与えられた役割などない。
家も職業も何もなく、ただ当てもなくさまようだけ。強いて言うなら、浮浪者というのが、彼に与えられた役割だった。
才能に不自由しない天才の彼なら、その気になれば明日にでも、職も住所も得られるだろうが。
「蛇足だな」
幕引きにしてはお粗末じゃないか。
バイクのエンジンを止めると、彼は一人そう呟く。
あのまま終わっていたならば、それなりに綺麗ではあったろうにと。
彼は壊す者だった。
幾多の世界を渡り歩き、それぞれの世界を壊すことだけが、彼に与えられた物語だった。
彼の行き着いた世界は、その法則を歪ませて、あり得ない事態を引き起こしてしまう。
世界を語る主人公は、彼の力によって倒され、その物語を終わらせてしまう。
他人の物語をぶち壊し、身勝手に打ち切ってしまうこと。それだけが彼の在り方だった。
そんなお粗末な振る舞いは、とても物語とは呼べない。
故に語るべき物語はないと、彼は無慈悲に断じられた。
一応彼の生涯にも、意味と呼べるものは存在した。
乱雑に散らかった旧世界は、彼の手で壊されたことによって、よりシンプルに整理された。
打ち切られた物語達は、新たな物語として再開され、平穏な新世界が築かれた。
もっとも、その恩恵に預かれるのは、生き残った者達だけだ。
世界を壊して作るために、命を利用された彼には、何の見返りも与えられない。
それでも、彼は構わないと言った。
壊れかけた仲間の世界が、その命で救えるのなら、それでもいいとその身を捧げた。
こうして、彼の生涯は終わった。
物語として残ることない、彼の――門矢士の人生は、ひっそりと幕を閉じたはずだった。
「本当にお前はそれでいいのか?」
されど、問いかける者がいる。
消えてしまったはずの士に対して、語りかける者がいる。
破れて捨てられたはずのページが、新たにめくられる音が聞こえた。
あるはずのないフィルムが、映写機にかけられる音が聞こえた。
「いいように使われて、何一つ残せなくて、それでおしまいになってもいいのかよ?」
門矢士が目覚めた時、彼は未知の世界にいた。
そこはどれほど異常であっても、天国でも地獄でも、ましてや忘却の虚無でもない、確かな人間の世界だった。
そんな彼を待っていたのが、この年下の少年だ。
二つか三つは離れているだろうに、この黒髪の少年は、そんな生意気な口を聞いてきた。
「ほっとけ。俺が戦い散ったおかげで、世界は滅びを迎えることなく、生き長らえることができたんだ」
救世主神話としちゃ十分だろと、士は憮然とした顔で言い返す。
「そんなの全然物語じゃない。神様の名前が載ってないなら、神話もただの事実でしかないだろ」
それでも少年は食い下がった。
出来事は語り継がれてこそ、人々の記憶に残り続ける。
主語の抜けた情報は、勝手に起きた現象も同然。士の戦いも挺身も、全てがなかったことになり、歴史の闇に埋もれてしまう。
それでは結局何一つ残らず、何一つ報われないままだと。
「……あのな。俺は世界の破壊者だぞ。嫌われ者のやられ役が、勝手に物語を作ったところで、誰が喜ぶっていうんだ」
「そうか? 俺は見てみたいと思うぜ。
何も与えられず、むしろやられて終わるだけだったはずの悪役が、そこから一歩を踏み出した先で、どんな世界を切り拓くんだろう、ってな」
しかめっ面の士を前に、少年はにやりと笑って言う。
何の物語も与えられなかった、やられて終わるだけだったはずの悪役。
そんな役者だからこそ、仮に主役を張りでもしたら、話がどう転がるか想像もつかない。
決まったレールが用意されていないのなら、どこに向かってレールを作ろうと、士の自由ということでもある。
それは自分だけでなく、門矢士自身にとっても、わくわくする未知の体験になるはずだと。
「知ったような口ききやがる。何なんだ、お前は」
士が少年に問いかけた。
何度も向けられたクエスチョンを、今度は彼自身が口にした。
「俺はサーヴァント・兜甲児。お前の人生の先輩だ。
自分の物語をきちんと畳んで、今はみんなの物語を、楽しませてもらってる一人の読者さ」
兜甲児は言葉を紡ぐ。
知ったような口などきいていない。
語り終えた物語が、自分にはあるのだと言い切る。
途方も無く長い戦いに、望まれなかった結末を突き付け、きちんと物語を終わらせた。
その先を思い描く権利を、その後に続く人々に委ねた。
彼らが語る物語は、そのどれもが鮮烈で、美しく輝いていたのだと。
人は誰しも、素晴らしい物語を、語り紡いでいく力がある。
それは間違いなく門矢士にも、宿されている力なのだと。
「俺自身の物語、か……」
自身の懐に手を入れ、まさぐる。
士が取り出したのは壊れたはずの、銀色に光るバックルだ。
いくつもの世界を渡り歩いた、世界の破壊者の変身ベルト。
彼がその瞳で見てきた、物語の担い手のカードは、今は士の手にはない。
裏切り、欺き、倒してきた、彼らの想いの結晶は、元の世界に残したままだ。
押し付けられた役割を終え、貸し与える意味のなくなった力は、恐らく二度と戻らないだろう。
故に、この先を切り拓く力があるなら、それは自分自身の力だけだ。
誰の代わりの物語でもない、門矢士自身の物語を、その手で刻むしかないのだ。
「……もう少し、通りすがってみるのも悪くない、か」
それが許されるというなら。
自分自身の物語を、遺してきたあの仲間達が、許してくれるというのなら。
ここにはないカメラをもう一度手に取り、今度こそ世界をレンズに納められる日が、その先に待ち受けているのなら。
ついぞ見られなかった結末に――自分探しの旅の終着駅に、たどり着けるというのなら。
それはそれでほんの少し、悪くない旅かもしれないと思えた。
ひねくれ者の門矢士は、それが叶ったら嬉しいとは、決して口にはしないけれど。
「そうさ、マスター。聞かせてくれよ。俺をわくわくさせてくれる、物語の主人公の名前を」
兜甲児が問いかける。
運命的とすら言える、騎兵(ライダー)のクラスを与えられた、士のサーヴァントが答えをせがむ。
ここは聖杯戦争の世界だ。万能の願望機とやらを賭けて、人々が争い殺し合う舞台だそうだ。
ライダーのサーヴァントというのも、そのために用意された力だった。
下らない。付き合ってられるか。
自分の旅を始めると決めた、そんな矢先も矢先から、馬鹿げた
ルールに乗せられてたまるか。
聖杯などにねだったりはしない。
甲児も殺し合いの走狗にはさせない。
たとえ絶対の法則に逆らい、傷だらけになったとしても、自分が歩む世界の未来は、自分の手で掴み取ってやる。
世界を壊すのはもう懲り懲りだが、掟破りの専門家までは、廃業するつもりは更々なかった。
「――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
にやりと不敵に笑みながら、言った。
門矢士。
またの名を、世界の破壊者・ディケイド。
新たなる世界を巡り、その瞳は何を見る。
【クラス】ライダー
【真名】兜甲児
【出典】真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍
【性別】男性
【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:A 宝具:EX
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:B-
騎乗の才能。大抵の乗り物を自在に操れる。
ただし動物に関しては、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
本人はロボット兵器の他、バイクの運転を得意としている。
【保有スキル】
特異点:A
数多の平行世界に跨がり、存在する者を指す名称。
甲児はこのスキルにより、あらゆる世界に存在する、「兜甲児」の記憶を有している。
このため、彼がどこかの世界で会ったことがある英霊と対峙した場合、即座にその能力や弱点などを知ることができる。
科学者:A
科学に精通した研究者の称号。
甲児は光子力エネルギー、機械工学など、様々な分野の知識・技術を、極めて高いレベルで修めている。
神殺し:B
神を名乗りし者と戦い、撃退した逸話に基づいたスキル。
神性を持つ者に対して、与えるダメージが増大する。この効果は宝具にも適用される。
【宝具】
『原初の魔神・鉄の城(マジンガーZ)』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1~50 最大補足:300人
人が創りし鋼の魔神。神と悪魔の境界を分かつ、人の頭脳の写し鏡。
兜甲児が乗り込み操る、くろがねのスーパーロボットである。
全身に武器を内蔵しており、オプションブースター・ジェットスクランダーによる飛行も可能。
超合金Zの鉄壁のボディは、いかなる攻撃にも屈しない。
本来は魔神パワーと呼ばれる、強力無比な特殊装置を搭載しているのだが、今回はオミットされている。
そのため宝具の神秘性を示すランクも、その分だけ低下している。
『超克の魔神・偉大な勇者(グレートマジンガー)』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1~60 最大補足:400人
至高の魂を超えるため、始祖の魂から生まれた、もう一体の鋼の魔神。
兜甲児と肩を並べ、最も信頼し合った盟友・剣鉄也が乗り込み操る、くろがねのスーパーロボットである。
本体に内蔵された翼・スクランブルダッシュを始めとした、全ての機能と性能が、マジンガーZを上回っている。
超合金ニューZで構成された機体は、自在にモーフィング変形し、その武器にさらなる鋭さを与える。
このグレートマジンガーと、操縦席に座る鉄也は、後述した宝具『創世(スーパーロボット・クロニクル)』が、兜甲児の創造力から生み出したもの。
ダブルマジンガーの戦闘能力は、まさしく絶大の一言に尽きるが、二体もの巨大ロボットを維持する魔力も、想像を絶するものがある。
このグレートマジンガーもまた、魔神パワーを有していない。
『創世・新生魔神譚(スーパーロボット・スピリッツ)』
ランク:EX 種別:対全能宝具 レンジ:??? 最大補足:???
可能性の光。想像の翼。あまねく世界を紡ぐ想いを、力と変えて現出する器。
驕り高ぶる全能者を、追い越し上回るために生み出された、人類の創造力の結晶。
無限の連鎖を繰り返し、無量の世界を渡った果てに、最後に生まれたマジンガーZが、その身に宿した光子力エンジンである。
その機能は、マジンガーZすら存在しない、未知の世界を観測し、その世界の可能性を、光子力エネルギーの塊として具現化するというもの。
人々の想像力に呼応し、人々が思い描いた空想の世界・理想の存在こそを、力と変えることに真価がある。
聖杯にすら記録されていない、未知の英霊達の必殺技は、
いかなる解析能力でも分析できず、いかなる特攻でも撃ち落とせず、いかなる防御能力でも無効化できない。
……とはいえ、「フィールドに存在するNPCの想像力を借りる必要がある」「NPCの人数分だけ魔力消費が跳ね上がる」という性質上、
聖杯戦争の舞台においては、実用性は皆無に等しい。
【weapon】
ホバーパイルダー
宝具『原初の魔神・鉄の城(マジンガーZ)』のコックピットを兼ねた戦闘機。
頭部にドッキングすることで、マジンガーZの戦闘準備が完了する。
パイルダーミサイルを搭載しており、これ単体でも戦うことが可能。
光線銃
兜甲児が、生身で戦うための拳銃。それほど威力は高くない。
【人物背景】
天才科学者・兜十蔵の孫にして、彼の発明したスーパーロボット・マジンガーZを操るパイロット。
そしてある時作られてしまった、禁断の装置・魔神パワーの申し子――マジンガーZEROの覚醒を食い止めるため、
同じ時間と世界を繰り返してきた男である。
幾千幾億もの戦いを繰り返し、最後にはマジンガーZEROを打倒し、彼の戦いの物語は幕を閉じた。
かつてマジンガーZに備わっていた、差異次元干渉能力により、甲児にはありとあらゆる世界の、「兜甲児」の記憶が受け継がれている。
それはありとあらゆる世界で、マジンガーZEROの覚醒に立ち会い、敗北してきた記憶でもあった。
しかし彼は持ち前の闘志と、強い正義感を燃やし続け、絶望することなく戦い続けた。
今回限界した甲児の肉体は、高校生時代の姿にまで若返っている。
ある世界では肉体が死に絶え、サイボーグに改造されたこともあったが、今回ベースとなった甲児の肉体は、完全な生身の人体である。
差異次元干渉装置による強化もされていないため、特別な戦闘能力は備わっていない。
ちなみに、最後の戦いに臨んだ甲児の、若返る以前の年齢は30歳である。
【サーヴァントとしての願い】
ない。門矢士が新たに紡ぐ、彼自身の物語を見てみたい。
【基本戦術、方針、運用法】
幸か不幸か、魔神パワーがオミットされたことによって、調子に乗らなければ何とかなる程度には、マジンガーZの燃費が良くなっている。
戦闘開始時には、まずホバーパイルダーとディケイドのタッグで相手の出方を伺い、
だいたいの傾向が分かったところで、マジンガーZを呼び寄せとどめを刺すのがいいだろう。
仮面ライダーディケイドもまた、大幅に弱体化しているが、特別な条件を必要とせず分身できるのは、意外と大きな特徴なので、これを活用していきたい。
最強宝具『創世・新生魔神譚(スーパーロボット・スピリッツ)』は、そもそもこの聖杯戦争においては、まともに機能するかどうか怪しいという問題もある。
【マスター】門矢士
【出典】仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
【性別】男性
【マスターとしての願い】
元の世界へ帰り、そこから新しい旅を始める
【weapon】
ディケイドライバー
「世界の破壊者」と呼ばれる仮面ライダー・ディケイドへと変身するベルト。
全ての仮面ライダーの力を再現し、全ての仮面ライダーを倒すために生まれた、最悪のショッカーライダーである。
手に入れた仮面ライダーの力は、カードの形となり、専用武器・ライドブッカーにファイリングされる。
……しかし、用済みとなった今の士は、ディケイド自身の能力を発動するカードしか持ち込めていない。
使用可能なカードは、「カメンライド・ディケイド」「アタックライド・ブラスト」「アタックライド・スラッシュ」
「アタックライド・イリュージョン」「ファイナルアタックライド・ディケイド」のみ。
マシンディケイダー
仮面ライダーディケイドの専用バイク。
最高時速は350キロ。無原動力・クラインの壺を内蔵しているため、エネルギー補給を行う必要がない。
次元の壁を超えることができるが、この聖杯戦争の舞台からは出ることができない。
【能力・技能】
専科百般
写真を撮ること以外なら何でもできる。
スポーツ、料理、推理など、ありとあらゆる方面に、優れた才能を発揮している。
騎乗
バイクの免許を取得している。
ライダー知識
それまでに生まれてきた、全ての仮面ライダーの特徴を把握している。
ただし、彼以降に生まれた仮面ライダーの情報は持っておらず、唯一顔を合わせた仮面ライダーWについても、ほとんど把握できていない。
次元跳躍
世界と世界の壁を突破し、異なる世界へ移動することができる特殊能力。
……ただし、この聖杯戦争の舞台からは出られない。そのため振るわれる機会のない、死に能力である。
世界の破壊者
持って生まれた呪いのようなもの。士が通りすがった世界は、その在り方を狂わせ、本来ならば起こりえないような現象を発生させてしまう。
彼のような存在であればこそ、この異常な聖杯戦争に、招かれることになったのか。あるいは兜甲児のような、規格外の英霊を引き当てたことこそが……?
【人物背景】
光写真館に居候していた、記憶喪失の青年。20歳。
仮面ライダーディケイドに変身し、いくつもの世界を渡り歩きながら、それぞれの世界の仮面ライダーと心を通わせてきた。
その正体は、世界の支配を目論む組織・大ショッカーに踊らされた大首領であり、
その力を世界修復のため、仮面ライダー達に利用された、旧世界の「破壊者」でもある。
表向きな振る舞いは傲慢かつ不遜。しかし心の底では、静かな正義感を燃やしている。
自分を天才と信じて疑わないが、写真だけは上手く撮れず、不自然に歪んだものばかりを重ねている。
意図にそぐわぬ行動を取ったことで、仮面ライダー達から狙われるようになった彼は、
全ての仮面ライダーを破壊するという、本来の使命に従うようになる。
しかしそれは、我が身可愛さのためではなく、世界を救うためという、悲壮な覚悟の表れでもあった。
役割を終え用済みとなった士は、語れる物語などないと断じられ、仲間の刃に倒れたのだが……
【方針】
とにかく帰る手段を探す。殺し合いに付き合う気はない
最終更新:2024年10月03日 22:10