シェアード・ワールド・ノベルズ 妖魔夜行 影と幻の宴 著者/清松みゆき、柘植めぐみ、友野詳 イラスト/青木邦夫 角川スニーカー文庫

 

収録作:ナイトメア・ゲーム(清松みゆき)、蹄の守護者(柘植めぐみ)、影と幻の宴(友野詳)

 


363 :妖魔夜行:2011/02/14(月) 23:29:21 ID:kV0CayyK
「妖魔夜行 影と幻の宴」 友野 詳

これもすごくうろ覚え。

妖怪『猫女』でありながら普段は人間として社会生活を行うミケは、
同じく妖怪『蜃』の孝太郎が経営する映画館「幻燈館」でアルバイトをしている。
彼ら二人はどちらも人間に友好的な妖怪だが、友人の人間達に妖怪であることは明かしていない。

流行の作品ではなく旧作を上映する所謂「名画座」である幻燈館にはファンも居り、
その中にはミケの通う大学の映画制作サークルのメンバー達もいた。
ある嵐の夜、そのサークルのメンバーたちは幻燈館の内部を借り、ホラー映画の撮影をする。

しかしサークルメンバーたちは一人、また一人と、
異常に強い衝撃が加わったかのような無残な死体となって殺される。
その死体は圧倒的な力でひしゃげられており、何らかのトリックを使ったとしても
短時間では人間ではおよそ不可能なほどだ。
まるで、撮影予定だったホラー映画のストーリーが現実になったかのようだった。

その非現実的な殺害方法から、人間に害意を持つ妖怪の仕業ではないかと考えるミケと孝太郎だが、
犯人の妖怪の姿を見つけることはできずに死人が増えていく。

サークルの中心メンバーであり映画に異常なまでの情熱を持つ青年は、
そんな異常な状況の中でも、仲間の死体に向けてカメラを回している。
殺された者の中にはミケが好意を抱いていた男もいたため、
さすがに怒って食ってかかるミケ。

しかし青年は何かにとりつかれたように
「みんなが俺の映画に協力してくれているんだ」
「しっかり撮らないと死んだみんなに申し訳が立たない」
などと言って、ミケの抗議に耳をかそうとしない。

364 :妖魔夜行:2011/02/14(月) 23:34:42 ID:kV0CayyK
そしてついにサークルメンバーの生き残りがその青年一人になった頃、
ラジオからあるニュースが聞こえてきた。
「大学の映画サークルメンバー達が乗って撮影先に向かっていた車が
 スリップして大事故を起こし、乗っていたメンバー達は
 全員外に投げ出されて死亡した」
という内容だった。

驚いて、フィルムの編集をしていた青年の様子を見に行くミケと孝太郎。
しかし青年は消えており、それどころか他のメンバー達の死体や血痕なども綺麗に消えていた。

後に調べたところ、彼らの交通事故での死体は無残なもので、
ミケがその嵐の夜に見た死体の様子そのままであったらしい。
つまり、あの夜に幻燈館で起こったことは「殺されて死体になった」という殺人事件ではなかった。
まだ生者であるかのように振舞っていたサークルメンバー達が、本来の姿である死体に戻っていたのだ。

今から映画を撮ろう、と張り切っていたところで交通事故で死んでしまったサークルメンバーたち。
映画に対する強い“想い”が影響し、彼らは一時的に半ば妖怪となって、
死しても最後の映画を完成させるためにこの映画館まで辿り着いたのかもしれない。


 

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最終更新:2011年11月21日 00:40