379 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/04/14(土) 21:34:14.02 ID:iT7RGxz20 [6/10]
最近SS書く人が少なくて淋しいなぁ…なんて思いつつ懲りずに投下。
もう 半 月 も 前 に 終わりましたがまどさやで春休みのお話です。
[春休みの憂鬱]
―志筑邸―
時計の秒針とシャーペンの音だけが響く、静寂に包まれた一室。
時折耳に入るのは紙の捲られる音。他に目立つものと言えばケーキとお菓子の残骸くらいか。
「いよっしゃぁぁぁぁ!!終わったぁぁぁ~っ!!この開放感!あたし達は自由を手に入れたのよ!」
「やったねさやかちゃんっ! 冬休みの宿題が三日で終わるなんて凄いよ!」
静寂を打ち破るまどかとさやかの歓喜による一声。
飛び上がった二人によって先程までの緊迫した空気は一瞬で砕け散った。
「これも仁美が一緒に付き合ってくれたお陰だね!」
「ありがとう仁美ちゃん!」
「あらあら。わたくしはただ一緒に自分の分を進めただけで、本当に頑張ったのはまどかさんとさやかさんですわ。」
「ねぇさやかちゃん、お勉強が無事に終わったから、その………いいよね…?」
「おっとそうだった。宿題が終わるまで我慢するって約束してたっけ。そんじゃおいで、まどか。」
この三日間、勉強に集中する為に二人はスキンシップさえも控えていたのだ。
「えへへっ、さ~やっかちゃんっ♪」ダキッ
「―――ぐぇっ…」
まどかは喜びの余り抱き付くというよりは勢いに任せて飛び付いていた。
一方さやかは一瞬苦しそうに悲鳴のようなものを上げていた…。
「…どうしたのさやかちゃん?」
「………重い。」
「」マドガーン!!
………………………………………♭♭♭………………………………………
―次の日、まどホーム前―
(タッタッタッタ…)
「やっほーまどか! 冬休みなのにランニングなんてどしたの?」
「へっ!? え、えーっとあの…ただの体力作りだよ!」
珍しくジャージ姿で自宅周辺を走っていたまどかは、遊びに来たさやかの声でようやく足を止めた。
どちらかと言うとゆる~りなタイプのまどかにしては珍しい光景である。
「うーん…あたしの嫁も自分なりに成長してるって事かぁ~。あたしも見習わないとね。
それはともかく…じゃ~ん! マミさんに教えてもらったオレンジパイ作ってみたんだ!」
「………」
遊びに来たさやかが紙袋から取り出したのはお手製のオレンジパイ。
出来立てのそれは袋から取り出した途端に甘い香りが漂って来る代物だった。
「さっき出来たばっかしだから結構美味しいと思うよ。あっ…言っとくけど味見はしたからね?」
「う…うん…ありがと………。」
「(がーん!まどかあんまし喜んでくれてない…。見た目も悪くないのに…。)」
普段のまどかなら飛び付いて喜びそうなものだが、彼女は思いの外浮かない表情だった。
むしろ甘い香りを感じて逆に落ち込んでしまったかのようだ。
………………………………………♭♭♭………………………………………
「まどか、ご飯もう食べないのかい?」
「うん…ちょっと食欲無いから…。」
まどかは父の用意した朝食も少ししか食べなかった。
―次の日、見滝原駅前―
「あらまどかさん。ランニングなんて珍しいですわね。」
「うん、ちょっと今体力作り中なの。春休みだからってゴロゴロしてるのは良くないよね。」
「え、ええ…そうですが…あまり無理はしない方がよろしいですわよ?」
「このくらい何ともないよ。それじゃ仁美ちゃん、またねー!」
たまたま駅の近くですれ違った仁美は気になっていた。まどかの顔色が思わしくない事に。
………………………………………♭♭♭………………………………………
381 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/04/14(土) 21:38:21.20 ID:iT7RGxz20 [7/10]
「まどか、本当にパン一枚だけでいいのかい? 朝はちゃんと食べなきゃ駄目だよ?」
「うん、心配しないでパパ。わたしはいつも元気だよっ♪」
―次の日、公園前―
「こんにちわさやかさん。お買い物の帰りですの?」
「うん、そんなトコだよ。まどかはまたランニングか。しっかしよく飽きないねー…。」
「…まどかさん、何だか顔色がよろしくない気がするのですが…。」
「えっ…!?」
仁美に指摘されてからさやかも気付いたが、まどかは確かに顔色が思わしくなかった。
元々体力がある方ではないが、それとは関係無く明らかに体調が悪いのを無理している感じだった。
「おーいまどかー、あんまり無理するんじゃないわよー!」
さやかの声に気付いていないのかまどかは反応無く公園の近くを走り去ってゆく。
だが足元がふらふらとしていて覚束ない。しばらくすると案の定倒れてしまいそうになった。
「―――まどかっ!!」ガシッ
………
………………………
「あ、気が付いた。」
「………あれ…さやかちゃん…?」
「まどかさん!大丈夫ですの!?」
まどかは倒れる寸前、心配して駆け寄っていたさやかに抱きとめられていたのだ。
目を開けたまどかの視界には親友二人が心配そうに覗き込んでいた。
「ほら、これでも食べなさい。」
さやかが顔色の悪いまどかにと懐から差し出したのはチロ○チョコ(いちごみるく)。
「うっ…。お、お腹空いてないからいらないよぉ…。」
しかしまどかは物欲しそうな顔をしながらも頑なに拒否する。
強情なまどかに何とか食べさせるべくさやかは………チョコを何故か自分の口に含んだ。
「…さやかさん…?」
一瞬目が点になった仁美だがすぐにさやかの行動を納得した。
さやかはチョコを口に含んだ後素早くまどかの唇に自分のそれを重ねたのだ。
「―――むぐぅっ!???」
「…んむむむ…!」
まどかが動揺した隙にさやかは舌でチョコをまどかの口へと移動させる。
食べさせるだけなのに何故この手段を選んだのかはさやか自身も理解らなかったが一応目的は達した。
「…んんっ…!」ゴックン
「まぁ!さやかさんったら大胆ですのね~♪」
頬に手を当てて大喜びする仁美。周りに人がいたらたぶん二人より仁美に注目していそうだ。
さやかの方も自分からやっておきながら顔はリンゴの様に真っ赤だった。
「ふぅ…これでとりあえず最低限の栄養は何とかなったっしょ。」
「何するのさやかちゃん!? やっと体重下がってきたのにー!」
「下がってきた…?」
「あっ…!」
(ぐぅぅぅ~…)
同時にまどかのお腹から発せられた音でさやかと仁美は状況をはっきりと把握した。
「はっはーん…なる程ねぇ。」
「でもまどかさん、そういうのは無理にするとお身体によろしくありませんわよ?」
「ち、違うよぉ!」
顔を真っ赤にしながら必死に否定するまどか。慌てる程にバレバレになるのが如何にも彼女らしい反応だ。
「お腹空いてるんでしょ? 何か作るよ。」
「だ、だから違っ…―――」
(ぐぎゅぅぅぅ~…!)
最後の抵抗も虚しく、まどかの言葉は自身の空腹の知らせによって遮られた。
「ううっ…うわぁぁぁん!!」ダッ
「あ!こらっ!」
逃げ出すまどかを咄嗟に両腕で捕まえるさやか。
「離してよぉー!太ったわたしなんてぎゅってされたくないよー!」ジタバタ
「…バスト1.5cmアップってトコかな。」
「ふぇっ…!?」
382 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/04/14(土) 21:39:46.18 ID:iT7RGxz20 [8/10]
さやかに具体的な数字を発せられてまどかはピタりと抵抗を止めた。
「まどかさんもしかして…重いと言われただけで、ご自身が太ったと思い込んでませんか?」
「あんたねぇ、身体が成長すりゃ体重増えるに決まってんでしょ。
身長だって、胸だって…変にダイエットとかしてこの歳で止まったらそれこそ真っ青じゃん。」
要するにさやかがまどかを重いと感じたのは、身体の成長に伴う体重の増加だったのだ。
年頃の少年少女にとってごく当たり前の事である。
「えへっ…。わたしもちゃんと大きくなってるのかな?」
まどかも嬉しそうに手を握り返しながら、さやかの手の甲を自分の頬にスリスリしていた。
「いつも抱きしめるさやかさんがおっしゃるのですから間違いないですわ。」
「そゆ事。まどか、何が食べたい?」
「エビさんがたくさん入ったグラタンが食べたいなっ♪」
「そんじゃ、さやかちゃんが腕に縒りを掛けて作っちゃいますよ!」
「わたくしもお手伝い致しますわ。この季節ですから、エビと春野菜のマカロニグラタンなんで如何でしょうか。」
「…仁美ちゃん…それって…ピーマンは入ってないよね…?」
「ふふっ、それはさやかさん次第ですわね?」チラッ
「あんたがメインで食べるんだから嫌いな物入れてどうすんのよ。」
「あっ、ねぇねぇさやかちゃん。この前のオレンジパイももう一回作ってくれないかな…?」
「あー…理解った理解った。
「わーい!さやかちゃん大好き♪」
幸いにも今三人がいる場所はさやかの自宅に近い場所。
お腹を空かせたまどかの要望に添うべく再び買い物をし直し、美樹家へと向かうのだった。
くれぐれも成長期のダイエットは程々にしましょう。
[春休みの憂鬱]
おしまい。
流れをぶった斬ったぽくてすみません。
最終更新:2012年04月25日 00:12