第3夜

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第3夜 ―――××町 人が倒れていた。その脇にはおびただしい量の血液が溢れ、路面を覆いつくしている。 辺りには小さな人影があるだけで、入り組んだ狭い路地には何も動くものはない。 「ふぅ・・・。まだ・・・まだなのかな・・・」 女の子の声。肩で息をし、身体には熱を帯びているようだ、暗闇の中でも蒸気が立ち上るのが見える。 柔らかな風が流れると、月を覆い隠していた雲がすーっと流れ、白銀の月光が地上に降り立つ。 地面にも着きそうな蒼く長い髪がふわりと揺れ、暗闇から姿を現したのは、泉こなたその人であった。 「!?」 不自然に彼女の頭上の毛が微妙に揺れ、咄嗟に身をかがめると、低い姿勢のまま路地を走り抜けた。 そしてその直後、彼女を追いかけるかのようにもう一つの影が現れた。 どれくらい走ったのか、しばらくしてこなたは小さな公園にたどり着いた。 「ふう、珍しいね、一人でいるなんて」 追いかけてきた影に対し、彼女は親しげに話しかける。 「やっぱり、気づいていたんだね」 「ふふふ。長い付き合いだからね~。それにしてもその”巫女服”よく似合ってるね?”つかさ”」 「こなちゃん・・・」 「ん~でも、やっぱ巫女服は赤い袴がいいかなぁ~?そっちの方が萌えるしね」 なにを想像してるのか、こなたはぐふふと含み笑いしながら、紫色の巫女服を着たつかさを見つめていた。 「知ってるかもしれないけど、話しておくね」 つかさはそう言って一呼吸置くとこなたの返事を待たずに続けた。 「柊家はね、昔からずっとこの地域周辺の守護や八百万の神々を祭ること生業としてきたの。地鎮祭も小さなほかの神社に分業はしてるけど、 かなり広範囲に対して、大きな権力を持ってるの」 月がゆっくりと音を立てずに頭上に達する。いつの間にか雲は消えてなくなり、月光が二人の影を短く映し出す。 「だけどね、本当の目的はそうじゃないの。本当の目的は・・・」 「封魔の一族でしょ?」 つかさがギクリとして背筋を伸ばす。その表情には普段の優しく暖かなつかさはなかった。 「やっぱり、知ってたんだね」 こなたはコクリと頷く。 「ごめんね、こなちゃん。ずっと、友達でいたかったな・・・」 「へ!?ちょ、ま、つかさ!!!」 つかさはポンと軽く地面を蹴ると5メートルはあったであろう間合いを一瞬のうちに詰め寄り、いつの間にか取り出した短刀を一閃させると、そのままこなたの首に切り付けた! 「うそ!?これがつかさ!?」 目を白黒させながらこなたはそれを数ミリの差でよける。 「ま、いいか!こうなたら腕試しもよかろう」 「なにブツブツ言ってるの?こんな事長く続けたくないの!お願い!こなちゃん!」 にやりと笑い、両の手で拳を作る蒼髪の少女。 溢れる涙に構いもせず、泣き喚くように短刀によるつきを繰り返す幼き巫女。 こなたがふわりと宙に舞い、つかさの攻撃をよける。その滞空時間はとても人間業とは思えない。空を飛ぶが如く。 「こなちゃん相手に物理攻撃ばっかじゃダメだね・・・」 つかさは攻撃の手を止め、小さく何かを呟きはじめた。 「言霊・・・まずいな」 こなたは地面に降立ちつかさとの間合いを詰める。その動きは先程のつかさよりも速い。一気に10メートル以上の間合いを0にする。 「ウソ!?」 つかさの言霊が唱え終わらないうちにこなたの両手がつかさの肩をつかみ、そのままコンクリートの上に押し倒した。馬乗りになったこなたはすぐさま右手を振り上げ・・・ 「今までありがとう・・・」 弱く小さな声でつかさが囁く。 ドガァッ! 何かが砕ける音がした。 「たのしかたよ~、つかさ~」 顔中を緩ませにやける蒼髪の少女。 長い髪の毛がつかさの顔を覆い隠し、側に寄らなくては表情さえうかがい知る事は出来そうにない。 「むふふ~、こんなに動けるのに体育のときは隠してるつかさ萌え~」 こなたは右の拳をゆっくりと引き上げる。彼女の拳からぱらぱらと小石の様なものが落ちていった。 「こ、こなちゃん!? ヒビの入ったコンクリートの上でつかさは目を丸くしてにやけたこなたを見つめる。 「よいしょっと!」 こなたはつかさを解放し、後ろに一回転して親友に手を差し伸べた。 「さぁ、起きて!せっかくの巫女服が台無しだよ?」 「・・・」 何も分からぬままこなたに引き上げられたつかさはきょとんとしたまま動かない。 「つかさってけっこうせっかちだよね?私の話も聞いて欲しいのだけど」 こなたの表情はいつもどおりのゆるゆる顔。 「申し遅れたけど、私もね裏高野の退魔師なの。宗派は違うけど、同業者ってところかな?」 「へ?・・・え?」 「あれあれ~、さっきまでの熱血封魔巫女はどこ行ったんだろ?それともこっちが正体なのかな?」 「まさか、は、や、と、ち、り、?」 目を丸くして片言で聞き返す。するとこなたは豪快に笑い、腹を抱えてのけぞる。 「あははは、うん、早とちりだよ!早とちり!よかった!いつものつかさに戻って!つかさに殺されたら負けかなと思ってる」 徐々につかさの顔から緊張が解け始めると、夜の公園に二人の少女の笑い声が響いた。

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