491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/17(日) 11:07:48.51 ID:iBlrBHpv0
ちょっと久し振りにお話を。ネタは割とあるんですが時間が…orz
[恋する香り]
「ま~どかっ!」
「わわっ!?えへへ…おはようさやかちゃん!」
いつも通りの朝の通学路、わたしの後ろからさやかちゃんが元気良く抱き付いて来ます。
毎日こうしてスキンスップを取っているからでしょうか、わたしはさやかちゃんのいつもと違う所にすぐ気付きました。
「あれ…? さやかちゃん、何だか甘い匂いがするね?」
密着したさやかちゃんからはオレンジの様な甘い香りが薄っすらと感じられたのです。
それでいて濃過ぎない程度に抑えられていてとても爽やかで心地良いです。
「へっへー、まどか気付いてくれた?」
その言葉を待っていたみたいにさやかちゃんの笑みが顔一杯に広がります。
何だかわたしの為にこの匂いを…っていうのはちょっと考え過ぎだよね…。
「お早うございますさやかさん。シトラス系の香水ですわね。」
「お早う。そういえばさやか、最近髪を少し伸ばし始めたの?」
仁美ちゃんとほむらちゃんが合流して、二人も早速さやかちゃんの香りに気付いたみたい。
ほむらちゃんに言われて気付いたけど、最近確かに肩に届く辺りだったさやかちゃんの髪は、襟を覆う辺りまで降りて来ていました。
「髪はそうだねぇ…出来たらあたしもほむらくらいまで伸ばしてみたいんだけどなぁ…。」
「ふふっ。女の子らしくするのは良い事だと思うけど、ちゃんと髪のケアはしなきゃ駄目よ?」
「うっ…理解ってますよー!」
一番長い髪でそういうのにも慣れてそうなほむらちゃんが気遣いつつ少し悪戯っぽく言います。
腰くらいまで髪の伸びたさやかちゃんを想像してみると…
「あ、そだ。まどかはさ…どう思う…?」
「ふぇ!? わたしはロングヘアーで美人なさやかちゃんもいいかなって思うよ?」
「へへ、流石あたしの嫁だ~♪ 美人はちょっと言い過ぎだけどねー。」
再びわたしを抱きしめてほっぺとほっぺをスリスリしてくれるさやかちゃん。
いつものなでなで以上に距離が近い気がして、実は密かにわたしの心臓が飛び跳ねてたりするのは内緒です。
「あっ…さやかちゃん!ヘアピンもいつもと違うのになってるー!」
最後に気付いたのですが、何とさやかちゃんのトレードマークであるヘアピンも新しくなっていました。
いつもの一対のゴールドのものではなく、先端が華の形になっているピンクゴールドのヘアピンです。
「ん?これはね、まどかが前にリボンの色変えたじゃん? あたしも軽くイメチェンって感じでさー。」
香水の匂いと相まって今日はちょっと雰囲気が違うさやかちゃん。それでもいつものさやかちゃんには変わりないのですが。
「さやかさん。淑やかな女性になるには、外見だけでなく内面も磨かなかればなりませんのよ?」
「うぐっ…それを言われると痛いっす…。」
「身の回りの手入れさえきちんとすればあとは個性じゃないかしら? さやかがさやかでなくなったらまどかも嬉しくは無いと思うし…。」
「確かにそうかもしれませんわね。さやかさんだからこそまどかさんは…~」
さやかちゃんのイメチェンを今日の雑談にしながらわたし達は学校へと向かうのでした。
492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/17(日) 11:08:50.68 ID:iBlrBHpv0
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
更衣室で体育の着替えの時わたしはさやかちゃんに見入ってしまいました。だって……
「…さやかちゃん…その下着…凄く大人っぽいよ…///」ポー
「ふっふっふ ちょっと挑戦してみたんだー。どうかなっ?」
わたしの前にはブルーのフリフリしたレースの下着を身に着けたさやかちゃんの姿が。
しかもウインクなんてして来るからわたしはつい凝視せずにはいられません。
「あっ、ご、ごめんね! さやかちゃんってスタイルいいから似合うよね…。」
慌てて目を逸らしながらわたしは誤魔化そうとしました。でもさやかちゃんは気にも留めないで距離を近付けて来るのです。
「そんな遠慮しなくても減るもんじゃないぞー。うりうりっ♪」
「―――ひゃぁぁぁっ…!///」
ふにゅんと柔らかいさやかちゃんの…その…膨らみがわたしに触れて…でもさやかちゃん自身も少し顔を赤らめていました。
そんな中、遠目で仁美ちゃんとほむらちゃんがヒソヒソ話をこっそり始めたみたいです。
「(今日のさやか、一体どうしたのかしら…? 香水に新しいヘアピン、まるで好きな人でも出来たみたいね…。)」
「(間違いありませんわね。何というか…恭介君の時以上に張り切っている感じですが…。)」
「(それにしてはまどかには随分と大胆ね。しかも妙に顔を赤くしてるのが……―――!!)」
「(もしかしてさやかさん…。)」
「(成る程…、新しいヘアピンの色と形の意味が納得出来たわ。)」
「(あの香水も恐らくまどかさんの好きそうな甘めの香りを選ばれたのですわ。)」
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「ええっ!? さやかちゃんに好きなひ…」
「まどか!声が大きいわ!」
「あうう…ごめんなさい…。でも…そっか…。応援しなきゃ…駄目だよね…。」シュン
さやかちゃんに新しく好きな人が出来た…それを聞いてわたしは思わず俯いていました。
上条君への恋が叶わなかったさやかちゃんの新しい恋。いつかはその時は来るって覚悟していたのに…。
「…まどかさん。新しいヘアピンが何故あのお色かお気付きになりませんの?」
「え…? うーん…ピンクだから"恋してる人"っ"感じだよね…。」
わたしを見ながら何故か軽く溜息を吐く仁美ちゃん。続いてほむらちゃんがわたしに問い掛けます。
「ねぇまどか。何故さやかがいの一番にあの香水の匂いで貴女に抱き付いて来たと思う」
「ふぇ? さやかちゃんはいつもわたしをギュッってしてくれるけど…。」
「…だから、その…貴女は彼女の匂いをどう感じたの?」
「いい匂いだなって思うよ。わたしとさやかちゃん音楽以外は凄く趣味が合うから。」
「「………はぁっ…。」」
今度は仁美ちゃんとほむらちゃん二人揃って大きな溜息。わたし…何か変かな…???
「まどかさん。それではさやかさんに直接お訊ねしては如何でしょうか?」
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
―帰り道―
「さやかちゃん。あ、あのね…聞いてみたい事が…あるんだけど…。」
「どしたのまどか?急に畏まちゃって。」
体育もあって今は既に放課後なのにさやかちゃんからは朝を同じ仄かな香りが漂っています。
帰る前にもう一度香水を付け直したのかな…。そんなさやかちゃんを前に、わたしは意を決して訊ねました。
「さやかちゃんって…その…また好きな人が出来たの…かな…?」
「んー…? へへー、まあねっ!」
さやかちゃんは一瞬戸惑う様な、でも明るい笑顔を向けて正直にYESの答えをくれます。
その顔を見てわたしは心がズキッと痛みながらも、さやかちゃんに心配を掛けたくないから…精一杯の笑顔でいる事にしました。
「今日のさやかちゃん何だか大人っぽいんだもん。えへへ、今度は誰なのかな?」
「………っ!! ………………。」
所が、さやかちゃんは急に神妙な顔つきに変わって黙り込んでしまいました。
何故かわたしの顔を見つめながら…その眼は幽かに震えてるみたいで…。
「さやかちゃん、どうしたの…?」
「………鈍感っ…。」
「えっ…???」
心の奥深くで呟いたみたいに、さやかちゃんは押し殺しながらも強く言いました。
一瞬の出来事をすぐに理解出来ず、わたしは唯々目をぱちくりさせてばかりです。
さやかちゃんは真っ赤な顔に少し涙を浮かべながら背を向けて走り去ってしまいました。
493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/17(日) 11:09:24.90 ID:iBlrBHpv0
「………あ、あれぇ…?」
わたしが鈍感…えっと…それはつまり、さやかちゃんに好きな人が出来た事に気付くのが遅くて…。
でも好きな人は誰って聞いたら、今度は照れるんじゃなくてちょっと泣きそうで怒られて…。うーん、それってそれって…
「わ…わたし…!??? そんな筈ない、そんな筈ないよぉ~…」ワタワタ
頭の中がぐるぐると混乱したままで…でももしさやかちゃんがわたしを好きになってくれたとしたら…。
都合が良過ぎる考えな気がするけど、それだと今までの辻褄が合うのはどうしてかなぁ…。
「あうー…そ、そんなぁ…嬉しいよぉ…♪ で、でもでも…わたしなんかが…」
期待が外れるのが恐くて否定しようとしたけどやっぱりわたしみたいで…顔が耳まで熱くなって来るのを感じていました。
「ふええええええええ~っ!!??」
「(直接言えないさやかもあれだけど、まどかの鈍さもどうかと思うわ…。)」
「(でもとりあえずまどかさんは気付いたみたいですし…これから良い方向に向かうのではないでしょうか。)」
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
「………ぅぐっ…」
夕焼けが差し込む河川敷の斜面。そこにはさやかちゃんらしき影が一人で座り込んでいました。
「あたし…馬鹿みたいじゃん…勝手に突っ走って…おまけに一人で舞い上がちゃって…。
そりゃ恭介の時だって振り向いて貰えない筈だよね…。相手の事なんて何も考えないで…唯の自己満足じゃん…。」
袖で顔を拭うとさやかちゃんは立ち上がると、ヘアピンを外して左手に握り締めたのです。
「(こんなあたしに…人を好きになる資格なんか…。)」
河川に向かって腕を大きく振り上げるさやかちゃん…。わたしは声が届く事だけを祈りながら全力で走っていました。
「―――駄目ぇ~っ!!」
わたしは息が切れそうなのも構わず精一杯叫びました。それに気付き思わず動きを止めるさやかちゃん。
追い付いたわたしはまず告白の言葉よりも先にさやかちゃんを抱きしめます。
「ひゃっ!? ま、まどか…?」
「あ、あのね…わたし鈍くて…ごめんなさい…!」
「あっ…! あ、あたしこそ…なんつーか…その…意地ばっか張ってて…ごめん…。」
「さやかちゃんの気持ち、とってもとっても嬉しいなって♪ まさか好きな人がわたしだなんて思いもしなかったから…。」
「ぁっ……///」
「えへへっ♪///」
気持ちの通じ合ったわたし達は、真正面から向かい合うと不思議なくらい簡単に仲直りしていました。
二人の心はずっと前から近くにあったのに、今まで悩んでいた事に呆れてしまいそうです。
「だから、はい。」
さやかちゃんの手から受け取ったローズピンクのヘアピンを、もう一度さやかちゃんに着けてあげました。
「あのさ、今更なんだけど…変じゃない…かな…?」
「とっても似合ってるよ。ヘアピンも香水も、さやかちゃんの伸ばした髪も。」
気持ちが通じ合った後は暫くの間ちょっときごちなくて、どうしても会話が途絶えがちです。
目を逸らしながら手を繋ぐ帰り道は香水でも涙でもなく、恋の香りがしました。
[恋する香り]
おしまい。
最終更新:2012年06月24日 00:46