「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーー!!!」




黒木智子はぼっちである
他者との会話が苦手な傾向が強く、普段なら、教室のど真ん中でこんな大声は出さない
そう、普段なら

教室内の壁に、窓に、床に、天井に、机に、黒板に、ありとあらゆる部分に血がベットリと塗りたくられ、その上からこれまた真っ赤な肉が引っ付いている
そのすべてが、話したことがほぼない、元クラスメート達の残骸であった



そのスプラッター映画も真っ青な光景を作り出した相手ーークラスメートを皆殺しにした殺人鬼は、今、自分を見つめている
棍棒を片手に、血まみれになりながら仁王立ちする筋骨隆々の巨漢
それは狂戦士の英霊……つい先程、 黒木智子のクラスメートを殺し、魂喰いを行ったバーサーカーである

いつもと変わらない日常の筈だった。
ちゃらちゃらと着飾って、男に媚びへつらっているビッチ共、内心じゃエロいことかんがえて鼻の下伸ばしてる男共のリア充ライフを尻目に絶賛ぼっちライフが、なぜ凄惨な殺戮現場となったのだろうか

あまりにもボッチすぎて、思わず学校がテロリストに占拠されないかなー。とか、
某小説みたいにクラスメート同士で殺しあってくださいみたいな展開になら無いかと妄想したりもしたが、まさか、現実にこんなことになるなんて

「あ……あぁぁ……」

自分が惨殺されていくイメージが、脳内にありありと浮かび上がる
泣き叫び、悲鳴を上げてもコイツは決して聞き入れず、惨たらしく自分を殺すだろう
恐怖のあまり、手足がガタガタと震え、歯がガチガチと音を立て、 涙と鼻水を垂れ流す
抵抗する?
一瞬で40名もの人間を粉砕した相手だ。偶然教室の奥にいたから助かっただけの自分が、敵うわけがない
なら走って逃げる?
できれば今すぐにでもそうしたいが、体が動かない。動いてくれない
今すぐにでも逃げ出したいのに、金縛りにあったように足が言うことを聞かないのだ。

「タ、タシュけて……っ」

絞り出すように上げた言葉は、ほとんど声になっていなかった
苦しい。早く逃げなきゃ。でも、体が動かない


(嘘だろ、意味分かんねぇよ。フィクションの世界だけだろこんなの。 アタシが何をしたってんだよ……っ!!!)

バーサーカーの憤怒に歪んだ顔は恐怖を与え、血走った目は明確な殺意を示していた
その威圧感に、耳に入るうめき声に、押し潰されそうな感覚がした

ーーー殺される

化け物はゆっくりと歩み寄ってくる

ーーー死にたくない

その手に握られた棍棒が振り上げられる

殺される。殺される。殺される。殺される。殺される。
殺される。殺される。殺される。殺される。殺されーー


あ、無理だこれ


(どうせ死ぬんだったら……一度くらいはリア充、したかったなぁ)


避けられない死を感じ、黒木は目をぎゅっと瞑った
しかしその瞬間は訪れなかった




「やめてください」

何者かが、智子とバーサーカーの間に割り込んできた

(……へ? あ、あれ、誰?)

助け? あれ、もしかしてアタシ助かる!?
薄目を開けて、庇うようにたっている人影を確認する
それは黒木の知らない相手だった 
栗色の髪を持つ、十代半ばの女だった。
あまり背が高くなく、手足も細く、生白い。顔立ちは小作りで、美人とは言えない、出るところも引っ込む所も起伏が足りず、あまり性的な魅力には結びつきそうにない。そんな、女の子だった

(……誰?)

若干の頼り無さに混乱する黒木を尻目に、その少女は穏やかにバーサーカーに語りかける
それは殺戮を犯した相手に対する罵倒ではなく、説得であった

「マスターが怖がってる だから、止めて」


バーサーカーは耳を貸さなかった
黒木に降り下ろす筈だった棍棒を、少女にぶつけたのだ

グシャァ!!!と吐き気を催す効果音とともに、呆気なく少女は死んだ


「……は?」

呆然とした呟き。臆することなく殺人鬼に立ちふさがった救いの手が、死んだ
バーサーカーの一撃で、頭どころか全身がぐしゃぐしゃにされてしまっていた

どうみても即死。血と内蔵を撒き散らし、四肢を投げ出した姿に命を感じることはできない


「■■■■……」

あまりにもあっけない手応えに、バーサーカーの興味は残りの得物に注がれた



「ひいいぃぃぃぃぃ助けてえええぇぇぇーー!!」

堪らず悲鳴をあげた。今度こそ死ぬ。殺される。そう思った



もしもこの時、バーサーカーに理性があったのなら、黒木に少女ーーサーヴァントの知識があったのなら、疑問に思った筈である
なぜこの少女のサーヴァントは、消滅しないのだろうかと
サーヴァントというのは基本、マスターからの魔力で現界している
普通のサーヴァントなら、こうまで霊核にダメージを与えられたら、どう考えても消滅するのが筋であった
そう、普通のサーヴァントなら




「■■■■■■■■■っ!!!!」

異変はすぐに起こった
何の前触れもなく、バーサーカーの半身が、ごっそりと消滅したのだ


「……痛いなあ。 か弱い女の子を何だと思ってるんだよ」


何事もなかったかのように、殺した筈のサーヴァントが、蒼白な顔でむくりと立ち上がる
欠損した肉体は、強制的に“バーサーカー“から取り込んだ魔力で再生されていく


「■■■■■■■■■ッ!!!!!」


霊核の半分以上を失った強烈な喪失感と、絶え間ない激痛に狂乱するバーサーカーは、怒りに喚きながら血走った目で眼前のサーヴァントを見下ろす


ーーーコイツがやった


正気を失った思考でそう考えたのかは知らないが、今度こそ息の根を止めようとバーサーカーは動き出した
全身から殺意が迸り、先程と明らかに力が上がっている

ーー確実に仕留めろ

遠方からバーサーカーに魂喰いを行わせていたマスターが、令呪を使ってそう指示したのだ
三画しかない令呪によるサーヴァントのブースト。マスターである三流の魔術師は勝利を確信する


それが、完全な悪手であるにも関わらずに








結局、バーサーカーは少女ーーアサシンをその後2回殺すも、その度に肉体を根こそぎ取り込まれ、完全に消滅し
そのマスターである魔術師も、もうこの偽りの東京には存在しない


「大丈夫? 立てる?」
「ぇ……ト……ぁっ……ぃぇ、ダイジョです」

明らかに異常な女に怯えつつ、しかし助けてもらったというのは事実。黒木はおずおずと立ち上がった

「……あ、そういえばそっちは何も知らされないんだっけ? えっとねーー」




そうして彼女ーーアサシンはすべてを話した
万能の願望機である聖杯の事。
召喚される七騎のサーヴァントの事。
最後まで生き残った主従のみ願いを叶えることができるという事など



聖杯戦争。そのフィクションのような設定に茫然とする黒木。その様子を見て、アサシンは励ますようにこう言った


「これでも生き残ることだけが取り柄だし、あまり強くはないけど、頑張ってマスターを守るから、安心して」

そういってアサシンーー絶対生還者の異名を誇るフィールド探索者は、微笑んだ





【名も無きバーサーカー 消滅】
【名も無きマスター 死亡】



【クラス】アサシン
【真名】スペランカー@オールドアクションゲーム二次創作シリーズ
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:E- 耐久:EX 敏捷:E- 魔力:E- 幸運:E- 宝具:EX


【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい

【固有スキル】

貧弱体質:A
全ての能力において下回る才覚。その異能の副作用によって、肉体、頭脳、その他全てにおいでアサシンは無能になりはてていた
物覚えは悪く、肉体は脆弱、それはサーヴァントとなった今でも変わらない

被虐体質:A
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
Aランクともなると更なる特殊効果が付き、攻撃側は攻めれば攻めるほど冷静さを欠き、 ついにはこのスキルを持つ者の事しか考えられなくなるという。

神殺し:A
数多の邪神やその眷族たちを滅ぼしてきた逸話から獲得したスキル
神性の高い相手と対峙した場合、敏捷と幸運に高い捕集を得る

不屈の精神:EX
天文学的な死を経験し、乗り越えてきたことで培った人外の精神力。精神に干渉系魔術を完全にシャットアウトする
その折れない心はもはや邪神ですら怯えるほどの域に達しており、這いよる混沌による攻め口でも折ることができなかった

戦闘続行:A+++
名称通り戦闘を続行する為の能力。
名だたる邪神たちですら、アサシンを止めることは出来なかった


【宝具】
『不死の呪い』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アサシンの存在そのものであり、彼女の受けた海底の邪神による呪われた祝福
アサシンは死ぬと、周囲の物質を強制的に魔力として取り込んで、再生・復活する。
もしも肉体に欠損部分が出ると、周囲のものから補う。
アサシンが害意をもつ相手によって殺された場合、殺した相手から、その欠損分の肉体をえぐり取り、再生する
このカウンター能力は概念的なものであり、相手の強弱関係なしに発動する
Aランク以上の対魔力をもつサーヴァントなら防ぐことが可能だが、アサシンが死ぬ度にカウンターは蓄積されていくので、いずれは破られるので、無効化することは不可能
なおこのカウンターは自発的にアサシンを害そうとした相手にのみ発動するので、アサシンに対して脅迫など、意に反した手段で攻撃を強要された相手には働かず、その場合はそれを仕向けた相手がカウンターをうける
この宝具の副作用により、アサシンは本当にちょっとしたことでも死ぬ。本当にちょっとしたことでも死んでしまう
多少のダメージなら周囲から補えるが、完全に消滅した場合などはマスターの魔力により復活する


『死の鏡(ブラスター)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アサシンのもつ唯一にして絶対の武器
向けた相手の命と、発動したものの命を、その場で等価として、共に消し去り滅する宝具
低くは虫から、高くは神まで。相手が何者だろうが確実に葬る必殺の武器
しかしながら欠点も多く、使えば確実にアサシンは死ぬし、一度に一つの命しか消すことが出来ない。ゼロ距離で使わないと意味がなく、射程距離はわずか十メートル。
連射も出来ず、一度使用すると数時間の溜めが必要であり、尚且つ消し去る相手が神に匹敵するほどの格上である場合、アサシンが復活しても数日間実体化できない。更に法則をゆがめて存在している相手(サーヴァントなど)にしかこの宝具は通用しない


【weapon】
ブラスター
上記の宝具。それ以外の武装はもたず、まったく使いこなせない

【人物背景】
絶対生還者の異名を誇るフィールド探索者
五歳の頃に、娘の幸せを願った父親が邪神クトゥルフを召喚、不老不死の呪いをかけられ能力者となる
世界中のフィールドを攻略しながら生活費を稼ぐ一方で、各地で暗躍し災害をもたらす邪神たちと数々の陰謀に、大切な人達の未来のために抗っていく
本人の代名詞である不死の呪いは凄まじく、世界に存在する確率をゼロにされたり、
マイクロブラックホールによる時間逆流粉砕からも復活し、挙げ句のはてにアカシックレコードから削除されても甦るという、這いよる混沌など、彼女を全力で潰しにかかった邪神ですら手に余る不死性を誇る
逆にそれを除けば、無能といっても差し支えない程度の能力しか備わっていないが、決して愚か者ではなく、対話が可能な相手なら邪神にすら歩み寄ろうとする姿勢を見せるなど、人としての器も大きい。
天文学的な死を経験し到達したその強靭な精神力は、邪神すら化け物と畏怖し、恐怖させるほどである

他のフィールド探索者と協力したとはいえ人類を幾度となく救った英雄の1人……なのだが、呪いで脆弱になった肉体と不幸体質によりロクな目に遭っていない苦労人




【サーヴァントとしての願い】
マスターを助け、自分にできることをする





【マスター】
黒木智子@私がモテないのはお前たちが悪い!!

【マスターとしての願い】
家に帰りたい

【人物背景】
高校入学後2ヶ月近く同級生と会話が出来ないという人生ソロプレイヤーであり、コミュ傷であることを除けば普通の女子高生

【捕捉】
アサシンから聖杯戦争の知識を得ました
クラスメートが全滅しました



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 11:46