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今日も美術館は盛況だった。
老若男女問わず、多くの人で賑わっている。

芸術性を理解出来る者は絵画やオブジェを見つめ、創作された芸術に浸る。
創作とは世界を己の色で染め上げ、形に息を吹き込むことだ。
匠よって創作された世界は、多くの人間を虜にしてしまうだろう。

芸術性を理解出来るとは言い難い子供でも、楽しむことが出来る。
アートとは己の価値観を表現し、他人に叩き付けることだ。
一見奇妙な外観ではあるものの、具現化された価値観は多くの人間を世界に引き込むだろう。

今日も美術館は盛況だった。
多くの人間の感性を刺激し、現在に置ける感受性を育てていた。







美術館には当然のように閉館時間がある。
こればかりは抗うことも出来ず、世界に浸っていた人間達は自分の世界に帰るしか出来ない。
また明日も来よう。
そう思えば、彼らは芸術に支配されたと云っても過言ではないだろう。


そして、閉館時間でもまだ独りで残っている少女がいる。
見る者を魅了する麗しき金髪。
奥深くにまで吸い込まれそうな蒼瞳。


灯りが消えた美術館で、少女は独り、絵画を見つめる。



少女は何故、此処に居るか解っていない。
どうして閉館時間後も美術館に残っているのか。

どうして美術館の人間は彼女に気付かないでいるのか。

どうして誰も迎えに来ないのか。

どうして彼女はその身体で此処にいるのか。

少女の記憶から何か大切なモノが抜け落ちている。表現は出来ないけれど何かが足りない。
ジグソーパズルのピースが足りないのでは無く、基盤そのものが存在しないような、とてつもない喪失感。

どうして私は此処に居るのか。
そもそも私は誰なのか。


私は人間だったのだろうか。


その場でうずくまり、気持ち悪い感覚が少女の心を荒らす。
ぐるぐると廻る不快感は、少女に対して何かを訴えている。

まるでこの世界が可怪しいような、誰かに導かれた箱庭に対するカウンターのような。


コツコツコツ。


ふと聞こえた足音に、少女の身体が反応し、ビクッと震え上がる。
足音は近づいており、寧ろ、少女が顔を上げると、一人の青年が立っていた。


ぐるぐる巻きの包帯で顔が覆われており、ボロ臭い紫のマントのようなパーカーのような……を羽織り、大きな鎌を携えた男。




「人間見ーつけた」




耳に残る声は高いか低いかで表すと、高い。
雑に表現するならばホラー映画に出て来るイカれた殺人鬼のような声。


「この美術館は気色悪いゴミしか無くてよぉ……あ? 聞いてんのか?」


突然現れた男に対して、少女は瞳に涙を浮べながら怯えている。
その視線は鎌に集中しており、脳内には首を斬り落とされる未来が勝手に再生されてゆくばかり。


震える少女を見ながら舌打ちをした青年はダルそうに鎌を床に下ろす。
金属音が響き、その音にまた少女が怯え、青年もまた舌打ちを行う。


「つまんねえ……つまんねえよ。
 何だその顔は。お前の絶望の表情、ちっとも唆らねえ」

勝手に現れ、勝手に不機嫌になった青年は下ろしたばかりの鎌を振り上げる。
包帯の隙間から除く瞳は光を帯びていなく、本当に退屈そうな闇であった。


「死ね」


無慈悲に振り下ろされる鎌。
少女が喰らってしまえば、死は免れないだろう。
当然、少女じゃなくても鎌を脳天に振り下ろされれば死んでしまうだろう。

悲しいものだ。
少女は結局、何故自分が美術館に居るのか解らずに死んでしまう。
抜け落ちている記憶にすら気付かないまま、その生命を散らしてしまうのだ。

顔を上げると鎌が迫っている。
嗚呼、私はこれから死んでしまうんだ。諦めるしかない。
けれど、死にたくないのは当然であり、口から救いの言葉が漏れるのも仕方が無いことである。


「助けて――――――――――――――――――え?」


疑問の声は己が生きていることに対して。

「あぁ!? んだよこの人形、動くのかよ」

赤い瞳を持つ青い人形を斬り裂いた青年が驚きの声を……上げつつも、普段通り振る舞う。
美術館に飾られていた、一般的に言えってしまえば気色悪い人形が少女と鎌の間に割って入ったのだ。
驚く青年。そして少女もまた、自分の状況が理解出来なく、驚いている。

しかし。

逃げるなら今しか無い。そう思い、彼女は走る。


「お……お!
 お前、今ちょっと『生き残れるかも』って希望の顔をしたな!? 出来んじゃねえかよそんな顔もォ!
 いいぜ、やりがいがあるってもんだ……逃げろよ、追い付いてその希望を絶望に変えてやっからよォ! ハハハハハハハハ!!」


全力で走る少女を追い掛け、青年も鎌を携えながら歩み寄る。
身体の差、能力の差、筋力の差、脚力の差。
全てが青年に軍配が上がる中で、少女が逃げ切れる訳がない。

そう独り、ならば。


「さっきから邪魔してきてんじゃねえよ置物がああああああ!!」


青年を阻む人形達が逃げる少女を延命させる。
蒼い人形や額縁からはみ出した女、首の無いマネキン。

美術館に飾られていたオブジェ達が一斉に動き出し、青年に襲いかかっているのだ。
夜の美術館にしては出来過ぎている。米国なら映画の一つでも作られるシチュエーションだ。
しかし、結末は万人受けするようなことにはならないらしい。



「あぁ面倒いゴミ掃除だった。行き止まりでお前はゲームオーバーァだぜ」



気付けば少女の目の前は壁だった。
逃げ場はもう無い。道は青年が立っている場所を戻らなれば無い。
つまり絶体絶命の状況に陥っているのだ。救いは無い。


「此処に呼ばれてから退屈してたんだが……久しぶりの人間で楽しかったよありがとう――なんて、言う訳無えよなァ!!」


狂気に満ちた声を轟かせ振り上げられる鎌に月明かりが反射する。
彼は呼ばれてから退屈していた。そう言ったが彼を呼ぶ人間などいるだろうか。
顔を包帯で覆った鎌を持った男。近付きたくない存在だ。

しかし少女にはそんなことを思う時間も無い。
鎌に首を斬り落とされるのだから。



























「……あ? は、え、まじ?」






けれど鎌は振り下ろされない。
助けに入る人形は全て青年に倒されている。
彼が止めたのだ。男は自ら鎌を止めた。


「お前の腕それ令呪じゃん……いや、じゃあお前が俺のマスター……えー」


少女は殺される直前に腕を振り上げ、首を守ったつもりでいた。
その際に袖から腕がはみ出しており、それを見た青年が、サーヴァントが動きを止めてしまった。
そして、全てを悟ることになったのだ。


「まじかよ……ハードモードじゃん。
 コイツが俺のエネルギー源みたいなモンだろ? 頼り無え~……いや、魔力はビンビンなんだけよ、なんでだ? まっ、いいか。
 つーか俺が聖杯戦争のこと説明すんの? 面倒くさくね? 他の奴らを全員ぶっ殺すだけだから。よし、ちゃんと説明出来たな俺」


独りでマシンガンのように言葉を垂れ流す。
記憶を持たない少女――マスターに、彼なりに聖杯戦争を説明したつもりだ。
勿論、説明になっていないのだが。


「……メアリー」

「あ?」

「思い出したの、私の名前」

「お、おう……」


やり辛い。そんな表情を浮べながらマスターの名前を知るサーヴァント。
何せ自分が適当に殺そうとした少女が自分のマスターと来たもんだ。あり得ない。
利口な存在だったならば今頃、令呪を使われて自害させられている未来もあり得たのだ。

「…………こわっ」

そしてやり辛いのは、もう一つ理由がある。

(似てやがる)

それは生前の記憶だ。

(金髪に蒼い瞳……アイツと一緒だ)

地下で出会った、自分を殺せと望む可笑しな少女。
奇妙な縁で結ばれた、言葉では表せないあの少女と似ている。

何と言えばいいか解らないサーヴァントであるが、一つだけ言えるとすれば。
あの頃は悪くなかった。それだけである。


(レイチェルに似てやがる)



美術館で出会った独りの少女と殺人鬼。
共に愛情を知らない/感じられなかった異形の存在。

絵にでも表したかのように惹かれ合った彼女達は、今宵、聖杯戦争に召された。




【マスター】

 メアリー@ib

【マスターとしての願い】
 記憶を取り戻したい。
(本来の記憶を何かしらの理由で失っている)

【weapon】

 今は特に無し。

【能力・技能】

 今は特に無し。

【人物背景】

 緑のワンピースを着る金髪碧眼の美少女。お父さんが大好き?
 人懐っこく、明るい性格で歳相応の反応を取る元気な美少女である。

 その正体は人間では無く、『絵』である。
 芸術作品として生まれた彼女は外の世界に興味を持った。
 しかしそれは叶わない夢。叶うとすれば現世の人間を犠牲にするしかない。

 聖杯戦争では普通の少女として喚ばれたようだ。
 しかし、何故喚ばれたかは知らず、そもそも記憶を失っており、自分が『絵』であることすら認識していない。

【方針】

 聖杯戦争のことを知らない。



【クラス】
 アサシン


【真名】
 アイザック・フォスター@殺戮の天使


【パラメーター】
 筋力D 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具D


【属性】
 混沌・悪


【クラススキル】
 気配遮断:C
 自身の気配を消す能力。


【保有スキル】
 精神汚染:A
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 狂った殺人鬼を塗り替える狂気など存在しない。

 反骨の相:B 
 権威に囚われない、裏切りと策謀の梟雄としての性質。
 同ランクのカリスマなどのスキルを無効化する。

 戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】

『狂る狂る廻る殺人鬼(アイザック・フォスター)』
 ランク:D 種別:対人宝具
 生前、連続殺人鬼であったアサシンの逸話がそのまま己の一部として宝具へと昇華した。
 彼が戦闘体勢に入った瞬間から狂化:Eが付与され、殺人鬼としての狂った本性を見せる。
 但し隠密行動のランクが一段階下がるため、彼に暗殺は向いていない。
 また返り血を浴びる度に筋力と敏捷が上昇する……と、本人は思い込んでいるがそんな事実は無い。


『生命を刈り取る鎌(鎌)』
 ランク:D 種別:対人宝具
 アサシンが普段使っている大鎌。真名がある程立派なモノでは無く、ただの武器に近い。
 彼が真名を明かせば(名前が無いため、その気になれば)舞台が暗くなり、周囲が闇となる。
 そして鎌に魔力が付与され、普段は斬れない結界や魔術礼装を斬り裂くことが可能になる。


【weapon】
 鎌


【人物背景】
 イカれた殺人鬼。外見は二十歳程度である。
 包帯で顔を覆っており、遠くから見てもヤバさが感じ取れるイカれた殺人鬼。
 幸せそうな人間やうれしそうな人間を見ると、つい殺したくてたまらなくなる衝動に襲われるらしい。
 孤児院出身らしく、もしかしたらその時に彼は狂ったのかもしれない。


【サーヴァントとしての願い】
 全員殺せばよくね?


【基本戦術、方針、運用法】
 だから全員殺せばよくね?


【備考】
 出展フリーゲーム『殺戮の天使』が未完結のため、新たな設定等が追加されるかもしれません。
最終更新:2024年10月03日 21:41