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【2日目】


 日本首都、東京。
 五十人規模の死者を出す殺人鬼が現れ、お茶の間を賑わす事となっても、その賑わいは途絶えない。
 それに不審を抱き、マスターとして覚醒する者も、都市にはいる。
 だが、それでもその大勢は、空虚な営みを止めることはない。

 そしてその都市の中心、交差点を、一台の乗用車が右折していた。
 運転手は黒髪黒目の、これまた黒のコートを羽織った男。
 下に着ているスーツまで黒色で、その姿を一目見れば、想像力豊かな人間ならば、秘密組織のエージェントや殺し屋を想像するだろう。
 その想像も、ある意味では間違ってはいないのだが。

 The Global Occult Coalition――GOC。
 世界オカルト連合。
 "異常存在の破壊"を目的とする機構。
 とある"財団"が存在する並行世界において、財団内部で要注意団体に指定されている組織。
 男はそのエージェント――という役割を、この偽りの東京で負わされている。

 さておき。
 運転席に座る男は、ハンドルこそ握ってはいるが、その視線は都市の中を彷徨っていた。
 初めて東京へと上京した田舎者のようにきょろきょろと動き回り、本来取るべき進行方向への注意は少々散漫だ。
 だというのに、男の車は正確に運転され、前方の車両との間隔も、速度の加減速もほぼ完璧に保っている。
 まるで車自体が意思を持っており、男が運転しているわけではないかのようだった。

 いや、実際、車を運転しているのは彼ではない。
 不審を抱かれぬようにポーズこそ取っているが、実際に乗用車を操作しているのは男ではなく――"サーヴァント"。
 後部に設置された、黒色の金属体――アイテム《器物》のサーヴァントが、周囲の状況を把握し、車を五体のように操り、運転しているのだ。
 アイテム――"SCP-210-JP"と名乗ったソレは、とある"財団"にて保管されていた、意思持つアーティファクトのひとつである。
 彼――彼と呼んでいいのかはともかく――は、自らに接触した金属の物体に"騎乗"し、操ることができる。
 その特異性により、男の乗る車を操作しているのだ。

 サーヴァントを従えているということは当然、運転席に座る男も聖杯戦争に選ばれたマスターの一人。
 その名は、衛宮切嗣。かつては、"魔術師殺し"と呼ばれた男。


 ――僕は、何故ここにいる? いや、そもそも僕は何故まだ生きている?


 そう、かつて、だ。
 今ここにいる衛宮切嗣は、魔術師としては死んだ――いや。
 そもそも、生命活動という意味でも、死んでいる筈の人間だった。

 少なくとも、衛宮切嗣の主観では、衛宮邸の縁側で、士郎と話をしながら――自分は息を引き取った、はずなのだから。

 だというのに、今東京で衛宮切嗣は生きている。
 《この世全ての悪》に侵され、もはや戦う事は不可能だった体は全盛期とまではいかずとも、魔術戦に耐える程度には復調している。

 そして、聖杯戦争が始まるのだ、と彼のサーヴァントは告げた。

 ――なんだこれは? 僕は幻覚の中にいるのか?

 理解できない、と言わざるを得ない出来事だった。
 だが、もはや死んでいた切嗣を、このような回りくどい幻覚に投げ込む異議が見出せないし、そもそもそのようなことができるモノにも心当たりはない。
 この身を侵した《この世全ての悪》による走馬灯だったとしても、東京での聖杯戦争など突飛すぎる。

 ――リアリティが欠如しすぎて、逆に信じざるを得ない、か。

 何らかの要因によって、衛宮切嗣は東京へと召喚された。
 同じく何らかの要因によって、衛宮切嗣のダメージはある程度回復した。
 そして聖杯戦争のマスターとして選ばれた。

 順序はある程度逆かもしれないが、現状把握だけを行えばこうなる。

 そして問題は、これからどうするか、だった。

 聖杯戦争。

 これが冬木の聖杯とは別の聖杯によるものならば、聖杯が"この世全ての悪"により汚染されているということはないだろう。
 だが、この聖杯戦争を、正直切嗣は信用しきれない。

 その理由のひとつが、今も街頭テレビに映し出されている、褐色の肌に紋様が刻まれた男。
 東京の街で52人もの殺戮を成し遂げ、今も逃亡している殺人鬼。
 言うまでもない。聖杯戦争の関係者だ。
 アイテムの言によれば、アレもまた"財団"に管理されていた異常存在のひとつであった筈だ、という。

 アイテムの言う"財団"。
 その団体は、異常な存在及び事象を、"確保(Secure)"、"収容(Contain)"、"保護(Protect)"する事を行動理念とするらしい。
 そのような組織が存在するならば、魔術協会や聖堂教会と衝突しないはずがない。
 そういった事件を聞かないことから考えると、"財団"とは衛宮切嗣が生きていた世界とは別の並行世界に存在する組織だと推測できる。
 無論、切嗣がこの世界で所属していることになっているらしいGOCも同じくだ。

 並行世界の運営。
 それは切嗣の世界では、"魔法"に類することの筈だ。
 同じく魔法に近いモノである聖杯ならば、可能である可能性はある。
 だがそれは同時に、既に聖杯が"英霊の召喚"以外の機能を発揮しているということでもある。
 それに切嗣も、由来不明の方法で招き寄せられている。
 この時点で、この聖杯はイレギュラーだ。
 聖杯戦争の裏で、何らかの計画が巡らされている可能性も否定できない。

 ――そうだとすれば、看過はできない……そもそも、あの男を放置することもできないか。

 江東区にて52人を殺害した、刺青の男。
 アレは放置しておけば、また多くの人間を殺すだろう。
 そうなる前に、あの男を始末しなければならない。
 聖杯戦争から降りる、という選択肢はない。

 ――だが、この聖杯戦争……僕はどうすればいい?

 衛宮切嗣に残った最後の未練。
 イリヤスフィールの救出。
 聖杯を使えば、それは叶うだろう。
 だが聖杯は安全なのか?
 そして、聖杯を使うことは、例え汚染がなかったとしても正しいのか?
 ここで破壊し、それ以上の利用を断つことも、ある意味では正しいのかもしれないのではないか?
 冬木の聖杯戦争の災禍を見てしまった切嗣には、そんな考えさえも浮かんでしまう。

 ――『魔術師殺し』……か。

 皮肉なことに、この世界でも切嗣は『魔術師殺し』と呼ばれていた。
 GOCの定める人型の脅威存在。
 『妖術師』や『魔術師』とも呼称されるそれらを、殺して回った故の称号。

 だから、『魔術師殺し』の切嗣は聖杯を破壊しろと囁く。

 だというのに、衛宮切嗣個人は、それを諦め切れない。

 アイテムは器物だ。
 問えばラジオ越しに答えてくれるだろう。だが、その答えは、結局器物としてのモノでしかない。
 決定するのは、切嗣の意思だ。

 だから――


  ◆


『子供の頃、僕は正義の味方になりたかった』

『なんだよ、それ。“なりたかった”て。諦めたのかよ?』

『うん。残念ながらね。ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ』

『なんだ。それならしょうがないな』

『うん。本当に、しょうがない…』

『じゃあ――』



【ケリィはさ、どんな大人になりたいの?】

【――僕はね……】


 せいぎのみかた。
 その言葉は、今更になって、衛宮切嗣の胸に重くのしかかっている。





【クラス】アイテム
【真名】SCP-210-JP@SCP Foundation 日本支部
【パラメーター】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
器物英霊:B
 器物そのものである英霊。自己管理と対話のための自我を持つが、精神的なものではない。
 あらゆる精神干渉を無効化(というより意味がない)する。
 器物として純粋であるほどランクは高まる。
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
 また、『騎乗』状態にある器物に対しても同等の対魔力スキルを付与する。
【保有スキル】
騎乗:EX
 宝具に由来する特殊な騎乗スキルを保持する。
【宝具】
『SCP-210-JP』
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:- 最大補足:-
【SCP-210-JPのもう1つの特別な点は、接触した他の金属の物体を自身の一部とすることができるという点です。
 ここで言う"金属の物体"は非常に広範で厳密には定義できませんが、金属的な性質を持つ物質から成る物体、もしくはそのような物体を構成部品に有する物体のことです。ただし後者の場合、非金属の構成部品はその一部というよりはむしろ付属品という振る舞いをします。
 取り込まれた金属の物体はSCP-210-JPの意思に従ってその硬度を無視して歪曲させることが可能です。鉄くずなどといった意味のない物体は、自身の手足などといった運動器官とすることをSCP-210-JPは好みます。
 機械や電化製品に接触した場合はそれらを任意に操作することが可能で、その機能を損なわないような形で自身に組み込みます。使い方のわからない機械も教えることにより正しく扱えるように学習するのが確認されています。
 また、自分の一部となった金属の物体は自らの意思で元通りに分離することができるようです】

 SCP-210-JP自身と、その特異性が宝具となっている。
 自らに接触した金属体に"騎乗"し、自らの一部として取り込み操作する。
 "騎乗"した物体には対魔力が付与され、Cランク相当の宝具として扱われる。
 他サーヴァントの宝具や武装に"騎乗"することも可能だが、Bランク以上の宝具に対しては"騎乗"できない。

『████』
ランク:- 種別:対████宝具 レンジ:████ 最大補足:████
 SCP-210-JPに筆記具を持たせた際に書き上げた設計図に記載されていた、戦闘機に似た物体。
 これが本来のSCP-210-JPの武装であるとSCP-210-JPは主張している。
 ただしその技術は現代の科学では再現不可能なモノが多く扱われており、作成は不可能だった。
 英霊となった現在ならば、座に記録されているという可能性もあるが――[編集済]。
 また、人間が乗るためのコクピットであろう部位が確認されている。

【weapon】
『SCP-210-JP』によって操作する金属を武器として扱える。
【人物背景】
【SCP-210-JPは黒色の金属から成る物体です。クロムモリブデン鋼に似た合金で作られており、同じ素材を用いて同じ形状の物体を作成することは現代の科学でも可能です。
 その内部に制御部のような部位はなく、全てが同じ素材で構成されていることをいくつかの非破壊の試験結果が示しています。
 SCP-210-JPの特別な点の1つは、有意と考えられる電波を放射することです。電波は主に144MHz帯の音声通信で、受信すると日本語で女性もしくは子供のような声が再生され、これはSCP-210-JPの発声器官であると考えられます。
 こちらからは電話でも普通に話しかけてもその声を聞くことができるようです。また、電波かもしくは他の何らかの手段で周囲の状況を把握する能力があるようです。
 財団によるインタビューから、SCP-210-JPは人間に近い自我と知能を有していると思われます】

 同じくインタビューにおいて『守護者として生まれた』と解答しており、何らかの使命の存在を仄めかしている。

【サーヴァントとしての願い】
 守護者としての使命を果たす=マスターを守護する。

《アイテム》
『器物』のクラス。
人類史にその名を残した遺物(アーティファクト)が、サーヴァントとして召喚されたもの。
当然ではあるが、聖杯戦争で戦うならばマスター本人が振るわなければならない。(一部の例外を除いて)
その性質上、エクスカリバーのような『持ち主が定められた名剣聖剣』の類よりも、『幾人もの持ち主の間を流転した呪われた魔剣』の類の方がこのクラスとなりやすい。(そもそも前者の場合、その担い手の方が召喚される)
このクラスに分類されるサーヴァントには2パターンあり、『先天的に意思を持つ器物(いわゆるインテリジェンス・アイテム)である』タイプと『後天的に民衆からの想念・信仰を受けて英霊化した』タイプがある。
前者がストームブリンガー、後者は村正など。


【マスター】衛宮切嗣@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
 現状まだ決まっていない。(イリヤの救出? あるいは願いを最初から諦めて聖杯戦争の終結に動く? そのどちらも?)
【weapon】
 銃器類、爆発物。
 本来の現役時代は『起源弾』と呼ぶ魔術師殺しの銃弾を所持していたが、この聖杯戦争では不所持。
【能力・技能】
 魔術使い。
 本来であれば『この世全ての悪』の泥に苛まれ魔術の行使など不可能な状態であったが、何故かこの聖杯戦争ではある程度復調している。
 自身の時間流を操作する固有の魔術、『固有時制御』での高速戦闘及びバイオリズムの抑制による隠密活動が可能。
 ただし復調しているとはいえ本来の状態には程遠いため、連続使用を行った場合の負荷は大きい。

【人物背景】
 かつて魔術師殺しと呼ばれた魔術使い。

 この世界においては、『世界オカルト連合(GOC)』のエージェントとして活動している、という設定。
 GOCにおいても、『魔術師殺し』と呼ばれる優秀なエージェントであった。

【方針】
 この聖杯戦争を調査し、裏でなにかを計画している存在がいるならば打倒する。
 また、褐色に刺青の殺人鬼(SCP-076)は最優先で排除する。



クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてKwana氏が創作されたSCP-210-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。



候補作投下順



最終更新:2016年03月13日 08:46