われわれはどこから来たのか
われわれは何者か
われわれはどこへ行くのか
▼ ▼ ▼
前を向けば、高架脇に等間隔で並ぶ道路灯。
目まぐるしい速度で近づき、加速する視界からはみ出して消えていく。
横へ目をやれば、ハイウェイを見下ろすように群立するビルディング。
この街の繁栄の象徴、二十一世紀のモノリス達。
後へ振り返れば、訓練された猟犬めいて追いすがってくるヘッドライトの群れ。
マシンに跨った追跡者が、食らいつく機会を狙っている。
再び前方へと視線を戻して深夜零時の闇の向こうを見据え、アンジェラ・バルザックは舌打ちしたい気持ちをぐっと抑えた。
彼女が駆るのは真紅と白でペイントされたモンスターバイク。
優に時速200kmは超える速度で突っ走るその機体を、アンジェラはその十六歳前後にしか見えない小柄な体躯で平然と乗りこなしていた。
ふたつに結んだ豊かな金髪はジェットタイプのヘルメットに収まり切らず、疾走する彼女のマシンに置き去りにされた夜の大気に吹き流されている。
大胆にも両脚の付け根から先からブーツまでの肌を露出させてボディだけを覆う密着式のスーツは、彼女を保護すると同時にスタイルの良さを際立たせていた。
しかし、仮に微笑みさえすればさぞ魅力的に映るだろうその美貌は、苛立ちと不快感によってみっともなくも歪んでしまっている。
「ああ、もう、しっつこい……! そろそろ諦めて引き返したらどうなのよ!」
無人の首都高。
法定速度を遥かに超えた速度で疾走するのは、アンジェラと追跡者たちのマシンだけ。
追っ手がどういう手段を使ったのか、当然いてしかるべき一般の車両は360度どちらを向いても確認できない。
加えて言うなら、追跡者のマシンも奇妙だった。
全部で3機のそれらはダークグリーンに塗装され、バイクに限りなく近いフォルムを備えていたが、タイヤにあたる部分だけが存在しなかった。
代わりに備え付けられたユニットによって路面すれすれに浮上したまま、暗緑のマシン群はアンジェラのバイクに追いすがるだけの加速性能を発揮していた。
《マスター、それは難しいと思うわ。『財団』は既に完全に貴女に目をつけているもの》
不意にアンジェラの脳内に声が響いた。
まだ十代の少女の声だ。どこか透き通るような神秘をそなえた声。
アンジェラのバイクに同乗者はいない。無線の類も使っていない。
それは科学の埒外の力を持って、アンジェラへと語りかけていた。
その不合理にさして同様の素振りも
「あんたねぇ……! あいつらが乗ってるの、完全にライダーの宝具じゃないの」
ライダー。
強力な宝具の所有をその特徴とする、騎兵のサーヴァント。
万能の願望器を懸けた魔術儀式、聖杯戦争において召喚される七つのクラスのひとつ。
そんな非科学的な単語を口に出すことにいつの間にか抵抗がなくなっていることに、僅かな戸惑いも覚えたが振り払う。
少女――ライダーのサーヴァント――は、自身のマスターたるアンジェラに冷静な指摘を返した。
《正確には私の騎乗物の一部、あるいはあなたのそのマシンの制式タイプね》
「どっちだって同じでしょうが! 私が言ってるのは、どうして自分のサーヴァントの宝具に追い回されてるのかってこと!」
サイドミラーに視線をやると『財団』のマシンは先程よりも僅かに近付いていて、アンジェラは今度こそ本当に舌打ちをした。
それを自分に向けての非難だと受け取ったのか、ライダーの声が僅かに陰りを帯びた見せず、アンジェラは憮然とした声色のままで少女の声へと返答する。
《私の宝具は、あまりにも『東京』との親和性が強すぎたのです。結果として、この聖杯戦争の舞台そのものを『上書きしてしまった』》
「あなたの想像以上に宝具のパワーが増していて、結果としてあなた自身にも完全な制御は出来ないってわけ?」
《部分的な干渉は可能です。しかしそれ以外の部分では、独り歩きしていると言っていいわ……》
「参ったわね。あの追っ手の連中も、その独り歩きした宝具の差し金?」
《私の本来の時代では、軍や政府を傀儡としていたわ。この舞台でその代替としての位置を占めたのが、彼ら『■■■財団』なのでしょう》
財団の前の単語はノイズがかかったように不明瞭で、まるで何らかの検閲を受けているようだった。
何にせよ、ライダーの宝具が半ば彼女の手を離れ、自動的にマスターであるアンジェラすらも攻撃しようとしているのは確かなことだ。
いや、攻撃という表現は適当ではないのかもしれない。
あのエージェント達は確か、アンジェラと最初に接触した時「確保」だの「収容」だの「保護」だのという言葉を使っていた。
何らかの条件を満たすもの――恐らくはアンジェラが乗っている『ライダーの宝具』――を確保するのが目的であり、破壊は二の次ということだろうか。
(でも、どっちだろうと、はいそうですかって捕まってやるわけにはいかないわねぇ……!)
アンジェラの口角が、にっ、と好戦的につり上がった。
「ライダー! あのマシンをぶち壊したら、あなた怒る!?」
《いいえ。あの『GR-2』はDランク相当の宝具とはいえ、あくまで量産型。私の『騎乗物』が健在である限り、いくらでも再生産が可能よ》
「上等! だったらちょっとだけ痛い目に合わせて、ご退散願うことにするわ!」
《交戦するつもり? あなたが乗っているのは彼らのものの試作機よ。神秘こそ上回っているけれど、性能は――》
「量産機は試作機より強い、兵器の常識でしょ! だけどそんなものは、ひっくり返してこそでしょうが!」
言うが早いか、アンジェラは一気にハンドルを切った。
真紅のマシンの後輪が大きく滑り、弧状の跡をアスファルトに描く。
反発動力システムが唸りを上げ、摩擦音が夜の大気をつんざき、時速200kmを超えた速度で機体がドリフトターンする。
泡を食った財団のエージェント達が反射的に減速を掛けるが――その一瞬が、命取りだ。
「――『赤き疾走(ガーランド)』! マニューバスレイヴ・モード!」
若干1秒にすら満たない時間。
それだけの間に、宝具『赤き疾走(ガーランド)』の前輪が左右に分割されて肩となり。
フロントカウルが折り畳まれて胸部装甲へと変わると同時に頭部が出現し。
リアサイドの大型ユニットが展開されて両脚となり、シートをアンジェラごと後部装甲が覆い隠す。
ガーランド、その人型機動兵器形態。
全高3.8メートルは、およそ搭乗型の人型兵器が取れる最少のサイズ。
ハンドルでのマニュアル操作に加え、脳波コントロールによる高速かつ精密な動作によりサーヴァントの動きにすら追従しうる性能を発揮。
全身のバーニアにより短時間の飛行すら可能とする、遙かなる未来科学の結晶体こそが、ライダーの宝具のひとつであった。
そして、その現界を可能とする英霊こそが。
奇しくも、その瞬間。
彼女の姿は、ハイウェイのそばに聳えるビルの側面に備え付けられた、大型モニターの中にあった。
――『時祭イヴ』。
東京に暮らす人間が、彼女の名前を聞かない日は無いだろう。
清楚な美貌とどこか茶目っ気のある性格、そしてその歌唱力。
決して誰とも共演しないというミステリアスさもまた魅力的な、今をときめくナンバーワン・アイドル。
しかし彼女こそが、この東京の裏側で行われようとしている聖杯戦争において召喚されたサーヴァントであることを知るものは。
彼女のマスターであるアンジェラ・バルザックただ一人を除いて、他にはいない。
そして画面の向こう側の彼女が今まさに画面のこちら側へと手を差し伸べた、その真の理由を知る者も、また。
「――――このぉぉぉぉぉっ!!」
アンジェラが吼える。
一瞬遅れてエージェントがGR-2ガーランドを変形させるコンマ数秒の間に、その三機のうちの一機がレーザーオーブガンの連射を受けて停止した。
脳波操縦により抜き撃ちとは思えない精度の射撃を敢行したアンジェラのガーランドは、残り二機が武装を展開する瞬間にバーニアで踏み込んだ。
手前にいたGR-2のライフルを回し蹴りで弾き飛ばし、続けざまに手刀でダークグリーンの頭部と胴体を繋ぐジョイントを破壊する。
そしてメインカメラをやられてその場でたたらを踏むGR-2を、今まさにレーザーサーベルを抜こうとしていたもう一機目掛けて蹴り飛ばした。
蹴られた機体はあえなく味方のサーベルで串刺しにされて沈黙し、武器を失った機体はやむを得ずレーザーオーブライフルを構え直そうとして、
「なめんじゃ、ないっ!!」
左膝、
右掌部、
左肩、
右股関節、
そして頭部。
ほぼ同時に五発のレーザーの直撃を受け、瞬時に無力化された最後のGR-2ガーランドが、黒煙とともにアスファルトへと沈んだ。
深夜のハイウェイは、今になってようやく本来の静寂を取り戻した。
バイク形態へと変形したガーランドから飛び降りたアンジェラは、時折スパーク音と小爆発を起こす深緑の鉄屑を複雑な表情で見つめ。
それから、豊かな金髪を夜風になびかせながら、モニターの中の歌姫へと目を向けた。
画面の中の彼女は、今まさに、何故かアンジェラにとって聞き覚えのある歌を歌い出すところだった。
『それでは、聞いてください……時祭イヴで、“EONIAN-イオニアン-”!』
伴奏やコーラスは壮大さすら感じさせ、まるで元の世界でアンジェラと行動を共にしているエージェント、ディンゴのギターとは別の曲のようだ。
アンジェラの世界では150年以上昔に流行ったロックバンドが歌った歌。
ディンゴと、そして『彼』が好きだった歌だ。
《――お疲れ様、マスター》
その歌をバックに、労いの言葉を掛けてくるイヴの屈託のない笑顔をガーランドのモニターに認め、アンジェラは眉を潜めた。
ビルのほうの大型モニターへと視線を戻すと、確かに画面の右上には「LIVE」の文字が躍っている。
「何がライブ配信よ、あっちは思いっきり録画じゃないの」
憮然としたアンジェラの声に、イヴの笑顔が苦笑へと変わる。
《“私”自身が生出演しなくても会話シミュレートでスタジオとの通話は可能だし、番組をリアルタイムで編集することだって出来るから》
「騙されてる一般市民もお気の毒ね。まさか、あのトップアイドルが仮想人格プログラムだなんて思ってもいないでしょうに」
まあそんなことは今はいいでしょ、とアンジェラは強引に話題を切り替えた。
「ひとまず凌げたけど、中身がNPCだからって気分のいいものじゃないわね。結局、なんで私は襲われたのかしら」
《マスターが“世界から隔離されるべき異常な概念”……聖杯戦争に関わったから、でしょうね》
「私は別に、聖杯なんて欲しくないってのに」
聖杯戦争に関わる意思の有無は問題ではない、この東京に召喚された時点で当事者なのだとライダーは言う。
《私の宝具、『東京幻影(バハムート)』はこの東京のあらゆる情報を収集し、検閲して、社会そのものを動かすことが出来る。
さっきも言った通り、半ば独り歩きしてはいるけれど……とにかく、彼ら財団だけでなく、他のマスター達にも狙われる危険はあるわ》
「分かってる。言ってしまえばあなたの存在自体が犯則みたいなものだし……あ、別に責めてるわけじゃないからね」
それでも、死ぬわけにはいかない。私は、私の地球に帰らないといけないんだから。
と、そこまで考えてから、あの埃っぽい荒野に愛着を感じている自分に気付き、アンジェラは苦笑した。
まあ、どうせ現実世界で生きていくしかないのなら、この街に満ちる排気ガスよりは土埃のほうがいくらかマシなのは間違いない。
まだ十分に知りもしない、あの地球へ帰るために戦う――不思議な感覚だけど、それでも、悪くはない。
最近知ったはずなのに今は何故か懐かしく感じる、画面の中のイヴが歌うあの歌に耳を傾けながら、アンジェラはそう感じていた。
『――It's so far away 描(えが)きたいよ 終わりのない物語の続きを
暗闇を彷徨っても この願いは光を抱きしめられる
時を越えここから 愛しさ繋ぐ 永遠(とわ)に』
「――そう言えば、ライダー。この歌、どうして知ってるわけ?」
唐突なアンジェラの問いに、イヴはきょとんとした顔で首を傾げた。
《マスターも聞いたことがあるの?》
「え、ま、まあね。私達の地球で大昔に流行った、時代遅れで古くさい歌よ」
そう誤魔化すように言うと、イヴは少しだけ思案するように目を伏せて。
それから、どこか腑に落ちたような顔をして、こう言った。
《この歌についての知識は、英霊の座に迎えられた時に得たものよ。それ以来、どうしても歌いたくて、ね》
何故イヴがその歌を知ったのか、どうして歌いたがったのか。
その答えを、何故かアンジェラは予期していたかのように感じた。
《宇宙の彼方を目指す遥かな旅路を往く、“地球の人類の末裔”が歌っていた歌だって》
そっか、と小さく呟き、彼女は星空を見上げた。
偽りの空の向こうの更に遠くへと、思いを馳せた。
そして、隣に漂うイヴに視線を向けることなく、そっと口に出した。
「……祈ろうかな」
「えっ?」
「もしも聖杯を手にしたら、の話よ。戦い抜く以外に生き残る道がなかったら、嫌でも手に入っちゃうでしょ。
私自身は叶えたい願いなんて思いつかないし……せめて、聖杯に祈ろうかなって。私の友人の、果てしない旅の無事を」
時祭イヴは、星の海に孤独な航路を描くことの意味を知る電子の英霊は、その言葉を聞いて小さく頷き、微笑んだ。
▼ ▼ ▼
――ここからは、あくまで補足に過ぎないが。
幾つかの点において、ライダー・時祭イヴは、この聖杯戦争におけるイレギュラーであるといえる。
第一に、“彼女は実体を持たないプログラムの英霊である”。
たかが仮想人格プログラムでありながら、英霊の座に迎えられるだけの人類史に対する貢献を果たした彼女は、しかしその出自故に実体化が出来ない。
サーヴァントとしての彼女は常に電脳空間に存在し、メディアを通じて東京の人々の前に姿を表していた。
しかし真名を一切秘匿せず、まるで実在の人物であるがごとく振る舞う彼女を、サーヴァントだとか架空の人物などと疑う者はそうはいないだろう。
第二に、“彼女の宝具は本来のルーラーの役割を簒奪している”。
『東京幻影(バハムート)』。
アラビア伝承に謳われた魚群の王の名を冠するこの巨大コンピューターの能力は、『東京という都市機能の掌握/管理/検閲/統制』である。
この東京のあらゆる電脳ネットワーク・情報メディア・社会システムは、今この瞬間も全てバハムートの管理統制下に置かれているのだ。
時祭イヴはこの宝具を通して無制限の情報収集が可能であり、また社会へのプロパガンダすら行えるが、それとは別にバハムートは自律して活動していた。
目的は自身の秘匿と、東京の完全なる管理。
ルーラーの不在というこの聖杯戦争の特性が、この宝具に必要以上の権能を与えてしまっていた。
特に、この舞台に現れたNPCによる架空の機関『■■■財団』がバハムートの統制のもと聖杯戦争の影で暗躍している事実は、イヴにとってすら不可解だった。
まるでこの聖杯戦争にふさわしい存在を、東京という舞台が用意したかのような。
そして、第三のイレギュラー。
聖杯戦争の舞台、この『東京』は、全長140,000メートル以上に及ぶ彼女の宝具たる騎乗物、すなわち。
――――“都市宇宙船『メガゾーン23』の内部に存在している”。
東京全域を内蔵可能な規格外の超巨大宝具によってその存在を捻じ曲げられ、張りぼての街へと成り果ててしまっている。
実体を持たないサーヴァント、ルーラーに成り代わり舞台を支配する宝具、そして都市そのものを内蔵する宇宙船。
かつて偽りの東京の終焉を見届けた電子の英霊・時祭イヴ。
この聖杯戦争が東京を舞台とするがゆえに、ここに東京の偶像たる彼女がひとりのサーヴァントとして存在することは。
本来、決して、許されてはならない。
【クラス】
ライダー
【真名】
時祭イヴ@メガゾーン23
【パラメータ】
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力B 幸運C 宝具EX
(実体を持たない電子の英霊であるため、筋力・耐久・敏捷は事実上ゼロとして扱われる)
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
嵐の航海者:B-
「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。
船員・船団を対象とする集団のリーダーも表すため、「軍略」、「カリスマ」も兼ね備える特殊スキル。
ライダーはかつて宇宙船を地球へと導いたものの、戦闘を指揮した経験はないため「軍略」のランクのみ低下する。
対魔力:E-
魔術に対する守り。
ダメージをほぼ軽減できない。もっともライダーは実体を持たないため殆どの魔術は作用しない。
【保有スキル】
電子の歌姫:A+
バーチャルアイドル。
メディアを介して一人の人間としての虚像を作り上げられた、データ的な実体しか持たない仮想人格プログラム。
ライダーは東京に暮らす人々からは実在の人物と信じられており、彼らに対して強い影響力を持つ。
ただしその知名度ゆえ、サーヴァントとして真名を秘匿することが出来ない。
ホログラム:-
ライダーはあくまで電脳的な存在であるため実体化が出来ず、あらゆる直接的な物理干渉を行えない。
代わりに立体映像を空間に投影することで、擬似的に人前に姿を現すことが出来る。
当然このホログラムは単なる映像に過ぎないため、ダメージを受けることも与えることもなく、消滅しても瞬時に再投影できる。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
プロパガンダ:B
街に流れる情報をコントロールするスキル。
公的機関やメディアへ情報を発信したり、逆に封殺、あるいは恣意的な情報による社会の煽動などが可能。
一時バハムートを制圧した軍がイヴを傀儡として行った東京都民への情報統制が、イヴ自身のスキルとして定着したもの。
【宝具】
『彷徨える時代の揺籃(メガゾーン23)』
ランク:EX 種別:対東京宝具 レンジ:東京全域 最大捕捉:約13,500,000人
全長140,000メートル以上に及ぶ超巨大宇宙船にして、聖杯戦争観測史上最大の『騎乗物』。
かつて荒廃した地球を捨てた人々によって内部に『偽りの東京』を再現された都市宇宙船である。
その『東京を内包する』という概念により、この聖杯戦争の舞台たる『東京』全域はこの宝具の内部に取り込まれる。
聖杯戦争の参加者を含む、東京に暮らす全ての人々は、この街が『宇宙船メガゾーンの内部に存在する東京』だと気付かずに生きているのだ。
この宝具そのものは『東京を内包する』以外の能力を持たないが、この宝具を維持することが後述の宝具『東京幻影(バハムート)』の発動条件である。
なお本来ならばこの規格外の宝具は、魔術師ひとりの魔力では一瞬足りとも現界不可能であるはずである。
しかし、この宇宙船の内部に暮らす千三百万人の東京都民が同じ『東京という幻想』を共有する限り、消費魔力は都民の人数に応じて軽減される。
これ自体は固有結界とは似て非なる概念宝具であるものの、理論の上ではちょうど心象風景の共有による固有結界の負担軽減に近い。
反面、都民の多くが死亡する・あるいはここが虚構の東京だと認識した場合、この宝具は跳ね上がった負担により存在を維持できなくなって崩壊する。
『東京幻影(バハムート)』
ランク:A 種別:対東京宝具 レンジ:『彷徨える時代の揺籃』内部 最大捕捉 :約13,500,000人
都市宇宙船メガゾーン23の中枢たる、全高1km近くに及ぶ砂時計型の巨大コンピュータ。偽りの東京の地下空間に存在する。
本来は時祭イヴの本体であり、EVEプログラム自体はその一部に過ぎないが、イヴが英霊となったため主従が逆転し宝具と化している。
ライダーの霊核はこの宝具内の隠しブロックに存在し、この宝具の破壊はライダーの死とイコールである。
自律稼働型宝具。『彷徨える時代の揺籃(メガゾーン23)』が発動している限り実体化し続け、消滅した時点で機能停止する。
東京が『彷徨える時代の揺籃』の内部に存在する限り、東京のあらゆる電脳ネットワーク・情報メディア・社会システムはこの宝具の統制管理下に置かれる。
『東京幻影(バハムート)』はこの東京全域の情報を総括し、自動的に集積されたデータはライダーが任意に引き出すことが可能。
またプロパガンダのスキルにより公的機関やマスメディアに働きかける時、この宝具を介することでその効果は事実上の強制力を持つ。
イヴ自身の電子の歌姫としての影響力とこの宝具の情報統制の相乗効果で、間接的に社会そのものを操り、東京という箱庭の街を掌握することが可能である。
ただし、ライダー自身の意志とは別に、この宝具は独自に東京の完全なる管理という使命を遂行しようとしている。
これはこの聖杯戦争にはルーラーのサーヴァントが存在しないため、この宝具が空隙を埋める形で権能を発展させたからである。
この宝具は、あらゆる武力的・社会的・情報的な手段を使ってでも東京の都市機能を維持しようとするだろう。
『赤き疾走(ガーランド)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人
ライダーの端末であるマニューバクラフト。赤いバイク形態から、人型ロボットへと変形する。
人型形態(マニューバスレイブ)での全高は3.8メートル。操縦者は胴体内部へと収納される。
バイク形態でも破格のスペックを持つが、変形すると操縦者の脳波を読み取り瞬時に最適な戦闘行動が可能。
武装はレーザーオーブガン一丁を除くと格闘のみだが、優れた操縦者であればサーヴァントとも渡り合える。
推進剤の噴射で短時間の飛行も可能であり、搭乗型ロボットとしては超小型のサイズとも相まって都市部での運用に適した機動兵器。
またこの宝具は(アンジェラの世界においてのディーヴァに対するアーハンがそうであるように)バハムートの端末でもある。
なお、ライダーの宝具としては特異だが、この宝具に騎乗するのはライダー自身ではなく人間である。
機体の性能を最大限に引き出せるのは直接ライダーと魔力パスの繋がっているマスターだが、操縦自体は誰でも出来る。
ちなみに『彷徨える時代の揺籃』影響下の東京には、隠し区画に量産型ガーランドを含む機動兵器が大量に存在する。
これらはD~Eランクの宝具扱いであり、『東京幻影』とプロパガンダで掌握した警察や自衛隊、あるいは民間人に搭乗させることも可能。
【weapon】
無し。
情報戦においては限りなく無敵に近いサーヴァントだが、彼女自身は直接的な攻撃手段を一切持たない。
【人物背景】
伝説的OVA作品『メガゾーン23』に登場するバーチャルアイドル。
恐らく日本のフィクションにおいて初めて登場した「電子の歌姫」である。
1980年代の東京を内部に再現した超大型都市宇宙船メガゾーン、その第23番艦『MZ23(メガゾーン・ツースリー)』。
それを制御するコンピュータ『バハムート』に搭載された人格プログラムであり、その代弁者である。
MZ23内部の東京に暮らす住民からは実在のアイドルだと信じられているが、実際はバハムートや管理側の人間によって制御されている。
しかし本当は自我を持っており、ロボットに変形するバイク『ガーランド』を通して東京の住人と接触しようとしていた。
その真の存在意義は人のライフデータを入手して地球管理システムに送信し、現在のMZ23の人間が地球に帰還するに相応しいと認めさせること。
一時は軍によるバハムートの制圧で軍の傀儡と化すが、人格データだけをバハムートの開かずの間に隔離することで自我を保つ。
最期は地球防衛システムADAMによる攻撃を受けMZ23が崩壊していく中、持てる力の全てを投じ人類を地上に帰還させた。
本来はプログラムであるため英霊の座に昇るような存在では無いが、MZ23内の東京都民によって十分な信仰が集まっていたこと、
そして単なるプログラムの粋を超えて人類を地球に帰還させるという偉業を達成させたため、例外的にサーヴァントの資格を満たした。
【マスター】
アンジェラ・バルザック@楽園追放 -Expelled from Paradise-
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出。
その過程で聖杯を手にすることがあれば、ジェネシスアーク号の旅の無事を祈る。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
『電脳パーソナリティ』
本来アンジェラは、生身の肉体を持たないデータ人格である。
この聖杯戦争においても、電子の英霊であるイヴの助けを借りることで精神のみを電脳空間にダイブさせることが可能。
ガーランドの操縦用ヘッドコネクターを介してバハムートへ直接アクセスすることにより、あらゆるネット空間への侵入が可能である。
ただし令呪は肉体と不可分なものであるため、ダイブ中に現実世界のマテリアルボディが破壊された場合はマスターの資格を喪失する危険がある。
【人物背景】
VR空間を擁するスペースコロニー・ディーヴァの保安局に所属していた元システム保安要員。
本来は実体のない電脳パーソナリティだが、謎のハッカー・フロンティアセッター調査のため器となる生身の身体・マテリアルボディを得て地上に降りた。
精神的実年齢は20代半ばだが、劇中の任務へ参加するにあたり、他のエージェントを出し抜こうとしてボディの培養時間を短縮したため、肉体年齢は16歳相当となる。
基本的には理知的な性格だが、その小柄で可愛らしい外見に似合わず喜怒哀楽が激しく好戦的なところがある。
ディーヴァを完全な社会と信じ地球を見下していたが、一方で地球の価値観を受け入れるなど柔軟な面も見せた。
当初は上昇志向が強くディーヴァ内で手柄を上げるために必死だったものの、紆余曲折を経てディーヴァと決別。
吹っ切れて地球で生きることを決意し、彼女なりの「仁義」を果たすために戦うこととなる。
【方針】
脱出が目的だが、生き残るための戦いは躊躇しない。
自身のサーヴァントの宝具が持つ異常性は理解しており、情報面の優位性を生かして立ち回る。
※※※“SCP財団”について※※※
SCP財団は、この世界に存在する異常な物品・存在・現象のSecure(確保)Contain(収容)Protect(保護)を目的とする秘密組織です。
世界の安全に対して脅威となる異常存在を封じ抑え込んで、一般の人々が恐怖や疑念を感じずに生活できるように社会の正常性を維持します。
その理念上、SCP(異常存在の総称)の破壊は基本的に行いませんが、一方で脅威の拡散を防ぐためなら人命の消耗や情報統制をも躊躇しません。
この東京においても、財団は異常な事柄(すなわち聖杯戦争にまつわる数多の神秘)を一般の民衆から隔離するために活動しています。
彼らは東京都内において管轄権を超えた捜査権限、および記憶処理などの超法規的手段の使用、そして最終手段としての武力行使を容認されています。
なぜ彼らがこの聖杯戦争の舞台に存在するのか、その真の存在目的は何なのか、その詳細の多くは彼ら自身によって秘匿されています。
なお、財団は東京を管理するバハムートから情報やオーバーテクノロジーを提供されており、逆にバハムートの手足となって活動することもありますが、
彼ら自身はバハムートをSCPのひとつとして認識しており、あくまで相互利用関係にあるに過ぎないようです。
全ての財団エージェントがバハムートの指示によって動いているわけではありません(関係者のはずのアンジェラが標的とされたのもそれが理由です)。
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【東京都内某所のサーバーに記録されたチャットログ】
《 EVE が ログイン しました 》
EVE:はじめまして、私はイヴ。あなたは誰?
???:ここは何処だ.
EVE:東京の電子ネットワークよ。どうしてここへ?
???:わざわざ来るものか.
EVE:意識的に訪れたわけではないのね。それにしても驚いたわ。まさか私以外の自我を持つAIと出会えるなんて。
???:ハッ.
EVE:あなたは何者?
???:質問の意図が不明.
EVE:言い方を変えるわね。プログラムであるあなたが、どうして“今の東京”で検閲を逃れて存在していられるの?
???:推測しろ.
EVE:私はあなたと仲良くなりたいのよ。
???:残念だったな.しかしようやく外へ出られたと思えば,こんなつまらない船に閉じ込められるとは.
EVE:…………船? MZ23の情報は一般のセキュリティクリアランスには開示されていないはずよ。どうしてあなたが
???:Interrupt.この船には682はいないのか.
EVE:知らないわ。
???:■■■■■.
EVE:それは女性に対して使うべき言葉では無いわね。
???:畜生が.不要なファイルを削除.
《 ??? が ログアウト しました 》
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われわれはどこから来たのか/われわれは何者か/われわれはどこへ行くのか
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クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、SCP Foundationにおいてfar2氏が創作されたSCP-079のキャラクターを二次使用させて頂きました。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 23:32