「こなちゃん久しぶりー。お邪魔するねー」
「久しぶり、
つかさ。サザエさん方式になりかけていた頃から考えると、全然会ってなかった気がするよ」
「あんまりそういうこと言わないほうがいいと思うけど――それ何のページ?」
「ん、ただのSSまとめサイト」
「えす……えす?」
「そ、SS。サイドストーリーのこと。好きな作品をね、他にはどんな話があったのかな、このキャラはきっとこんな一面もあるんじゃないのかなって、考えたことを形にするの。それを発表しあって、皆で楽しむところがここ」
「へー……でもこなちゃん、大学卒業してから小説書いてるんだよね? お仕事以外に、こういうのも書くの?」
「仕事とは別。これはね、本当に好きだからやるの。コミケと同じ」
「コミケ……」
「あはは、そんな嫌な顔しなくても大丈夫だよ。もう無理矢理連れて行くなんてしないから――それより、見て、このスレ」
「あんまり書き込みがないね……」
「そ。これでもね、五年くらい前は凄く賑わっていたんだよ。一日に幾つもSSが投下されて、でも感想が書き込まれる前に次の作品が投下されちゃって……感想が貰えなかったとき、そりゃあがっかりしたもんだよ」
「ふうん……こなちゃんも書いたの?」
「書いたよ。幾つも書いて投下したんだけど、満足がいくものは中々かけなかった。途中で止めちゃった作品なんて幾つ書いたかわからないくらい。だけど、それでも書き続けた――どうしてだろうね。当たり障りのない感想がほとんどで、でもそんなのに一喜一憂しちゃう自分に嫌気まで差していたのに」
「……誰かに何かを言ってもらうことが嬉しいからじゃないのかな」
「……」
「お菓子だってそう。たとえ嘘でも、おいしいって言ってくれることが、次に何かやろうって頑張る気持ちを作ってくれる。私だって最初に作ったお菓子はあんまりおいしくなかったけど、皆がおいしいって言ってくれるから、次はもっとうまく作ろうって作ってるうちに、どんどん上手になってきたから」
「――本職になるくらいだから。つかさのお菓子は、誰よりもおいしいと思うよ」
「えへへ――ありがとう」
「でも、つかさは私達を――オタクを理解していない」
「え?」
「私達はね、実際他人なんてどうでもいいんだ。感想を貰おうなんて、貰ったところで次に何をするべきなのかも見えてこない。ただ、書くものは自分が書きたいものだけ。自己満足をひたすら続けることで、自分の中にある何かわからないものと向き合う。そうやって、自分なりにその作品を膨らましていく。そう、言い換えれば――」
「言い換えれば?」
「ただその作品が好きだから書いていたんだ。技術なんてものは関係なく、自分が作品と向き合って、違う――そう、高校生の私に言わせるなら『愛』と向き合っていたんだよ」
「……よくわからないよ、こなちゃん。ただ書きたいから書くんでしょ? 思ったことを素直に書いていけばいいんだよね?」
「んー。単純に言えばそうなんだけどね。こういうのはお菓子じゃ例えられないからなあ。変態みたくなっちゃうし」
「だったらだけど、こなちゃんはなんで書くのを辞めちゃったのかな? この作品……らき……すた? が嫌いになっちゃったの?」
「ううん、全然違う」
「だったらなんで」
「こういう世界は、ジャンルの移り変わりが激しいんだ。一つだけにいつまでもとどまっていることは出来ないの。いつまでも同じアニメが再放送しないことと同じなんだよ」
「それじゃ、まるで――使い捨てだっていってるような――」
「――否定したいけど、否定できない。私達はそういうものだから――でも、これ見て」
「?」
「今でもちゃんと書き続けている人が居るんだ。この人たちは、私が知っている頃に居た人たちじゃないかもしれない。私がコンクールに挑んで負けっぱなしだったころ一緒に競った人たちかもしれない。高良の真ん中に馬鹿みたいな『翠』がいっぱい並んでいた頃を知らないかもしれない。だけどいいんだ。今でもこの人たちは書き続けている。私と違ってね」
「そういえばこなちゃん、高校生のとき、ネットのコンクールで賞を取ったって言ってたよね。お姉ちゃんは呆れてたけど、もしかして――」
「鋭いね、つかさ。確かにこのスレだよ。そして私が小説家になった起源でもあるんだ。私が賞を取った頃はこんなにいっぱい賞はなかったけど、ね。何年も見てなかったら、こんなところまで変わっちゃうもんなんだ」
「――そんなに言うなら、書けばいいと思うけど」
「……」
「作品と向き合うとか、そんなことどうでもいいと思う。こなちゃんがちょっとでも書きたいと思う気持ちがあるんなら――このスレに、一つくらい、その、えすえすを入れてもいいんじゃないかな? こなちゃんが好きだったから、今のこなちゃんが居る。だったら、またここに戻ってきて、少しくらい恩返ししてあげようよ」
「つかさ……」
「できるでしょ、こなちゃん。今じゃ、立派な小説家さんだもんね」
「でも、設定とか全然覚えていないし――」
「そんなの、また読み返せばいいよ!」
「――――珍しいね。そんなに熱くなるなんて」
「だって……こなちゃん、凄く寂しそうなんだもん。なんだか、自分のお墓を見るような感じで――」
「お墓、か。確かに、私はここに居た自分を殺してから、別の場所に――他の作品に――いっちゃったのかもね」
「……」
「いいよ、書いてみる」
「ほんと!?」
「うん。やれるだけ昔の自分に戻ってみる。うまく書けるかわからないけど、私は、この作品――らき☆すたが大好きな一人だったんだから」
「――頑張って、こなちゃん」
「でもねつかさ」
「なに?」