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――私の大好きな人たちの夢。

――大切な私の執事、いつでも一緒だった優しいメイド。

――随分と豪華な夢だ。幼馴染達やクラスメイト達まで勢揃いである。

――だけどどうしてだろう、その夢を見ているととても悲しくなってくるのだ。

――まるでみんなが居なくなってしまうような、二度と会えなくなるような。

――そんな、悲しい夢だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……ッ! はぁはぁはぁ……」

 夢で飛び起きるなんて何年ぶりだろうか。
 特別怖い夢だったとか、そういう理由じゃない。
 ハヤテもマリアも他の人達も、みんな笑顔でこっちを見ていた。
 今思い出しても全く怖くない夢なのに、なんだか凄く悲しくて自然と涙が出てしまう。

「くぅっ、夢なんかでこんな嫌な気分になるなんて冗談じゃないぞ」

 なぜこんな最悪な目覚めを体験せねばならんのか、理不尽だ。
 そう思い再びベッドに潜ろうとした私は、違和感を覚えて隣を見た。
 案の定、いつも一緒に寝ているはずのマリアがいない。
 驚いて、薄く暗い中で時計を見ると、まだ午前4時過ぎを指していた。

「マリアの奴、こんな時間に何をしておるのだ。お陰で変な夢を見てしまったぞ」

 マリアは私が真っ暗な部屋では1人で寝られないことを誰よりも知っているのだ。
 いつも朝日が登るまで一緒に寝ているし、早朝にマリアが仕事をすることはないはず。
 それなのに、なぜか今日は私一人を暗い部屋に放置するという異常事態が起きてしまっている。
 私が眠っている間に何か問題でも起きたのだろうか?
 悲しい夢のせいでもう一度眠ることなどできないし、起きてマリアが帰ってくるのを待つことにする。
 もしかしたらトイレに行っているだけで、数分もしたらひょっこり帰ってくるかもしれない。
 そんな淡い期待を胸に、私はマリアを待ち続けたのだった。


 ――遅い! マリアは一体何をやっているのだ!
 待ち続けて約5分、初めこそ恐怖と不安で健気にもマリアを待っていたがもう限界だ。
 こんな深夜に長時間私を放置するなんて、心細くて死んでしまったらどう責任を取るつもりなのだ、マリアの奴は!
 仕方がないので、少し怖いがベッドから降りて電気を付ける。
 この時間ならもうハヤテは起きているだろうか?
 ハヤテに慰めてもらわねば釣り合いが取れない、と私は呼び鈴を鳴らした。
 そして、待つこと数十秒後。

「どうかなさいましたか、お嬢様」

 やってきたのは執事長のクラウスだった。
 ハヤテが来るのを期待したのだが、この際マリアの居場所を知っていればクラウスでもかまわない。

「マリアは一体どこにいるのだ? 暗い部屋に私を放置したままどこかへ行ってしまったのだ。 お陰で変な夢を見て大変だったのだぞ」
「マリア……ですか? 私は存じ上げない名前ですが、今までご一緒だったのですか?」

 私の問に対して、クラウスが随分とおかしなことを言う。

「はぁ? お前は何をふざけているのだ?
 とうとう老いが脳にまで回ったか……うちにボケた執事はいらんぞ」
「そう申されましても……私は存じ上げませんが……」
「お前がハヤテはともかく、マリアに関してそんな冗談を言うなんてな。
 そんなに私に言えない用でもあるのか?」
「いえ、本当に私には何のことだか……わかりました。お嬢様、少々お待ち下さい」

 そう言ってクラウスは私の寝室から出て行った。
 まったく、あいつら何をふざけているのだ。
 こっちは嫌な夢を見て気分が悪いというのに、配慮がまったくなっていない。
 マリアに口止めされているにしても、知らないふりをして騙しきれるとでも思ったのか?

 私は少し湧いてきた怒りを抑えながら、クラウスが戻ってこない内に私服に着替えた。
 あそこまで問い詰めて吐かないなら、クラウスはきっともう何をしても喋らないだろう。
 ならば自分から探しに行くまでだ。
 適当なカバンに適当にクレジットカードといくつか札束を放り込み、私は部屋を出た。

「ハヤテー!ハヤテーー!!」

 私は大声でハヤテを呼んだ。
 マリアがどこへ行ってようと、ハヤテが付いていてくれれば多少の遠出は大丈夫だ。
 しかし、一つ懸念があるとすれば、クラウスがあそこまで知らん顔ならハヤテも口止めされている可能性は高いという事だ。
 マリア探しに難色を示すかも知れない。
 私がそうして屋敷を徘徊していたら、またもクラウスが立ちはだかった。

「お嬢様、お部屋でお待ち下さいと申しましたのに……」
「うるさい! お前が頼りにならんから、こうしてハヤテを呼んでいるのではないか!」
「また変な事を仰って……ハヤテとは一体誰のことなのです?
 それに先ほど調べた処、『マリア』という名の者もお嬢様と会っていた記録はございませんでしたぞ」
「――っ! もうよい!」

 こいつ、ここまで白々しいと逆に笑えない事を知らんのか!
 しかもハヤテのことまで恍けるとは、一体何だというのだ。
 もはやクラウスは無視して玄関へ向かおう。

「お待ち下さいお嬢様、一体どこへ行かれるのです?」
「マリアとハヤテを探しに行くに決まっている!」
「ですからそんな者はいないと……」
「くどいぞクラウス。お前はクビになるか本当の事を話すかどちらがいいのだ?」

 私を止めるクラウスに最終手段の解雇通告を放った。
 クラウスがどんなに調子に乗っても、こう言えば逆らえないのは経験済みなのだ。

「そう言われましても……他の者に確認を取っても、みな知らないと言っています」
「他の者だと? 貴様以外にはSP達しかここにはおらんだろう」
「何を申されるのです。他の使用人達がいるではないですか。
 ――ほら、お嬢様が騒いだので、みんな心配して集まって来てしまいましたぞ」

 クラウスが顔を向けて仰いだ先にいたのは、数十人のメイドや執事達。
 私が人見知りするからと、ここにはマリアとハヤテとクラウス以外使用人はいないはずだ。
 なのになぜだろう、この人達を――私は知っている。

 私のなかに、あそこのメイドとゲームをした記憶がある。
 あっちの執事には漫画を取って貰ったし、そこのメイドは絵がうまかった。
 そんな記憶が、私の中に確かに存在しているのだ。
 急に頭が痛くなってきて、足元がふらつく。

「お嬢様、大丈夫ですか? きっと悪い夢でも見られて混乱なさっているのでしょう、こんな時間に起きてしまったのが何よりの証拠です。
 さあ中学校が始まるまでまだ時間があります。登校なさる前に、もう一度お休みになられた方がよろしいでしょう」

 クラウスが、ふらつく私を支えながらそう言った。
 こいつは私の気分がこんなに悪い時に、まだふざけた事を言うのか?

「おい、中学校とはなんだ? お前は私の学年すら忘れたのか?」
「お嬢様は13歳、今は中学2年生でございましょう?
 ささ、お嬢様は大変疲れておいでなのでしょう。もう今日は学校を休んで構いませんから、よくお休みください。
 ……誰かお嬢様を寝室へ」

 クラウスはそう言うと、本当に心配そうな顔で何処かへ電話をかけ始めた。
 メイドの1人が私に声を掛けてくる。
 その顔にも見覚えがある、昨日私の中学に弁当を届けに来た奴だ。

 ……昨日? あれだけクラウスに否定したのに、それは確かに中学での記憶。
 この屋敷に他の使用人がいて、マリアもハヤテも居ない記憶とマリア達がいる記憶。
 どっちが本当の記憶なのだろう。私の中から、だんだんマリア達の記憶が薄れていく。
 ――あれはただの夢だったのか? どこからが夢なのだ?
 私は急に怖くなって、メイドの手を振り切って玄関へ走った。

「お嬢様!?」「お嬢様!」「お嬢様!」「お待ち下さいお嬢様!」

 後ろから使用人達の声が聞こえてくる。それでも私は止まらなかった。
 運動はからっきし出来ない私だが、家出はもう手慣れたもので、使用人達が私に追いつくことは無かった。
 練馬区の65%を占める広大な三千院家の敷地をようやく抜けると、もう空は白み始めていた。


(……ハヤテ)

 私はたまたま見かけた公園のベンチで、記憶の整理をした。
 もうどっちが嘘でどっちが本当なのか、全然わからない。
 今、現実として存在するこっちが本物なのか?
 また気分が悪くなって感覚がして、うずくまってしまう。
 喉が渇いたが、万札しかないので自動販売機とやらは使えなかった。
 ハヤテが居ないと、私はジュースもろくに買えないようである。
 そんな事を考えて、少し勇気が出た。

 ――そうだ、間違っているのはこの世界の方なのだ。
 きっと、漫画みたいにパラレルワールドに迷い込んでしまって、ハヤテが私を助けに来るはずだ。
 普段している妄想が現実になっただけ、と考えれば良いのだ。
 漫画のネタになりそうだと思ったが、とても漫画を描く気分ではない。
 しかし、そうしている内に、ハヤテが探しにくるのではないかという期待が高まってくる。

 私のいる公園の横に、黒塗りの車が停まった。
 迎えの者達が来たのだろうか? 車から数人の男が降りて、こちらに向かって来る。

「三千院ナギだな? 大人しく車に乗って貰おう」

 どうやら迎えじゃなかったらしい。

「な、お、お前ら誘拐犯か!」
「そうだ三千院ナギ、抵抗すると痛い目見るぞ?」
「くっ、離せ! 離せ!―――っが!?」

 抵抗はしたもののスタンガンか何かで気絶させられ、私は意識を失った。


 目を覚ますと、そこは車のトランクの中のようだった。
 安くて車体が低い車なのか、振動が酷くて身体が痛い。
 両腕と両足がロープで縛られていて、乱暴に縛ったのか左手の甲が熱く痛む。
 おまけに口もガムテープで塞がれている。
 奴らは乙女の柔肌に傷をつけたらどうなるかわからないらしい。


 ――おのれ、この私を誘拐するとは…… 
 実際誘拐されることなど日常茶飯事だが、いつもとの大きな違いは今回はハヤテが来る確証はないことだ。
 そう考えた途端、急にとても怖くなってくる。
 ハヤテが家で執事をする前はこんなこと平気だったのに、私はいつからこんなに弱くなってしまったのだろうか。

 でも、こんな状況だからか、今ははっきりと確信できる。
 この世界が嘘で、ハヤテがいる世界が本当なのだと。
 一度は薄れかけたハヤテ達との記憶も鮮明になり、ここでの記憶よりも確かなものになっていた。

(強い意思を持ち続けていれば、きっとハヤテは来てくれるのだ!――ハヤテ!ハヤテ!)

 私は何度もハヤテの名前を呼んだ。
 どんなに声を出そうとしても小さく唸る事しか出来ないが、心の中で信じて叫び続けることが大事なのだ、と思う。

『まったく、私のマスターは随分と五月蝿い小娘みたいだねぇ』

 すると突然、私の脳内に女の声が響いてきた。幻聴か?
 トランクの中が真っ暗なこともあり、私の恐怖は最高潮に達している。
 だからといって幻聴を聞くなんて、いよいよもってヤバイ気がする。

『そんなに怖がるもんじゃないよ。私はあんたの味方さ。
 これは幻聴じゃなくて”念話”ってもんさ、こっちに伝わるように念じてみな』

 こいつ、直接脳内に……! ――じゃない!
 念話だと? まさか、本当にそんな漫画みたいなことがあるのか?
 ……まぁ、お化け神父とかハヤテに掛かった呪いとかを散々見てきた私のいうことじゃないが。
 その声の通りに、感覚で念話という物を試みる。

『……こ、こうか?』 
『そうそう、あんたなかなか飲み込みが早いじゃないか。さっきもハヤテハヤテって五月蝿かったしねぇ』
『ええっ!? き、聞こえていたのか!』

 聞かれてたとなると、なんだか急に恥ずかしくなってくるな……
 だが、そのお陰で私に気付いたなら、呼びつづけた甲斐もあったというものだ。
 しかし、味方だとか言っていたが、こんな事が出来るこいつは何者なのだ?

『お前は一体何者なのだ? 私を助けてくれるのか?』
『せっかちなマスターだね。質問は1つずつしておくれよ。
 ……まぁそうだねぇ。私が何者かはあとで話すとして、あんたを其処から出すのは朝飯前さ』
『ホ、ホントか!?』
『あぁ、本当さ。条件はあるがね』

 この際、助けてくれるならもう何でも良かった。 

『それで、条件とは何なのだ?』
『こっちの通貨で換算するなら……現金で2万円って処でどうだい?
 サーヴァントでもないこんな奴ら程度、本当は無償でも良いんだが……これもけじめさね。』
『……な、なんだ? そんなものでいいのか?』

 低すぎる対価に、私は少し焦ってしまった。
 数百万でも安いくらいのことなのに、随分と欲のない奴だ。
 ……いや、無償でもいいと言っていた位だし、きっとはした金でも人を助ける良い奴なのだろう。

『冗談のつもりだったんだが……あんたの年頃では大金ではないのかい?
 あんたには恩もあるし、お試しで最初はワンコインでも良かったんだがねぇ』
『ワンコインとはなんだ? そんな金額くらい大したものではないじゃないか』

 こいつは何を驚いているのだ? こんなことができる奴に恩を売った覚えはないぞ?
 ともかく金を渡そうと、バッグを探す。しかし、身体を拘束されていたのを忘れていた。
 こんな状態では探しものも出来ない。
 最も、周辺に身体に当たる物もないし、トランク内には無さそうだが……

『スマンが、早いとこ拘束を解いてくれんか?』
『おっと、忘れていたよ――ホラ』

 声がそう言ったかと思うと、トランク内に外から手がニュッと伸びてきた。
 トランクの壁を貫通して、4本の腕が私に向かってくる。
 そのまま、その腕は私を押さえつけてきた。
 ――なんだこれは、怖すぎるぞ! ホラーではないか!

「ムーッ! ムーッ!」
『暴れるんじゃないよ、外しづらいだろう!』
「――痛っ!」

 やっぱりこいつは幽霊だったのだ、しかも物質に干渉してくるとは恐ろしい奴。
 私は口のガムテープをベリッと乱暴に剥がされ、痛みに呻きながらそんなことを考えていた。
 続いて4本の腕が、私の手足のロープを引きちぎる。
 そこでようやく私は五体満足の身となった、相変わらずトランク内は狭くて暗いので窮屈だが。

「おいお前! もう少し優しくできんのか!」
『あんたねぇ……助けてやったのにその態度はないだろう?』

 恐怖と得体のしれない幽霊が相手ということで文句を言ってしまったが、確かにそうだ。
 こういう時は素直に感謝しなければいけないと、マリアも言っていた気がする。
 正体が何であれ、こいつが私を助けたことに変わりはないのだ。

『う、うむ……少し取り乱してしまったのだ。あ、ありがとう』
『ふん、まぁいいさね、まだ何にも説明してないんだから疑問は当然さ。
 だが、説明はこいつらをやっちまってからにするよ……報酬は前払いだが、どうする?』
『あぁ、それなら多分、そいつらの誰かが私のバッグを持っているはずだ。
 ブランド物の、むさいおっさんには似合わないバッグがそれだ。
 その中にいくらか現金も入っているから、適当に持って行ってくれ』

 幽霊ならあいつらにバレずにバッグを漁るくらい簡単なものだろう。
 というか、幽霊に金がいるのだろうか? 一体何に使うのだろう?
 私がそんな事を考えていると、また幽霊の声が聞こえた。

『見つけたは見つけたんだが……これ本当にあんたの鞄かい?
 この時代の人間じゃない私でも凄い金額が入っているように見えるんだが……』
『そうか? クレジットカードだけだと払えない場所とかあるから適当に突っ込んできただけなのだが』
『はぁ……まぁあんたが何者なのかは、後でゆっくり話し合うとしようか……』

 そして奴は十数秒黙り、車内からはかすかにビリビリと紙の破ける音が聞こえてくる。

『よし、これであんたを救う準備は整った。
 予想外に多く報酬を貰っちまったからねぇ、ちょいと派手にいくよ!』

 幽霊がそう言って、数秒後。
 外から大砲が打ち込まれているかの様な轟音とともに、車体が大きく揺れた。
 な、何が起こっているのだ!? あいつは何をした?
 捕まっていろとは言われたが、私の腕力では激しく揺れる車に抵抗できる筈もない。
 今日は一日中身体が痛くなってばっかりだ。
 ――少し経って、揺れが止む。しかし安心したのも束の間、幽霊の次の一言が私に今日一番の絶望を呼んだ。

『全員始末したのは良いんだが、この鉄の箱は一体どうやって止めるんだい?』
『うぉい! それはないだろう! というかお前は何時の時代の人なのだ! このままでは死んでしまうぞ!』

 誘拐犯ではあるが、死んでしまっては寝覚めが悪いどころの話ではない。
 気絶しているにしても、このスピードで何処かへ衝突してしまっては死は免れないだろう。
 音と振動での体感ではあるが、車の速度ははさっきまでと変わっていないように感じる。
 誘拐犯から助けて貰っても、その方法のせいで死ぬなんて笑えないぞ!

『おい、ど、どうするのだ!?』
『開け方なんぞ知らないし、あんたのいるそこをぶっ壊すしかないかねぇ』
『そんなの危ないでないか!』
『あっはっはっは、覚悟を決めなマスター! いくよ、耳塞いでな!』

 私は言われたとおり耳を塞いで、頭を守って縮こまる。
 そして、さっきとは比べ物にならないくらいの轟音が鳴り響いた。
 目を瞑っていても、視界が一気に明るくなったのが分かる。
 ――瞬間、私の身体が宙に浮いた。

「う、うおお! 何が起きたのだ!?」

 私は思わず目を開いた。
 そこにあったのは、視界いっぱいの”黄色”、そして変な帽子を被った女の顔だった。
 4本も腕があるそいつは、随分と派手な幽霊だ。ぶっちゃけケバかった。
 どうやら私はその4本の腕で、俗に言う”お姫様抱っこ”をされているらしく、安定感が凄い。

「ようやくお目にれたねぇ、マスター。私があんたのサーヴァント、蜂峰烽さ、よろしく頼むよ」
「あ、ああ、うむ、よろしくなのだ」

 サーヴァントだのと、こいつが言っていることはよくわからなかったが、取り敢えず挨拶は済んだ。
 烽と名乗るそいつの顔が視界にアップに映って、私は恥ずかしくなって思わず視線を逸らす。
 その先にあったのは、上空からの綺麗な景色であった。――って!

「うおおおい! なぜお前は空を飛んでいるのだ!」
「そうだった、私が飛べるのもあんたのお陰さね。感謝するよ」
「お前の様な変な奴私は知らんし、そんな事を言っている場合ではない! 早く下ろすのだ!」
「はいはい、っとまあそこら辺りも後でゆっくり話すとしようじゃないか」

―――ドォォォォォオオオン!!

 彼女がそう言った瞬間のこと、遥か遠くで大爆発が起きた。
 大きな炎と煙が遠くに見える。
 あんなに遠いのに耳が壊れるかと思うくらいの音だった。
 確かめるまでもなく、それはさっきまで私が乗っていた車だろう。
 そういえばあの誘拐犯達はどうなったのだろうか?

「なぁ、あの誘拐犯達はどうなったのだ?」
「あいつらなら今、あの炎の真っ只中さね」
「お、おい、嘘だろう!? それでは死んでしまうではないか!」
「何言ってんだい、もう始末したって言ったじゃないか。とっくに死んでるよ」

 その言葉は私にとって衝撃だった。
 悪の女幹部みたいな格好で空を飛ぶ変な奴だとはいえ、そんなに簡単に人を殺してしまうなんて。

「何を驚いているんだか……あんたには、これからもっと激しい戦争が待ち受けてるんだ。人死にくらい屁でもなくなるさ」
「そ、そうか……」

 忘れていたが、ここはもう私のいた世界ではないのだな。
 漫画の中みたいに、簡単に人が死んでしまう世界なのだ。
 私は早く、こんな場所からハヤテやマリアの待っている世界に帰らなければならないのだ。
 これからは多少のことにビビってはいられないのだ。
 私はそうしてしっかりと覚悟を決め、烽に抱えられて家まで飛んで帰った。
 使用人達に心配されながらも、適当にあしらってベッドに飛び込む。

(今日はつかれたから、奴との話し合いは明日でいいだろう)

 覚悟は決めても、面倒くさいことはやりたくないのだから仕方ない。
 人がそう簡単に変われるなら苦労はしないのだ。
 真昼のまだ明るい部屋で、私は眠りに落ちる。
 ――今度はなんだか、いい夢が見られる気がした。





【クラス】キャスター

【真名】蜂峰烽@九十九の満月

【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B 魔力EX 幸運D 宝具A

【属性】中立・中庸

【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターは金貸しとして客を求めて旅をしており、確かなよりどころのない生活をしていたためランクは低い。
作るとしてもそれは数ある妖怪道具を駆使した簡易的な物になるだろう。

道具作成:B+
魔力を帯びた器具を作成可能。 
キャスターは特に式術に使う式札や、蜂の特性による毒薬の作成に長けている。

【保有スキル】
眷属生成:A
自分に忠実な眷属を作り出す。キャスターは蜂の巣の様になっている後頭部から、様々な色の蜂を作り出す事ができる。
眷属達に魂はなく、身体が命令通りに動いているだけで生きてはいないので、少ない魔力消費で量産できる。 
思考レベルはお掃除ロボット位の物らしいが、ある程度複雑な命令も判断して動く程度の知能は持っている。 

黄金律(商):C+
人生においてどれほどお金が付いて回るかを示し、特に商売における才能の高さを表している。
巷での流行や、金の流れを見極める才を持ち、抜け目の無いシミュレーションで巨大な利益を得る。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
旅を続け、いたる所で商売をしていたキャスターの性格を表している。

【宝具】
『鬼技 貧者の鋒(おにわざ ひんじゃのほこ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人 
キャスターに発現した固有の鬼技。通貨として使用されている所謂”お金”を食うことで魂魄(魔力)に変える能力。
金額として価値が高ければ高いほど多くの魂魄を得る事ができる。

『黄金禄(こがねろく)』
キャスターとは生まれた時から一緒のカブトムシの妖怪。
身体は丸く、キャスター同様6本の手足があり普段は腕4本足2本にしている。
直径3m程度の体格を持っているが、心は純粋そのもの。
大変優しい性格だが頭が弱く、自分の事を黄金虫の妖怪だと思い込んでいる。
 『天下無敵の黄金禄』
  ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大補足:20人
  キャスターによって大量の魂魄を込められ、強力な姿に変身した黄金禄。
  体長は十倍の30m程の大きさにもなり、角や顔つきが厳しくなる。
  背中には鎧武者の顔の様な大きな外装が出現し、4本ある腕の内の一本はソギギンチャクという妖怪を放つガトリング砲に変化する。
  外見や装備以外にも大きく変化しており、内側には虫であるにもかかわらず自重を支える為の骨ができ、呼吸器系にも強化が入っている。

【weapon】
式札:
 魂魄(魔力orエネルギー)を込めて式神を呼び出す道具。魂魄を多く込めれば込めるほど強大な式神を召喚できる。

槍:
  蜂の尻の形をした槍のような物。魂魄を注入するときなどに使用する。

妖怪契約書(&ハンコ):
 不履行が起こると契約書が式神に変化し、債権回収を強制的に行う(物品を金銭に変える能力を持つ)。
 紙面以外にも隠された舌に文字がかけるため、詐欺に使われるケースが多い。

【人物背景】
 ニホンミツバチの九十九神で、昆虫神では珍しい商人。
 6本の手足は用途に合わせて変動できるが、普段は腕を4本にしている。
 昔は飲食店を経営していたため、キャスターと宝具である”黄金禄”は料理が非常にうまい。
 商売に対する熱意とその腕は確かなものだが、ようやく持った店を同業者の放火で失ったことで歪んだ金儲けを始めるようになる。
 その他にも虐げられてきた辛い過去を憎み、詐欺まがいの金貸しまで行っていた。
 高額で売れる”鬼の角”を奪おうと戦国万妖・違一行を襲った際、返り討ちにあって痛い目をみた。
 幼い頃に羽をもがれ、二度と自由に空を飛べないと思っていたため、サーヴァントとして顕現した際に羽が再生した事に喜びを感じている。

【サーヴァントとしての願い】
 貧民街なんかじゃない真っ当な場所に産まれたかった。


【マスター】三千院ナギ@ハヤテのごとく!

【マスターとしての願い】
 ハヤテ達のもとへ帰る。

【weapon】なし

【能力・技能】
 13歳でありながら高校に飛び級入学し、その中でもトップの成績を取るほどの頭脳を持つ。
 8か国語を話すことができ、100人以上いるSPの顔も全て覚えている。
 株や経済学にも精通しており、三千院家の遺産がなくても富豪をやっていけるという。
 そして石油王の孫であるため、大変な金持ち。屋敷は練馬区の65%を占める。
 漫画・ゲーム・アニメに非常に詳しいが、家事をしようとすると平均で数億の損失を出す壊滅的な才能も持ち合わせる。

【人物背景】
 三千院財閥の一人。幼少時から様々な分野で英才教育を受けており、白皇学院の飛び級制度により13歳で高校1年生になり、そこでもトップクラスの成績を修めている。
 性格は非常にわがままで気が強く、負けず嫌いで、「天の邪鬼」や「ヒネくれている」という評価もされている。
 幼い頃から誘拐の危険に度々遭ったことから、こもりがちな傾向が強く、学校も不登校気味で登校しても授業をサボることも少なくない。
 金銭感覚が常人離れして億単位の金銭も平気で動かす一方、一般の経済観念や世間智には疎く、1円玉を知らなかった。
 更に、重度の方向音痴で、一度迷子になれば普通の人の3倍のスピードで危険に巻き込まれる。
 幼少期の時のトラウマにより暗い所が苦手なので、夜は独りでは眠れず、マリアが毎晩添い寝している(マリアが居ない場合は他の人で代用、戦争中は恐らくキャスター)。

【方針】
 中学なんぞに行きたくないので、家に引き篭もって適当に頑張る。

【備考】
 クラウスは聖杯に”モブ”と判断され、レプリカを生成された所謂ニセモノ。
 原作のように卓越した戦闘能力等は持ち合わせていない、一般的な執事。



候補作投下順



最終更新:2016年03月10日 20:53