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――いこう、
―――いこう、
―――むこうへ、いこう――――


誰そ彼時。
二人の少女は寄り添うように並んで帰路についていた。
東京をしてかなり寂しい路地を歩いていたが、少女たちの顔に不安の色は無い。
通り慣れた道であったし、少女の家は向い同士だ。
一人で寂しい道を帰る心配はない。

「ねーねー■■ちゃん、これ知ってる?」
「……何これ?」
「今、三日前、見つけたんだけどさ、ネットで有名な神様の都市伝説らしいよ?」

髪のながい少女が、スマートフォンの画面を髪の短い少女に見せる。
そこには、とあるSNSとそこに添付された一枚の画像が映っていた。

「都市伝説って、この一億人総マスコミの時代に」

呆れた声を挙げる少女。
そう、SNSの普及により、より“神”或いは“怪異”の存在はテレビの普及した頃よりもさらに零落したと言っていい。
リアルタイムで提供される情報。情報の共有化。
それらの技術の進歩は“異なる者”の存在をこの東京から放逐した。

「まぁまぁ、で、どう?■■ちゃんには何か見える?」

そんな少女の冷ややかな声にも気にする様子はなく、髪の長い少女は少し興奮した様子でスマートフォンの画面を押し付ける。

「……どうって…綺麗な女の子が見える、かな」

「嘘!■■ちゃんにも見えるんだー。見えない人もかなりいるらしいけど…
この画像に女の子が映ってるのが見えたらね、それを拡散しないといけないらしいんだ。さもないと…」
「さもないと?」
「“神隠し”に遭うらしいよ」
「……あほくさ」

再び放たれた、呆れるような声にもー!と髪の長い少女は憤りの声をあげるが、短い髪の少女は取り合わない。
だが、険悪な雰囲気は一切なく、むしろ何処か愉快で、

「そんな事言ってると、ホラ、後ろに……」

髪の長い少女はにこやかに髪の短い少女の背後を指さした。

髪の短い少女はふん、と鼻を鳴らし、相変わらずの態度だったがそろそろ乗らないのもノリが悪いかと思い、素直に振り向くことにした。
ヘソを曲げられては敵わないし……ついでに、何か見えたといって逆に驚かすのも悪くない。

そんな事を考えながら髪の長い少女から視線を外す。
何もない寂しい街道だった。
見ても特に可笑しな所は何処にも無いし、何の感慨も沸かない。
まして何かがいるなんてことは一切なかった。
だが、そこに悪戯心を反映させる。


「あっ…!そこの道の角に何かいたよ■■■……………え?」



……
…………
髪の長い少女の姿が何処にも無かった。
先ほどまで、並んで歩いていたのに、細い電灯以外何もない街道で、ふざけて身を隠す場所など何処にも無いはずなのに。
キョロキョロと辺りを見回すが、影も形もなく、冷や汗がじっとりと出てきた。

「ちょ、ちょっと……■■!」

気味が悪かった。喉が粘つき、貼りつく。
孤独感。
不安感。

自分の他に、人っ子一人、そこにはいない。
ただ、街灯の光がぽつん、ぽつんと無限回廊のような闇の道で自分を照らしていた。
何も聞こえない。近くにいるはずの少女の足音も、空気の音も。
しかし、香りは感じた。
枯草に、少し鉄錆びが混ざったような香りが。

沈黙。
静寂。
……。
………。
…………くすくすくす。

「!?」

闇が、少女に微笑んだ。
居なくなった少女ではない。

「だ、誰なの!いや、何なの、何なのよぉ……!」


答えはない。
闇はただそこにいる。ただ、そこで詠う。

――――いこう、
“向こう”へいこう、
 虚無の都へ、
 母なる闇へ、
 そこは永久、
 そこは常闇、
むこうへ、いこう――――



短い髪の少女は理屈ではなく直感で理解した。
あの長い髪の少女、■■■はきっと、この“物語”の一部となったのだ。

そう、これは、居なくなった少女が語っていた物だ。
これは、先ほど自分が一笑に附していた物だ。
これは、
これは、
――――――“神隠し“だ―――!


完全に巻き添えを喰い、身じろぎ一つできずに固まる少女の腕を何かが掴む。
“何か”は闇から生まれ、自分の形すら覚えられなくなった忌むべき畸形であり、哀れな肉塊だった。
そこから、一本の白い腕が生え、それが自分の腕をつかんでいた。
それに気づいた瞬間少女は耐え切れず悲鳴を上げる。 


……目の前に、目隠しが降りてくる。
視界が、闇に堕ちる。

その時――時ここに至った今、奇妙ではあるが少女は悟った。
自分はこの“奇譚”の傍観者であるのか、それとも―――、


……“奇譚“に、新たな文章が刻まれた。
二人の少女が忽然と姿を消した。
ただ、それだけの事だった。



471 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:32:08 TTAsGMro0

深夜、桜の観光名所として広く認知されている目黒川の、桜並木の端の方に一組の男女がいた。
男は白。見た物を凍りつかせるような笑みを浮かべて、杖を持っている。
女は臙脂。瞳を閉じ、朗々と詩を綴る。
その詩が終わりに差し掛かったところで、男が、死神が少女に語りかける。

「マスター…」

びくり、と少女が震える。
そして、いやいやと、子供が駄々を捏ねるように首を横に振った。

「いや…駄目……」

彼女にとって、初めてかもしれない自分を認識して、自分に“飲み込まれない”存在。
しかして彼女は明確な拒絶を表す。
少女の精神の善良さを鑑みれば無理も無い事だろう。
だがしかし、死神は、そんな事、知ったことではないと少女の細い手首を掴む。

「…嘘を付いても…駄目だ。ここに来たと言う事は…お前は聖杯を…欲してるんだ」
「いや…だめ……それだけは…」


キャスターのサーヴァント、ヨマの中で、神隠しの少女への殺意が、昂ぶる。
―――殺すか、いや、まだ駄目だ。
今、殺してしまっては、これからの殺し合いを楽しめず、自分は消える。
宝具さえ発動できれば、魔力を気にしないで済むが、その肝心の宝具の発動には忌々しい事にマスターの魔力バックアップが必要だ。
なので聖杯戦争の事をもう少し教えて、令呪の事は伝えず、隠れさせておけばいい。
都合がいい事にこのマスターはそれだけは得意だ。

その間に自分は死神の名のもとに殺して殺して殺して回る。
そして、聖杯に辿りついた暁にはこのマスターも殺す。これは確定事項だ。
天地がひっくり返ったとしてもこれだけは覆らない。
―――生きていさえいれば光だと、自分と同じ女神の三十指の男は言った。
男の事は殺したいと思っていたが、これだけは真理だとヨマも認識していた。
そして、男の言っていた死こそ闇――これは死を経験し、サーヴァントとして世界に召し上げられた今、存外大した物ではないと知った。

だが、自分のマスターの“世界”は何だ?
月の光すら届かぬ。無限の黄昏。
あんな物、あってはならないのだ―――死神の世界は明るくなければならないのだから。
故に、この少女だけは必ず殺す。
その時を想像しながら壊れた笑みを浮かべて、男は神隠しの少女の白磁の肌から手を放した。




……神隠しの少女はこの魔都、東京に来るべきではなかった。
本来ならば、来れるはずも無かった。
何故この東京に彼女が至れたのか。


彼女が生まれついた“異存在“ではなく、元は人間だったためか。
技術の進歩の象徴が彼女の奇譚を呼び寄せたためか。
それとも彼女の永遠の孤独と言う虚無が聖杯への呼び水となったのか。
どれも今は推測の域を出ない。

しかしやはり彼女はここに来るべきではなかったのだ。
彼女の永遠の孤独と言う虚無を埋められるのは、聖杯でも、ましてや光の死神でもなく、魔王陛下その人だったのだから。

だが、奇譚の序章は既に綴られてしまった。
もう、抹消することはできない。



今ここに、確かに―――灯も、猫の目も、“魔王陛下“も存在しない東京で神隠しの物語は幕を上げたのだ。




【クラス】
キャスター

【真名】
夜馬@マテリアル・パズル
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運D 宝具A+

アデルパ使用時
筋力:B 耐久:B 敏捷B 魔力A+ 幸運E

ムーンアデルパ使用所ひ
筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力EX 幸運E-

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

陣地作成:E
自身に有利な陣地を構築するするためのスキル
ほとんど機能していないが、彼は生前世界の明るさを知るまで城を求め続けたという逸話から、城に当たる建築物に対してのみ補正が掛る。

道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
彼は死神であり、作れるものは光と、死だけである。

【固有スキル】

精神汚染:A
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
本来ならば同程度の精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しないが、彼のマスターは人ではない怪異のため、意思の疎通は何とか可能である。

戦闘続行:A+
霊核を破壊された後でも最大五ターンは戦闘を可能にする。
彼は半身を?がれた後も魂の矢となり自らの敵を追い詰め続けた。

視覚操作:D
彼の光の魔法を応用した技術の象徴。
光の屈折率を弄ることで相手の視覚を操作する。

【宝具】

『死神に光あれ(アデルパ光刺態)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身
持っている杖に光の魔力を一点に集め、吸収する事によって実体を持った光を操り、自身のパラメーターすら引き上げるマテリアル・パズル。
かの宝具が発動している間は例え宝具であっても拳などの物理攻撃は通じず、ダメージも直ぐに回復する。
光を魔力に変換して発動するため燃費も良いが、逆に光の弱まる日陰では前述の不死性は消え、物理攻撃も通るようになり、マスターが魔力供給をしなければ変身も解けてしまう。
当然夜には発動不可能。

『明るき世界(ムーンアデルパ 月下光刺態)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身
前述の宝具の穴を埋める宝具。
太陽の光と比べてなお強力な月の光の魔力を吸収し、自在に操る。
不完全なアデルパ光刺態とは違い、この宝具の効果は糸一晩中続く。
パラメーターもより強化され、月の光を浴びている間は無制限の魔力供給が成されるため不死性も完全なものとなる。
加えてこの姿の時は月の引力すら操れるため、まさに一国を破壊できる戦闘能力を誇る。
しかし、回復魔術をかけられると、自身の再生能力がそちらに上書きされてしまい、逆に不死性は喪われてしまう。
そして当然発動時には月が出ていて、マスターからの魔力バックアップを受けていなければこの宝具は発動不可能である。

【weapon】
大ぶりの杖。

【人物紹介】
女神の三十指最強の五人、五本指のうちの一人。
ある意味とても純粋で自分に正直で、真っすぐな男。
そんな透き通った心の持ち主だが―――それ故に、男は誰よりも悪となった。

【サーヴァントとしての願い】
マスター含め全員殺す。



【マスター】
あやめ@missing

【マスターとしての願い】
ひとになりたい。

【能力・技能】
隠し神としての能力。
彼女はこの東京に至る過程で大きく神格を歪められ、弱体化しているもののその力は強力である。
気配遮断のスキルと同じ効果の能力を持ち、同じく異界の存在であるサーヴァントですら注意しなければ捕捉するのは手間。
当然マスターやNPCでは彼女を見つけるのは不可能に近いが一度認識してしまえば、この効果は抹消される。
加えて気配察知などの索敵系のスキルを有するサーヴァントなら捕捉は容易。
そして、もう一つの能力、彼女は自信を認識した存在を望む望まないに関わらず異界へと引きずりこむ。
同じ異界の存在であるサーヴァントにこの能力は通用しないが、飲み込まれたNPCやマスターはすべからく精神と肉体に変調をきたし、消滅するかできそこないに変わる。
この能力にマスターが対抗するには、あやめの存在をとにかく他の人間に伝え、楔を作ることで能力の効果を遅らせる事である。
ただし、彼女をもし殺してしまえば周囲が異界へと変わり、無差別に対象を異界へと一定時間引きずりこみ続けることになるだろう。

【人物紹介】
かつて山の神の慰撫のために捧げられた少女。
人として死した後、その身は異界へと流れつき、異界へ現世の者を引きずり込む隠し神としての力を望まぬ形で手に入れた。
それ故精神などは生前の非常に気弱で善良な少女でありながら、絶対且つ永遠の孤独を定められている。

【方針】
聖杯は欲しいが、現世の人を殺めたくはない。
最終更新:2024年10月03日 21:38