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理由 (リレー作品)

名無しさん(1)



美味い。
俺の一日はこの一杯のエスプレッソから始まる。
まさに至福のひとときだ。
タバコをくゆらせながら英字新聞に目を通す。
天才物理学者といえど世界情勢のチェックも怠らない。
穏やかな時間がゆっくりと過ぎていく。
ピンポーン
こんな時間にセールスか。俺の部屋を訪ねてくる者はセールスマンしかいない。
何故なら俺には友達がいないからだ。この前は追い返すつもりが50万の羽毛布団を
買わされた。天才は同じ過ちを二度繰り返さない。居留守を使う。
ピンポーン、ピンポーン
しつこいな。俺はいないぞ。
ピポピポピポピポピンポーン
さすがに腹が立ってきた。今日はきっちりと追い返してやる。
少し熱くなりながら玄関へと向かう。
「どちら様?」俺はドア越しに尋ねる。
「おう、ようやく起きたか上田」聞き覚えのある女の声。
あいつか・・・ 「ただいま留守にしております、ご用の方は・・・」
「寝ぼけた事言ってないで、とにかく開けろ上田」
俺は渋々ドアを開ける。
「しばらくぶりだな、元気だったか上田」俺の目を真っ直ぐに見据えながら
奈緒子は言った。
「要件はなんだ?」こいつはセールスマンよりタチが悪い。さっさと追い返すに限る。

「上田、今日はお前とセックスしに来た」



幻聴か?聞き間違いか?
「上がらせてもらうぞ」ヤツは靴を脱ぐと部屋の中へと消えた。
      • 罠か?
頭をフル回転させながら部屋に戻る。
「これは、なかなかおいしいな」俺のエスプレッソを勝手に飲みながらヤツが微笑んでいる。
俺は様子を窺いながら、少し距離をおいてソファーに座る。
「シャワーを借りるぞ上田。お前はその間にこれでも読んでおけ」
奈緒子は鞄から一冊の雑誌を取り出すと俺に渡した。
付箋の付けてあるページをめくる。
今週の特集 セックスで女は綺麗になる
赤鉛筆で、ある一文に線が引いてある。
ー 女性ホルモンの分泌が増え、胸が驚くほど豊かに ー
これかっ!
あいつにとって俺は単なる豊胸マシーン・・・ 。ふつふつと怒りが込み上げ、
俺の中で何かが音を立てて崩れていく。
いいだろう、お前の望む通りにやってやろうじゃないか。



30分程経った頃、奈緒子はバスルームに入ったままの格好で部屋に戻ってきた。
バスタオル一枚の姿を予想していたので、意外だった。
「ずいぶん長かったな」
「お前もシャワーを浴びてこい」奈緒子は俺とは目を合わさずにポツリと言った。
「さっき浴びたよ。朝風呂は俺の趣味だからな」
「そうか・・・」
「早く寝室に行こう」俺は強引に奈緒子の腕を掴む。
寝室に入ると俺は奈緒子をベッドに突き飛ばした。
「きゃっ」
奈緒子のロングスカートがめくれ、白いふとももが露わになる。
奈緒子は真っ赤になりながら慌てて裾を直す。
俺は奈緒子に覆いかぶさる。
奈緒子は身を固くして、小さく震えている。
「・・・初めてなんだから、もう少しやさしくしろ」
「お前・・」
「それから、ウソでもいいから好きだって言え上田」
まわりくどいことしやがって・・・

「お前が言ったら、言ってやるよ」

最終更新:2006年09月07日 09:20