誰だと思う?うん、トド松だよ!
君にはすぐ分かっちゃうんだね
好みのタイプ?……好きになっちゃった人、かな
みんなと同じ服、六着。一番似合ってるって?ありがと!
うん、気楽に楽しもうよ
これってホント、奇跡だよね
こんなにかわいい六つ子がいるなんて
ババ抜きにならないって?ほかは全部ババだからって?
でも、素敵な兄さんたちだよ
ボクにとってはみんな、ね
でも、君を譲りたくはないかな
ねぇ、ボクを選んでよ
……連絡先六つゲット!
◆
「お疲れ様でーす」
バイトの先輩に頭を下げて見送り、そして自分も店の裏口を出る。
挨拶をしたときに返ってきた笑顔は、好意的なものだ。
『今回』は、今のところ「覚えの早い有望な新入り」として見てもらえている。
見上げれば、空には金色の円を描く満月。
しばらく歩いてから振り向けば、今までシフトに入っていた『スタバァコーヒー某区駅前支店』がある.
「ふぅ……」
うまくやれている、と思う。
にも関わらず、店を出た途端にどっと疲れたような心地になったり、勤務中も冷や汗が流れたりするのは、無意識にも『前回のスタバァ』の記憶がしみついて抜けないせいだ。
忘れられる、はずがない。
本来なら、このリア充のためにあるような珈琲チェーン店でアルバイトすることは、もう二度とできなかったはずだから。
あんな羞恥しかない悲惨な事件をやらかしてしまえば――否、5人の悪魔による悪意によって『やらかされて』しまえば、おそらく都内の同系列店にも噂が飛んでいておかしくない。
しかも5人の悪魔たちは地位を失った弟を見て笑っていたのだから、まったくもって腹立たしい。
「そのおかげで『思い出せた』のが、またすっごい腹立つんだけどね……!!」
違う店舗とはいえ同じバイトをしているおかげで、あのトラウマを思い出すたび目を剥いて歯を食いしばったような顔になりかけてしまう。
こんな(@益@)表情など、店の中で、同僚の女の子相手には決して見せられない――
「あはははははははは! 面白い顔ーっ!」
霊体化、解除。
ぱちぱちぱちと手を叩く音が、その存在を明瞭に伝えた。
いつしか帰途は、人通りの少ない道にさしかかっていて。
「トッティー! あそびましょ!」
姿を視認しきる前にばふんと抱きつかれて、愛用の桃色パーカーを引っ張られる。
鈴を鳴らすような可愛らしさと、しかし鼓膜を凍らせるようなかん高さが同居した、幼い声がする。
真っ暗な夜道で、月明りの下だ。
来てくれたのかという安堵と、やはり来たのかという悪寒が、不思議と同じくらいあった。
ゆっくりと見下ろせば、十にも満たぬかもしれない、金髪の幼い少女がいた。
しかし、少女の特徴はそれだけではなく。
木の枝に宝石をたくさんぶらさげたような羽根がぱたぱたと揺れている。
かがやく赤い瞳に、鮮やかな赤い洋服をまとった『吸血鬼』だった。
◆
「わかるわ。兄姉(きょうだい)っていつもそう。
下の弟妹(きょうだい)を自分の『しょゆーぶつ』か何かだと思ってるのね。
勝手に屋敷を出ようとしたり、自分と違う考えを持ち始めるのが気に入らないんだわ」
分かる分かると頷きながら、少女は、公園のベンチに腰かけて箱入りのケーキを食べていた。
スタバァで買ってきたで、屋敷のメイドが作ったケーキよりおいしくないと辛辣な評価をしたけれど、それはそれとして食べるらしい。
「うぅ……そう言ってくれるのはセイバーちゃんだけだよ。
やっぱり出会いの『運命』ってあるのかもしれないね」
「運命を操るのはアイツのすることだわ。
私はトッティが面白くて遊んでくれるマスターなら、それだけでいいの」
ぺろりと舌を出して、はしたなく口周りのクリームを舐めとる。
彼女が落ちてくる隕石だってぶっ壊すことができる(本人談)ような『サーヴァント』だと言われても、その姿からは想像もつかなかった。
「トッティが簡単に壊れない子ならもっと良かったんだけど、人間なら仕方ないものね」
そして、ときどき話すことが意味不明瞭だったり、ぶっそうだったりする。
無邪気な少女だという印象を持った後に言うのもなんだが、正直言って怖い。
最初に会ったとき、生きている人間を見るのは珍しいという理由で抱きつかれて、その抱擁だけで絞め殺されそうになったことは忘れていない。
「それにわたし、トッティの気持ちわかるもの。
ずっと外に出ようとしなかったけど、人間に会うようになってから、やっぱり『外』って面白いんだって分かったから。
自由に生きていくのを邪魔するなんて、やっぱり怒っていいと思うわ」
しかし、彼女は願いを叶えてくれる存在だという。
ふってわいた都合の良すぎる話だとは思わなくもない。
でも、否定する証拠もまた存在しないし、少なくとも彼女が『何でもアリの不思議の住人』だということは否定しようがないわけで。
それに――『悪魔の妹』だと名乗ってはいるけれど、性格はかわいらしい女の子そのものだった。
トド松自身に実害があるという意味では、松野家にいる同じ顔をした5人の兄たちの方がよっぽど悪魔と言っていいことをしている。
そんな女の子が殺し合いに参加する気満々にも見えるところは、正直、引いたりもするけれど。
「ありがとう。でも、ほかの『マスター』だっけ?
その人を殺すとか、あんまり社会的にまずいことはしないでね?
僕がバイトしてるときも、大人しくしてくれてるよね?」
「心配しなくていいわ。わたし、警察に捕まるようなことはしないもん」
セイバーが胸を張ってそう答えたことに、とりあえずほっとする。
いや、社会的に追及されないなら殺し合いに参加するのかと突っ込まれたら困るけど、まずはとにかく、身の安全を考えたいし。
それに、願いも、ある。
6人そろっての一生全力モラトリアムも、ぬるま湯のように心地よく浸っていたけれど。
でも、ひそかに望んでいた願い――ワンランク上の人間になるどころか、社会的カーストの一番上に立って、5人の兄たちに圧迫されることも、引け目を感じることもなく人と付き合える、本当の意味で幸せな世界が手に入るなら。
これが、その最初で最後のチャンスかもしれない。
「大丈夫! わたしが敵をみんな壊してあげたら、聖杯はトッティとわたしのものになるんだから!」
「とりあえずは生き残れたらいいかなー。ほかの皆に潰しあってくさだいってことだから、兄さんたちからまたドライって言われそうだけど」
いや、今回だけは兄さんたちに漏らせないんだけどね、と己に言い聞かせる。
兄たちに露見してしまったら、また血眼になって、そんな大事なこと、危ないことをなんで報告してくれないんだと詰め寄られるかもしれない。
でも、今回ばかりは『一般の人にばらしてはいけない』という条件付きで関わっていることなのだから、黙っている正当性があるはずだ。
「邪魔なら、トッティのお兄さま達、みんな、わたしが『どっかーん』ってしてあげるよ?
そしたらトッティ、自由になれる?」
無邪気なセイバーが、いたずらを思いついたような顔で笑う。
『どっかーん』が何かはわからないけど、両手を握ったりぱっとひろげたりする仕草は、とても人をびっくりさせる思いつきのようだった。
それで今までにされたことを報復できるなら、面白いかもしれないと思いそうになって。
――でも5人の悪魔は、末っ子が一人で遠出をすると、血相を変えて心配する。
「やっぱりいいよ。セイバーちゃんだって、姉さんが怒ったり、いなくなったりしたら嫌だよね?」
そう言うと、彼女にだって思うところはあったのか「それもそうね」と頷いてくれた。
そう、もし最後まで生き残ることができて、運よく奇跡が転がりこんできたりしたら。
その時は六つ子としての願いではない、トド松だけの願いを叶えるだろう。
一つだけかなうと言われたら、自分のためだけに使いたいと思うことはドライでもがめつくもない、当然のことだ。
当然のことだし、兄たちの誰にも絶対に譲るつもりはない。けれど。
――でも5人の悪魔は、末っ子からリップサービスでも『兄さんの中で一番好き』と言われると、万歳して踊って喜ぶ。
もし、一つじゃなかったら。
もしも、幸運にも、かなう願いに限りが無いなら。
その時ぐらいは、5人の兄へ、一生遊んで暮らせるだけのお金をお願いしてやらなくもないことは、なくない。
◆
吸血鬼のマスターは、気づかない。
『警察に捕まるようなことはしない』とは『犯罪を犯さない』という意味のほかに、『警察にしっぽを掴まれるようなことはしない』という意味でも使われること。
松野家末弟を迎えにきた彼女の口元が、ケーキを食べる前からすでに、微かに『赤く』汚れていたこと。
【クラス】セイバー
【真名】フランドール・スカーレット
【出典】東方Project
【性別】女性
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B+ 幸運:D 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
精神異常:C
デメリットスキル。気が触れている。情緒不安定。
吸血鬼:B
強靭な肉体と再生能力を両立する。
但し、直射日光を浴びれば気化してしまう弱点を持つ。
魔力放出(炎):B+
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
セイバーの場合、手にした武器を巨大な炎を放つ枝状の刃に変化させることができる。
【宝具】
『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力(one unknown coin)』
ランク:A 種別:対眼宝具 レンジ:1-99 最大補足:1人
全ての物質には「目」という最も緊張している部分があり、そこを攻撃することで対象を破壊する事ができる。
しかし彼女は、その「目」を自分の手の中に移動させることができ、手を握り締めて「目」を壊せば無条件で対象を破壊できる。『目』さえはっきりと視認してしまえば生物、無生物は問わず隕石さえも破壊したという逸話をもつため、対人宝具というよりも対『眼』宝具。本人曰く「きゅっとしてドカーン」。
『汝が継続できない炎の禁忌(レーヴァテイン)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1-99 最大補足:1人
フランドール・スカーレットを『セイバー』のクラスとして限界させた宝具。
手に持つ杖に膨大な魔力を流し込み巨大な剣を作り出し、巨大なレーザー状の炎となった魔力の塊を、横なぎに振ることにより切断し、吹き飛ばす。
【weapon】
レーヴァテイン(非戦闘時は矢印にもにた棒状の物体の形をしている)
【人物背景】
東方紅魔郷の舞台、紅魔館の主レミリア・スカーレットの妹である吸血鬼の少女。
少なくとも495年以上生きているが、少々気がふれているという理由でその大半を紅魔館の地下室で過ごしてきた。
また本人も外に出ようともせず引きこもり状態だったようで、その箱入り娘っぷりは生身の人間は見たことがないという程。
また、長い間閉じこもって生活していた関係で与えられたものしか食べたことが無いため、人間の襲い方を知らない。通常の吸血鬼は食事をするために人間を殺さない程度にしか襲わないが、彼女は手加減が出来ないため一滴の血も残さず吹き飛ばしてしまう。
その歯止めの効かない破壊力は、遥かに姉を凌ぐとされている。
【サーヴァントとしての願い】
なし。しいて言えば、自由になりたい(紅魔館の外に出る自由、太陽の下でも外に出られるような自由)。
【基本戦術、方針、運用法】
日光に弱いという弱点を持つため、主に夜間を中心とした戦闘が望ましい。
また、情緒不安定かつ奔放我儘な性格がらマスターとのコミュニケーションに齟齬をきたす恐れがある。
【マスター】
松野トド松@おそ松さん
【マスターとしての願い】
目指せ勝ち組☆(一人で生きていけるだけの金と地位)
【weapon】
あざとい
【能力・技能】
人心掌握術
【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の末弟。
甘え上手で、世渡りも上手。(『おそ松さん』公式サイトより)
女子力があり、自分の可愛さも知っている(公式Twitter)。
職探しに行ったはずのハローワークで女性職員と連絡先を交換していたり、兄たちを差し置いて女の子と遊びに行くなど、兄弟の中で一番コミュ力が高いと思われる。また、末っ子特有の要領の良さを持ち合わせており、その手腕は真面目な兄に「人心掌握術の達人」と言わしめるレベル。
かわいい見た目とは裏腹に、毒舌かつ失言が多い。松野家扶養家族選抜面接で「いい息子」を演じて真っ先に合格を貰ったり、バイト先で学歴詐称をしていたりと結構黒い。また、エスパーニャンコを真っ先に金儲けに使おうとしたり、ハタ坊にたかるおそ松に感嘆するなど、しれっとがめつい。
その様は、長男をして「エグい」と言われ、三男にはしばしばドライモンスターと呼ばれている。
【捕捉】
一応、聖杯戦争が殺し合いであることは理解している模様。
しかし、フランドールが「教えるのは面倒、教えても良いことはなさそう」と判断した情報は伝えられていません
(令呪がサーヴァントへの絶対命令権であること。使い切ることはマスターの死を意味すること。町の住民が本物ではないNPCであること等)
【方針】
殺し合いは怖いから積極的には参加したくないけど……もし生き残れた時に、聖杯がもらえるなら欲しいなぁ
最終更新:2024年09月28日 09:15