3 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2012/06/10(日) 18:09:10.58 ID:W7EDlWozO
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/8286/1333201004/90-92
>>1乙
90 :名無しさん@まどっち :2012/06/10(日) 17:59:53 ID:lwpHTp5Q0
「つまりあんたもまどかなんだ?」
「そうだよー」
「で、えーとなに? さっきのやつみたいな魔女を倒して宇宙の寿命を伸ばす魔法少女ってのがいて、そっちの転校生もマミさんもそれだと」
「うん」
「それでまどかも契約して、因果がいっぱいあったから魔法少女の神様になれて、力尽きた魔法少女を導きすべての魔女を倒す存在になったと」
「そうそう!」
「それで、へ、平行世界だっけ? あんたはその一つからこの世界にやってきて……」
「そんなことよりも……」
もう一人のわたしとさやかちゃんが話しているのをさえぎって口を開くと、二人がわたしの方を向きました。
「なに? まどか」
「なに? じゃないよ! なんであなたがさやかちゃんのお膝に座ってるの!? そこはわたしの特等席なのにぃ!」
そうなのです。わたしたちは立ち入り禁止になっていたビルの区画を出て、デパートの一角にあるベンチに並んで座っているのですが、
さやかちゃんが腰を下ろすと、もう一人のわたしはさも当然のことであるかのようにさやかちゃんのお膝の上に乗ったのです。そして、
さやかちゃんも最初こそちょっと戸惑っていましたが、すぐにわたしにするときと同じようにもう一人のわたしの腰を抱きかかえて
落ち着いてしまったのです。
「そうだよ。さやかちゃんのお膝はまどかの特等席! だからわたしはここに座ってるの!」
「そうじゃなくて、そこはわたしの……っ!」
得意気に言うもう一人のわたしに言い返そうにも、二人とも鹿目まどかなのだからどうにもならなくて、わたしはもどかしい思いをしていました。
そんなわたしを見て、もう一人のわたしはまたちょっぴり意地悪そうに笑いました。それがまた腹立たしくて、わたしはさやかちゃんに
八つ当たりしてしまいます。
「さ、さやかちゃんもさやかちゃんだよ! そんな、お膝に乗せてくれるなんて、わたし以外にはしてくれたことないくせに!」
「や、でもさ、この程よい重さとか抱き心地とか、まどかを乗っけてる時と全然変わらなくてさ。こっちのまどかの話はまだうまく飲み込めてないんだけど、
この子は間違いなくまどかだよ。それは確信を持って言える」
「えへへっ! さっすがさやかちゃん!」
もう一人のわたしの頭を撫でながら言うさやかちゃんの言葉に、もう一人のわたしが嬉しそうに笑います。さやかちゃんが言うのなら、
この子がまどかなのは確かなことなのでしょう。けれど、そんなことよりもわたしは、さやかちゃんがわたしにしかしてくれないはずのことを
もう一人のわたしにしているのを見て、なんだかさやかちゃんを取られてしまったような気持ちになっていました。
91 :名無しさん@まどっち :2012/06/10(日) 18:00:29 ID:lwpHTp5Q0
わたしに構わず目の前でいちゃいちゃしている二人をにらんでいると、横から別の声がしました。
「あの、ちょっといいかしら?」
それは、先ほどの化け物たちが消えた後に現れた二人の魔法少女。一人は今日わたしたちの見滝原中に転校してきたばかりの暁美ほむらちゃん。
もう一人は同じく見滝原中の三年生の巴マミさんでした。
化け物を一掃した後、さやかちゃんにひっついていたもう一人のわたしは、二人が現れると同時にすっ飛んで行き、二人を抱きしめて
「よかった、また会えたね!」と喜んでいました。マミさんの方はもう一人のわたしに見覚えはない様子でしたが、ほむらちゃんは
目の前で何が起こっているのかわからないような呆然とした顔をしていました。その後みんなで場所を移動したとき、その二人を引っ張ってきたのももう一人のわたしです。
ほむらちゃんはベンチに座り込んだままずっと「どうして? こんなこと、今まで一度も……」などとぶつぶつ言っていて、いま口を開いたのはマミさんの方でした。
「あなたが魔法少女の神様だということは魔力でなんとなくわかるわ。それで、元の平行世界で私と知り合いだったのよね?」
「そうですよ。知り合いっていうか、マミさんはわたしやほむらちゃんの魔法少女の先輩だったんです! そうだよね? ほむらちゃん」
急に声をかけられたほむらちゃんは、びくっと体を震わせてわたしたちの方を向きました。
「え、ええ……。私の能力で今まで何度も時間を巻き戻していて……過去の平行世界で魔法少女になりたての頃は、巴さんに魔法の使い方を教えてもらいました」
「そうなの……普通ならなんだかにわかには信じがたい話なのだけど、なんだか不思議と違和感はないのよね……」
マミさんはしきりにうんうんと頷いています。ほむらちゃんはそんなマミさんをぼんやりと見ていましたが、急にはっと気づいたようにもう一人のわたしに尋ねました。
「それより、まどかが概念になったというのは、どういうことなの? まどかは契約してワルプルギスの夜を倒してしまったら最後……」
「ううん。それは大丈夫。わたしは『すべての魔女を生まれる前に消し去りたい』という願いで魔法少女になったから。つまり、わたしも、なの。どういうことか、わかるよね?」
「ええ。わかるわ……そうなのね……。結局あなたのいた世界では、私はまどかを救えなかったのね……」
「そんなことないよ。わたしはこれでよかったんだって思ってる。こうして、またほむらちゃんにも会えたんだしね?」
「まどか……」
もう一人のわたしとほむらちゃんが話し込んでいる間、わたしはすっかり蚊帳の外でした。何の話をしているのかわかるようでわからないし、
二人ともそのことをわたしたちに説明してくれるつもりもないようです。
所在がないのでわたしはふとさやかちゃんの方に顔を向けました。そのさやかちゃんは、なんだか難しい顔をして考え事をしているようです。
普段滅多にしないような真剣な表情のさやかちゃんを見ているとなんだか胸のあたりがきゅうっとなってドキドキしてきますが、
同時に腹も立ってきました。なぜなら、さやかちゃんはそんな考え事の最中にも無意識の行動なのかもう一人のわたしの頭を撫でる手を止めていなかったからです。
わたしが抗議の声を上げようと思った瞬間、それより先にさやかちゃんが口を開きました。
「ねえ、その魔法少女ってさ、魔女と戦う代わりに何でもひとつ望みを叶えてもらえるんだよね? だったらさ」
「だめ」
さやかちゃんが話している途中でもう一人のわたしが鋭く言い放ちました。
「えっ、だめって、なにが? あたしはその、誰かのケガを治してっていう願いでも叶えてもらえるのかなって……」
「だから、それはだめ! さやかちゃんは絶対に契約しちゃだめなの!」
もう一人のわたしが、さやかちゃんの膝から降りてさやかちゃんの目の前に仁王立ちになりました。さっきまで上機嫌だったその表情は、
真剣そのもので他人が異議を唱えることを許さないかのような迫力に満ちていました。気圧されながらもさやかちゃんが反駁します。
「な、なんでよ? 何か資格とか、そういうのがいるわけ?」
「そうじゃないよ。そうじゃ……」
「じゃあ、なんでよ?」
「それは……」
92 :名無しさん@まどっち :2012/06/10(日) 18:03:42 ID:lwpHTp5Q0
もう一人のわたしは、両手をきつく握りしめ唇を噛んで立ち尽くしていました。マミさんもほむらちゃんも口出しをしかねているような表情をしています。
特にほむらちゃんは苦々しい記憶を噛みしめるような顔をしていました。そしてなおもさやかちゃんはもう一人のわたしに問い続けます。
「ねえ、どうしてよ。あたしさ、自分の事じゃなくて、その、知り合いのことでちょっと考えてることあって、そいつのために願い事を使えたらって……」
さやかちゃんが言うのは、もちろん上条君の事でしょう。天才バイオリニストとして将来を嘱望されながら、事故で永遠にその腕前を失ってしまった
さやかちゃんの幼馴染の男の子。本人は隠しているつもりですが、さやかちゃんは上条君のことが好きなのです。そのことを思うと、
わたしはとても息苦しいような、切ないようなそんな気持ちになります。
わたしが胸の痛みをこらえていると、さらに何か言おうとしたさやかちゃんを制して、もう一人のわたしが重々しく口を開きました。
「……あのね、さやかちゃんが魔法少女になっちゃいけないのはね」
「うん」
「わたしがね」
「うん」
「さやかちゃんのお嫁さんになるためだよ!」
「……は?」
「だから、わたしは神様の力でさやかちゃんを連れてって、さやかちゃんと結婚するの!」
もう一人のわたしが満面の笑みで言い放った言葉に、わたしの頭は完全にパニック状態になっていました。さやかちゃんを含め、
マミさんもほむらちゃんもみんなあんぐりと口を開けています。そんな状態から、真っ先に復帰したのは珍しくわたしでした。
「ななななに言ってるのっ!? あなたには、元の世界のさやかちゃんがいるんでしょう!?」
「さやかちゃんは何人いてもいいんだもーん! そのためにわたしはこの世界に来たんだよ!」
「なっ、なっ、なっ……」
今度こそ、わたしは開いた口がふさがりませんでした。あろうことか、もう一人のわたしはいろんな平行世界からさやかちゃんを集めてきて、
さやかちゃんハーレムを作るつもりなのです。なんてうらやましいじゃなかったけしからないことを考えるのでしょう。
わたしが何も言えないでいると、おずおずとほむらちゃんが口を開きました。
「あの、まどかは魔法少女の神様なのでしょう? 魔法少女以外を連れて行くなんて、できるの?」
「えへへ、それがね! さやかちゃんだけは特別なの!契約してなくてもさやかちゃんだけはわたしの力で連れて行けるんだよ!」
「ええーっ!? なによそれぇ!?」
「じゃあ、行こっか♪」
もう一人のわたしがさやかちゃんの手を取ります。さやかちゃんはまだ呆然としていて、抵抗らしい抵抗もしませんでした。
それを見てわたしははっと我に返り、さやかちゃんのあいてる方の手をつかみました。
「ちょっとぉ、邪魔しないでよぉ!」
「だめーっ! さやかちゃんを連れて行くなんて、絶対にだめーっ!」
「えっ、えっ、ちょっと、なにこれあたしどうすればいいのぉ!?」
わたしともう一人のわたしのさやかちゃんのひっぱりっこは、それから小一時間続きました。
キュゥべえの出番が全くなかったところで続きます
言い忘れたけど本スレの前スレ>>3の続きです
規制されてるとなかなか続きを書く気が起きなくて困る
最終更新:2012年06月24日 00:29