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 故人席、と書かれた看板がひょっこりと――堂々と立っているのは何か違うだろうし、かといってしょぼくれた看板になっていても
困る気がするのでこのくらいの立ち方でいいのだろう――立っている席で、イールギットはぶつぶつと知人――黒髪おさげで白衣を纏うと
いう明らかに奇怪な格好の男相手に愚痴をつづっていた。
友人というほど親しくはなかったが、それでも顔見知りと呼べる程度には知っている相手ではある。
「……あーのラッツベインとかいう女の子、いったい母親は誰なのかしらね」
 話しかけている相手はなにやら図面を広げてせっせと筆を走らせるのに夢中になって――体育祭のゲスト席で図面を広げるおさげの白衣男と
あれば相当に目立つのだが、当の本人はまったく気づいていないらしい――おり、聞いているのか聞いていないのかは正直判断しかねた。
が、この際かまわずイールギットは続ける。
「これであのヒステリー女が母親だったりした日には……なんていうか、化けて枕元に立ってやるわ、わたし」
 それを聞いて――ヒステリー女、と聞いて反応したのだろう、ようやく白衣の男――コミクロンが筆を止めて
顔をこちらに向けてきた。
 重々しく腕組みなどしながら、ひどく深刻そうな声をあげる。
「うむ……これで母親がティッシだったりした日には……」
 コミクロンはそこでためらうように一度深呼吸し――想像するのも嫌らしかった――
「迅速にキリランシェロに制裁を加えねばなるまいな。この最先端テクノロジーによって!」
 ばん、と図面を叩く。
「……さっきから書いてるそれ、一体なんなの?」
「うむ。とある武器屋の親父から発注された品のための図面だ。確かユーマ・カスール・ナンブとか言ったかな?
子供に自分の武器を譲ってしまったので代わりが欲しいらしい」
そこでコミクロンは一度言葉を切ると、妙に誇らしげな態度で言ってきた。
「こいつはすごいぞ。異世界の技術の詰まった画期的発明品だ!」
「へえ。それ、どんな武器なの?」
「刀だ」
きっぱりと即答してくる。
「………………なんかすごく原始的な武器に聞こえるけど」
疑問に思って聞いてみるが、あまりコミクロンは気にしなかったようで返事はなかった。
と――そこで気配を感じてふと顔を上げる。
女子生徒がすたすたとこちらに歩み寄ってきたことに気づいた。
黒装束の自分たちと違い、普通の学生服を着た長髪の少女だが――あまり
平穏とは言えない様な、なんとなく危なげな微笑がなんとなく周囲に溶け込むのを拒否しているかのように見える。
「どう?それ、出来上がりそう?」
彼女はコミクロンのほうを向いてそんなことを言ってきた。顔見知りであるらしい。
この子は誰?と視線で促すと、コミクロンはやはり重々しげな仕草で答えてくる。
「うむ。我が科学の持つ偉大なる技術に感服した俺の助手その2だ」
「朝倉。朝倉涼子よ」
彼女はコミクロンのあまりといえばあまりな紹介にも――助手その1は誰なのか気に
ならないでもないが、今は関係ないだろう――特に表情を変えず、淡々と自己紹介してきた。
「あなたがこれを?」
コミクロンがせっせと筆を走らせていた図面を示して、イールギットは尋ねてみる。
「そ。同じ雑誌に載ってるよしみってことで特別に拝借してきたの……150ガーベラの設計図よ」
微妙にわけのわからない内容を含んでいる言葉に眉をしかめる。が――
「まあ、本人に了承はとってないけどね」
「それって盗難って言うんだと思うけど」
さらに聞き捨てならない台詞が飛び出し、イールギットはそちらについ反射的に指摘を入れる。
だがその朝倉という少女は気にした様子もなく、やはり危険そうな笑みを浮かべながらー―
「いいのよ、面白そうだから。『気にするな、ジャンク屋脅威のメカニズムだ』……ってところかしらね」
「そういうことだ。これでキリランシェロに科学の尊さを改めてその身に刻み込んでくれる!」
「……いや、わたしとしてはどっちかっていうとあの女のほうにやってほしいんだけどね」
意気揚々とした二人の前に、イールギットはそんなことを言うのがせいいっぱいだった。


CAST

  • 魔術士オーフェン
イールギット
コミクロン

  • 涼宮ハルヒシリーズ
朝倉涼子

  • スクラップドプリンセス
ユーマ・カスール・ナンブ

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最終更新:2006年06月22日 21:14
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