きっかけは、つかさの何気ない一言だった。
「こなちゃん爆☆殺!でもそんなの関係ねぇ!」
昼休み、つかさはいつものブラックジョークで笑いを取ろうとしていた。その時だった。
パンッ!
教室に乾いた音が響く、それはかがみが、つかさの頬を平手打ちした音だった。
「……え?」
何がなんだか分からず、叩かれた頬を触るつかさ、そしてつかさの視線の先には今にも怒り寸前の姉、柊かがみがそこにいた。
「お姉ちゃ…」
「アンタねぇ!世の中には言っていい冗談と、悪い冗談があるのよ!!」
突然のその言葉に、教室が凍り付いた。かがみがここまで怒鳴ることなど、そうそうに無いし、なによりそれがつかさに対しての言葉だったからである。
「何とか言いなさいよ!」
「………」
この重い空気に耐えられなくなったこなたは、遠慮がちにかがみに告げる。
「い、良いよかがみ。いつもの事だから…」
「そ、そうですよ。何もそこまでしなくても…」
この機を逃すまいと、みゆきもこなたに便乗する。
「二人は黙ってて」
「「…!?」」
かがみのドスの効いた声に二人とも黙るしかなかった。
「つかさ、どうしてなの?何でそんな酷いことを平気で言えるようになっちゃったの?昔のつかさは…そんなこと……、全然言わなかったのに……」
かがみは今にも泣き出しそうな声でつかさに言葉をぶつけた。しかしつかさは、ただ冷静にこう答えた。
「教える必要なんて無いよ……」
「つかさぁ!アンタねぇっ!!」
かがみは、つかさの胸倉を掴む。流石にヤバイと思ったのか、こなたとみゆきが止めに入る。
「落ち着いてください、かがみさん!」
「そ、そうだよ!つかさもどうしちゃったのさ?」
かがみとつかさを離すこなたとみゆき、教室は既に重い空気が漂っていた。
「もう私、つかさが分かんないよ!!」
「かがみ……」
かがみを心配そうに見つめるこなた、ずっと下を向いているつかさ。そしてみゆきはつかさに言った。
「もし宜しければ、教えて下さいませんか?何が原因でつかささんはそうなってしまわれたのかを……」
「……ゆきちゃん」
つかさは窓の外の空を見上げて告げた。
「皆が知っているテn…、柊つかさは、もう"死んだ"…」
つかさの一言に、かがみが顔を上げる。
「…何よそれ、アンタねぇ!ふざけるのもいい加減に…」
「違うんだよ、お姉ちゃん……」
「な、何がよ…」
つかさは静かにかがみの方に振り向いた。そして……告げる。
「このスレの住人に、頭の中掻き回されてね、それからなんだよ」
つかさは頭に付けているリボンに手をかけるとゆっくりと外した。
「!」
リボンを外したつかさの頭……、そこにはバルサミコ酢の香りがほのかに漂っていた……
「特に味覚がね……ダメなんだよ。感情が高ぶるとモワっと臭うんだ、まるでマンガでしょ?」
「……!?」
「もう、皆にクッキーを作ってあげることは出来ないんだよ…」
「…そ、そんな……」
「お姉ちゃんに渡したい物があるんだ…」
「何…を……?」
「彼女の生きた証、受け取って欲しい…」
つかさは折り畳まれた小さなメモを取り出すとかがみに差し出した。
「これは…!?」
そこには、つかさ特製クッキーの作り方が書いてあった。
「嫌よ…嘘なんでしょ……?全部冗談よね?あはは……」
「………」
「嘘だと言ってよ!つかさぁぁぁぁぁっ!!」
「かがみさん……うっ……うぅ…!」
つかさの衝撃的な告白に泣きじゃくり、つかさに抱き着くかがみ、その場に泣き崩れるみゆき…。そして、教室中から啜り泣く声も聞こえて来た。
そんな中、こなただけが、腕を組み、眉をひそめ、怪訝そうにつかさを見ていた。
「あのさ、つかさ……」
「何?こなちゃん…」
「いや、私の勘違いだったらゴメンね?」
「こなちゃん…?」
こなたはつかさの言動に思うことがあるらしく、空気読めない覚悟で言ってみた。
「いやさ、つかさの言葉って、どっかで聞いたことあるなぁ~、なんて思ってね?」
「!!!!!!!!???!??!!???!!?」
その言葉を聞いたつかさはどっと汗をかく、「!」や「?」の数が尋常ではない。
「な、なななな!こなちゃんが何を言ってるのか分からないよ!?」
「空気読みなさいよこなた、今はそれどころじゃないでしょ?」
「うん、ごめん…」
つかさの動揺には何も突っ込まないかがみ、しかしこなたは、その動揺から明らかに何かあるとみてとった。そして思い出す、伊達にこなたはオタクではないのだ。
「あ!思い出した!その台詞ナデシk…」
「勝負だ!」
「ふぐぅ…!?」
つかさがこなたにボディブローを食らわす。こなたはよろよろと、その場に倒れる。そしてその威力が凄まじかったのか、つかさの着ていたセーラー服、及びスカートが吹き飛んで、つかさは下着姿になってしまった。
それを見た男子生徒は、歓喜を揚げ、携帯を取り出し写メを撮ろうとするが、姉のかがみによる[ローリングツインテール]によって、男達は消し飛んだ。ついでにみゆきも消し飛んだ。
「まったく、何考えてんだか…。大丈夫?つかさ」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「こなたの奴、何をそんなに疑って……ん?」
かがみが何かに引っ掛かった。それはつかさのある一言…。
「特に味覚がね……ダメなんだよ」
あれ?
かがみは何かを思い出していた。そう、それは昨日……。
☆
「つかさぁー!ちょっとケーキ作ってみたいんだけど、クリームはこのくらいの甘さで良いかな?」
「どれどれー?」
…あれ?……あれ?
「んー、ちょっと甘すぎかも。砂糖はこの位でー……」
「ふぅーん、つかさは良いお嫁さんになるねー☆」
「お、お嫁さん…///」
あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?
あ れ?
☆
「ねぇ、つかさ…」
「何?お姉ちゃ…!?」
つかさは安心していた、姉は私を信じてくれていると…。だがつかさが見たかがみは全然安心できる姿ではなかった、身体全身からオーラの様な気を漂わせて、鋭い目付きでこちらを見ている。もうそれは、さっきまでつかさに抱き着いて泣いていたかがみではなかった。
「お姉…ちゃん……?」
それでも、自分に非がないと思っているつかさは、その狂気に耐え、恐る恐る聞いた。そして、かがみは瞳孔が開いた目でつかさを見つめながら応えた。
「つかさ、アンタ昨日何してた?」
「な、何って…」
冷たく突き刺さるような声、姉のこんな声を聞くのは初めてだったつかさは、目の前にいる人が本当に自分の姉なのか、思わず疑ってしまった。
「ケーキ」
「!?」
「作ってたでしょ?まつり姉さんと一緒に…」
「そ、それは……」
「味覚がないのに!」
「ギクッ」
痛いところを突かれた、つかさは既に全身汗だくである。更にかがみの攻めは続く。
「どうして味覚が無いのにケーキの甘さが分かるの?」
「それは…」
「そういえば、今日のお弁当、美味しかったわよ。今日はつかさが作ってくれたんだよね?」
「あ、あははは…」
つかさはもう笑うしかなかった、姉には全てばれている。もうこれ以上、何を言っても無駄であろう。だからつかさは笑い続けた。
「あはははははは!」
「つかさ!!」
「バル酢!」
「んなっ!?眩しい…」
つかさお得意の目くらまし攻撃だ。その場にいる者全てが目をガードしている間に、つかさは教室から逃げ出した。
「つかさぁ!待ちなさい!」
その後、下着姿で町を走っていたつかさは、補導され、家に帰されたが、父親に説教され、更にはその後帰って来たかがみに、こっぴどく叱られたとさ。
めでたし、めでたし☆
皆は嘘つくなよ!!
余談だが、消し飛ばされたみゆきと男子生徒だが、校庭で仰向けに倒れているところを黒井先生が見つけたらしい。全員無傷だそうだ。
「私は殴られ損だよ……」
完
最終更新:2007年12月29日 00:57