2人きりの時間は。
未だに、少し緊張したりするけれど。
その緊張も嫌なものじゃなくて、すごく楽しく感じるもので。
隣でハミングしながら、食器を片付けてくれているシェリルさんを横目に。
なんだか、頬がどんどん緩んでいくのが自分でもわかる。
(いつものことだけど、この状況ってすごく、贅沢だよね。)
ハミングでさえ、すごく耳に心地よく響いて、思わずうっとり。
そんな私を見つけたシェリルさんと視線が合えば、ニッコリと笑ってくれる。
直視できずに一旦、視線を逸らして、もう一度ゆっくりと視線を合わせれば。
いつものことに、おかしそうに笑うシェリルさん。
「いつになったら、なれてくれるのかしらね?ランカちゃんは。」
少し意地悪な口調でわざとらしくそんなことを言って。
食器洗い機にあった最後のお皿を手にとって、さらりと額にキス1つ。
以前なら、それだけで気を失いかけてたけど。
最近は、真っ赤になって少しふらつくだけで大丈夫。
私だって、日々、成長してるんです。
キスされた額を押さえながら、シェリルさんを見れば。
悪戯好きの子どもみたいな笑顔を浮かべていて。
「もう、シェリルさん!」
なんて、叱ってみようとするけれど。
にやけた笑みに、嬉しそうな声じゃ、ただ喜んでいるようにしか聞こえない。
そんなの自分でもわかってるけど、文字通り、嬉しいんだからしかたがない。
案の定、シェリルさんは楽しそうな笑みを浮かべたままで、食器を片付ける。
いつの間にか、シェリルさんの部屋に増えていった、お揃いの食器。
今、私が手にしてるマグカップは、一緒に買いに行ったお揃いのもので。
今、シェリルさんが手にしていたお皿は、シェリルさんが選んでお揃いで買ってくれたもの。
他にも、気づいたら自分のものが、シェリルさんの部屋にどんどん増えていって。
今では、『同棲』なんて言葉が浮かんでくるほどに、一緒の時間が増えて。
「ランカちゃん、真っ赤。」
そんなことを考えていたら、シェリルさんの顔が私のすぐ傍に。
「ふぇっ・・・」
思わず出てしまった変な声に、恥ずかしくなって俯こうとしたら。
頬に手を添えられて、やんわりと顔を固定されてしまう。
そんなことをされたら、俯くこともできなくて。
近づいてきた、意地悪な笑顔を前に、ゆっくりと瞳を閉じた。
片付けを終えて、お揃いのマグカップには、ほどよく熱いミルクティー。
ソファに並んでまったり時間。
その日のことを話したり、仕事の話をしたり、ただくっついて座ってるだけだったり。
今日は、ただくっついて座ってる時間かなって思っていたら。
不意にシェリルさんが、私の膝の上に頭を乗せてきた。
「シェリルさん?」
不思議に思って名を呼べば。
私を見上げるシェリルさんの顔に、なんとも言えない甘えた笑みが浮かぶ。
その破壊力に、心臓が大きく脈打った。
「ラ~ンカちゃん。」
人前では、絶対に聞けないような甘えた声に、真っ赤になりながらも。
その意味を理解した私は、シェリルさんのふわふわの髪にソッと手で触れる。
「どうかしたんですか?シェリルさん。」
「ん~?べつに。なんでもないわよ。」
返ってくる答えはわかっているけれど、そう尋ねれば。
予想通りの返事。
「そうですか。」
「ええ。」
互いにわかっていたやりとりに、笑みを浮かべて。
ゆっくりと瞳を閉じたシェリルさんの髪を優しく撫でる。
そうしているうちに、シェリルさんは本格的にソファの上で眠る態勢。
「ダメですよ、こんな所で寝ちゃ。」
撫でる手を止めて、そう言ったら。
シェリルさんが不機嫌そうにこっちを見てくる。
かと思えば、髪を撫でていた手を両手で掴まれて。
もっと、撫でろと言わんばかりに頬を擦りつけてくるシェリルさん。
その行動に思わず呆然としてしまう。
だって、あまりにも・・・その・・・かわいかったから・・・
身動きもできず、ただ魅入ってしまっていた私に。
ますます不機嫌になったらしいシェリルさんが、親指と人さし指の間を噛んできた。
「んっ・・・」
少しだけ感じた痛みは、なんだか甘くて。
零れてしまった甘い声に、自分で驚いてシェリルさんを見れば。
それで気を良くしたのか、ニッコリと笑ったシェリルさんが、噛んだ所を舐めてきた。
何がなんだかわからないけれど、自分の体が一気に熱をもっていくのがわかって。
きっと体中真っ赤だろう私のことを、楽しむみたいに。
シェリルさんは、私の右手を両手でやわやわと揉んでくれたかと思ったら。
悪戯な笑みを浮かべて、私の親指を口に含んだ。
体中に電気が奔る。
つま先から頭のてっぺんまで。
ケトルで沸かされる水って、こんな感じなのかな?
なんて。
よくわからないことを、まったく働かない頭で考えながら。
一瞬で熱せられた体に戸惑う。
どうしたらいいのかわからない。
ただ、ジッとシェリルさんのことを見つめることしかできなくて。
そんな、私のことを見つめながら。
シェリルさんは、右手の親指から順番に小指まで、丹念に口に含んで舐めてくれた。
最後に手のひらに“ちゅ”っと。
音を鳴らしてキスすると、シェリルさんが私に言った。
「もっと。」
微かに甘く聞こえた声は、私の耳を犯すみたいに響いて。
一瞬、止まった呼吸を再開するべく、息を吸ったつもりが、喉を鳴らしてしまう。
「ちゃんと、撫でなさい。ランカちゃん。」
濡れて光る艶めかしい唇に、甘くねだる声。
妖しいまでの色気を感じるのに、その瞳は子どもみたいに輝いて。
くらくらするけれど、勝手にシェリルさんの言うことを聞いて。
掴まれた右手はそのままに、左手でシェリルさんの髪を撫でる。
そうしたら、シェリルさんの表情が満足そうに微笑んで。
もう一度、“ちゅっ”と手のひらにキスしてみせて。
私の右手を胸にぎゅっと抱きしめるシェリルさん。
なんだかもう・・・わけがわからないけれど、シェリルさんがかわいすぎることは確か。
上機嫌に戻ったらしいシェリルさんは、私の膝に何度か頬を擦りつけて。
落ち着く場所を見つけると、ソファの上で丸まった。
心臓はうるさいくらいに暴れているけれど。
いつ見てもかわいらしいその姿に、思わず笑みが零れる。
「・・・なんだか今日は・・・いつも以上に・・・ネコみたいですね・・・」
思わず口にしてしまった言葉は、思っていても言えなかったことで。
なぜかと問われれば、怒られると思っていたから。
銀河の妖精、シェリル・ノームを『ネコみたいでかわいい』なんて。
それこそ、シェリルさんのご機嫌を損ねてしまうと思って。
だから、言ってしまったことに後悔してしまう。
瞳を閉じて気持ちよさそうにしていたシェリルさんが、こっちを見たことに。
慌てて「違うんです・・・あの・・・」と、言い訳をさがすけれど、見当たらず。
結局は、項垂れて、謝ることしかできなかった。
「変なこと言って・・・ごめんなさい・・・シェリルさん・・・」
しゅん、としてしまった私の頬に、ソッと触れてくれる優しい手。
閉じた瞳を開いて、シェリルさんを見れば、楽しそうな笑顔があって。
「シェリルさん?」
怒られると思っていたのに、そんな表情を見せられたから。
首を傾げて、名を呼んだ。
そうしたら、シェリルさんが・・・
「にゃあ。」
「・・・・・・」
「にゃ~」
「・・・・・・」
なんて、楽しそうに、おもしろそうに、うれしそうに。
甘えた声で鳴いてみせるから。
「シェリルさんっ!!!!!」
だから、おさえられなかったんです。
「ランカちゃんたら強引。」
からかうような余裕めいた声が耳に聞こえて、ランカの顔が真っ赤に染まる。
「・・・だ、だ、だって・・・シェリルさんが・・・」
「私は何もしてないじゃない。ランカちゃんのリクエストに応えただけよ?」
そんなことを言って、シェリルが顔の横でネコの手を真似てみせると。
顔どころか、体全体を真っ赤に染めていくランカ。
その様子をシェリルは、楽しそうに眺める。
「ず、ず、ずるいですよっ!!!そんなのっ!!!シェリルさんっ!!!」
ムキになってランカはそう返すけれど、シェリルはやっぱり余裕の笑顔。
その笑みに、悔しさを感じたランカは、小さな声で強く言った。
「もう・・・いいです。」
「え?」
ランカの反応を楽しんでいたシェリルの肩に手を置いて、動けないようにしたら。
強引に、そのまま唇を重ねるランカ。
最初はちょっと驚いたシェリルだったが、すぐにそれを受け入れる。
薄く開いたシェリルの唇に舌を差しいれたランカが、遠慮がちに舌を絡めれば。
その遠慮を取りさるように、シェリルの舌がランカのそれに絡んできた。
少し驚いて、でもすぐに。
それに甘えるように、ランカはシェリルとのキスに没頭する。
深いキスのあと、2人を繋ぐ透明な糸を拭うように。
もう一度、シェリルと唇を重ねて軽く吸い上げる。
そうして、唇を離せば、ランカがシェリルを見下ろした。
少し弾んだ息づかいで、ゆっくりと閉じた瞳が開かれれば。
シェリルの潤んだ瞳がランカをとらえる。
それにランカが微笑み返せば、頬を染めたシェリルは、慌てて顔を背けた。
「どうしたんですか?シェリルさん。」
シェリルが恥ずかしがっているのは、わかっていたけれど。
さっきまでのことがあるから、ちょっと意地悪をしてみせるランカ。
そうしたら、シェリルが不服そうにランカを睨む。
「ランカちゃんの意地悪。」
「先に意地悪したのは、シェリルさんだから、謝りませんよ。」
「・・・いつから、そんなに生意気になったの?ランカちゃん。」
「シェリルさんに、教わったんですよ。」
「嘘ね。そんなこと、教えた覚えはないわ。」
「いいえ、教わりました。」
言い合う2人の顔には、笑みが浮かんでいて。
シェリルがランカに手を伸ばし、やんわりと引き寄せれば。
それに誘われるがまま、ランカはシェリルの上に身を重ねて、もう一度、口付けた。
すぐに離れた唇が、今度はシェリルの首筋に下りていく。
甘い吐息を耳に感じて、嬉しくなったランカの顔に笑みが零れた。
それは、シェリルが感じてくれている証拠だと。
ランカはちゃんと、わかっていたから。
一生懸命なランカの愛撫に翻弄されながら、露わになった胸に吸いつかれた時。
シェリルは、快感に声を上げた。
「んっ!!!・・・にゃあ・・・」
聞こえた声に、思わずその動きを止めてしまうランカ。
シェリルの胸から顔を上げて、まじまじとシェリルを見やれば。
自分であげてしまった声に気づいて、肩で息をしながら真っ赤に染まっていくシェリル。
「シェリルさん、今の・・・」
「・・・空耳よ・・・」
弱々しい声がそう言えば。
ランカの頬は、見る見る間に綻んでいって。
“ガバッ”と音がしそうな勢いで、シェリルを抱きしめた。
「かわいいっ!!!!!シェリルさんっ!!!!!」
「う・・・うるさい・・・」
「恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。ネコ、かわいいですよ。」
「・・・それ以上言ったら、怒るわよ・・・ランカちゃん・・・」
それが恥ずかしさからくる強がりだということは。
シェリルがランカにしがみついてきた、力具合ですぐにわかる。
だからランカは、ただシェリルにニコニコと微笑みかけた。
それが少し気に入らなくて。
シェリルは、ランカの耳元で言ってやる。
「ランカちゃんの、バカ。」
「はいっ!!!」
そのままの笑顔で、元気よく、嬉しそうに肯定してきたランカ。
それに、シェリルの方がなぜだかとても恥ずかしくなってきて。
そんな反応を見せるシェリルに、ますますランカの頬は緩んでいく。
逆に、ますます恥ずかしくなってきたシェリルは、それを隠すように。
ランカの右肩に噛みついてみせた。
「も~、痛いですぉ、シェリルさん。」
「う、うるさいわよ・・・ランカちゃんのくせに・・・」
ぜんぜん痛くも痒くもないといった、デレデレの声でランカが言えば。
シェリルは、恥ずかしそうにそう言い返して、ランカの首筋に顔を埋めた。
実は、ランカに攻められると、とたんに弱くなってしまうシェリル。
それに、最近気づいたランカが“かわいがられる”だけではなくて。
“かわいがる”ことに、喜びを覚えはじめてからというもの。
こうやって、シェリルを翻弄することもしばしば。
それが嫌というわけでは、ぜんぜんないけれど。
素直にそれを受け入れてしまうのは、シェリルにはできないことで、強がってしまう。
その強がりがまた、ランカにとってはかわいらしくて。
「シェリルさん。」
柔らかな髪を撫でながら名を呼ぶけれど、シェリルは顔を上げずに、ただランカに強く抱きつく。
その返事に微笑んで、ランカはさっきの続きを始める。
胸に優しく手を這わせれば、すぐにまた、シェリルの口から甘い吐息が零れた。
抱きついてたシェリルの力が弱まって、動けるようになると。
ランカはそっと、その胸に唇を寄せた。
主張する尖端を口に含めば、シェリルの体が小さくのけ反る。
その反応に自然と笑みが零れて。
ソッと舌を這わせて、チュッと吸い上げて、カプッと歯を立ててみる。
右が終われば、今度は左、空いた方には、手を這わせ。
「く・・・んんっ・・・」
「・・・シェ・・・リル・・・さん・・・」
互いに余裕がなくなっていくのがわかると、ランカの手がシェリルの腿に辿り着く。
「・・・シェリルさん・・・すごい・・・」
そこがもう濡れていることに、思わず零れてしまう言葉。
息の上がったシェリルは、何も返せず、ただ恥ずかしくてランカにぎゅっと抱きついた。
抱きついてきた、シェリルの髪にソッと口づけて。
ランカの手が腿を撫でれば、閉じようとしていた脚が自然と開いていく。
抗えぬものにシェリルは、ランカに抱きついたまま、ぎゅっと目を閉じた。
ランカの指が蜜の溢れだすそこに触れると、シェリルは大きく息を吐く。
「シェリルさん・・・その・・・いれてもいいですか・・・?」
「・・・いちいち・・・聞かないで・・・」
「だって・・・この前・・・急にって・・・怒ったじゃないですか・・・」
「あ、あれは・・・その・・・だから・・・」
言われたことに思わず顔を上げれば、そこには、ランカの笑顔。
それを見たシェリルは、一瞬驚いて、それから眉間に皺を寄せた。
「わざとね・・・ランカちゃん・・・」
「えへへ・・・だって、シェリルさんの顔、見たかったから。」
「・・・卑怯もの・・・」
「シェリルさんだって・・・私に・・・するじゃないですか・・・」
顔を近づけながら、そんな言い合いをして。
そのまま唇が重なれば、ランカの指がシェリルの中に挿入された。
あまりの快感に、唇が離れるも、直ぐさまシェリル自らまた唇を重ねる。
ランカの拙い2本の指の動きに、快感を呼び起こされて。
自分でも驚くくらい、あっと言う間に果ててしまうシェリル。
きつくランカに抱きついていた力が弱まると、シェリルの体がソファに沈む。
荒い呼吸を繰り返し、いまだ快感に震えるシェリルに嬉しくなるランカ。
シェリルの頬や、額、目尻にキスを繰り返す。
やがて、少し落ち着いてきたシェリルがランカに微笑みを向ければ。
嬉しそうに笑ったランカが、いまだにシェリルの中におさまっていた指を動かし始めた。
「ちょ・・・ランカちゃん・・・んん・・・」
「まだまだ、いーっぱい、気持ち良くなって下さいね、シェリルさん。」
そう言って、無邪気な笑みを浮かべるランカ。
どうやら、スイッチが入ってしまったらしいランカに。
シェリルはその身を委ねることしかできなかった。
結局、朝をソファの上で迎えてしまった私たち。
「ランカちゃんのエッチ。」
シェリルさんの言う通り・・・その、なんというか・・・
シェリルさんのかわいさに、止まらなくなって・・・
ランカ・リー、大暴走してしまいました。
「だ、だ、だって・・・シェリルさんが・・・かわいいから・・・つい・・・」
やりすぎてしまいました、ごめんなさい。
反省しつつも、昨日のことを思い出したら、顔がニヤけてしまうのがわかった。
「ぜんぜん反省の色がみえないわね、ランカちゃん。」
ニコッと笑ったシェリルさんに、両頬をやんわりとつねられて、左右に伸ばされる。
それなのに、ニヤけた顔はもとに戻ろうとはしなくって。
「ふぉふぇんふゃふぁい」
そのままの状態で謝ってみたら、シェリルさんが大きく溜息を吐いてみせた。
「ほんとに・・・ランカちゃんは、困った子なんだから。」
そう言いながら、つねられた頬を解放してくれれば。
シェリルさんが、私のことをぎゅっと抱きしめてくれる。
突然のことに驚いて、でも、その柔らかで温かな感触に、また笑みが零れて。
抱きしめてくれるシェリルさんに、ぎゅっと抱きつき返した。
「大好きです、シェリルさん。」
「知ってるわよ、ランカちゃん。」
頭を撫でてくれる優しい手に、微笑みながら。
シェリルさんに、さらに抱きつく。
「ねぇ、ランカちゃん。」
呼びかけられて、顔を上げれば。
そこに、シェリルさんの艶やかな笑顔。
それに魅入っていたら、耳元で囁かれる。
「今夜は“おしおき”だからね。」
言われた言葉を理解して、真っ赤になって固まれば。
ものすごくご機嫌な笑みを浮かべたシェリルさんが、私にキスをしてくれた。
おわり
最終更新:2011年06月26日 22:37