長期滞在用に、貸し切っているホテルの1室。
その中で、私は妖精の到着を待っている。
やがて、扉の向こうから音が聞こえてきて。妖精が扉を開けて入ってきた。
「ごっめーん。グレイス。待った?」
「待った、じゃないわよシェリル。もう少しで遅刻だったのよ?」
「ごめんごめん。つい、皆との話が長引いちゃって」
ごめん、じゃないわ。そう思いながら、私は時計とシェリルとを見比べる。
シェリルは、美星学園の制服から、私が用意した衣装に着替える最中だった。
そうそう。その調子。マネージャーの決めた刻限は、守らないとダメなのよ?
心の中で急き立てているのに、シェリルは着替えの手を止めてこちらを見てくる。
「どうしたの、シェリル?」
「リボン、結んで?」
ドレスの胸元から伸びた、首の後ろで結ぶリボンを、シェリルが片手で示している。
そんなの、自分でだって結べるのに。
全く。この子は少し甘えんたがりなところがあるのよね。
そう育てたのは、私なんだけど。
仕方なく、私は鏡の前に立つシェリルの後ろに回り、リボンを結んであげる。
「ねぇ、シェリル。貴女明日も学園に行くの?」
「スケジュールは、空いているんだっけ?」
「一応ね。学園に出来る限り行きたいから、調整してって言ったのは貴女だもの。
マネージャーとして、やれる事はやったつもりよ」
舞い込んでくる仕事を吟味して、取捨選択する。
そんなのは、この子をプロデュースする時からずっとやっていた事だから、慣れてるのよね。
明日だって、少なくとも午前中は、シェリルの自由時間だ。
なのに、シェリルは少し口篭って。
「明日は……学校、休もうかしら」
「あら。意外ね。パイロットを目指して真面目に勉強するって言ってたのは誰かしら?」
「言ったのは私だけど。でも、仕方ないじゃない。
ちょっと、体調が……」
シェリルは語尾を濁らせたけど、そんな事は言われなくても分かっているのよ?
貴女の体調が徐々に悪くなっている事くらい、先刻承知の上なんだから。
何せ、そういう風に仕組んだのは、この私自身なんだもの。
最も、症状の進行具合まで深くコントロールはできないんだけどね。
「無理して学校に通ったりするからよ」
「だって。一度、学園生活っていうのを味わってみたかったんだもの」
「アラ。それだけじゃないんじゃないの?」
「それだけじゃないって……。
おかしな事言わないで。私は本当に、学校っていうものを一度経験したかっただけで」
「まぁ、それも動機の1つなんでしょうけどね。
貴女、あの子が気になって仕方ないんでしょう? ランカ・リーが」
名前を出すと、鏡越しに見えるシェリルの顔が強張った。
人前では強情なのに。私の前ではこんなに素直。可愛いわね、本当に。
「気にするのは当然だわ。あの子の背中を押したのは、私よ」
「本当に、それだけかしら?
明日、美星に行かないって言うのも。
ランカちゃんが最近学校に来ないからっていうのもあるんじゃない?」
「グレイス。貴女、何が言いたいの?」
「貴女が美星に行くのは。
ランカちゃんと少しでも一緒に居たいからなんじゃないかなって。そう言ってるのよ」
「そんな事、あるわけないじゃない!」
言って、シェリルは鏡から視線を逸らす。
さっきまでは素直だったのに。今度は隠そうとするなんて。
でも無駄よ。ずっと一緒にいるんだもの。私に隠し事なんて、無理よ。
……あぁ、面白く無いわ。
私は黙って、結んだばかりのリボンを解く。
そして、シェリルの首筋を舐めた。
「ちょ、ちょっとグレイス! 何するの!」
「悔しいのよ。まるで、貴女をランカちゃんに取られたみたいで」
「グレイス……」
「せめて、今は私のシェリルでいて?」
あくまでシェリルに主導権があるような言葉を選んで。
切なそうに囁けば、シェリルは決して拒まない。計算の上だ。
案の定、シェリルは私に止めてとは言わなかった。
鏡の前。自分の感じている顔を見るのは恥ずかしいでしょうに。
それでも、気丈に立ったまま、私の愛撫を受け入れる。
「グレイス……あぁ……」
「立っているのが辛いなら、ベッドに移動しましょうか?」
「辛くなんか!」
「だったら、せめて壁に両手をついて?」
背後から包み込むように乳房を弄びながら言うと、シェリルは素直に従った。
こういう風に、可愛くて従順なシェリルは大好きよ。愛してると言ってもいい。
だから、私以外の人間に、好意を向けるなんて許してあげないわ。
「グ、グレイス、あん……」
ドレスの裾から手を滑り込ませると、シェリルの秘部はとうに湿りきっていた。
下着を太腿まで下ろして、私は目指すところへ指を差し入れる。
「好きよ、シェリル……」
「あ……はぁ……んんっ」
秘裂に触れさせた指を更に動かせば、シェリルがいとおしい声で鳴く。
勃起した小さな突起に触れると、その声がはね上がった。
「シェリル……シェリル……」
「あ、あああ!」
達したのだろう。シェリルの一際高い声と、指をつたう体液に、私は満足する。
乱れたシェリルの様子を見ただけで、私もまた、下着を濡らしていた。
「うふふ……貴女のそういう顔、大好きよ」
「グレイスってば……。これじゃ、取材に間に合わないじゃない!」
「それなら心配ないわ。取材が始まるの、1時間後だもの」
「え?」
「遅刻するかもしれないから。わざと早い時間を貴女に伝えたのよ」
事実を明かすと、シェリルは力が抜けたのか、床に崩れ落ちる。
せっかく用意した衣装が台無しね。
でもいいわ。その位。可愛い貴女を見る事が出来るなら、安いものよ。
だって、こうして体調が思わしくない以上。
貴女といつ、永遠の別れをしなければいけないのか、分からないものね。
「グレイスったら……」
「怒りました?」
「怒ってなんか無いわ。ただ、私の事はお見通しなのね、って思っただけ」
「当然よ。私は貴女のファンでもあるんだから」
そうよ、シェリル。可愛いシェリル。
たっぷりと愛を注いで上げる。
だから、ランカ・リーの事なんて見ちゃだめ。私の側を離れちゃダメよ?
END
最終更新:2009年02月11日 18:42