6 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2012/05/07(月) 22:01:15.13 ID:og+2XW7RO
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/8286/1333201004/59-63
>>1乙
59 :名無しさん@まどっち :2012/05/07(月) 21:39:14 ID:7IpEV4ug0
○月×日
あたしは、見滝原に帰ってきた。といっても本物の見滝原ではなく、まどかが作った魔法少女と魔女だけのための天国。
現世で魔力を使い果たして力尽きたあたしは、まどかの手でこのまど界に導かれてきた。
まどかはあたしのために新しい住まいを用意してくれ、あたしはここでゆっくり休めることになった。必要なものは
まどかの分霊に頼めば何でも揃えてもらえるし、なにをして過ごしてもいいという。
あまりに至れり尽くせりで、正直自分が死んだって実感もわかない。なんとなしに聞いていた円環の神様が、実はあたしの
大親友のまどかだったってことにも驚いてる。なんだか混乱してるけど、とても疲れてるし、今はゆっくり休ませてもらおう。
○月×日
それにしても、まどかはすごい子だ。あたしも含めたすべての魔法少女と魔女を救うために宇宙の法則すら書き換えて
しまうなんて。その上ここまど界に導かれてきたあたしたちの生活は快適そのもので、まどかに救われた子はみんな口々に
まどかに感謝していると言う。
確かに魔法少女や魔女のなかにもいろいろ言う子はいるし、まどか自身も家族や友達と一生離れ離れになってしまったことは
あたしもあんまりだと思ったけど、まどかはそういうのも全部ひっくるめて心を決め、あたしたちを救ってくれた。本当に、
優しい子。あたしは、あの子の友達でいられたことを誇りに思うよ。
○月×日
まど界での生活にも慣れて、ふと恭介や仁美は何してるかなあって気になって、渋るまどかを拝み倒して現世の映像を見せて
もらった。そうして現世の恭介が普段通りの生活を送っているのを目にした瞬間、あたしは気づいてしまった。
あたしは、もう死んでしまったんだということ。もうお母さんにもお父さんにも、恭介にも仁美にも、マミさんにもほむら
にも杏子にも会えないってこと。
今更実感したその事実に打ちのめされて、涙が止まらない。辛くて悲しくて、たまらない。戻れるものなら、あの場所に
戻りたい。誰か、助けて。
○月×日
あたしを心配して、まどかは毎日様子を見に来てくれている。なのに、そんなまどかにあたしは当り散らしてしまった。
まどかは自分を犠牲にしてまであたしたちを救ってくれたのに、あたし、最低だ。
全部納得したつもりで自分をごまかしていたあたしも、そのくせ実は全然納得していなかったあたしも、そのことを誰かの
せいにしたがっているあたしも、嫌で嫌でたまらない。本当に消えてなくなってしまえればいいのに。
○月×日
今日から、まどかの家でまどかと一緒に暮らすことになった。自分の弱さをまどかにぶつけてしまわずにはいられないあたし
なんかと一緒にいたって、まどかには苦痛にしかならないはずなのに、無理やり連れてこられてしまった。
まどかのいないうちに逃げ出そうとしても、すぐ分霊に見つかって連れ戻されてしまう。どうしてよ、どうしてあたしなんかに
構うのよ。もう、放っておいてよ。
○月×日
まどかは、毎日あたしの泣き言を聞いてくれる。いつまでだってあたしの背中をさすって慰めてくれる。
それに甘えてしまっているあたしが嫌だ。まどかの優しさを素直に受け入れられないあたしが嫌だ。もう、なにもする気力が
ないよ。
*
○月×日
今日、久しぶりに笑った。まどかの「ええ!? 『一日一膳』って『ご飯があればその日一日大丈夫』って意味じゃないの!?」
という言葉に、自然にふふっと笑みがこぼれた。まどかもあたしも驚いてた。
いつ以来だろ、笑うのなんて。あたし、まだ笑えたんだ。
60 :名無しさん@まどっち :2012/05/07(月) 21:42:32 ID:7IpEV4ug0
○月×日
まどかが、泣いていた。パパとママとタッくんの名前を呼びながら、声を押し殺して。
まどかの泣き声を聞いた瞬間、横っ面を張り飛ばされたような衝撃を感じた。あたし、なにを甘ったれてたんだろう。自分
一人が不幸なんだみたいな顔をして、まどかにもたれかかって。
大切な人たちにもう会えないのは、まどかだって同じなのに。ほかの誰にも背負えない重荷を背負って、まどかは一人で
頑張ってたというのに。
もう泣いてる場合じゃない。あたしが、少しでもまどかの支えにならなきゃ。
○月×日
突然明るくなって料理やら掃除やら家の中のことをやりはじめたあたしを見て、まどかはびっくりしていた。無理して
空元気を出しているんじゃないかって心配してくれたけど、あたしはもう大丈夫だって言っておいた。
まだ、完全に立ち直れたわけじゃない。時々、どうしようもなく悲しくなって涙が出てくることもある。けど、何かしていた
方が気がまぎれるし、まどかのためなら頑張れる。
今までまどかにいっぱい助けてもらった分、今度はあたしがまどかに恩返しするんだ!
○月×日
腕によりをかけた食事を用意してまどかの帰りを待つのが、あたしの日課になった。まどかがお勤めから帰ってきたら、
玄関で出迎えてやる。バカ話をしてまどかを笑わせながら、一緒にご飯を食べる。ご飯の後はまどかをお風呂に入れて、
お泊りの時みたいにまどかと一緒のベッドでおしゃべりしながら眠りにつく。
これまでの生活が嘘のように、毎日が楽しくなった。あたしの変貌に最初は戸惑っていたような感じだったまどかが、
あたしを元気づけようと無理して笑っていたまどかが、心から笑ってる。落ち込んでいた時は何もする気力が起きなくて、
何もかもを憎んでいたあたしも、心から笑えてる。そんなことが、こんなにも幸せだったなんて。
こんなことも忘れてたんだから、あたしってほんとバカだよねえ。
○月×日
今日はまどかのお勤めがお休みだったので二人でまど界をデートして歩いた。河原や公園やショッピングモールも、
まどかと一緒に遊んだ場所はみんな現世のそれがそっくりそのまま再現されていて、あたしたちは何も知らなかったころの
ように遊び回った。
ゲーセンでは一緒にプリクラをとったし、クレーンゲームではまどかにぬいぐるみを取ってあげた。おしゃれなブティックを
ウィンドーショッピングして、あれが可愛いこれがいいなどとはしゃぎまわった。ファーストフード店では、時間を忘れて
いっぱいおしゃべりした。
遊び疲れて家に帰りついたとたんにあたしの膝で寝てしまったまどかを見ながら、あたしはまどかと友達でいられて、本当に
良かったと思った。まどか、大切なあたしの親友。ずーっと、一緒にいようね。
*
○月×日
今朝まどかが出かけるとき、冗談で「いってらっしゃいのチューしよっか? なんだか新婚さんみたいで良くない?」って
言ってみた。「もう、さやかちゃんったら」と笑われるか、「からかわないでよぉ」って怒られるかのどちらかだと思ってたら、
まどかはなぜか顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「さやかちゃんがいいなら、その」とかしどろもどろになってしまったまどかを見てあたしが戸惑っていると、そのうち
「な、なんでもないよ! じゃ、じゃあ! 行ってくるね!」と言い放ってまどかは出かけていってしまったけど、あれは
いったいどういうことなんだろう。……まさかね。
61 :名無しさん@まどっち :2012/05/07(月) 21:53:29 ID:xw1T5tcY0
○月×日
ここ最近、まどかの様子が妙によそよそしい。あたしから距離を取るようになったり、話しかけても赤くなって答えて
くれなかったり。そのくせしばらくすると寂しそうにこっちを見つめてくる。今までこんなことなかったのに、いったい
どうしちゃったんだろう。
やっぱり、あたしのせいだよね。まどかのおかげで、あたしは自分を取り戻せた。家族や友達に会えないのはさみしいけど、
恭介のこともかなり吹っ切れてきたし、まど界での生活にもだいぶ慣れて楽しくやれるようになってきた。それは全部まどかの
おかげなのに、そのまどかをあたしは知らないうちに傷つけてしまったんだと思う。何が悪かったかちゃんと問いただして、
謝らないと。
○月×日
今日、まどかを問いただした。まどかは最初こそ「なんでもないの」とごまかし続けていたけど、あたしが頑固に何度も
聞いたら、とうとう泣きながら理由を教えてくれた。
まどかは、いつのころからかずっとあたしのことが好きだったらしい。一生自分の気持ちを打ち明けるつもりはなかったんだけど、
あたしの新婚さん発言のせいで「本当にそうなれたら」という気持ちに火がついてしまい、それがおさえられなくて態度が
ぎこちなくなっていたという。友達なのに、好きになってごめんなさいと何度も謝られた。
あたしは、思いもかけない展開に頭の中が真っ白になってしまっていて、まどかに何も言ってあげられなかった。そんな
あたしを見て、まどかは泣きながら無理して笑顔を作って「このことは忘れて。わたしはもう、さやかちゃんとは会わないから」
と家を出て行こうとした。
まどかが背中を向けた瞬間、あたしは思わずまどかの手を取っていた。ほとんど反射的に、まどかの恋人になってあげられる
かもしれないと言ったら、まどかは「気持ち悪くないの……? わたしのこと、嫌いになってないの……?」と目を丸くしていた。
その目を見た時、あたしは初めて会った時のまどかのことを思い出した。突然差しのべられたあたしの手を取っていいのか、
降ってわいたような幸運に戸惑って、どうしていいかわからなくなっていたまどか。そんなまどかを、あたしはとても愛しく
思った。
この気持ちは、たぶん恋とかじゃない。けど、まどかの気持ちには出来る限り応えてあげたい。まどかのために出来ることなら、
なんでもしてやりたい。だから、あたしはまどかの気持ちを受け入れた。まどかは「ごめんなさい、ありがとう」ってまた泣いた。
先のことはわからないけど、まどか、これからよろしくね。
○月×日
昨日の告白以来、まどかの赤面症はかなり悪化した。今まで何気なくやっていた「はい、あーん」も照れてなかなか口を
開けようとしない。あたしが手を差し出すと、かなりの時間躊躇して、それからおずおずとあたしの手を握る。なでなでも
あたしの手が触れた瞬間はびくっと体を硬直させる。
まどかの緊張があたしにも伝染して、なんだか家の中が気詰まりに感じられる。けれど、あたしの箸からご飯をもらった
瞬間や、あたしと手をつないだ瞬間、あたしの腕の中で頭を撫でられているときのまどかは、本当に幸せそうな顔をして、
その途端に空気がふんわりと柔らかくなる。よく知っているはずのまどかの笑顔なのに、何だかあたしもどきっとするような
色気が感じられる。もっとも、毎回その直後に感極まったまどかが泣き出してしまうので、じっくり眺めてはいられないのだけど。
前途多難だけど、ちょっとずつ恋人になっていこうね、まどか。
*
○月×日
最初の頃こそ、お互い緊張しまくりでガチガチになっていたあたしたちだけど、最近は随分と慣れてきた。
まどかは相変わらず「こんなに幸せでいいのかな」ってよく泣く。その泣き笑いの顔を見ると、あたしもいっそうまどかを
愛おしく思う。こんなあたしでも、まどかを幸せにできるんだって思うと、まどかにもっと色々してあげたくなってしまう。
そして今日、あたしはまどかとキスをした。遊園地の二人っきりで乗った観覧車のゴンドラが、てっぺんにたどり着いたとき。
もちろん、お互いファーストキス。そのあとは、嬉しい嬉しいって泣き続けるまどかを抱きしめながら、閉園までずっと観覧車に
乗り続けていた。二人とも無言で手をつないで家に帰って、寝る前にベッドの中でもう一回。まどか、そんなに泣いてばかりだと、
おめめがとけちゃうかもよ?
62 :名無しさん@まどっち :2012/05/07(月) 21:55:27 ID:xw1T5tcY0
○月×日
また、まどかを泣かせてしまった。そのつもりはなかったんだけど「これからもずっと一緒にいようね」って言ったら、
プロポーズだと受け取られてしまったらしい。
でもまどかとずっと一緒にいたいのは本心だしと思った時には、あたしは「そうだよ。結婚しよう、まどか」と言っていた。
我ながら調子がいいというかいい加減だと思うけど、あたしはまどかをもっともっと幸せにしてあげたい。代わりにはなれない
かもしれないけど、まどかが永遠に失ってしまった家族に代わって、あたしがずーっとまどかを支えていてあげたい。心から
そう思ってる。
そう言ったら、いよいよまどかが泣き止まなくなった。なんだか、あたしと付き合ってからまどかは泣いてばっかりだね。
○月×日
昨日の初夜、まどかと初めてした。今までになく緊張しまくってたし、うまくできた自信もないけど、まどかは涙を流して
喜んでくれた。
まどかはすべての魔法少女と魔女の神様だし、あたしの大切な親友でもあったから、なんだかそういうことをするのには
ちょっと抵抗があったけど、まどかもあたしとすることを望んでくれた。まどかと一つになって、本当の幸せってこういうのを
いうのかな、なんて恥ずかしいことも考えたりした。
愛してるよ、まどか。
*
○月×日
最近、よく眠れない。昼間ぼーっとしてしまうことも多いし、訳もなく突然涙が出てくることもある。
参るのが、原因が全然わからないこと。心配事は特にないし、生活に不満もない。婦婦生活も問題ないし、幸せすぎて
困ってるくらいなのに。
そんなあたしを見て、まどかも心配してる。まどかに迷惑をかけてるのも心苦しいし、早くよくならなくちゃ。
○月×日
あたし、嘘をついてたんだ。まどかにも、自分にも。
それがわかったのは、まどかの顔を見るといつも胸がずきりと痛むことに気付いたから。まどかの笑顔を見ると、あたしは
どうしようもなく落ち着かない気持ちになるから。心臓はばくばくと鳴り続け、足に力が入らなくなるから。
あたしは、まどかのことが好きでまどかの恋人になったわけじゃなかった。まどかを愛してるから結婚したんじゃなかった。
あたしは、ただ誰かにそばにいてほしかっただけ。「まどかのため」なんて言いながら、あたしはまどかの気持ちを自分の
都合のいいように利用してたんだ。
告白もプロポーズも成り行き任せだったし、そもそも現世では男の子の恭介を好きだったあたしが、そんな簡単に女の子の
まどかを好きになれるはずなんかなかったのに。
体は正直だね。あたしが自分を騙し続けてごまかしてきたことを、心の奥底に沈めたはずの罪悪感を、あたしがずっと目を
背け続けてきたことを、あたしに気付かせてくれた。
○月×日
明日、まどかに言おう。そして、別れよう。
あたしは、まどかのことを好きなふりをしていただけなんだって。このまま結婚生活を続けていても、いつかまどかを不幸に
するだけだって。あたしには、まどかに好きでいてもらう資格なんてないんだって。
本当、あたしって最低の人間だ。真実に気づいてしまっても、そのまま自分を騙し切ればいいのに、それすらもできない。
結局、最初から最後まで自分の都合でまどかを振り回して。
まどかは、泣くよね。怒るよね。ぶたれても、引っかかれても、なにされても文句は言えない。許してもらえるなんて思わない
けど、謝ることしかできない。
ごめん、まどか。本当に、ごめんなさい。
63 :名無しさん@まどっち :2012/05/07(月) 21:57:06 ID:xw1T5tcY0
○月×日
ちょっと待って、考えがまとまらない。あたしの気持ちを伝えたら、「さやかちゃんは、自分に嘘をついてるんじゃなくて、
わたしに恋してるんだよ」ってまどかには言われたけど、どういうこと?
あたしの体調不良は、まどかに恋するがゆえの恋患い? それが本当だとしたら、あたし、もしかして勘違いでめちゃくちゃ
恥ずかしいことをまどかに言って、まどかはそれを知ってて、でもあたしh#$Aど%(字がぐちゃぐちゃで読めない)
○月×日
自分の気持ちを自覚してから、まどかの顔が見られない。まどかがあたしの方を振り向くと、その場がぱあっと明るくなる。
まどかが微笑んでくれるだけで心臓が跳ね上がる。まどかに抱きつかれたら、幸せすぎて死んじゃいそうになる。
耳元でささやかれた声が、一日中耳に残ってる。まどかのベッドの残り香が、胸いっぱいに広がって切なくなる。まどかに
握られた手を洗うのがもったいなくて、一日中片手だけで生活したりもしてる。
今日、街で魔法少女を導いてきたばかりのまどかを見たよ。神々しくて、この世のものとも思えないくらい綺麗で、優しい
微笑みで。導かれてきた子が安心しきってるのがわかった。あたし、まどかのことが好きすぎて、おかしくなっちゃいそうだよ。
キスなんか考えただけで頭がオーバーヒートしそうで、絶対無理。あたし、なんであんな大胆なことまどかに出来たんだろう。
あれ、ちょっと待って。あたし、キスだけじゃなくて毎晩まどかを抱いくぁwせdrftgyふじこ(やっぱり読めない) //
○月×日
寂しいよ、まどか。まどかの出かけた後の家はこんなにも広くて寒々しいよ。
毎朝、まどかが出かける瞬間が一番辛い。そんなことあるはずないのに、もうまどかが帰ってこないんじゃないかって不安に
なる。知らないうちにまどかに嫌われてて、まどかともう会えないんじゃないかなんてバカなことを考えちゃう。
毎日が不安でしょうがないよ。いつかまどかがこんなあたしに愛想を尽かすんじゃないかって、まどかがあたしなんかより
ずっと美人な魔法少女に出会ったら、あたしは捨てられるんじゃないかってそんな考えばっかり頭の中をぐるぐる回ってる。
まどかに捨てられたら、あたし絶対に生きてなんていられない。
まどか、まどか、まどか。こんなに好きなのに。一緒に暮らしてるのに、結婚してるのに、全然まどかに手が届いてる気がしない。
まどかはあたしのこと大好きだよって言ってくれるけど、明日も好きでいてくれるか、一時間後は、一分後はって怖くてたまらない。
まどか、好きで好きでしょうがないの。早く帰ってきてよ。
仁美「さやかさんの部屋に隠されていた日記ですが、ここまでにいたしましょう。本当はまどかさんにもお見せして喜ばせて
差し上げたいところですが、さやかさんに知られたら恥ずかしがられるどころではすみませんものね。この日記の内容は、
私一人の胸にそっとしまっておくことにしますわ」(粛々と全文コピーをとりながら)
最終更新:2012年06月24日 02:37