90 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/04/12(木) 00:10:32.26 ID:fKlIdT480
まどっちを取り合うさやかちゃんと聞いて
ここは天国だった。
いや、既にここは魔法少女の魔法少女による魔法少女のための天国なのだが、その中でもベターもベストも一級品も至高品も兼ね備えたまさに天国の中の天国。
うなじが見えるほどの浅瀬の色した髪を左右のアシンメトリに切りそろえて、ピンクのふわふわスリッパをつっかけた足をパタパタ振って、セルリアンのどんぐりまなこをくりくりあちこちに回す、幼稚園くらいの女の子。
その横にはうなじを晒すほど短い浅瀬色の髪にボーダーのシャツ、両手首にリストバンドをつけて半ズボンを穿いた、少年と見まごうような少女。
女の子はぷくっとほっぺたを膨らせて少女をにらむと、その下にある腿の持ち主の、少女の側にある腕をぐいっと引き寄せるように握りしめてべっと舌を出した。
「おねーちゃんはしゃーかのだもん!」
「まどかはあたしと外で遊ぶって約束したからだめ!」
少女も負けじと腿と腕の持ち主……まどかの纏う、裏地に夜空をちりばめた白いドレスの裾を掴む。
「ふーんだ、いつやくそくしたの。なんじなんぷんなんびょーちきゅーがなんかいまわったとき!」
「ここは地球じゃないからそんなのまどかにだってわからないよ!それともあんたにはわかるワケ?」
既にまどかの一番知っているさやかの口調が現れている少女に、女の子は眉を歪めてう、と顔を引っ込めるも、気を取り直して言い返す。
「しゃーかはあんたにきいてるの!」
「へーぇ、自分でもまどかでもわからないのにあたしに訊くんだ?」
ふん、とまだ片鱗も見えない胸を張る少女に、女の子はぅ、と再び顔を歪めた。けれど今回は言い返す言葉がなかったらしく、う、ぅ、と絞るように繰り返す。どんぐりまなこが潤んで、
「あああっ泣いちゃダメ!」
慌ててまどかが女の子に正面を向かせ、胸に沈めて頭を撫でた。けれども間には合わなかったらしく、女の子はひっくひっくとえづきだす。
「ああっまどか!ずるい!」
怒りだしたのが少女だ。
「そいつが勝手にあたしにケンカ売っただけじゃん、なんでそいつばっかり!あたし昨日約束したのに!」
「そ、そうだけど……こんな小さい子泣くまでいじめちゃダメでしょ?」
ね?となだめるように言うまどか。少女は口をとがらせてあごを引っ込め、四つん這いになって乗っていたソファからひらりと降りた。
「……元はと言えば、まどかが約束破ったんだからね」
振り向かずに行って、そのまま駆けて行ってしまった。
取り残されたのは、まどかの胸に顔とこぶしを押し付けて泣く女の子とまどか。
まどかは女の子の頭を撫でながら、うなだれてため息をついた。
「……天国って、むずかしいなぁ」
最終更新:2012年04月25日 00:05