」
地獄から、響くような声。
血だまりから、声が聞こえる。
「のんきり・のんきり・まぐなぁど(以下略)」
「ヒャァァァァッハァ!!」
誕生の哄笑を上げ、りすかちゃん――いや、りすかさんがぼくの横に現れた。
「ヒャハハハハハ! この芋虫どもめ! そんなんでこのわたしに勝てると思ったの!? 馬鹿、馬鹿馬鹿バァ―――――カァ!!」
「いいから、早く勝て、りすか」
創貴くんが、小学生とは思えない低い声で言った。
「つれないつれないつれないなぁ、創貴くぅーーん! わたしは一分しか居られないんだからぁーー」
「だからだ、時間切れになる前に、一位になれ」
「なっるほどぉぉぉぉぉぉ! 創貴くん、あったまいい!」
そう言って、りすかさんは指をパチンとならした。
するとゴール直前の相良君も、今まさに桜くんを撲殺しようとしていたドクロちゃんも、殺しあっていた静雄さんも、止まった。
否、彼らの時が――止まった。
もう一度、りすかさんがパチンと指を鳴らす。
ぼくたちはいつの間にかゴールに居た。
時間を、省略したのだった。
「策戦、成功です」
子荻ちゃんが言った。
「ふん、いい策だった。萩原子荻、あんた僕の駒になるつもりは無いか?」
創貴君が言った。
「ったく、なんて戯言な体育祭だ」
ぼくが呻いた。
CAST
いーちゃん
萩原子荻
供義創貴
水倉りすか
キョン
相良宗介
折原臨矢
平和島静雄
草壁桜
三塚井ドクロ
“探耽求究”ダンタリオン
Aくん
Bくん
Cくん
最終更新:2006年10月23日 14:11