701 名前:板分割議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 02:53:59.77 ID:JfrnOjJ+0 [1/2]
641です。なかなか返信できませんがご閲覧いただいた方ありがとうございます。
vandalizeはとあるバンドで使われてた言葉なのですが、自ら破壊する→自分の殻を破るみたいな意味合いのつもりです。
あとさやかちゃんと一緒に暮らすみたいな話題があったのでまた投下させていただきます。
[トレゾア]
先生「7月に入って夏休みも間近ですが、くれぐれも気を抜いてはいけませんよ。それでは解散。」
1学期のテストもぼ終えた頃、多くの生徒が夏休みを目前にして浮き立っていた。
鹿目まどかもその一人。帰りのHRが終わるや否や、眼を輝かせて隣のさやかに声を掛ける。
まどか「さやかちゃん、もうすぐ夏祭りだよ。今年も楽しみだね~♪」
さやか「…ん…? うん…そうだね…。」
いつもであれば真っ先にフライングで喜んでいそうなさやかは随分と浮かない表情だった。
まどか「さやかちゃん…どうしたの…? 元気無いよ…?」
さやか「えっ!? あ、あはははは…!夏休み何して遊ぼっかなー!」
イマイチな反応を指摘されたさやかは慌てて明るく振舞ってみせる。
だがそれは、付き合いの長いまどかでなくとも理解るくらいにあからさまな空元気だった。
ほむら「今更彼の事で後悔してる…訳でもなさそうね。悩みがあるのなら、せめてまどかくらいには話してあげたらどう?」
上条恭介の件は確かにさやかにとって痛い過去だが、それは既に二ヶ月近くも前の話だ。
志筑仁美ともとっくに和解しているし、長期休みを前にして落ち込む理由としては些か不適当である。
さやか「………あのさ…。あたし…今度ね……引っ越すんだ…。親の仕事の都合でさ…。」
まどか「―――ふぇっ…?!」
ほむら「なっ………。」
ぼそぼそと呟いたさやかの言葉にクラスメイト二人は絶句していた。
また当人の顔色を見る限り至って真剣だ。とても悪い冗談等には聴こえない。
まどか「さやかちゃん…それって…その…。転校するって…事なのかな…?」
さやか「………たぶん…そうなると思う…。」
まどか「どのくらいかかる場所なの…?」
さやか「…新幹線乗り換えて…5時間半くらい。」
まどか「そんな…。それで…いつ…遠くに行っちゃうの…?」
さやか「……たぶん…あと一週間後。」
重ね重ねの質問にさやかは答えてくれる。が、その度にまどか共々顔色が悪くなるばかりだ。
ほむら「ちょっとどういう事よ!どうして今まで黙っていたの!!」
まどか「ほむらちゃん声大きいよぉ…。」
突然ほむらだけが大声を出した為に、帰宅直前のクラスメイト達は一斉に振り返っていた。
ほむら「…コホン、失礼したわ。」
………………………………♭♭♭………………………………
―次の日―
魔獣退治を終えた5人の魔法少女が夕焼けの下に集っている。
十分に手馴れているにも関わらず、今日のさやかとまどかは度々集中力を欠き窮地に陥るという散々な有様だった。
杏子「おいおいお前等大丈夫か…? 遊び過ぎて寝不足とかじゃなさそうだし…。」
マミ「私情を戦いに持ち込まないでと言いたいけど…何か理由がありそうね…?」
二人の余りの変わり様に年長者のマミと杏子は咎めるどころか心配してばかりだ。理由を聞いてすぐに納得したのだが。
さやか「すみません…あたし…言い出せなくて…。」
杏子「…さやかとまどかは当分外れてくれ。そんなんで足手纏いになられたら困るからな。」
マミ「貴女達の大切な時間でしょう? 出来るだけ一緒に居られる様に協力するわ。」
杏子「まぁそういうこった。GSくらいは余裕あるから気にすんなよ。」
ニシシと笑って二人と元気付けようとする杏子だが、やはり彼女の顔からも陰りは隠せない。
それでも先輩としてマミと共に何とかこの二人の気持ちを優先してあげたいのだ。
まどか「(ホントはわたしのお家に一緒に住もうって誘ってあげたいけど…さやかちゃんには自分の家族がいるし…。)」
さやかはともかくまどかはさっきから我が事の様にずっと泣きそうだった。
すっかりお通夜状態となってしまった魔法少女一向。この空気を打ち破ろうと声を掛けたのはほむらだった。
ほむら「ねぇさやか、良かったらうちで一緒に暮らさない? 二人分くらいなら広さも十分よ。」
さやか「えっ…?」
さやかの引っ越し並びに転校を回避させるべく、一人暮らしのほむらは突然ルームシェアを持ちかける。
彼女のマンションは広く、設備としても巨大なディスプレイを有しており、中学生のそれとは思えない程の最新式だ。
ほむら「(彼女と一緒に暮らせばもっと仲良くなれそうだし、まどかも喜んでくれて一石二鳥だわ!)」
さやか「そりゃ気持ちは有り難いけど…。ねぇほむら。もしかしてあたしを家事担当とか思ってたりしない?」
ほむら「(ホムギクゥッ!)…す、少し手伝ってくれたら、それはとっても嬉しいわねって…。」
さやか「まぁ、宿賃代わりに料理と掃除くらいは引き受けてもいいけど…。」
一人暮らしのほむらは意外と淋しがり屋なのかもしれない。それに家事の出来るルームメイトは大歓迎だった。
しかし両親と離れて暮らしているのはほむらだけではなく、早速ライバル候補が名乗りを挙げる。
杏子「おいさやか、うちならそんな事する必要ないぞ。」
さやか「ん??? でもあんたの家って…。」
杏子「アタシんちなら毎日美味い料理が幾らでも―――」
マミ「さ・く・ら・さん!!」
杏子「(ビクゥッ!!)は、はい…。」
普段のマミからは考えられない程低い声に杏子は情けない声を上げてしまった。
人形の様にギギギ…と恐る恐るマミの方へ振り返る。
マミ「貴女の家ではなくて"私の家"です!巴マミの家です! 居候は慎ましくしていなさい。」
杏子「うぐっ…滅相もございません…。」
家の主に一喝されて杏子はぐうの音も出なかった。杏子はあくまでマミ宅の居候でしかない。
一応多少のバイト代は入れているものの、食事に関しては100%マミのお世話になっている身なのだ。
但しマミが杏子に厳しく当たるのは親心みたいなものであるが。
マミ「という訳で美樹さん、うちなら毎日美味しいお料理を振舞うわよ?」
さやか「あはは、そりゃ楽しみっすね。ただ…少し考えさせてください。」
ほむら「ちょっとズルいわよ巴さん! さやか!うちならパソコンもゲームも常に最新のものが揃っているわよ!」
さやか「そういやほむらって前にあたしのパソコン直してくれた事もあったよね。」
マミ「むっ! 美樹さん!うちなら美味しいお茶とお菓子を毎日でも用意するわよ?」
ほむら「さやか!私は貴女が手料理を練習していたのを知ってるわ! 貴女の努力の結晶なら幾らでも受け止めてみせる!」
マミ「あ~ら暁美さん? 料理なら私が美樹さんに教えてあげますから心配はいりません。」
ほむら「うぐぐ…!(しまった…ネタが尽きたわ…)」
ほむらVSマミ(+杏子)のさやか争奪戦にまどかはうろたえながら見守る事しか出来ない。
しかしそんな魔法少女達の下へ意外な人物が偶然にも通り掛かったのだ。
詢子「おーっす!まどかにそのお友達かい? 今日は随分と大勢だねぇ。」
『こんばんわー!』
買い物袋片手に現れたのはまどかの母である詢子だった。魔法少女達は揃って元気の良い返事をする。
詢子「まどか、悪いがそろそろ晩御飯の時間だから適当に話切り上げて帰って来なよ。」
まどか「あ、うん…。」
詢子「さやかちゃんは大変だよなー。まどかから聞いたよ、今度引っ越しちまうんだろ?」
さやか「あははは…そうなんですよ…。」
中途半端に笑って誤魔化すさやか。ただ詢子も無神経に問い質したのではなくちゃんと理由があるのだ。
詢子「そこで相談なんだが…うちで良かったら住み込まないかい?
こっちに越したばっかの頃からまどかが世話になってんだし、あたしからも親御さんに話してみようと思うんだ。」
さやか「いいんですか!?是非お願いします!!」
ほむら・マミ・杏子『………。』
呆然とする三人。争奪戦の行く末はさやか自身の鶴の一声で掻き消されたのだ。
はっきり首を縦に振らなかったのにあっさりOKするあたり、本命はやはりまどかの自宅だったらしい。
まどか「やったー!さやかちゃんと一緒だよぉ~♪」ガシッ
さやか「おわぁっ!? ちょっ…踊るなぁ~!」
まどかは歓喜の余りさやかの手を取って踊り始めていた。
普段控えめな彼女が人目も気にしないのは余程嬉しかったからなのだろう。
ほむら「…ですよねー…。」
杏子「まぁ…そうなるよなー…。」
マミ「ふふっ、やっぱり鹿目さんとの仲には敵わないわね。」
こうしてさやかはまどかと一つ屋根の下、鹿目家の居候として暮らす事になった。
………………………………♭♭♭………………………………
―見滝原駅―
まどか「あっ、さやかちゃーん!」
さやか「…まどか…へへ…。」
さやかは両親を乗せた電車を見送った後で一人だけ駅を出て来た。
まどかに心配をかけまいと笑顔を浮かべているのだが、その瞳は真っ赤だった。
まどか「さやかちゃん…無理しなくていいんだよ…?」
さやか「うん、もう大丈夫だよ…。お父さんとお母さんがよろしくお願いしますってさ。」
両親への離別れはさやかにとってとても辛い事に変わりは無い。それでもこれが彼女の選択だった。
両親の多忙で度々お世話になる等親交の深い鹿目家なら安心して身を寄せられる。
そして何よりまどかと一緒に居たい…それが一番の理由であった。
まどか「それじゃ…行こっか…。」
―鹿目家―
知久「まどかの隣りの部屋が荷物置き場になってるから、そこをさやかちゃんの部屋にしようと思うんだ。
と言っても修理と大掃除にちょっとかかるから、それまでは悪いけどまどかと一緒の部屋で我慢して貰えるかい?」
さやか「(まどかと一緒っ!?)ぜ、全然大丈夫っすよー!」
まどか「わーい!今日は一緒のベッドでお休みだねっ♪///」
さやか「んなっ…!?///」
お泊りくらいは何度も経験している筈なのに、いざ一緒に暮らすとなると妙に意識してしまうさやか。
無邪気に抱き付くまどかも同じなのか、頬を仄かに赤く染めている。
知久「さて、そろそろご飯の準備をしておこうか。
さやか「あっ!知久さん、あたしも手伝っていいですか?」
知久「勿論だよ。家事の担い手が増えるのは嬉しいね。」
まどか「ええー!? パパずるいよぉ~…。」
詢子「こらこらまどか。これからずっと一緒に暮らせるんだから贅沢言うなっての。」
まどか「そっか…ずっと一緒なんだよね…♪」
元々自分で料理に携わって来たさやかは、これから徐々に知久にとっても頼もしい戦力になってゆくだろう
さやかはまどかにとっても一番大切な人。鹿目家の中でもその存在は大きなものになりそうだ。
まどか「(さやかちゃん、いつかわたしのお嫁さんになってくれたら嬉しいな…。)」
さやか「(あたし、いつかホントの家族になってみせるよ。こういうのってあれだよね。人生の宝物って言うんだろうなぁ。)」
[トレゾア]
おしまい。さやかちゃんの嫁入り(予定)でした。次は七夕かな。
最終更新:2012年07月13日 19:14