26-7

7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/04/11(水) 00:55:17.43 ID:IDPtVu/e0 [1/3]
 あたしの役目は、まどかの帰る場所になること。そう、そのはずだったのに。

 現世で魔法少女として戦い、魔力を使い果たしてまど界に導かれてきたあたしは、魔法少女の神様になったまどかと再会した。
それと同時に、ほむらが何度も繰り返した平行世界の中でまどかといつも一緒だった記憶も蘇ったあたしは、自然な成り行きで
まどかと同居するようになった。
 まどかの住む家は、現世でまどかのパパやママやタッくんが住む家と寸分違わぬつくりになっていて、あたしはその家で言わば
主婦業を始めた。まどかは毎日、魔力の尽きた魔法少女を迎えに出かけていく。今のまどかはすべての時間軸すべての世界を自由に
行き来できるので、毎日決まった時間に出かける必要はないのだけど、まどか曰く「毎日一人一人お迎えに行くのが大切なの」だ
という。
 そうして魔法少女の神様としてのお勤めを終えたまどかは、夕方あたしと暮らすこの家に帰ってくる。あたしの役目は、その
まどかを出迎え、一日の苦労をねぎらってやり、まどかを休ませてあげることだ。
 帰ってきたまどかを玄関で抱きしめて頭をなでてやると、まどかは笑う。その屈託のない笑みを見るとあたしも笑顔になって
しまう。そして、ここからがあたしの仕事。あたしは家ではまどかをうんと甘やかしてやる。
 まどかの靴を脱がせ、お姫様抱っこでまどかを部屋まで運ぶ。部屋で着替えを済ませた後は、居間のソファに運んで軽いお菓子と
ジュースを出し、あたしも隣に座ってまどかが今日導いた魔法少女の話を聞く。
 まど界に導かれてくる時の魔法少女は、みな大変な目に遭っている。あたしのように魔力を使い果たした子もいるし、魔獣との
戦いの中で命を落とした子もいる。敵対した魔法少女の手にかかった子もいるし、誤解されて守るべき相手の普通の人々に命を
奪われた子もいた。そんな魔法少女たちの末期の様子をソファに深く腰かけてぽつぽつと語るまどかは、いつも途中から涙声になる。
 まどかは、導いてくる相手の魔法少女たちの前では、絶対泣かないのだそうだ。「泣きたいのはあの子たちの方で、わたしは
それを受け止めてあげなくちゃいけないから」と。けれど、あたしの前ではまどかは魔法少女一人一人の境遇に涙する。そうして
彼女たちの生涯を自分の中に刻みこみ、決して忘れない。
 だから、あたしは必ずまどかの話を一から十まで聞いてあげることにしていた。時には聞いているだけでも涙が出てくる悲惨な
話もあったけれど、あたしがまどかの重荷を少しでも背負わなければ、まどかはいつかその重みにつぶされてしまう。
 今日導いた子全員分の話をし終えると、心底疲れた様子のまどかはそのまま眠りに落ちる。あたしは毛布をまどかにかけ、その
寝顔を見つめる。気が弱くて、自分に自信がなかったまどかが、苦しみながらもこうして他の誰にもできないような重大で立派な
仕事をしている。あたしは、そんなまどかを支えてあげられることが、誇りだった。
 それなのに。

 いつからか、あたしはまどかの話を聞くことを辛く感じていることに気付いた。最初は、悲惨な魔法少女たちの話を聞くのが
苦痛なのかと思ったけれど、そうじゃなかった。
 まどかは、導いてきた子一人一人を心から慈しみ、その苦しみをすべて受け止めてあげている。彼女たちの境遇を憐み、彼女たち
が生み出した呪いをも許し、受け入れている。まさに、慈母の愛と言っていい。
 あたしは、そうして導いてきた魔法少女を受け止めてあげているまどかの顔を見ると、胸が締め付けられてしょうがなかった。
そして、気づいた。
 あたしは、そのまなざしがあたし以外に向けられているのが嫌なんだ。まどかの心が、あたし以外の誰かのことでいっぱいなので、
嫉妬しているんだ。
 ああ、やっと気づいた。あたし、まどかに恋してるんだ。まどかに触れたくて、まどかに振り向いてほしくて、まどかに愛され
たくて、こんな苦しくなってるんだ。
 なんて醜い、あたしの心。それを自覚したとき、あたしは自分がなにをするべきかを悟った。

 今日、まどかが帰ってきたら、あたしの気持ちを打ち明けよう。そして、この家を出よう。
 こんな気持ちじゃ、まどかの帰る場所になんかなれない。このまままどかと一緒に暮らしても、まどかを苦しめるだけだ。あてつけ
みたいだけれど、自分の正直な気持ちを伝えて、お互いに一番苦しまない道を選ぶべきだと思うから。
 まどか、ごめんね。本当に、ごめんね。












一週間後、そこには元気な>>1乙女さやかちゃんの姿が!

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最終更新:2012年04月12日 01:45
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