101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/08(日) 01:33:35.68 ID:OencP+560 [1/4]
ちょっと過ぎてしまって恐縮ですが、七夕のSSを投下させて頂きます……
七月七日に日本で全国的に行われている七夕祭りは、江戸時代から始まっていた。
前日に願い事を書いた短冊を笹に飾って、七日に海へ流すことが風習とされている。元々は中国の行事だったそれは、奈良時代より日本に伝わっていた。
そして七夕の文化は地球だけでなく、宇宙のとある場所にある彼女達が生きるこの世界にも存在している。
「さやかちゃん、願い事書いた?」
その手に桃色の短冊を持った鹿目まどかは、笑顔でそう問いかけると。
「うん、書いたよ」
その手に青色の短冊を持っている美樹さやかは、まどかに負けないくらいの笑顔で答える。
そのまま二人は目の前にある小さな笹竹の葉っぱに短冊を括りつけた。すると、それを合図とするかのように純白だった空は、一瞬で宇宙にある星達の輝きに染まっていく。
かつて世界を作り変えたまどかの力さえあれば、遠く離れた銀河に存在する天の川だろうと簡単に見ることができた。
「うわぁ……綺麗!」
「やっぱり、年に一度の七夕だからさやかちゃんだって天の川は見たいでしょ? だからこうして見えるようにしたけど、どうかな?」
「うん……ありがとう、まどか!」
微笑むまどかの疑問に、空を満たしている天の川に負けないくらいに表情を輝かせながらさやかは答える。
「あたし達の世界じゃ、こんなの滅多に見られなかったなぁ~」
「見滝原だけでなく、色んな街にある電気が凄かったからね。そこから離れないと、こんな天の川は見られないよ」
「う~ん、こんなに綺麗だと飛び込んでみたくなるなぁ。だって、川だし」
「さやかちゃん、天の川は水じゃなくて星だってことは小学生も知ってるよ?」
「むぅ……冗談に決まってるでしょ。あたし、そんなことを言うまどかのこと嫌いになりそうかもー」
「え、ええっ!?」
意地悪そうにさやかが笑うと、まどかは一瞬で狼狽した。
102 名前:わたし達が、祈った願い[sage] 投稿日:2012/07/08(日) 01:34:15.15 ID:OencP+560 [2/4]
魔法少女としての力強い彼女からは想像できないくらいにおろおろしていて、そんな一面を見てみたいとさやかは思ったが、大切な友達で遊ぶのはよくない。それにずっと昔まどかを悲しませてきたから、これ以上それを繰り返したくなかった。
「ごめんね、冗談よ」
だからさやかは、まどかがショックを受ける前に謝る。
「あたしがまどかのことを嫌いになるわけないでしょ。だってまどかは……こんなあたしにも、手を伸ばしてくれたんだから」
「……やっぱり、冗談だったよね。知ってた」
そう言いながらまどかは、心の底から安堵したような微笑を向けてくれた。
「やっぱり、まどかはそれが一番だよね」
「えっ? 何が」
「まどかはそうやって、幸せように笑っているのが一番だなって思っただけ……だって、まどかの笑顔は素敵だから」
「さやかちゃんの笑顔だって素敵だよ! だって、さやかちゃんが笑っていてくれたからわたしも笑顔でいられるから!」
「ありがと」
まどかの笑顔もまた、さやかのように星の海に負けないほどの輝きを放つ。
それを見て、さやかはほんの一瞬とはいえまどかの笑顔を曇らせてしまったことに後悔を覚えてしまった。魔法少女になったのは恭介のバイオリンをもっと多くの人に聞いてもらいたかっただけでなく、まどかの笑顔も守りたいと願ったからでもある。
だけど、ここでそれを悔やんでいたらまたまどかを悲しませてしまう。それだけは絶対に嫌だった。
103 名前:わたし達が、祈った願い[sage] 投稿日:2012/07/08(日) 01:35:14.17 ID:OencP+560 [3/4]
「それじゃあまどか、一緒に持とう?」
「うん!」
そうやって頷き合ったまどかとさやかは力を合わせて笹を持ち、そのまま天の川を目掛けて勢いよく放り投げる。この世界からゆっくりと宇宙に出て行って、数多もの輝きの中に消えていくのを、彼女達はただ見守っていた。
「まどか……こんなに凄い七夕をやってるのって、もしかして宇宙であたし達だけかな?」
「きっとそうだよ! これはわたしとさやかちゃんだけの、とっておきだから!」
「そっか……あたし達だけが、毎年こんな七夕ができるなんて何だか不思議だなぁ」
「さやかちゃん」
「何?」
「願い事、叶うといいね!」
「……うん!」
宇宙で輝く天の川の中に、少女達の願いを乗せた笹はひたすら流れている。
そこに結ばれた桃色の短冊には、こう書かれていた。
『さやかちゃんがずっと笑顔でいたまま、いつか生まれ変われた後に素敵な人と巡り会えますように』
そして、青色の短冊にはこう書かれている。
『優しいまどかがいつか普通の女の子として生まれ変わって、幸せな日々を送れますように』
最終更新:2012年07月27日 07:51