ID:g8 > L9Yc0氏:みなみとゆたかと『ゆーちゃん』と

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「う・・・んん・・・あれ?」  岩崎みなみはベッドの上で目を覚ました。しかし、そこは自分のベッドではなかった。むしろ、自分の部屋ですらなかった。そこは自分のよく知る場所、陵桜学園の保健室であった。                                     みなみとゆたかと『ゆーちゃん』と 「持久走ってやだよね、疲れるし汗だくになっちゃうし。」 「でも、冬だからまだいい方かな?夏だったら暑いから途中で倒れちゃうかもしれないし。」 「あぁ、なるほどね。」  田村ひよりと小早川ゆたか、岩崎みなみはグラウンドまで歩いている間、話しをしていた。といっても、話しているのはひよりとゆたかだけであるが。 「でも、もし倒れちゃっても、岩崎さんが保健室まで連れていってくれるから大丈夫だね。」  ここでひよりは自らが作り出した妄想世界へ飛び出した。 「あ・・・」バタンッ!! 「ゆたか、大丈夫!?」 「う、ん。大丈夫、だよ。心配しないで。」 「だめ、心配だから保健室まで連れて行く。」 「で、でも・・・わぁ!?」 「さあ、行こう。」 「ま、まって、みなみちゃん。自分で歩けるから・・・その・・・お姫様だっこはやめて。」 「この方がゆたかの体に負担が掛からない。大丈夫、私は保健委員だから。」 「・・・ありがとう、みなみちゃん。」 (ぐわぁ、自重、自重するっス、わ~た~し~!!) 「う~ん、今日は平気だと思うな。最近、体調良いし、それに、みなみちゃんに迷惑かけられないし。」 「・・・私は迷惑だなんて全然思ってない。」  そう答えたみなみにゆたかは少し怪訝そうな顔をした。 「みなみちゃん、大丈夫?なんだか気分悪そうだけど。」 「え?そうなんすか?」  ひよりはみなみの気分が悪そうなことに全く気が付かなかった。いや、ひよりでなくとも気が付かなかっただろう。そんなみなみの微妙な表情を読み取ることができるゆかたはさすが、と言うべきだろう。 「・・・問題、ない。」 「そう?無理しちゃだめだよ。調子悪かったらちゃんと言ってね。」 「・・・ありがとう、ゆたか。」  そんなゆたかとみなみのやり取りを見ながら、ひよりは再び自らが作り出した妄想世界へ飛び出した。 「う・・・」ドサッ 「みなみちゃん!?」 「大丈夫、ゆたか。心配、しないで。」 「大丈夫じゃないよ、みなみちゃん。すぐに保健室に行こ。」 「・・・うん、わかった。」 「さぁ、私の体に捕まって。」 「え?だ、だめ!ゆたかじゃ私の体を支えきれない。」 「でも、みなみちゃんのこと心配なの。みなみちゃんになにかあったらいやなの。」 「・・・それじゃ、失礼して。大丈夫?重くない?」 「ううん。みなみちゃん、そんなに重くないよ。それじゃ、行こうか。」 「・・・ありがとう、ゆたか。」 (ぐわぁ、だから自重しろ、自重しろっス、わ~た~し~)  体育の授業は時間を計りながらの持久走を行っていた。みなみはやはり具合が悪いようだった。みなみはゆたかと一緒に走っていた。ゆたかは決して足が遅いわけではないが、いつものみなみからしたらかなり遅いペースで走っていた。ゆたかの方も少しゆっくりと走っているようだった。 「本当に大丈夫、みなみちゃん?」 「大、丈夫。先に、行ってくれて、かまわ、ない。」 「わかった。でも、もう無理だって思ったら早めに先生に言わなきゃだめだよ?」 「・・・うん。」  ゆたかはみなみのことを心配しながらも少し走るペースを速めた。  少し経って本当に大丈夫だろうかと後ろを振り向いた時であった。  みなみの体が今まさに倒れようとしていたのであった。 「みなみちゃん!」  ゆたかは思わず叫び、走っていた道を逆走していた。 「みなみちゃぁぁん!!」  今までにないほどの大声で叫び、みなみに向かって走っていった。  その時であった。みなみのまわりが煙で包まれたのである。  正確にはみなみのまわりだけが煙に包まれたわけではなく、グラウンドの一部が煙に覆われている状態だった。  だが、みなみはその煙のほぼ中心地点にいた。  みなみは全くわけがわからない状況になっていたが、さらに状況が変わっていた。  誰かがみなみの体を抱くように支えていたのである。 (・・・誰?この胸のふくらみはみゆきさん?)  みなみは自らの置かれた状況を理解しようとしていた。 「大丈夫、みなみちゃん?」 (みゆきさん・・・じゃない。みゆきさんは私のことをみなみ“ちゃん”とは言わない(陵桜学園入学案内書を除く)。)   みなみは自分を抱き支えている人を見ようとした。しかし、煙と自らの意識が朦朧としているせいで見ることができなかった。  みなみの意識はここで途絶えていった。 (そっか、私あのまま気を失っちゃたんだ。それにしても、あの人はいったい・・・)  保健室で一眠りしたおかげで少し体調が良くなっていたみなみは、あの時自分を抱き支えてくれた人のことを考えていた。みなみには約1名心あたりがあった。 (私のことをみなみ“ちゃん”と呼ぶ人は多くない。それにあの声。でも、あんな大人っぽい声じゃなかったはず。)  みなみがジッと考えていると、 「あれ?起きられたのですか?」  保健室の奥の方から先ほどまで何者なのか考えていた人の声が聞こえてきた。みなみは急に声を掛けられたことに驚いたが次の瞬間、さらに驚かされることになる。奥から現れた人物はピンクの髪を小さなツインテールにしたタレ目の女性。そこだけ見たら小早川ゆたかに見えるが、体格が全く違っていた。自分とほとんど変わらないであろう身長、スラリと伸びた腕、白衣を着ているのでよく見えないが同じスラリと伸びているであろう足、そしてみゆきほどではないが大きな胸。どれを取ってもいつも見ているゆたかとは似て非なるものばかりだった。 「あ、あの、い、いったい・・・」 「え?ああ、この白衣ですか?それが、『あの子』の服、やっぱり小さいものですから天原先生にお借りしたのですよ。あ、天原先生は会議があるそうなので今はいませんよ。」  みなみはいったいその人が何者なのか聞きたいのに全く話がかみ合っていなかった。 「い、いえ、そうではなく、あなたはいったい、なにも・・・」  何者かと聞こうとしたその時。 “ドタドタドタ”“ガラァァ” 「ゆーちゃん、また倒れちゃたんだっ・・・て?」  泉こなたが扉を開けてそのまま固まった。 “トットットッ” 「ちょっとこなた、廊下を走っちゃだめだっ・・・て?」  柊かがみがこなたの後からやってきて同じく固まってしまった。 “テトテトテト” 「みなみさん、いらしゃいます・・・か?」  さらに、高翌良みゆきがかがみの後からやってきて(以下略) “トタトタ ドテッ! ヒョコ トタトタ” 「みんな歩くの速い・・・よ?」  さらに、額にバツ印のバンソーコーを貼った柊つかさが(以下略)  見つめ合う保健室の中の2人と扉の4人。 「「「・・・誰よ?/ですか?/なの?」」」  先に口を開いたのはかがみ、みゆき、つかさの3人だった。まぁ、目の前に見たことあるようなないような人が立っていたら、こんな反応を示すのも当然かもしれない。しかし、こなたは違っていた。 「おお、久しぶりゆたか。てか、2年ぶりだね。元気してた?」 「はい、お久しぶりです。高校の入学祝いを言いにいった以来ですね。」  こなたはまるで久々に友達に会ったような感じに話していた。 「「ゆたかちゃん!?」」 「小早川さん・・・なのですか?」  かがみたちは全くわけがわからなかった。 「・・・やっぱり、ゆたかだったんだ。」  みなみはうすうすとこの人はゆたかなんじゃないか、と考えていたようだった。 「ちょっと、こなた、どういうこと!?この人、本当にゆたかちゃんなの?私たちにもわかるように説明しなさいよ。」  かがみはどうにか理解しようと、こなたに説明を求めた。こなたは少し考えて口を開いた。 「実はゆーちゃんはある魔術師が作り上げた存在の仮の姿で、今目の前にいるのが本来の姿なのだよ。」 「だれがN○K魔法少女アニメネタをやれと言った!」 「ゆーちゃんには8人の仙人の内の1人が取り付けていて、お酒を飲むとこの姿になっちゃうんだ。」 「N○Kアニメネタから離れろ!!」 「ゆーちゃんのツインテールリボンに宿った三千年前のファ○オの魂が蘇った。さぁ、かがみん、闇のゲームの始まりだ。」 「いいかげんにしろぉぉぉぉぉ!!!」  どこまでもネタを忘れないこなたとツッコミを忘れないかがみ。この2人がコンビを組めば、夫婦(めおと)漫才でMー○の頂点を目指せるんじゃなかろうか。 「そういうネタはもういいから、さっさと説明しなさいよ。」 「う~ん・・・」  こなたは再びなにか考え始めた。 「あんたまた、ネタかなんかしようと、」 「ち、違うよ。いや、私も実際の所よく知らなくて。」 「はぁ!?」 「私が知ってるのは体が弱かったから術を掛けられたってことぐらいしか。」 「なによ、それ。」 「詳しいことは私の方からご説明させていただきます。」  こなたのほとんど説明になっていない説明の補助をするために(ほとんど蚊帳の外だった)ゆたかが話しに加わった。 「概要はこなたお姉ちゃんが話された通りです。私は生まれた時から体が弱く、あまり長くは生きられないだろうと言われていたそうです。そこで、私に少しでも長く生きてほしいと願った両親がとったのが、“術”を掛けてもらうことだったのです。」 「術?」 「はい。術と言っても、ほとんど呪いのようなものですけど。肉体の成長を遅らせることで少しでも長く生きてほしいと願っていたそうです。術は成功しました。しかし、そこで問題が起きました。」 「問題・・・ですか?」 「はい、そうです、高翌良先輩。術の副作用・・・というところでしょうか、人格がもう一つできてしまったのです。」 「もしかして、そのもう一つの人格って。」 「そうです、つかさ先輩。そのもう一つの人格というのが、今まで“小早川ゆたか”としてあなた方と一緒にいた、『ゆーちゃん』なのです。両親はそのことに気が付いていませんでした。術を掛けてくれた人も気付いていなかったでしょう。両親が気が付いたのは、私が5歳のある日に表に出てきた時です。」 「表に出る・・・ってどういうことよ。」 「私は普段、『ゆーちゃん』の中にいます。ですが、『ゆーちゃん』の体の調子が良く、かつ、私が肉体を持ちたいと願った時、こうしてみなさんとお話ができる状態になるのです。私はこれを“表に出る”と呼んでいます。その時、体は私が普通に育った時のものになるようです。」 「ふ~ん。それじゃあ、なに?今回もその“表に出たい”って願ったわけ?」  そう聞くかがみにゆたかは首を横に振った。 「え?じゃ、」  どうして?と聞く前にゆたかはみなみに顔を向けた。(完全に蚊帳の外にいた)みなみは不意に顔を向けられて、少し戸惑った。 「私が表に出てきたのは、みなみちゃんのおかげ・・・かな?」 「え?私?」  みなみは特に何かした覚えがなかったので、なにを言っているのかよくわからなかった。 「私は『ゆーちゃん』の中にいたのでわかるのです。『ゆーちゃん』はあなたのことをとても心配していました。そして、あなたが倒れそうになった時、『ゆーちゃん』はみなみちゃんを助けたい、という思いがありました。その思いはとても強いものでした。その強い思いは何らかの形で体に影響を与え、一時的に術が解けてしまった・・・と私は考えています。」  ゆたかが言い終わるとみなみは少々驚いていた。 「・・・ゆたかがそこまで。」 「ええ。」  次の瞬間、みなみは少しだけ嬉しそうな顔をしていた。ゆたかもそれをやさしい顔で見るのだった。 「えっと・・・話し終わった?」  こなたは話しが終わったのを見計らって声をかけた。 「ええ、終わりましたよ。」  ゆたかはこなたの方に体を向けて言った。 「じゃあさ、3つほど質問していい?」 「かまいませんよ。」 「それじゃあ、質問。ゆたか、もしかして、その下何も着てないの?」  こなたはゆたかの着ている白衣を指差して言った。白衣はちゃんと前を閉じるように着ているが、パッと見、何も着ていないように見えた。 「な、ちゃ、ちゃんと着ていますよ、ほら。」  ゆたかは白衣の前を開けた。その白衣の下にはちゃんと体操着が穿かれていた。しかし、それは表に出る前のゆたかが着ていたものなので、かなり小さくなっていた。結果、体操着は下着のように穿かれていた。 “ブブッ”  こなたは鼻血を出して倒れかけた。 「こなた!」 「こなちゃん!」 「泉さん!」  かがみとつかさは倒れそうになったこなたを支えた。みゆきはティッシュと出してそれをこなたの鼻に詰めた。 「た、体操着を下着代わり・・・GJ。」  こなたは親指を立てて言った。その顔はいい物見た、という笑顔であった。 「うぅ・・・恥ずかしいですから、あまり言わないでください。」  ゆたかは白衣を元に戻しながら本当に恥ずかしそうに言った。 「そ、それで、2つ目の質問はなんですか?」  ゆたかはとりあえず話題を変えようとした。 「え?ああ、そうそう。なんでひよりんがそこにいるの?」  こなたはどうにか体を起こして、今度はみなみが使っているベッドの向こう側のベッドを指差して言った。みなみがこなたの指差した方を見てみると、今まで気づいていなかったが、ひよりがベッドで寝ていた。なぜかひよりの鼻は今のこなたと同じ状態になっていた。 「田村さんですか?うん、よくわからないのですけど、私がみなみちゃんを保健室まで運ぼうとしていたら急に鼻血を出して倒れたらしいですよ。何かあったのでしょうか?うわ言で“逆パターン”がどうとか“お姫様だっこ”がどうとかって言っていましたけど。」 「・・・ああ。」  こなたはひよりが倒れた原因がなんとなくわかっていた。かがみもどことなくわかったようだ。しかし、つかさとみゆき、そしてみなみ、ついでにゆたかもよくわからない様子で首を傾げていた。 「えっと、最後の質問いいかな?」  首を傾げて考え込んでいるゆたかにこなたはそう言った。 「え?あ、だ、大丈夫ですよ。」  考え込んでいたゆたかは急に声をかけられ、現実に戻された。 「まぁ、別に大した質問じゃないんだけど。」 「はい。」 「ゆたかはいつまでその姿でいられるの?」 「こなた、それ結構、重要な質問じゃない?」  かがみは思わずツッコミをいれてしまった。 「私が表にいつまで出ていられるか、ですか?実の所、あまり長くは出ていることはできないのですよ。『ゆーちゃん』の体にも影響してしまいますから。」 「そうなんだ。」 「はい。で、」  ゆたかは再びみなみの方に体を向けた。みなみは今度はなんだろう、と考えながらゆたかを見ていた。 「そのあまり長くない時間を使ってあなたとお話したいのですけど、よろしいでしょうか?」  ゆたかは笑顔でみなみに聞いた。みなみは自分の記憶の中にあるゆたかの笑顔と今のゆたかの笑顔を比べていた。その差はほとんどなかった。やっぱりこの人はゆたかなのだな、と感じたみなみであった。 「・・・はい、いいですよ。」 「ありがとう。」  ゆたかはそう言うと近くにあった椅子をみなみのベッドの横に置き、座った。 「率直に聞きます。あなたにとって『ゆーちゃん』はどういう存在ですか?」 「はい?」  いきなりそのようなことを聞かれてみなみは少しキョトンとした。 「あの、それはいったい・・・」 「う~ん、ちょっとわかりにくい質問でしたでしょうか。」 「は、はい。」 「『ゆーちゃん』はあなたのことを本当に信頼できる友だちだと思っているようです。なので、私は聞きたいのです。『ゆーちゃん』のことをどう思っているのか、どういう存在として見ているのか。」 「・・・」 「あなたは『ゆーちゃん』を友だちだと思っていますか?」  少しの間、沈黙が流れた。みなみは目を閉じ、考えているようだった。こなたたちはその様子を固唾を飲んで見ていた。そして、みなみの目がゆっくりと開けられ、ゆたかの顔を見て、首を横に振った。 「え?」  ゆたかは思わずそう言ってしまった。こなたたちも驚きの表情を隠せなかった。 「『ゆーちゃん』は友だちではないと?」  ゆたかがそう聞くと、みなみは真剣な顔をしてこう言った。 「私は、ゆたかのことを親友だと思っています。」 「親・・・友?」 「はい。ですから、私はゆたかのことを親友以下に思うことはできません。」  みなみの顔は真剣そのものだった。その顔からは嘘偽りなどはいっさい感じられなかった。 「そう。」  ゆたかはどこか安心したような顔でそうつぶやいた。 「それが聞ければ十分です。ありがとうございます。」  ゆたかは笑顔でそう言った。みなみもそれに笑顔で答えた。と言っても微妙な顔の変化であったが。 「う~ん。」 「どうしたの、こなちゃん?」 「こういうの見てるとさ、なんかこう百合の花が咲いて」 「だまらないと殴るわよ?」 「・・・はい。」  かがみは変なことを言おうとしたこなたに拳を見せた。 「私は」 「?」  不意にみなみが口を開いた。 「ゆたかに出会うまで一人でした。元々社交的な性格ではありませんでしたし、友だちも必要だとは思っていませんでした。ゆたかに手をさしのべたのも何気なくでした。でも、ゆたかは理解して接してくれました。とてもうれしかったです。だから、私はゆたかのことを大切に思っていますし、親友だと思っています。」  みなみは全く詰まることなく言った。それはみなみの本心が語られていることを示していた。ゆたかはそれを聞いてフッと笑った。 「なるほど。似ているのですね、あなたと『ゆーちゃん』は。」 「え?」 「『ゆーちゃん』も一人でした。理由は体が弱くて学校を休みがちになっていたことです。そのせいで『ゆーちゃん』の心は荒んでしまいました。その時はゆいお姉ちゃんのおかげで明るい性格を取り戻すことができました。でも、そのおかげで『ゆーちゃん』は知っています。一人の寂しさを、一人の孤独さを。そして、それを知っている人は優しくなれることを。『ゆーちゃん』があなたのことを理解できるのも、自分と似ている、と感じているからかもしれません。」 「・・・そうかもしれませんね。」  みなみは笑顔で答えた。しかし、それは先ほどの微妙な変化ではなく、はっきりとわかるほどの変化であった。 「う~ん、やっぱり百合」 「黙れ。」 「・・・はい。」  かがみはもはや、こなたにしゃべらすことすら許さなかった。 「それか・・・ら?」  ゆたかは急に体が傾き始めた。 「ゆたか!」 「ゆたか!」 「「ゆたかちゃん!」」 「小早川さん!」  ゆたかはみなみに寄り掛かるように倒れた。みなみはそんなゆたかを抱くように支えている。 「どう・・・したの?」 「ごめんなさい。ちょっと、限界、近いみたいです。」 「え?」 「術を掛けてもらっても、わたしの体が弱いことは変わりありませんから、あまり長く表に出ていることはできないのです。命を削ることになってしまいますから。」 「ゆたか・・・」  みなみは心配そうな顔をしてゆたかを見ていた。ゆたかは少し体を起こし、みなみの顔を見てこう言った。 「みなみちゃん、『ゆーちゃん』に親友だと思っていること言ってあげてください。『ゆーちゃん』はみなみちゃんがそう思ってくれていることをとてもうれしく思いますから。」 「はい。」 「それから、『ゆーちゃん』のこと、頼ってあげてください。」 「え?」  みなみはゆたかの言っている意味がよくわからなかった。 「『ゆーちゃん』はみなみちゃんに助けてもらってばかりですが、みなみちゃんのことを助けてあげたいと思っています。力になれることは少ないかもしれませんが、『ゆーちゃん』に頼ってあげてください。喜びますから。」 「はい。」  ゆたかはみなみの返事を聞くと安心したような顔になるのであった。 「それでは、そろそろ変わりますね。あ、そうでした。」  ゆたかは急に何かを思い出し、こなたたちの方に顔を向けた。 「かがみ先輩、つかさ先輩。」 「ほよ?」 「何?」 「みきさんによろしくお伝え願いますでしょうか?」 「え?お母さん?」  つかさはなぜいきなり母の名が出てくるのかわからなかった。 「もしかして、ゆたかちゃんに術を掛けた人って。」  かがみはゆたかの言った言葉の意味を理解したようだった。ゆたかはニッコリと笑い、体をみなみに預けるように寄りかかった。そして、ゆたかが目を閉じるとゆたかの周りに煙が立ち込めた。その煙が晴れるとそこには、 “モクモク” 「・・・」  その煙が晴れるとそこには、 “モクモク” 「・・・」  その煙が晴れるとそこには、 “モクモク” 「・・・」  その 「誰か、窓開けて!!」  一向に晴れない煙を見て、こなたはそう叫んだ。その声を聞いて、つかさが保健室の奥の窓を開けようと煙の中に入っていった。 “トタトタ ドテッ! ヒョコ トタトタ ガラガラ!”  つかさが(どうにか)窓を開けると煙は窓の外に出て行った。そして、煙が晴れるとそこには、窓のそばで額にバツ印のバンソーコーを2つ貼ったつかさと、椅子に座ってみなみに寄り掛かって寝ているいつものゆたかの姿だった。 「う・・・う~ん・・・」 「ゆたか、大丈夫?」  ゆたかが目を覚まし、みなみが優しく声を掛ける。ゆたかはよくわからない様子で体を起こした。 「あれ、みなみちゃん?ここ、保健室?なんで私、ここに?なんで白衣着てるの?確か体育の授業で持久走やってて、それでそれで・・・あ!そうだ!みなみちゃん、倒れそうになったんだ。大丈夫なの、みなみちゃん?」 「うん、大丈夫。」 「そっか、よかった。でも、私、どうしてここに・・・」  こんなゆたかとみなみの聞きながらかがみはこなたに囁いた。 「ゆたかちゃんって大きい時の記憶ってないの?」 「どうもそうらしいね。」 「ふ~ん。」  ゆたかは今の状況が全く理解できずにクエスチョンマークを大量に出していた。そんなゆたかにみなみは手をゆたかに両肩に乗せた。 「ゆたか。」 「な、なに?」  ゆたかはいきなりのことで少し驚いていたが、みなみの真剣な顔に目をしばたたせていた。 「私はゆたかと一緒にいたいと思ってる。だから、ゆたかに何かあったら助けてあげたいし、力になりたいと思ってる。」 「う、うん。」 「でも、もし、私に何かあったらゆたかに助けてほしいと思ってるし、ゆたかの力を貸してほしい。」 「え?」 「だめ?」 「ううん、そんなことない。でも、私でいいの?」  みなみは首を横に振った。 「ゆたか“が”いいの。ゆたかじゃないといやなの。だって私たち、親友だから。」 「親・・・友・・・」 「うん。」 「・・・そうだよね。うん、わかった。これからもよろしくね、みなみちゃん。」  ゆたかはみなみに抱きついた。みなみも軽く手を添えて抱き返すのであった。 「ゆ」 「は?」 「いえ、なんでもありません・・・」  かがみの少し怒ったような声に黙らざる負えないこなたであった。 「う・・・ん~ん・・・」  ここでみなみの隣のベッドで寝ていた、ひよりが目を覚ました。 「あれ、私・・・」 「あ、田村さんも保健室にいたんだ。」  ひよりは声のする方を向いた。するとそこには、抱き合っている2人の少女がいた。しかも、内1人はなぜか白衣を着ており、なかの体操着は少し伸びていた。ひよりは寝起きでそんな光景を目の当たりにしてしまった。その結果、 “ブブブブッ バタンッ!!” 「た、田村さん!!」 「田村さん?」  ひよりは鼻血を出して再び夢の中に行ってしまった。その時鼻に詰められたティッシュは弧を描き、みごとにゴミ箱に入っていた。ナイスシュート。 「は、白衣の天使が・・・百合の花が・・・」  ひよりはうわ言でそんなことを言いだすのであった。 「?」 「?」  ゆたかとみなみはいったい何があったのか分からず、首をかしげていた。 「?」 「?」  窓からこなたたちの所に戻ってきたつかさとみゆきも同じく首をかしげていた。 「ひよりん・・・」 「はぁ・・・」  原因のわかるこなたとかがみは苦笑いとため息を吐くしかなかった。  こうして、みなみとゆたかと『ゆーちゃん』との話はひよりの大量出血で幕を閉じたのであった。 「なんてお話どうっスかね?」 「あの、ひより?」 「もちろん、名前とかは変えるっス。でも、この話ならいけるっす!」 「ひよりん、あの・・・」 「この話なら壁際、いやシャッター前に行けるかもしれないっスよ、先輩!」 「いや、でも・・・」 「うおぉぉぉぉ、萌えて、いや、燃えてきたっス!!」  ここは泉家。ひよりはこなたの部屋を訪れていた。ネタに詰まっていたひよりは、先輩であるこなたに助けを求めに来たのである。しばらく二人でもんもんと考えていたが、ふとひよりは部屋に置かれていた漫画を手に取り、考えついたネタを話していた。ひよりの手にはオレンジ色の髪をした黒い衣装の主人公が身の丈ほどの大刀を振り回す漫画が握られていた。 「あのさ、ひより。」 「はい?なんすか?」 「それさ、元ネタあるわけでしょ?そういうのってさ、使ったらまずいんじゃない?私よくわかんないけど。」 「あ~・・・そうかもしれないっスね。考え直しっスね。」  ひよりは漫画を閉じ、元の場所に戻した。と、その時、 「お姉ちゃん、小包届いてるよ。」  小包を手にしたゆたかがこなたの部屋の扉を開けてきた。 「お、ありがとう、ゆーちゃん。」 「あれ、田村さん、来てたんだ。」 「おじゃましてます。」 「いらっしゃい。あ、はい、お姉ちゃん。」  ゆたかは小包を取りにきたこなたにそれを手渡した。 「ところで、二人で何話してたの?」 「え?いや・・・なんでもないっすよ、小早川さん。」 「ふ~ん。」  さすがにあなたをモデルに妄想してました、などと言えるはずもなく、ひよりは適当にごまかした。 「それじゃ、私部屋に行ってるね。」 「うん、ありがとう、ゆーちゃん。」  ゆたかはそのまま部屋を出ようとした。しかし、 「あ、そうだ、田村さん。」 「は、はい?」  不意にゆたかは立ち止まり、振り向きながらひよりの名を呼んだ。その顔はどこか、いつもと違っているように見えた。 「あんまり同人のネタにしてるようだったら、そのことみなみちゃんと『ゆーちゃん』にばらしちゃうからそのつもりでいてね。」  ゆたかはそう言うと不敵な笑みを浮かべながら扉を閉めた。 「「・・・へ?」」  その部屋の中には目を点にしたこなたとひよりが固まっていましたとさ。    ~おわり~

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