641 名前:板分割議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2012/07/01(日) 01:48:31.09 ID:rJPPPWPU0 [2/3]
[Vandalize]
―放課後―
「まーどかっ、一緒に帰ろ!」
「うん!」
今日はさやかちゃんと二人きりで放課後の帰り道。
お洋服やゲームのお話をしながら時々くっついたり、息がかかるくらい近くなったり。
「さやかちゃんいいなぁ…スタイルいいから可愛いの似合うと思うよ。」
「ううっ…まどかこそこんなに可愛いのに遠慮はいらないぞ~! うりうりっ♪」
「きゃははははっ!さやかちゃんくすぐったいよぉ~♪」
身体が触れる度にわたしの胸は音を立てます。でもわたしは自分の本当の気持ちを言いだせません。
幼馴染のままでいいのかな…。でももし気持ちを受け取って貰えなかったら…そんなのやだよ…。
今は二人でこうしてじゃれ合っていて重なるけど、いずれは闇に溶けて消えてしまう影みたい…。
でもやっぱりわたしは…今はまだこの関係に浸っていたいから…。
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―美樹宅/さやか自室―
「…まどか、ちょっとだけ大きくなってたな…。」
気付けばあたしはまどかの些細な変化にも気付いてしまう様になっていた。
リボンの結び方が微妙に違うとか、ちょっとだけ香水付けてみたとか、胸やお尻が成長してるとか。
真面目にあの子の事が好きになってるのかもしれない。もっと触れていたい、見ていたい。
女の子が女の子に惹かれるのは変だけど、友達としてくっついていればおかしいなんて思われないよね。
あたしきっと、心の何処かで変な子だって思われるのが恐いんだ。
それにまどかはきっと、恭介の代わりにされてるみたいに思うだろう。親友を傷付けるなんてもっと嫌だ…。
だから…今は、冗談でいいから嫁にするなんて言わせて欲しい。
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―次の日/放課後―
最近溜息の多いわたしを心配してくれたのは仁美ちゃんとほむらちゃん。
さやかちゃんの真似をして空元気で誤魔化そうしてみたけどすぐにバレちゃったみたいです。
「だからって…まどかはずっとそのままでいいの…?」
「まどかさん、本当の自分のお気持ちに向き合ってください。」
「で、でもでも…。さやかちゃんは…わたしの親友だから…。一番……大切な………」
でも勇気の無いわたしはこれ以上が言い出せません。
もしもさやかちゃんだったら…さやかちゃんみたいに勇気があったなら、ちゃんと言えるのかな…。
「さやかさんは、その…一度失恋というものを経験されていますわ。
ですから、まどかさんもさやかさんの為に勇気を出されてみては如何でしょうか?」
「そうよ。だから今度は、まどかが彼女に気持ちを伝えてあげる人になって。」
「…さやかちゃんに…気持ち…。わたし…出来るかな…。」
わたしは手を握り締めて震える事しか出来ません。でも、その手に仁美ちゃんとほむらちゃんの手が重なりました。
「まどかさんは独りではありませんわ。わたくし達が一緒ですのよ。」
「自分の殻を破って。貴女の為に、それにさやかの為にも…ね。」
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642 名前:板分割議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2012/07/01(日) 01:49:04.23 ID:rJPPPWPU0 [3/3]
―巴マミ宅―
「美樹さん、貴女は鹿目さんの友達でいたいの? それとも恋人でいたいの?」
「んなっ!? こっ…恋人とか…そんなんじゃ…。」
一人でしょげながら学校から帰っていたあたしはマミさんに拾われていた。
そのまま居候のいるマンションまでお邪魔してお茶を貰ったんだけど、マミさんのいきなりの質問にあたしは噎せ返りそうになった。
「はぁ~…旦那がこれじゃアイツも苦労すんだろうなぁ。」
「だっ、誰が旦那よっ!! ………ごめん…怒鳴って…。」
思わず声を荒げてしまって反省。けどまぁ、確かにあたしって可愛くないから旦那かなぁ…。
「美樹さん、自分を可愛くない…なんて考えるのは駄目よ。」
「い"い"っ…!? なんで理解るんすか!あたしってそんなに顔に出てます!?」
…どうやらYESらしい。マミさんは無言であたしを見ながらニコニコと笑ってる。
「だから今度も駄目だとか思ってんならそりゃ筋違いだ。今アンタに足りないのは変な迷いを振り払う勇気だろ。」
「…勇気…か…。あたしやっぱ…恐いのかな…。まどかに嫌な思いさせるなんて…絶対やなんだ…。」
(ジャラッ…)杏子があたしの前に何かを置いた。これって…鎖に繋がれた十字架じゃん…。
「持って行きな、それは親父の形見さ。悪い考えを振り切る為に、ソイツで神様にでも縋ってみなよ。」
「あんた…そんな大事な物を…!」
そう言いつつもあたしはその十字架を手にとっていた。背中押してくれる人達の気持ちを無碍にはしたくないんだ。
「頑張って美樹さん。美樹さんが思っている以上に、鹿目さんとの距離は近いと思うわよ。」
「ありがとうマミさん、ありがとう杏子。あたし…行って来るよ!」
………♭♭♭………
「…ねぇ佐倉さん。あんな大切な物を渡して良かったの?」
「ありゃ嘘だ。」
「ええっ…?」
「教会のツテで式場のバイトした時に貰ったんだよ。何でも結婚式に使うロザリオらしくてな。今のアイツ等にはピッタリだろ?」
「ふふっ。結局お互いに必要なものは気持ちを伝える事だけだったのよね。」
「全く苦労させられるよ。今までの関係を乗り越える。殻を破るって大変なんだなぁ…。」
「明日は盛大にパーティーね。佐倉さん、早速買い物に行きましょう。」
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既に陽は落ち、ヘッドライトが行き交う道を駆け抜ける二つの影。
別々の方向からそれぞれが目指す場所は同じだった。
―さやかちゃん…!―
―まどか…!―
「伝えたい事があるの!」
「伝えたい事があるんだ!」
[Vandalize]
おしまい。
最終更新:2012年07月26日 11:36