30-954

954 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/05/30(水) 19:38:32.02 ID:iztdR5BP0 [3/4]
今日は日本で一番大きい観覧車にさやかちゃんと二人で乗る事になりました。
ゴンドラの中は広くて、向かい合って座ると随分離れてしまいます。
「ねぇさやかちゃん、隣りに座ってもいい?」
「え?別にいいけど?」
「…よいしょっと」(ガタン)
「―――うわぁぁぁぁっ!!」
わたしが立ち上がるとゴンドラが少し揺れました。
でもわたしはそれ以上にさやかちゃんの悲鳴に対して驚いてしまいます。
「…さ、さやかちゃん…?」
「い、いやぁ…急に揺れたからビックリしちゃいましたよ!」
そう言いながら慌てて誤魔化すみたいに明るい笑顔を見せるさやかちゃん。
でも隣りに座るったわたしはある事に気付いてしまいました。
よく見るとさやかちゃんの肩がカタカタと震えているのです。
「あっ!見て見てさやかちゃん!景色凄いよー!」(グラッ)
それでもやっぱり景色が気になったわたしは思わず立ち上がっていました。
「ひぇぇぇぇぇっ!ま…まどか動かないで!揺れるからー!!」
「………さやかちゃん…? もしかして…高いトコ苦手…?」
「…うぐっ…!」
さやかちゃんは呻き声みたいなのを上げて黙り込んでしました。
胸元で拳を握って怯えながらちょっと恥ずかしそうにするさやかちゃん。
普段のかっこいいさやかちゃんとはまた違った可愛らしい一面なのです。
「でもさやかちゃん、魔法少女に変身してる時は空飛んだりしたよね…?」
「あ、あれは自分で飛ぶから大丈夫なのよっ!!」(グラァ...)
必死に抗議するさやかちゃんですが、無意識に立ち上がった事でまたゴンドラが揺れました。
「ひゃぁぁぁ!!」(フラッ)
「わわっ!さやかちゃん!!」(ガシッ)
わたしは反射的に、転びそうになったさやかちゃんを抱きとめていました。
完全に勢いは止められませんでしたが、そのままわたし達はストンと座席へと落ち着きます。
「ごめんねさやかちゃん…。わたしが観覧車乗りたいなんて言うから…。」
「…こ…これなら…揺れても…平気かな…。」
「えっ? …あ……///」
身体がぴったりとくっついてしまい、さやかちゃんの温もりと心臓の鼓動がわたしに伝わって来ます。
暫くわたし達は体温を感じ合いながら無言のまま、ゴンドラだけが頂上へと動いてゆくのでした。

………(ガコン!)
「ふぇ…??? 観覧車、止まっちゃったよぉ…。」
信じられない事に、何とゴンドラは急に頂上付近で止まってしまったのです。
その直後にスピーカーからアナウンスが流れ始めました。
『お客様方に申し上げます。ただいま電源にトラブルが発生した為に観覧車は緊急停止致しました。
安全の為現在確認を行っております。お客様方は動かず暫くの間お待ちくださいませ。』
「なっ…何よそれ…。何でよりに寄ってこんなトコで止まんのよ…。」
「大丈夫だよさやかちゃん。少ししたら動くみたいだよ。」
「…そうかな…?」(ジワァ)
「うん。それに、わたし達二人一緒だから怖くなんてないよ。」(ニコッ)
「まどか…へへっ…!」
ちょっと涙目な可愛いさやかちゃんを宥めてあげたかくて、
精一杯の笑顔を向けるとさやかちゃんも釣られて笑顔を見せてくれました。
ただ…やっぱりわたしは外の様子が気になってしまいます。
窓を覗き込むくらいなら大丈夫かな、と思って身体の向きを変えました。
「下で何やってるのかなぁ…。」(グラッ)
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「わわっ…!ごめんさやかちゃん!」
「もうやだよぉぉぉ!降ろしてぇぇぇぇ…!!」(ポロポロ)
さやかちゃんは遂に泣き出してしまいました。
せっかく元気になってくれたのに不注意で思いっきりぶり返してしまったみたいです…。

955 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/05/30(水) 19:39:19.35 ID:iztdR5BP0 [4/4]
「ほ、ほらぁ…外がいい眺めだよ~。」
わたしは何とか気を紛らわせてあげる為に一緒に下を見ようと声を掛けました。
でもそれはさやかちゃんにとって逆効果だったみたいです…。
「………。」(カタカタカタ...)
「さやかちゃん…?」
確かに泣き止んでくれたけどさやかちゃんは無言で顔が真っ青になってしまいました。
というか…よく考えてみたら高い所が苦手な人にその景色を見せても意味ないよね…
「あわわわわ…えと…あのっ…そのぉ…そうだ!楽しいお話でもしようよ!
 えーっとねー、この前食べたメロンのケーキが綺麗で美味しくて…」
でも全然聴いてくれないさやかちゃん。
さやかちゃんは声を上げこそしませんが、目に涙を浮かべて震え続けるばかりです。
せっかく遊びに来たのに怖い思いをしてばかりなんて、こんなあんまりだよ…。
わたしはあたふたしながら自分に出来る事をひたすら考えていました。
「(ど、どうしよう…そうだ!)」
(ちゅっ)
「―――!??? ま、まどか…!?///」
「えへー…///」
突然のキスは効果覿面でした。それもほっぺではなくて唇へなのです。
さっきまで怖い思いをしていた事なんて忘れたみたいにわたしを見つめるさやかちゃん。
目に涙を浮かべたままだからでしょうか。
ほっぺが赤くちょっと頼りない様子のさやかちゃんは、とても女の子らしくて可愛いのです。
―――(ガタン!)
「ひぃっ…っ!!」(ギュッ!)
「あっ、動き出したよー。」
復旧した観覧車がもう一度揺れて、さやかちゃんの両腕が強くわたしを抱き締めました。
その後も大きく揺れたりはしない筈なのに、さやかちゃんの身体はわたしから一時も離れません。
「さやかちゃん…まだ怖い…?」
「ううん…何ていうか…もうちょっと…こうしてたい気分かな…。
高い所は苦手なさやかちゃんですが、どうやらくっついていれば平気みたいです。
「さやかちゃん…今日はごめんね。」
わたしはお詫びの意味も込めて、さやかちゃんの涙の跡を唇で拭ってあげました。
「わひゃぁっ…!? たはは…。あたしこそ…今日はなんかカッコ悪いトコばっか見せちゃったな…。」
「わたしはさやかちゃんの可愛い所だって好きだよ…?」
「ぅぅっ…///」
わたし達はそのまま肩を寄せ合いながら残りの景色を楽しみました。
さやかちゃんの暖かさも匂いも、少し残る不安が生み出す心臓の高鳴りでさえも、わたしは心地良く感じてしまうのでした。

………………♭♭♭………………

「また一緒に観覧車乗ろうね。」
「絶対やだっ!」
「ええ~!?どうしてー!?」
「まどか何回も揺らすんだもん!もう二度と乗んないから!!」
「じゃぁ…手繋いでぎゅっとしててあげるから、それなら駄目かな…?」
「…それだったら…我慢できる…かも…。」
帰り道、さやかちゃんは躊躇いながらも上目遣いでまた来る約束をしてくれました。
それはわたしだけが知ってる可愛いさやかちゃんの一面なのです。

おしまい。可愛いかは正直微妙ですが…失礼しました。
そもそも観覧車ってそんなに揺れないですよね。たぶん。

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最終更新:2012年05月31日 13:10
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