新年から虎柄ビキニなんて……しかも耳と尻尾のオプション付きとか、もうどんだけ悩殺ものなんですか!?
新年あけおめポスターの撮影をしにきたスタジオの控え室。
そこで半ば虎の着ぐるみっぽい衣装を纏っているランカは、胸の中でそう叫んだ。
【 あけおめトラ娘にゃん 】
(あぅ~、もっ……シェリルさぁ~ん!!)
茶目っ気たっぷりな可愛らしいトラのきぐるみチックな衣装を纏ったランカが、胸中で奇声を上げまくる。
その視線の先にいるのは、件のセクシーな虎柄ビキニというなんとまぁ色気たっぷりな衣装を纏った銀河の妖精。
一緒に年越しは無理だったが、お正月くらい……と思っていたランカだが、どうしたってお互いに売れっ子。お正月だろうがなんだろうがお仕事があるのは当然で。
スケジュールを見て内心、かなりしょぼくれていたところに、急遽舞い込んで来た嬉しい仕事がこのポスター撮影だったのだが。
(嬉しいけど、けどぉ~!! 逢うのだって久し振りなのに、こんなのってないよぉ~!!)
ちょっとこれは色々厳しいものがあるらしい。主にコチラの超時空シンデレラに。
(だってだってだって~! ずっと忙しくて逢えなくて……時間が合わなくて電話もできなくて、メールのやりとりばっかりで……)
あの凛々しくてカッコいい姿が見たいとか。
無邪気に笑う顔を近くで見ていたいとか。
深い銀河の色を、星屑のミルキーウェイで淡く染めたみたいな、そんな蒼い瞳に見つめられたいとか。
優しく名前を呼んで貰いたいとか、どこか儚い響きのするあの名前を呼びたいとか。
そう思って想って、メールなんかじゃ全然足りなくて。
(もう毎日シェリルさんのCDとかライブムービーとか何回も見たりして誤魔化してたけど……)
でもやっぱり映像越しじゃダメだったんだもん!
生のシェリルさんを知っちゃったら、機械越しの存在じゃ満足できないもん!!
(……なんだ、けど……)
チラッとシェリルの方を見る。
大事なことなので今一度シェリルの姿を説明をしよう。
我等の銀河の妖精、シェリル・ノームが纏っているのは今年の干支に合わせた虎柄のビキニ。
ふわふわストロベリーブロンドの髪間から見えるのは、三角の猫耳……じゃなくて、虎耳。
際どいビキニラインを追えば、その芸術的な形のヒップにもオプションで付いた尻尾が見えて。
引き締まった大腿部に、つるっとした膝を眺めていくと、長い足にはやはりビキニと同じ柄のブーツ。
首許には「誰が飼い主なんですか!?」と問い質したくなるような首輪……ではなく、黒のチョーカー。
そんな新年からもガッツリとセクシー全開なシェリルは、鏡と睨めっこして自身の髪を弄り、頭部に付けた猫耳……ではなく、虎耳の位置を一生懸命に微調整していた。
そんな真面目な顔して、でもやってるのが猫耳……じゃなくて虎耳を弄ることなんだから、もう可愛くて仕方ない。
(うぅっ……もっ、なんでそんなにセクシーアンドキュートなんですかぁ~)
ランカは盛大に困った顔をして、赤く染まった自身の頬を両手で包んだ。
ちなみにランカが手にはめているのは触り心地抜群なプニプニ肉球グローブ。ほっぺに当たるそのプニプニの感触で、ちょっと落ち着くランカであるが、大好きなシェリルの素敵な虎柄ビキニ姿を直視しようものなら、もうどうなってしまうか分からない。
「あわわわ」と内心である意味嬉しい悲鳴を上げながら、ランカはシェリルから視線を外すことに必死だった。
(ほんとは見たくて堪らないんだけど! ほんとはもう穴が開くくらいにガン見したいけどぉ~!!)
目の前に美味しそう、いや、実際に物凄く美味しい餌がブラブラと揺れているが、虎ランカは必死に顔を背ける。
一応撮影は終わってしまっているが、でもどっかのパイロットの男の子を入れて、もう一回撮影をするかもしれないという話が出ている為、今は取り敢えず待機中というそんな曖昧な状態。
もう目の前の御馳走に齧(かぶ)り付きたくて堪らないけど、手を出してしまったら最後。
途中で止められる自信なんかない。寧ろ「止める」とかそういう選択肢自体が自分の中から排除される自信があるくらいで。
そうなったりしたら、カメラマンさんに怒られるし、社長にだって怒られて。
(それに絶対に言うんだよ。シェリルさんのメイク中、絶対にボビーさんが『あらあら。ランカちゃんってば意外に激しいのねぇ~。お兄ちゃん譲りかしらねぇ~』とかって言うんだよ! それで愉快そうに笑うんだよ、きっと!!)
ボビーのにまにました笑顔が浮かんできて、ランカはふるふると頭を振った。
ついでにエルモ社長のにまにました笑顔と、「公私混同はいけませんよ」と嗜める言葉も聞こえてくる。
そしたらボビーから自分の仕事ぶりを聞いたらしいキャシーの苦笑が出てきて、連鎖的に何も分かってない二人の兄の顔までも出てきて、ランカは内心で辟易した。
正直いうと、ボビーよりもエルモ社長よりも、キャシーお義姉ちゃんのちょっと困っているような、若干照れているようなそんな苦笑が一番堪える。
兄達に秘密にしてくれているのは勿論だけど、彼女との関係を一番理解してくれていて、一番助けてくれている人で。
だから、もう、そんな顔をされると恥ずかしくて堪らないというか、なんというか。
(早く誕生日こないかなぁ。そしたら籍を入れて……『結婚披露宴 ~こんなライブ一生に一度しかないんだからね in セードーカン~』とかやりたいなぁ……)
どうでもいいが、「籍入れるとか女の子同士だから無理じゃね?」とかいう突っ込みはしてはいけない。
だって超時空シンデレラと銀河の妖精に不可能なことなどないのだから。
と、まぁ、早く大人になりたいー。とか、そんな風にあーだこーだと考えて、必死にやり過ごそうとするランカ。
そんなランカに、
「ランカちゃん?」
と、鏡との睨めっこが終わったらしいシェリルの声がかかった。
「はひっ!」
物思いに耽っていたところへ喰らった不意打ちに、ランカは素っ頓狂な声を上げつつ、思わずシェリルの方に振り返ってしまった。
そこにはもう……言わずもがな、いや、折角だからいっておこう。、虎柄ビキニとオプションの猫耳……だから違くて、虎耳と尻尾を完璧なまでに身に纏ったシェリルがいた。
そして、小首を傾げてこちら見ていた。もうその首の傾げ具合も完璧とは、流石は銀河の妖精である。
「しぇ、しぇっ、しぇりりゅしゃんっ!!」
振り返った拍子に思わずシェリルの姿をガン見してしまい、動揺のあまりに名前さえもまともに呼べなくなっているランカ。
ビキニの際どいラインとか、チラリズムよろしく覗く横乳だとか。
ダイブしたくなるその綺麗な谷間だとか、うっすらと割れた腹筋だとか。
綺麗な背中だとか、長い足だとか、引き締まっているのに触り心地の良さそうな太ももだとか。
そんな太ももにさり気なく入ったハートのマークだとか。
なんだかもう言いたいことはたくさんあるような、一個しかないような、もう何もないような。
ランカはそんな心情で顔を真っ赤にさせたまま口をパクパクと開閉させた。
「ランカちゃん顔真っ赤よ? 熱でもあるの?」
きょとんとした顔で言い、顔をずいっと近づけておでこをコツンと合わせて来るシェリル。
ランカは口の中で「ひっ!」と思わず悲鳴を上げてしまった。
だって、あの綺麗な顔がこんなに近くにあって。
長い睫が当たってくすぐったくて。
吐息が頬を掠めて。
ふっくらとした、とっても柔らかそうな唇がすぐそこにあって。
いっぱいいっぱい我慢してるっていうのに、これはあんまりにも酷い。
(さわりたいぃ……ふぇ、さわりたいよぉ……)
さわりたくて、たまらない。
もう、泣きそうなくらいに。
(もっ……なんでこんなにガマンしてるんだろう……)
えぇ、えぇ。分かってますよ。
お仕事ですもん。ガマンしなきゃいけないんだもん。
うーっ。と歯を食い縛っていると、その内近くにあった顔は離れていく。
シェリルは「熱はないみたいだけど……」と呟いて、ランカの頬に手を伸ばした。
親指が優しく目尻を撫でて、熱いほっぺをそっと包み込む。
優しい触り方と、ちょっとひんやりとした柔らかな手が気持ちよくて、思わず溜息が漏れそうになる。
「そんな顔して……どうしたの?」
「だってぇ、シェリルさんがぁ」
「私?」
「うぅっ……なんでもないです……」
シェリルさんが魅力的過ぎるの悪いというか。
シェリルさん大好きすぎる自分が悪いというか。
もう何も言えなくて、そしてシェリルとこれ以上視線を合わせてられなくて、ランカは俯いた。
「ならいいけど……」
シェリルは頭にクエスチョンマークを浮かべたまま、再び首を傾げる。
でもこれ以上の詮索は無意味と思ったのか、ランカから視線を外してチラッと時計を見上げた。
「ちょっと遅いわね」
「そ、そそ、そーですね……」
どもりながらも相槌を打つ。
確かにスタッフからの連絡が遅い。
何かもめているのか、結局無しになったのか。
(そういえば、この後は着物で撮影だったっけ……なんだろう、この殺人スケジュール……)
カッコ理性的な意味でカッコ閉じ。
きっと着物姿のシェリルさんもカッコ可愛くてセクシーなんだろうな。
と、ランカは髪をアップにしたシェリルを思い浮かべて、深い溜息を吐いた。
その無防備に晒された項にキスをしないわけにはいかない。きっといかない。カッコ本能的な意味でカッコ閉じ。
「暇ねぇ……」
シェリルがボソリと呟く。
「ですねぇ~」と相槌を打ちながらシェリルを見やれば、なんだか退屈そうに髪を弄っていた。
毛先をくるくると指先に巻きつけて、しゅるっと放して、また巻きつけて……と、そんなことを繰り返しながら、シェリルは壁の近くに置いてあったマグロ饅のクッションに寄りかかった。
それは撮影に使っていたマグロ饅型クッションで、そのふかふかの感触をシェリルが思いの他気に入ってしまった為、特別にお持ち帰りOKとなった代物である。
シェリルは直接床に腰を下ろし、膝を抱えてマグロ饅型クッションに背中を預ける。
ふかふかの感触を楽しむように、ぽふぽふと背中で何回かバウンド。
その度に髪やら猫みm……じゃなくて虎耳と尻尾が揺れ動いて誘ってくるけどもガマンガマン。
マグロ饅の感触に満足したのか、シェリルはバウンドをやめると深く背中を預けながらランカを手招きした。
「?」
ぽけっとした顔で小首を傾げていると、「いいからいいから」というような顔で再度手招きされる。
呼ばれるままにシェリルの近くに行くと、
「っわ!?」
そのままグイッと手を引かれて、抱えられてしまった。
「ふふ」
「えっ、えぇ……!!?」
片方は奇声を上げて、片方は得意げな笑い声を漏らす。
ランカはシェリルに後ろからぎゅっとされる格好で、その長い足の間で縮こまった。
細くて、でも引き締まった綺麗な腕にぎゅっとされる。
肩とお腹に回った腕の感触に、心もぎゅっとなって、顔が熱くなっていく。
「つーかまえた♪」
耳元で楽しげに囁かれる、子供みたいな言葉。
ふわふわの髪が首に当たってくすぐったくて。漂ってくる甘い香りに鼻腔をくすぐられる。
(ぅわわわ……)
大好きな温度。
大好きな匂い。
大好きな感触。
大好きな声。
全部近くにあって、触れていて。
我慢に我慢を重ねていたのに、こんな不意打ちは聞いていない。
内心で大慌ての大混乱。
でもぎゅっとされて、全身で感じてしまったぬくもりに勝てる筈もなく。
いや、始めから勝とうなんて気は無かったけども。
「……シェリルさん」
気付けば、心の奥の大事な場所が綻んでいて。
甘えるように頬を摺り寄せ、彼女の名前を呼んでいた。
「ん~」
シェリルはのんびりと返事をして、嬉しそうな顔でランカが摺り寄せてきたその頬に、自分の頬を摺り寄せた。
すりすりとほっぺたとほっぺたと軽く擦り合わせる。
スベスベの感触にうっとりしていると、シェリルは「もちもちぃ~」と楽しげに笑った。
「それにしてもカワイイわねぇ~」
「え?」
「ランカちゃんの格好」
「……そうですか? きぐるみっぽくありません?」
「そこがカワイイんじゃない」
「えー」
「まぁ、ランカちゃんなら何着ても可愛いんだけど」
「ぁ、ぅ……その……」
「ありがとうございます」と、小声で言うけれど、シェリルは「ほんとのコトを言っただけ」と悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
ぎゅっとしてくれていた腕が少しだけ離れて、ぷにぷに肉球付きのグローブに触れる。
衣装自体は着心地も触り心地も良いタオル生地で出来ているけれど、グローブはずっと触っていたくなるような少し毛の長いファーというか。そんな生地で作られている。
シェリルは手のひらでグローブを撫でていたが、その指先がグローブの内側、ランカの手の平辺りに付けられている肉球を発見した。
「あ、ぷにぷに!」
肉球をつんつんしたり、指の腹で撫でてみたり、人差し指と親指で摘んでみたり、手全体で鷲掴みにしてみたりと、とにかく只管にプニプニしだすシェリル。
ランカは自分が嵌めているグローブを好き勝手にプニプニされて「くすぐったいですよ~」と笑いながら声を上げるが、次第にシェリルの反応が薄くなっていくのに気が付いた。
「あの……」
ぷにぷにふにふに。
「……シェリルさん?」
ぷにっふにっ。
「……えっと……あの~」
ふにふにぷにぷにぷに。
「も、もしもぉーし……」
プニプニふにふにぷにゅぷにゅ。
「シェリルさぁーん?」
ぷにゅんぷにゅんふにふにぷにゅん。
(どうしよう……夢中になっちゃった……)
そんなシェリルさんも可愛いなぁ。
(じゃなくてっ!)
ランカは心の中でかぶりを振る。
私よりも肉球ですか? なんて気持ちを込めて直ぐ傍にあるシェリルの顔を見つめるが、
「ふふっ。ぷにぷにぃ~♪」
シェリルは物凄く楽しそうに肉球で遊んでいて、ランカの視線に全然気付かない。
(うぅ……ひどいですよぉ~)
内心で嘆くが、シェリルには1ミリも届かない。
くっ付いてられるし、どうせ暇だし、暫くこのまま遊ばせてあげてようかな。なんて一瞬思ったが、
(……ぁ)
ランカは顔の表面温度を急上昇させる。
ぷにっというか、ふにっというか、ぽよんっというか、そんな気持ちの良い感触のものが背中に当たっているコトに気付いてしまったから。
同時に、シェリルの格好を改めて思い出してしまう。
布一枚しかその滑らかな素肌を守るものがないという、水着みたいな格好が脳裏にフラッシュバックして。
ランカは思わず生唾を飲み込んで、シェリルの腕の中で更に身体を小さく丸めて、筋肉を硬直させた。
なんかもう、色んな意味で限界な気がしてならない。
さわりたい。
キスしたい。してもらいたい。
ぎゅっとしたい。
いろんなトコロにふれたい。
みたい。かんじたい。
(っ、ぅ……)
理性が軋む音がする。
その悲痛な音が、カラダの芯に熱を灯していくようで。
「なんだか美味しそうよね~」
(……ぇ?)
不意に、シェリルはランカの手を引き寄せて、その肉球に唇を寄せた。
ちゅっという音が、耳の直ぐ傍でして。
――――ぷつん
瞬間、何か太いゴムのような物が弾け切れた音が頭の隅の方でした。
「おいしそうなの……」
――――シェリルさんの方じゃないですか。
小さく小さく呟かれたランカの言葉。
シェリルは聞き取れずに、「え?」と問い返したが、答えるよりも早くランカはくるりと体勢を変えて、シェリルと向き合った。
「肉球なんかあげますから、代わりにシェリルさんを食べさせて下さい」
「はぁ? ちょっ、何いっ……!?」
戸惑うシェリルの口を、自身の唇で塞ぐ。
肩を押してゼロになった距離の離そうとするシェリルの手。
ランカは立て膝になって全身の体重を乗せ、シェリルの背中をマグロ饅型クッションに埋めた。
「んーっ! んんっ、んくっ……んっ、ちょっ、や……ラン、っんぅ」
押し返すことは諦めたのか、今度は肩先をトントンと叩かれる。
それでもやめずに唇を重ねて、舌をちょっと強引に入れて猫みたいに……いや、ライオン? トラ?
(なんでもいいや……)
ランカは舌を絡めて、シェリルの柔らかい唇を吸う。
敏感な上顎を舌先でチロチロと舐め上げて、デリケートな舌裏を集中的に攻め立てる。
ぴちゃぴちゃっ。とか、ちゅっちゅっ。とか、そんな水音が二人の唇の間から漏れて。
それと一緒にシェリルの苦しげな吐息と、どこか鼻がかった甘い声が微かに零れた。
「っ、く……やっ、も……くるしっ、んん、ふっ、く」
上手く息が吸えないのと、しつこくて長いランカの口付けに、シェリルはひくりと震えながら息継ぎさせてと訴える。
ゼントラーディのクォーターといえど、その肺活量はやっぱり人間とは違うもの。なのにランカはちゅぅーっとシェリルの唇を吸って、その訴えに応じない。
吐息を絡ませて、舌を絡ませて、唾液を絡ませて。
二人の唇の温度が一つになっても、ランカは口付けをやめなかった。
「ん、ふ、ぇふっ、ぁ……んんっ、く、んーっ」
「……ちゅっ……んっ、ちゅぅ……」
(シェリルさんの唇やっぱり柔らかいなぁ……)
シェリルが、白い頬を真っ赤に染め上げて、全力疾走後のような呼吸を繰り返し、涙をぽろぽろと零すくらいになった頃、ランカは漸く口を離した。
「はっ、はっ、ぁ、くふ……もっ……はっ、ば、か……ぁ……」
「ぁ、その……す、すみませ……」
夢中になりすぎてしまった自分が恥ずかしいのと、それからシェリルの姿にランカも頬を染める。
真っ赤にそまった頬とか、唇の端から零れた唾液が顎を伝って首筋まで濡らしてるとか、激しいキスに汗ばんだ肌とか、荒い呼吸だとか、それに合わせて弾む胸だとか。
全部が魅力的すぎて、既にショートして使い物にならない理性が更に焼け焦げた。
「ご、ごめんなさいシェリルさん……ちょ、ちょっと止まれそうにないです……!!」
シェリルが「やっ、だ、だめっ! ストップぅ!!」なんて言う前に、ランカはシェリルのカラダに手を這わす。
「ひゃぁ!!?」
すると、シェリルの口から素っ頓狂な声が上がる。
シェリルはカラダをピクンッと跳ねさせて、不思議そうな顔で目を白黒させた。
「えっ、え……な、に……?」
「あ、グローブつけたまま……」
ぷにぷにの肉球に素肌を撫でられて、シェリルは戸惑ったような声を断続的に上げた。
とっても柔らかくて、弾力性に富んだ肉球。
それで敏感な箇所をなぞる度に、シェリルは可愛らしい声上げるので、なんだか徐々に楽しくなってくる。
「シェリルさん、コレきもちぃですか?」
「んぁあっ!?」
悪戯にふにゅっと大きな胸を鷲掴む。
そのまま揉みしだくと、シェリルはいやいやと首を振り、涙目でランカを見上げた。
「っ、ぁ、あ! ぅぁ……くっ、コレや、だ、ぁ……」
「そーですか? 気持よさそうに見えますけど……」
あ、どうしよう。
ちょっと楽しくなってきちゃった。
ランカは緩みそうになる口の端を堪えながら、もにゅもにゅと優しく双丘を揉む。
でも「ぅぅっ」とか、「んー」とか、下唇を噛みながら必死に声やら何やらを堪えているシェリルの姿に、うっかり口許が緩んでしまった。
(……ガマンはもういっか)
結局ガマンなんて出来なかったけれど、しょうがない。
目の前に美味しくて堪らないシェリルさんがいるんだからしょうがない。
ランカは少しだけ自分に苦笑して、手を滑らす。
脱がさなくても、そこにあるのは布一枚。
ビキニをするりと上にずらすと、ぷるりと震えながら大きな胸が零れてきた。
「な、なっ! ちょっ、待ってランカちゃん!」
「そんなぁ、ここまできて待てるわけないじゃないですか」
「だ、だってこんなところで」
「大丈夫ですよ、ちゃんとカギかけてありますし」
「そういう問題じゃっ」
わたわたと両脇でシェリルの足が暴れる。
ランカは半ば無視しながら、にこにこ笑顔でシェリルの胸に触れた。
「ふふ♪ やぁらかいですね~」
「ぁんっ、やっ、だ、ダメだって、ばぁ」
見ためは大きくて真っ白なマシュマロという感じなのに、感触はこんなグローブの肉球なんて目じゃないくらいにぷるぷると瑞々しくて、指先を弾ませるこの絶妙な弾力。
色よし形よし、ついでに味もよし。
(乳首もきれいなピンク色だし……ほんとどこもかしこも美味しそう……)
こんなこと思っちゃうなんて、この衣装の所為かな?
頭の隅でふわふわ考えながら、肉球で肌を摩る。
尖った乳首を肉球でぷにぷにと摩って、柔らかい胸も一緒に揉む。
ぷにぷにと乳首を肉球で弄っていると、次第にシェリルの顔がふにゃんと蕩けて。
「んぅっ、く、ふぁ……や、だぁ……」
ぴくぴくっとカラダを跳ねさせながら、手を掴んでいやいや。
顔同様に、カラダにも力なんて入ってなくて、勿論掴んでくる手にだってほとんど力は入ってない。
ふにゃんとした顔が可愛くて、こっちもついふにゃりと頬が緩んでしまった。
「そーんなかわいい顔で嫌っていわれても困っちゃいますよー?」
「ぅ~、ひくっ、んぁ、ぁ」
ちゅぅっとほっぺに吸い付いて、涙をペロペロと舐め取る。
そうしていると「ばかぁ」という言葉と一緒に、ちぅっと鼻の頭に可愛くキスされてしまった。
「シェリルさん……シェリルさん……」
彼女からのキスが嬉しくて、ちゅっっちゅっと何度も唇を吸う。
シェリルの腕が首に回ったのを確認して、ランカはそっと下へ下へと右手を滑らせていった。
「ぁ……」
小さく声が上がる。
そこはもうトロりとした美味しそうな熱を持っていて、シェリルは恥ずかしそうに顔を逸らしてしまった。
肉球でビキニの上から擦り上げてみると、ぬちゃっというヤラシイ水音と共に、跳ねるシェリルの肢体と喉。
ちゃんと気持ちよくできていたことが嬉しくて、ランカはますます顔を緩ませた。
「シェリルさん……きもちぃ?」
「はっ、ぁ、ぁ……もっ、や、だって、いって、ぁ」
「でも濡れてますよ?」
「っ、ぁ……ば、かぁ……」
肉球が敏感な箇所に当たるように丁寧に擦り付けて、くちゅりくちゅりと動かす。
こんなに気持ち良さそうなのに、それでもシェリルはいやいやを繰り返すから、ランカも流石に苦笑してしまった。
「ぅっ、ん、は……衣装、よごれちゃ……」
「あー、そういえば……でも大丈夫ですよ、たぶん」
「もっ、大丈夫じゃないしっ、そーじゃないでしょ!」
「ふぇ!!?」
いきなりぎゅぅっと抱き締められて、口から変な声が出る。
胸に顔を埋めながらきょとんとしていると、シェリルの濡れた唇がもにょもにょと動くのが見えた。
「シェリルさん?」
「っ、だ、だから、その……」
珍しく歯切れの悪い言葉。
乱れた髪に触れて、頬を撫でて。それから言いにくそうにしている口にもキスをして。
そうしながら視線で「どうしたんですか?」と優しく問うてみるけれど、シェリルはやっぱり恥ずかしそうにしたままぎゅっとランカの頭を自分の胸に押し付けた。
「……だか、ら……」
「ふぁーぃ?」
きっと顔を見られたくないんだろうな。
ランカはそう理解して、ちゅっちゅっと胸に口付けた。
「ちゅっ……ちゅ……」
「んっ、あの、っ、ね……」
桜色の乳輪に沿って、舌で円を描くようにチロチロと舐めて。
ぷにぷにの肉球で散々弄られて、ぷくっと尖りきっている乳首を唇で食んで熱い吐息を吹き掛けて。
「ぁ、んぁ、だか、ら……」
「ぺろっ……ちゅぅ……」
ちゅるっと甘く吸って。
びくりびくりとシェリルのカラダが跳ねる。
(こんなに敏感になっちゃって、きっとナカの方とかグズグズになってる筈なのに……どうしてイヤなのかな?)
抱き締めてくる両腕に、きゅっと力がこもる。
すがり付いてくるようなその力が、なんだか酷く切なくて、名前を呼びながら抱き締め返した。
「シェリルさん……」
「はぁ……はぁ……んっ……ねぇ、ランカちゃん……」
「はい、なんですか?」
見つめながら言葉を待つ。
そこには今にも甘い雫をたくさん降らしてくるような潤んだ空があって。
「……ちゃんと、触って……」
その甘い空の色が一層甘くなって、懇願してきた。
(っ!)
もう可愛いだとか、そんな言葉じゃ語り尽くせない。
でも可愛いとしかいえない。
可愛すぎて、脳みそが蕩けそうで。
「シェリルさん……もっ、なんでそんな可愛いんですか……」
ランカは堪らずシェリルに深く口付けて、グローブを取り、フードを脱ぐ。
自由になった指先でシェリルの衣装も脱がせて、ポイポイッと床に放った。
ちゃんとランカの手で、指で。手のひらで素肌で、シェリルの全身に触れる。撫でる。
苦しくないようにキスを繰り返しながら、「力、抜いてて下さいね」と囁いて、そろりそろりとシェリルの中心に指を這わせ。
――――コンコンッ
ようとしたら、ドアをノックする音が物凄くタイミング良く響いた。
「「!!?」」
二人はビクンッとカラダを跳ねさせて、バタバタと慌てる。
とりあえずシェリルが衣装に着替える前に来ていた服の上着を着せ、そこら中に散らばった衣装やら付属品やらを高速でかき集める。
「ランカさん、シェリルさーん!」と呼ぶ声に、ランカは動揺しているせいでいつもよりもずっと大きな声で「は、はーいっ!!」と返事をしてしまった。
「すみません、遅くなりました。パイロットの子到着しましたんで準備お願いしまぁーす」
「わわ、わかりましたー!」
(って、分かったって言っちゃった!!)
うわぁぁぁ! ランカのバカぁっ!!
自分を自分で罵るが後の祭り。ドアの外のスタッフは爽やかに走り去っていってしまった。
「「…………」」
なんともいえない間が空く。
シェリルは顔を赤くしてマグロ饅のクッションに顔を埋めて、視線すら合わせてくれなかった。
「……あ、あの」
「…………」
「そ、その……」
ここまでシておいてお預けってどういうことなの?
あんまりじゃないですか神様?
神様なんているかどうか知らないけれど、いるのならばとりあえず張り倒してやりたい。
と、泣きそうになりながら思っていると、
「……ランカちゃんのバカ」
ボソッと、小さな小さな声。
それは拗ねた時にする声音で。
「あぅ~」
可愛い。撫で繰り回したい。
押し倒して、ちゅーしたい。
「すみません……」
でも、さっき勢い良く返事しちゃったから、直ぐに行かないといけない。
どうせならもっと遅く来て欲しかった。それでなければコトが起きる前に早く来て欲しかった。
「もぉ……誰だか知らないけど……あんまりだよぉ……」
ほんとに泣きそうになっていると、ポフッと頭に何かが当たった。
「あぅ」
それはさっき脱ぎ捨てた肉球グローブ。
シェリルを見ればもう衣装をキチッと着直していて、頭に耳を付けているところだった。
「早く準備しなさい」
「でも……」
「私達はプロでしょ」
相変わらず厳しいなぁ。
ランカはしゅんとしながら衣装を直し、グローブを嵌める。
「早く行くわよ」
「むぅ……シェリルさん、さっきはあんなに気持ち良さそうにしてたのに」
「だ、誰がそ、そんな!」
あんまりにも態度がドライだから、思わず意地悪な言葉が口から出てしまう。
もうちょっと未練というか、名残惜しくというか、そんな態度とか言葉をくれてもいいと思うのに。
頬を膨らませて口を尖らせていると、その頬にちゅっと不意打ちをされた。
「……え?」
「だ、だから……早く行って、早く終わらせようって……そう言ってるんでしょう」
視線が明後日の方を向いていて、ついでに顔も全力で逸らされてしまったけれど。
そんな恥ずかしそうな姿につられて、こっちも顔が熱くなる。
「そ、そーですね……」
「そ、そうよ……」
「……えへへ」
嬉しくて恥ずかしくて、やっぱり嬉しくて笑ってしまうと、シェリルは「行くわよ」と素っ気無い態度で早足で控え室を出て行ってしまった。
「あ、待ってくださいよ~!」
慌てて追って、隣に並んで腕を組む。
「あとでいっぱい……いいですか?」
「お手柔らかに頼むわ」
「ど、努力します……」
「……ふふ」
とりあえずはこの撮影をちゃっちゃっと終わらせることからだよね。
今年もいっぱいシェリルさんといれるといいな。
勿論、パイロットの男の子とかいうのが色々と酷い目に遭ったというのは言うまでもない。
おわれ
最終更新:2010年01月27日 21:16